事実婚の解消で慰謝料請求できる? 財産分与や養育費についても詳しく解説!
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統計によると、平成29年に、大阪府全体で45463組の夫婦が結婚し16931組の夫婦が離婚しています。
法律上の結婚や離婚には届け出が必要ですが、事実婚やその解消には届け出は必要ありません。
そのため、事実婚は自由に解消できて何の責任も生じないというイメージを持たれている方もいるかもしれません。しかし、実際には法律上の夫婦の離婚と同様の責任を負うこともあります。
本コラムでは、事実婚が解消された場合に慰謝料請求できるのかという点を中心に、財産分与や養育費についてもベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が詳しく解説していきます。
1、事実婚とは
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(1)事実婚とは
事実婚とは、婚姻届は提出していないものの、事実上婚姻と評価できる状態にあることをいい、内縁と表現されることもあります。
一般的に「当事者双方が婚姻関係を成立させる意思をもって共同生活を行っていること」や「社会的に夫婦と認められる生活の実態があること」などが考慮されて事実婚であるかどうか判断されることになります。
そのため、いわゆる愛人であったり単に同棲していたりという場合は、事実婚には該当しません。 -
(2)事実婚と法律婚の違い
事実婚は「法律婚に準じる関係」として一定の範囲で法律婚と同様に保護されますが、異なる取り扱いを受ける部分もあります。
事実婚と法律婚の違いとしては、主なものとして、事実婚では相続が認められていないことや生まれた子どもが嫡出子(ちゃくしゅつし)として取り扱われないことなどがあげられます。
また、公的な関係でも、事実婚は同一の戸籍にならないことや税制上の配偶者控除などの適用がないといった違いが生じます。 -
(3)事実婚のメリット・デメリット
事実婚には、結婚という形に縛られることなくお互いに自由で自立した関係でいられるという気持ちの面でのメリットがあります。
また、実際上のメリットとしては、同一の戸籍に入るわけではないので夫婦が別姓のままでいられることが挙げられます。
事実婚のデメリットとしては、生まれた子どもと父親の姓が異なることや相続などの面で法律婚と同様の保護が受けられないことなどが挙げられるでしょう。
2、事実婚が解消された場合には慰謝料を請求できる?
事実婚が解消された場合には、次のようなケースで慰謝料を請求できる可能性があります。
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(1)事実婚の破綻原因を作ったことを理由として請求できるケース
法律上の夫婦の離婚では、婚姻関係の破綻原因を作った夫婦の一方に対して慰謝料を請求することができます。
事実婚の解消においても、事実婚関係の破綻原因を作った側に慰謝料を請求することができるとされています。
たとえば「不貞行為が原因で事実婚を解消した」「DV(ドメスティックバイオレンス)やモラハラがあったから事実婚を解消した」という場合には、破綻原因を作った側に対して慰謝料を請求することが可能になります。 -
(2)事実婚を正当な理由なく破棄したことを理由として請求できるケース
法律上の夫婦の離婚では、当事者の話し合いで合意できない場合には「民法上の離婚原因」に該当するかどうかで離婚の成立の可否が判断されます。 一方で事実婚を解消する場合には、特別な届け出や手続をする必要はありません。つまり、一方の意思で自由に事実婚を解消できてしまうことになります。
だからといって、一方的に事実婚を解消して何らの責任も負わなくてもよいというわけではありません。
「民法上の離婚原因」に該当しないような場合に、一方的に事実婚を解消をすると、正当な理由なく事実婚を破棄したとして慰謝料請求の対象となり得ます。
したがって、このような場合に、事実婚を解消された側から解消した側に慰謝料を請求できる可能性が生じます。 -
(3)民法上の離婚原因とは
前述のように事実婚の解消においては「民法上の離婚原因」に該当するかどうかが慰謝料請求の可否を分けます。民法770条で規定されている「民法上の離婚原因」は以下のとおりです。
●配偶者に不貞な行為があったとき
配偶者が浮気をしたような場合です。
●配偶者から悪意で遺棄されたとき
「勝手に家を出ていった」「家を追い出されえた」「生活費を渡してくれない」といった場合です。
●配偶者が3年以上生死不明であるとき
配偶者が所在不明でも生存が確認できている場合は、生死不明といえないので当てはまりません。
●配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき
症状としては統合失調症やアルツハイマー病などが例としては挙げられますが、これらの症状のみを理由とした離婚の成立はかなり難しいのが実際です。
●その他婚姻を継続しがたい重大な事由があったとき
モラハラやDVなどは、この理由に当てはまります。
3、事実婚の解消で財産分与はどうなる?
