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セクハラを原因としたうつ病で労災認定を受ける方法はある?

2023年08月24日
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セクハラを原因としたうつ病で労災認定を受ける方法はある?

令和3年度に大阪府労働相談センターに寄せられた「職場におけるハラスメント相談件数」は1852件でした(「令和3年度 大阪府労働相談統計年報」より)。このうちセクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」と表記します)についての相談は106件です。平成30年度は215件だったことから、セクハラ被害を受ける方は減少傾向にあると考えられますが、令和2年度は68件で、前年度より微増した結果となっています。

うつ病など一定の精神障害については、労働者災害補償保険(労災保険)の給付対象とされています。そのため、職場でのセクシュアルハラスメント(以下「セクハラ」といいます。)でうつ病になってしまった場合も、それが業務に起因するものであると認められれば、労災保険の支給対象となる可能性があります。

本コラムでは、セクハラによってうつ病になってしまったときに労災認定を受ける方法について、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。

1、労災保険とは

まず、労災保険がどのような制度なのかを確認しておきます。
労災保険は、労働者災害補償保険法に基づき、労働者が「労働災害」すなわち業務に起因する傷害、死亡または疾病(以下「傷病等」といいます。)を被った場合に、さまざまな給付を受けられるという、労働者を保護するための制度です。
従業員をひとりでも雇っている事業者は、原則として、労災保険に加入し、保険料を支払う法律上の義務を負います。また、そのような労災保険への加入が義務付けられる事業所(「強制適用事業所」といいます。)において労働災害が発生した場合は、仮に事業者が労災保険への加入手続きを怠っていたとしても、労働者は労災保険による給付を受けることができます。

場合によっては、使用者が「当社では労災が使えない」といった趣旨の発言をするかもしれません。会社が申請してくれないとあきらめてしまう方もいるようです。しかし、労災保険の申請は、本人(もしくはご家族)で行えます。労災保険よる給付を受けられる可能性は十分にあるので、泣き寝入りせず、書類を準備して自ら申請することを検討してください。

2、セクハラによるうつ病でも労災認定を受けられる可能性がある

労災保険の給付対象となる傷病等は、身体的な病気や障害には限られず、うつ病など一定の精神障害についても、それが「業務上」発生したもの(労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」)7条1項1号)と認められるのであれば、労働災害として労災保険の給付対象となりえます。

なお、傷病等が「業務上」発生したと認められるには、業務と傷病等の間に一定の因果関係があること(いわゆる「業務起因性」)および労働者が事業主との労働関係のもとにあったときに傷病等が起きたといえること(いわゆる「業務遂行性」)が必要と解釈されています。
精神障害が労働災害と認定されるための要件については、後で詳しく説明します。

3、労災保険の給付内容

労災保険から受けられる給付のうち、代表的なものをご紹介します。

① 療養補償給付
業務災害による傷病等につき、労災保険の指定病院における診察や薬の提供といった必要な療養を自己の費用負担なく受けることができるものです(労災保険の指定外の病院において自己負担で支払った療養費用分の金銭が給付される場合もあります)。

② 休業補償給付
労働者が業務災害による傷病等の療養のために休業し、賃金がもらえない場合に、休業4日目以降、休業1日につき給付基礎日額(原則として当該労働者の1日あたりの平均賃金額)の6割相当額が支給されるものです。これに加えて、休業特別支給金として、同様に給付基礎日額の2割にあたる金額も支給されます。なお、療養開始後1年6か月経過し、業務災害による疾病等が治ゆ(症状固定)しておらず、傷病等による傷害の程度が傷病等級に該当する場合は、傷病補償年金に切り替わります。

③ 障害補償給付
業務災害による傷病等が症状固定した後に、労災保険法(施行規則)上の障害等級(1級~14級)に該当する障害が残っている場合に所定の年金または一時金が支給されるものです。障害等級1級から7級までに該当する場合には年金、8級から14級までに該当する場合には一時金が支給されます。

④ 遺族補償給付
業務災害で労働者が死亡したときに遺族に支給される給付です。

⑤ 葬祭料(葬祭給付)
業務災害で死亡した人の葬祭を行うときに、遺族に支給される葬儀費用(給付)です。

⑥ 傷病補償年金
②にあるとおり、療養開始後1年6か月経過し、業務災害による疾病等が治ゆ(症状固定)しておらず、傷病等による傷害の程度が傷病等級に該当する場合に支給される年金です。

⑦ 介護補償給付
障害補償年金または傷病補償年金を受給しており、障害等級・傷病等級が1級であるまたは2級の精神神経・胸腹部臓器である場合に、現に介護を受けているときに、支給されるものです。

4、セクハラに起因するうつ病について労災認定を受けるには

傷病等について労災認定がされるためには、その認定基準を満たさなければならず、うつ病などの精神障害についても例外ではありません。具体的には、厚生労働省は、次の3つの要件を満たす場合に、精神障害について労災認定を受けることができるとしています。

  1. ① 労災認定の対象となる精神障害を発病していること
  2. ② 精神障害の発病前おおむね6か月間に業務による強い心理的負荷があったこと
  3. ③ 業務以外の心理的負荷や労働者の個体側要因により発病したものではないこと


以下、詳しく説明します。

  1. (1)労災認定の対象となる精神障害があること

    どのような精神障害でも労災認定の対象とされているわけではなく、うつ病のほか、気分障害や統合失調症、ストレス関連障害やパーソナリティー障害などが、労災認定の対象とされています。
    ただし、うつ病など労災認定の対象となる精神障害の発生については、医師の診断書等によって証明される必要があります。
    以下では、うつ病を例に説明します。

