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パワハラでうつ病になってしまった場合に労災保険制度から給付を受ける方法

2018年05月14日
  • 労働条件・ハラスメント
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パワハラでうつ病になってしまった場合に労災保険制度から給付を受ける方法

パワハラを受けたストレスによりうつ病などの精神疾患になってしまった場合、労災保険制度によって一定の補償を受けられる可能性があります。また、場合によっては労災保険制度でカバーされない慰謝料などについても、交渉や裁判を通じて会社に請求することが可能です。
今回は、パワハラに起因するうつ病について労災認定を受けるためのポイントと、労災保険制度を利用して給付を受けるまでに必要な手続きについて、ベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。

1、労災保険制度とは

労災保険制度とは
  1. (1)概要

    労災保険とは、業務災害が発生した場合、すなわち、労働者が業務を原因として傷害、死亡又は疾病(以下「傷病等」)を被った場合に、当該労働者に一定の給付が行われる、労働者保護のための制度です。なお、労災保険は、通勤災害に対しても適用されますが、ここでは通勤災害に関する話は省略します。

    業務災害の発生について、使用者に労働者の安全に配慮する義務の違反などが認められる場合には、使用者に対する民事上の損害賠償請求により損害の回復をはかることも考えらえますが、そのような民事上の損害賠償請求ができない場合であっても、一定の要件を満たせば労働者に一定の給付が行われるのが労災保険制度です。

  2. (2)適用の要件

    もっとも、どんな場合にも労災保険から給付を受けられるわけではなく、問題となっている傷病等が、「業務上」発生したものである必要があります(労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」)7条1項1号)。

    「業務上」と認められるには、まず、業務と傷病等の間に一定の因果関係があること(いわゆる「業務起因性」)が必要です。また、業務災害に対する保険給付は、労災保険が適用される事業に労働者として雇われて働いていることが原因となって傷病等が発生した場合に行われるものですので、傷病等が、労働者が事業主との労働関係のもとにあったときに起きたものといえること(いわゆる「業務遂行性」)も必要です。

    なお、傷病等について、業務によらないものとあわせて複数の原因が考えられる場合でも、業務によるものが相対的に有力な原因であると評価されれば、「業務上」発生したと認められる可能性があります。

  3. (3)給付の内容

    労災保険制度には、①療養補償給付、②休業補償給付、③障害補償給付、④遺族補償給付、⑤葬祭料(葬祭給付)、⑥傷病補償年金、⑦介護保障給付など、様々な給付が用意されています(労災保険法12条の8以下)。

    ①療養補償給付とは、業務災害による傷病等につき、労災保険の指定病院における診察や薬の提供といった必要な療養を自己の費用負担なく受けることができるものです(労災保険の指定外の病院において自己負担で支払った療養費用分の金銭が給付される場合もあります)。

    ②休業補償給付とは、労働者が業務災害による傷病等の療養のために休業し、賃金がもらえない場合に、休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額(原則として当該労働者の1日あたりの平均賃金額)の6割相当額が支給されるものです。これに加えて、休業特別支給金として、同様に給付基礎日額の2割にあたる金額も支給されます。なお、療養開始後1年6ヶ月経過し、業務災害による疾病等が治ゆ(症状固定)しておらず、傷病等による傷害の程度が傷病等級に該当する場合は、傷病補償年金に切り替わります。

    ③障害補償給付とは、業務災害による傷病等が症状固定した後に、労災保険法(施行規則)上の障害等級(1級~14級)に該当する障害が残っている場合に所定の年金又は一時金が支給されるものです。障害等級1級から7級までに該当する場合には年金、8級から14級までに該当する場合には一時金が支給されます。

    ④遺族補償給付とは、業務災害で労働者が死亡したときに遺族に支給される給付です。

    ⑤葬祭料(葬祭給付)とは、業務災害で死亡した人の葬祭を行うときに、遺族に支給される葬儀費用(給付)です。

    ⑥傷病補償年金は、②にあるとおり、療養開始後1年6ヶ月経過し、業務災害による疾病等が治ゆ(症状固定)しておらず、傷病等による傷害の程度が傷病等級に該当する場合に支給される年金です。

    ⑦介護補償給付とは、障害補償年金又は傷病補償年金を受給しており、障害等級・傷病等級が1級である又は2級の精神神経・胸腹部臓器である場合に、現に介護を受けているときに、支給されるものです。

2、パワハラに起因するうつ病の労災認定

パワハラに起因するうつ病の労災認定

労災保険の対象となる病気や障害は身体的なものに限られず、うつ病など一定の精神疾患も「精神障害」として、それが労災保険法のいうところの「業務上」に発生したものである場合には、労災保険の対象となります。

したがって、職場でのパワハラに起因してうつ病を発生した場合、そのうつ病は「業務上」発生したものとして、業務災害と認定される可能性もあります。なお、パワハラとはパワー・ハラスメントの略語で、厚生労働省は「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為」と定義しています。

以下では、パワハラに起因するうつ病について、労災認定を受ける際に重要な3つの要件を解説します。

  1. (1)うつ病の発症

    労働者がうつ病になったことは、労働者側で医師の診断書などによって証明する必要があります。そのため、症状があれば早めに医師の診察を受け、症状や原因となるような状況などについて詳しく医師に伝え、これを診断書やカルテなどの記録に残してもらうよう心がけておいてください。

  2. (2)パワハラの存在

    厚生労働省は、以下の6類型をパワハラの典型例としています(これらがパワハラに当たりうる全ての行為を網羅しているわけではありません)。

    1. 身体的な攻撃
      暴行・傷害
    2. 精神的な攻撃
      脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
    3. 人間関係からの切り離し
      隔離・仲間外し・無視
    4. 過大な要求
      業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
    5. 過小な要求
      業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
    6. 個の侵害
      私的なことに過度に立ち入ること