事実婚の解消では、法律婚の離婚と同様に財産分与を請求する権利が認められます。
財産分与は、事実婚期間中に夫婦が築き上げた財産について双方の貢献の度合いに応じて分配する制度です。
財産分与では、原則としてマイホームなどの不動産や車などの動産、預貯金や有価証券などが対象財産に含まれます。例外として、事実婚前に一方が築き上げていた財産や相続などで取得した財産などは対象財産に含まれません。
なお事実婚の解消から2年を経過した場合には、財産分与請求権は時効によって消滅します。
4、事実婚の解消で養育費はどうなる?
法律婚の場合、離婚すれば子どもを扶養するための養育費を請求することができます。
しかし事実婚では、子どもを「認知」していなければ母親は父親に当然には養育費を請求できません。
事実婚の夫婦の間に子どもが生まれた場合には、母親は自動的に子どもの法律上の親となりますが父親は法律上の親とはなりません。
子どもと父親との間に法律上の親子関係が生じていなければ、父親には子どもを扶養する義務は生じないため養育費を支払う義務も発生しません。
そのため、養育費を請求するためには、「認知」して子どもと父親との間に法律上の親子関係を生じさせておく必要があることになります。
5、事実婚の解消で相続はどうなる?
事実婚では、法律婚と異なり相続関係は発生しません。
したがって、事実婚の期間中・事実婚解消後を問わず夫と妻との間に相続関係は生じていないことになります。
しかし事実婚の夫婦の間に子どもがいる場合には、子どもは父親の「認知」があれば事実婚が解消されても父親の財産を相続することができます。
6、事実婚の解消でもめた場合の対処法とは
事実婚の解消についての当事者間の話し合いがまとまらずもめてしまった場合には、次のような対処法で解決を図ることができます。
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(1)内縁関係解消調停を申し立てる
法律婚では夫婦で離婚についての話し合いができない場合や話し合いがまとまらない場合に、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。
事実婚の場合も同様に、事実婚の解消についての話し合いがまとまらない場合などには、家庭裁判所に内縁関係解消調停を申し立てることができます。
調停では、調停委員を交えて当事者同士が話し合い解決を図ります。
なお、調停手続では、事実婚の解消に際しての財産分与や慰謝料などの財産に関する問題も一緒に話し合うことができます。
また、事実婚の解消自体を迷っている場合にも内縁関係解消調停を申し立てて解決を図ることができます。 -
(2)訴訟を提起する
内縁関係解消調停によっても財産分与や慰謝料の問題が解決に至らなかった場合などには、訴訟を提起して裁判官が言い渡す判決で解決を図ることができます。
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(3)弁護士に相談する
事実婚の解消で当事者間の話し合いがまとまらずもめてしまった場合には、弁護士に相談して解決を図る対処法があります。
弁護士は、代理人として相手側との話し合いを冷静に進めることができます。
事実婚の解消に伴う財産分与や慰謝料についても、弁護士は法的な根拠をもとに適正な金額を算出して話し合いを進めます。そのため相手を説得でき、早期に解決につなげられる可能性が高まります。
また調停や訴訟になった場合でも法律の専門家として対応できるので、有利な内容で解決につなげることができます。
7、まとめ
本コラムでは、事実婚が解消された場合に慰謝料請求できるのかという点を中心に、財産分与や養育費についても詳しく解説していきました。
事実婚が解消された場合には、事実婚の破綻原因を作った側に慰謝料を請求できる可能性があります。また、正当な理由なく事実婚を一方的に解消した側にも慰謝料を請求できる可能性があります。
ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士は、事実婚の解消におけるさまざまな問題をご相談者さまの希望にそった解決につなげられるよう尽力いたします。
ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています