財産分与は?年金分割はどうする?弁護士に聞いた!熟年離婚で気をつけるべき8つのこと
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最近、「熟年離婚」が増えていると言われています。
実際に、今の配偶者と、これから一生添い遂げることに疑問を感じている方もおられることでしょう。
これまでいろいろと我慢してきたのだから、これからはある程度自分の自由に生きたいと考えていることもあるかもしれません。
ただ、熟年離婚は、慎重に進めないと、思わぬ不利益を被るおそれもあるので注意が必要です。
今回は、熟年離婚をするときに気をつけるべき8つのポイントについて、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。
1、熟年離婚が増えている理由と件数
近年、熟年離婚が増えていると言われていますが、そもそも、熟年離婚とはどのような場合を言うのかご存知でしょうか?
一般的に、熟年離婚とは、婚姻年数が20年以上の夫婦の離婚を言います。高齢の夫婦であっても、婚姻年数が短ければ、当然には熟年離婚になりません。
近年熟年離婚が増えているのは、
- 女性の社会進出が進んで経済的に自立した妻が増えてきたこと
- 年金分割の制度が始まって、主婦だった方でも、離婚後に夫の年金の一部を受け取れるようになったこと
- 社会の離婚に対する考え方が変わり、離婚した人への偏見が小さくなったこと
近年では、熟年離婚の件数は4万件以上で推移しており、全体の離婚件数に占める割合は16%程度にも及んでいます。
2、熟年離婚のポイント1~有利な証拠を集める~
以下では、熟年離婚のポイントを紹介していきます。
離婚をするときには、まずは相手と話し合うことが必要です。ただ、いきなり話合いを始めても、相手が離婚に応じてくれない可能性がありますし、話合いができたとしても、相手にうまく言いくるめられてしまうかもしれません。そこで、交渉を始める前に、自分に有利な証拠を集めておくことが大切です。たとえば、財産分与をする場合には、家の預貯金通帳や夫婦の生命保険の証書、不動産に関連する資料などを手元に集めておきましょう。相手が管理している資産内容についても、なるべく調べて把握しておくべきです。
相手が不貞(浮気や不倫)をしているなら、興信所を雇って証拠をとったり、浮気相手と交わしているメールや一緒に撮影した写真などの証拠を集めたりしておきましょう。
このように、自分に有利になる証拠を手元に集めることにより、離婚の交渉も有利になりますし、交渉が決裂した後の調停や訴訟でも、優位に立つことができます。
3、熟年離婚のポイントその2~婚姻費用
特に、専業主婦などが熟年離婚をする場合、相手と離婚交渉中の婚姻費用のことを知っておくべきです。
離婚交渉中や調停中は、相手と別居することも多いですが、別居をすると、相手から生活費を支払ってもらえなくなることがよくあります。
熟年離婚の場合、夫側は「離婚したくない」と考えることも多いですし、「勝手に家を出て行った妻に、どうして生活費を支払わないといけないのか?」という発想を持つことも多いからです。
そこで、別居をしたら、相手に対して「婚姻費用」の支払を求めることになります。婚姻費用というのは、法律的に言う「生活費」のことです。
婚姻費用を求めるときには、任意で支払を求めても良いのですが、それでは支払ってくれない可能性が高いです。そこで、家庭裁判所において「婚姻費用分担調停」という調停を利用して、支払を求めます。
調停で話合いが成立したら、その内容に従って生活費の支払いを受けられますし、話合いが成立しなくても、審判官(裁判官)が審判という方法で、相手に対して支払い命令を出してくれます。
4、熟年離婚のポイントその3~財産分与
熟年離婚でもっともと言って良いほど重要なのが、財産分与です。
財産分与額がいくらになるかにより、離婚後の生活レベルや内容も変わってきます。離婚後生活に困らないためには、なるべく多くの財産分与を受けることが必要です。
財産分与の対象になるのは、夫婦共有財産です。夫婦共有財産とは、婚姻中に共同で積み立てた財産のことです。たとえば、夫婦の名義の預貯金や生命保険、株や投資信託、ゴルフ会員権、不動産や退職金なども、財産分与の対象となります。相手の特有財産(相続を受けた財産、婚姻前から保有している財産など)は、財産分与の対象になりません。また、財産分与の分割割合は原則として2分の1ずつとなります。
財産分与請求をするときには、事前にしっかり資料を揃えて相手に対して話を持ちかけましょう。もし、話合いでは解決できないなら、家庭裁判所での離婚調停や訴訟によって解決する必要があります。
5、熟年離婚のポイントその4~年金分割
熟年離婚をするときには、年金分割も非常に重要です。離婚時年金分割制度については、誤解も多いところなので、正確に理解しておきましょう。
年金分割は、夫婦が婚姻期間中に支払った年金保険料の金額に応じて、離婚後受けとる年金受給額を調整する制度です。対象になる年金は、厚生年金と共済年金です。そこで、婚姻期間中に、夫か妻のどちらか(または両方)が厚生年金か共済年金に加入していたら、年金分割を利用できる可能性があります。