    症状の原因となりうるパワハラの存在については、事業主や加害者が認めず、労働基準監督署の調査によっても明らかにならないために、労災認定が受けられない場合もありますので、労働者側でも、できるかぎり録音等の証拠を残すようにしましょう。

  3. (3)「業務上」と評価できること

    労働者の発症したうつ病が、前記のとおり「業務上」発生したものと評価されるかが問題になります。
    「業務上」発生したと評価されるためには、具体的には、労働基準監督署の調査に基づき、厚生労働省が定める心理的負荷の基準(「業務による心理的負荷評価表」及び「業務以外の心理的負荷表」)に従って、発病前おおむね6ヶ月間に業務による強い心理的負荷があったと認められること及び業務以外の要因による心理的負荷により発病したとは認められないことが必要であり、また、個体側要因(既往歴など)により発病したとは認められないことも必要です。

3、各種給付を受けるための手続き

各種給付を受けるための手続き
  1. (1)書式の入手方法

    労災保険制度により給付を受けるには、給付の種類に応じた書式や資料を労働基準監督署に提出して申請手続をすることが必要です。

    必要な書式は労働基準監督署または厚生労働省のホームページで入手することができます。

    事業主側で申請手続を行ってくれる場合も少なくないかと思いますが、たとえ事業主からの協力(証明)が得られない場合でも、労働基準監督署は、事業主に協力(証明)を拒否する理由を確認するなどした上で、申請を受理するのが通常です。

  2. (2)療養補償給付を受けるための手続き

    労災指定病院を受診した場合には速やかにその指定病院に「療養補償給付たる療養の給付請求書 業務災害用(様式第5号)」を提出し、指定でない病院を受診した場合には治療費を一旦支払った上で治療費の支出が確定した日から2年以内に「療養補償給付たる療養の費用請求書 業務災害用(様式第7号(1)~(5))」を所轄の労働基準監督署に提出します。

  3. (3)休業補償給付を受けるための手続き

    休業した日の翌日から2年以内に、「休業補償給付支給請求書(様式第8号)」を所轄の労働基準監督署に提出します。

  4. (4)障害補償給付を受けるための手続き

    傷病について医師が「治ゆ」(症状固定)と判断した翌日から5年以内に、医師の作成した診断書とともに、「障害補償給付支給請求書 障害特別支給金 障害特別年金 障害特別一時金 支給申請書 業務災害用(様式第10号)」を所轄の労働基準監督署に提出します。
    診断書の作成費については「療養補償給付たる療養の費用請求書 業務災害用(様式第7号)」を併せて提出することで請求することができます。

  5. (5)遺族補償給付を受けるための手続き

    労働者が死亡した日の翌日から5年以内に「遺族補償年金支給請求書・遺族特別支給金支給申請書・遺族特別年金支給申請書 業務災害用(様式第12号)」、同じく5年以内に「遺族補償一時金支給請求書 業務災害用(様式第15号)」、2年以内に「遺族補償年金 遺族年金 前払一時金請求書(年金申請様式第1号)」を、それぞれ所轄の労働基準監督署に提出します。

  6. (6)葬祭料の給付を受けるための手続き

    労働者が死亡した日の翌日から2年以内に、医療機関作成の死亡診断書とともに「葬祭料請求書 業務災害用(様式第16号)」を所轄の労働基準監督署に提出します。

  7. (7)傷病補償年金を受けるための手続き

    療養開始から1年6か月を経過しても傷病が治っていない場合、所轄の労働基準監督署長の判断で、傷病補償年金の支給のため、「傷病の状態等に関する届」の提出を求められることがあります。
    その場合には、療養開始後1年6か月が経過してから1か月以内に、その段階での傷病の状態について記載された医師の診断書とともに「傷病の状態等に関する届」(様式第16号の2)を所轄の労働基準監督署に提出します。

  8. (8)介護補償給付を受けるための手続き

    介護を受けた月の翌月の1日から2年以内に、初回請求時のみ診断書を添付して、「介護補償給付・介護給付支給請求書(様式第16号2の2)」、「介護に要した費用の額の証明書」を所轄の労働基準監督署に提出します。請求は1ヶ月単位が原則ですが、3ヶ月分までまとめて請求することができます。

4、民事上の損害賠償請求

民事上の損害賠償請求

慰謝料など労災保険制度でカバーされない損害もありますが、これらについては、使用者に対する民事上の損害賠償請求により回復を図ることができる場合もあります。具体的には、使用者に対し、労働契約上の安全配慮義務違反や不法行為責任があると主張して、損害賠償を請求するのが通常です。

もっとも、どのような主張を行うのか、何をもって主張を裏付ける証拠とするのかなど、使用者側の責任を認めさせて損害賠償を得るためには、様々な専門的知識や検討が必要になります。また、症状固定後も残存している後遺症(後遺障害)に対する慰謝料等につき、不法行為責任に基づいて請求する場合には、前記の障害補償給付の申請期限よりも早く、消滅時効が成立してしまうこともあるなど、労災保険給付手続きと民事上の損害賠償請求手続とでは、ルールがいろいろと異なる点にも留意が必要です。

したがって、労働災害については、労災申請を行うのみならず、一度専門家である弁護士に相談しておくことを強くおすすめします。

ベリーベスト法律事務所大阪オフィスでは、労働災害についての民事上の損害賠償請求事件を多数扱っております。民事上の損害賠償請求をお考えの方も、そもそも労災認定を受けられるのか自分では判断できないという方も、ぜひ一度、ベリーベスト法律事務所大阪オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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