  2. (2)精神障害の発病前おおむね6か月間に業務による強い心理的負荷があったこと

    セクハラに起因するうつ病について労災認定を受けるには、発病前おおむね6か月間に業務による強い心理的負荷があったと認められる必要があります。

    労働基準監督署の調査に基づき、発病前おおむね6か月間に起きた業務による出来事について、厚生労働省が定める「業務による心理的負荷評価表」により「強」と評価されれば、「発病前おおむね6か月間に業務による強い心理的負荷があった」と認められます。そして、「業務による心理的負荷評価表」における「特別な出来事」に該当する出来事が認められた場合にはその心理的負荷は「強」と評価されます。また、「特別な出来事」に該当しなかった場合でも、出来事ごとの総合評価や複数ある出来事の全体評価によって、心理的負荷が「強」と認められる可能性があります。
    なお、セクハラの場合など、発病の6か月以上前から発病まで出来事が継続していたような場合には、その開始時点から発病までの心理的負荷が評価されます。
     セクハラにおける心理的負荷の評価について、以下具体的に説明します。

    「特別な出来事」とは
    性的暴行や、本人の意思を抑圧して行われたわいせつ行為などのセクハラを受けた場合は、「特別な出来事」があったとして、心理的負荷は「強」と評価されます。

    「特別な出来事」がない場合
    特別な出来事がない場合にも、以下のような事情を総合的に考慮して、「強」と評価される心理的負荷があったか判断されます。
    ■ セクハラの内容・程度
    ■ セクハラの継続する状況
    ■ セクハラに対する会社の対応の有無および内容、改善状況
    ■ 職場での人間関係

    では、心理的負荷が「強」と評価される具体例はどのようなものでしょうか。
    ■ 胸や腰を触られた
    胸や腰などを触られることが、1回限りではなく継続的にあった場合や、会社に相談しても適切な対応がなく改善されなかった場合などには、心理的負荷が「強」と評価されると考えられます。

    ■ 性的な発言があった
    性的な発言については、それが継続的に行われ、かつ、発言の中に人格を否定するようなものを含んでいたり、会社がセクハラを把握しながら適切な対応をせず改善されなかったりした場合には、心理的負荷が「強」と評価されると考えられます。

  3. (3)業務以外の心理的負荷や労働者の個体側要因により発病したものではないこと

    さらに、うつ病などの精神障害で労災認定を受けるためには、業務以外の心理的負荷や労働者の個体側要因により発病したものではないことが必要です。業務以外の心理的負荷としては、家庭の事情や友人・恋人との関係での問題など、個体側要因としては、精神障害の既往歴やアルコール等への依存などが挙げられ、これらが原因となって発病したと認められる場合には、労災認定を受けることができません。
    もっとも、業務以外の心理的負荷や個体側要因が発病の原因といえるかどうかは、慎重に判断されますので、業務によるもの以外に原因が考えられるからといって、すぐに諦める必要はありません。

5、労災申請の流れ

セクハラに起因するうつ病について労災認定を受けようとする場合、労災認定のための申請書を作成して労働基準監督署へ提出する必要があります。そして、その前提として、セクハラによりうつ病になったことを証明できるよう、医師による診断書などを用意することも必要です。
申請書を提出すると、通常、労働基準監督署による調査が行われ、その結果、前記4で述べた3つの要件を満たすと認められた場合に、労災認定がされることになります。

  1. (1)医師に診断書を作成してもらう

    うつ病で労災認定を受けるためには、セクハラによってうつ病になったことが、医師の診断書などによって証明される必要があります。そのため、症状があれば早めに医師の診察を受け、通院先の医師に診断書の作成を依頼するようにしましょう。また、原因となるような状況などについても詳しく医師に伝え、これをできるかぎりカルテなどの記録に残してもらうようにしてください。

  2. (2)労災の申請書を作成する

    労災申請のためには申請書を作成する必要があります。
    書式は次の厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。

    ■厚生労働省:労働災害が発生したとき

    申請手続きについては、会社(事業主)が行ってくれる場合も少なくないかと思いますが、たとえ会社の協力や証明が得られない場合でも、労働基準監督署は、会社に協力や証明を拒否する理由を確認するなどした上で、申請を受理するのが通常です。
    なお、労働基準監督署の調査などにおいて、会社や加害者がセクハラの存在自体を認めないということも十分考えられますので、セクハラを証明するための資料は、できるだけたくさん集めておきましょう。セクハラを録画や録音したものはもちろん、メールやメモ、手帳や日記なども証明資料になりうるため、一見必要なのか分からないものでも保存しておくようにしましょう。

  3. (3)労基署に申請書を提出する

    申請書が作成できれば、管轄の労働基準監督署に対し、診断書等の資料とともに申請書を提出します。申請書を提出すると、労働基準監督署による調査が開始されます。
    調査においては、申請者や関係者などに聞き取り調査が行われたり、症状などについて医療機関への照会が行われたりします。
    そして、調査の結果、前記4で述べた3つの要件を満たし、「業務」上のセクハラによってうつ病を発症したと認められると、うつ病について労災認定がなされるのです。

6、まとめ

職場で受けたセクハラが原因でうつ病になってしまったら、労災認定を受けることを検討してください。もし会社が対応してくれなかったとしても、専門家に依頼する必要はありません。個人で書類を用意して準備すれば申請することが可能です。書類の書き方などは労働基準監督署(労基署)へ問い合わせれば詳しく教えてくれるでしょう。

労災が認定されれば、労災保険から給付金をもらいながらじっくり療養できます。もし療養中や療養から復帰したあとに、退職勧奨を受けたり労働条件の不利益変更がされたりした場合は、弁護士へ相談することを強くおすすめします。証拠があれば法的に対処できる可能性があるためです。ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスでは、不当な待遇などに悩まれている方をサポートします。まずはお気軽にお問い合わせください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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