ただ、年金分割は、「年金額が半額ずつになる制度」ではありません。分割対象になるのは、年金の中でも「婚姻期間中に支払った年金保険料に対応する部分」のみです。熟年離婚の場合でも、夫から妻側に分割される年金は、2~3万円程度までであることが多いです。
また、年金分割の対象になるのは、厚生年金と共済年金のみであり、基礎年金は対象になりません。夫が会社員や公務員の場合には年金分割を受けることができますが、夫が自営業者の場合には、年金分割を受けることができません。
年金分割の手続には、合意分割と3号分割があります。3号分割は、専業主婦等の「3号被保険者」が離婚をするときに適用される、平成20年4月分以降の保険納付に適用される年金分割です。これについては、相手の合意がなくても、年金分割を行うことができます。合意分割は、平成20年3月分以前の年金保険料に関する年金分割で、これについては相手の同意が必要です。
年金分割をするとき、合意分割か3号分割かで手続が変わってきます。合意分割の場合、まずは年金事務所に問合せをして「離婚時年金分割に関する情報通知書」という書類を取得します。そして、年金分割に関する公正証書を作成するか、離婚調停や離婚訴訟、年金分割調停により、調停調書や判決書を入手します。それらの書類を年金事務所に持参したら、年金分割ができます。3号分割の場合には、相手の合意が不要なので、離婚後に自分一人で年金事務所に行き、標準報酬改定請求書という書類を提出したら、年金分割の手続ができます。
6、熟年離婚のポイントその5~慰謝料
熟年離婚では、相手に対する慰謝料請求についても検討する必要があります。
相手が不倫していた場合や、婚姻中にDVを受けていた場合、その他相手に有責性がある場合には、離婚時に相手に対して慰謝料請求をすることができます。
慰謝料請求をするためには証拠が必須なので、相手と離婚協議を始める前に、しっかりと証拠を集めておきましょう。
また、慰謝料相場を調べておくことも大切です。慰謝料額は、婚姻年数が長くなると高額になる傾向があるので、熟年離婚の場合、比較的高額な慰謝料を請求できる可能性があります。たとえば不貞の慰謝料なら300万円を超えることもあるでしょうし、DVの慰謝料も150~200万円以上になることがあります。
7、熟年離婚のポイントその6~離婚後の生活設計
熟年離婚で失敗しないためには、離婚後の生活設計をしっかり立てておくことが重要です。
離婚後の長い人生を、相手からもらった財産分与や慰謝料だけでまかなうことは難しいことが多いからです。また、年金分割により増額される年金額は2~3万円程度までですから、これに頼って生活するわけにもいきません。
そこで、自分でもある程度収入を得る手立てを用意しておかないと、不安を抱えながら生活することになります。
また、離婚後どこに住むのかも重要です。居住地域や居住形態を計画しておきましょう。
たとえば、実家があるなら、実家に戻ることも可能ですし、賃貸物件を借りて一人で暮らす方法もあります。子どもがいたら、同居することもできるでしょう。
8、熟年離婚のポイントその7~子どもとの関係
熟年離婚をするとき、子どもとの関係も無視できません。もし、成人していない子どもがいるなら子どもの親権についても話合いをして決めないといけませんし、養育費の支払いも受ける必要があります。
子どもが成人しているとしても、親が離婚することは、子どもに対して大きな影響を与えます。
子どもが未婚の場合には、子どもの結婚にも影響してしまうかもしれませんし、子どもから離婚を反対される可能性もあります。反対に、子どもが積極的に親の離婚を支援するケースも見られます。
子どもが反対したからと言って離婚をやめておくべきというわけではありませんが、離婚後は家族が子どもだけになることも多いですから、できれば関係を良くしておくことが望ましいです。
そこで、成人している子どもがいるなら、離婚を進める前に、子どもにも一声かけて、理解を求めておきましょう。
9、熟年離婚のポイントその8~離婚専門弁護士に相談する
熟年離婚を有利に進めるためには、まずは離婚時に相手にどのような請求ができるのかを把握して、その知識を前提に、相手とうまく交渉を進めることが必要です。
話合いでは解決できない場合、家庭裁判所で離婚調停を行うことになりますし、それでもまとまらなければ離婚訴訟をすることになります。
その間、各場面で法律的な知識と正確な判断が要求されます。
自分一人で対応していると、どうしても相手のペースになってしまったり、どのように判断したら良いのかわからなかったりして不利になってしまいがちです。そこで、熟年離婚を有利に進めるためには、法律の専門家である弁護士に対応を相談することが重要です。
離婚問題の実績豊富な弁護士であれば、ケースに応じて的確な権利主張を行い、確実に相手に必要な支払をさせることができます。また、離婚後の生活の相談をすることも可能ですし、DV事案などでは身の安全を確保する手段も検討してもらえます。
ベリーベスト法律事務所では、弁護士が離婚の専門チームを組んで、熟年離婚を最大限サポートします。これから配偶者と離婚される場合には、是非とも一度、当事務所までご相談ください。
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