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労働契約の不履行について。 賠償予定の禁止事項やその例外ケース

2021年09月15日
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労働契約の不履行について。 賠償予定の禁止事項やその例外ケース

企業の将来を担う人材を育成するために、海外留学などの費用を企業が負担して行う社内留学制度などを整備している企業もあります。企業が負担する費用には、渡航費、滞在費、授業料などさまざまなものがあり、留学期間によっては高額な費用を負担しなければなりません。

企業としては、海外留学を利用した従業員には、長く勤めてもらいたいことから、留学にあたって一定期間内に自己都合で退職した場合には、留学費用を返還するなどの約束をすることがあります。このような約束は、労働基準法16条の賠償予定の禁止との関係で問題はないのでしょうか。

今回は、労働契約の不履行として賠償予定の禁止条項やその例外などをベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。

1、労働契約とは?

労働契約の債務不履行について説明する前提として、そもそも労働契約とはどのような契約なのでしょうか。以下では、労働契約に関する基本的な事項について説明します。

  1. (1)労働契約とは何か

    労働契約とは、使用者の指揮命令下で包括的に労務を提供し、その対価として使用者が賃金を支払う関係を基礎とする契約のことをいいます。労働契約法では、労働契約が何かという定義規定は置かれていませんが、労働契約法6条では、「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」として、労働契約が労働の対価として賃金を支払うことを骨子とした契約であることを定めています。

  2. (2)労働契約の成立要件

    労働契約は、書面によることは要求されない諾成契約ですので、口頭による合意や黙示による合意でも成立します。しかし、労働条件に関する争いを防止するためにできる限り書面によって確認することが要求されています(労働契約法4条2項)。

    なお、多くの企業では、個別の労働契約で労働条件を詳細に定めることはせずに、就業規則に統一的労働条件が定められ、これが労働者に周知されて労働契約の内容になることが多いです。

  3. (3)労働条件の明示義務

    労働契約の締結に際して、使用者は、労働者に対して、賃金・労働時間その他の労働条件を明示する義務があります(労働基準法15条1項)。明示すべき事項については、労働基準法施行規則5条1項に列挙されていますが、そのうち、書面の交付による明示が義務付けられているのは、以下の6つの事項です。

    • ① 労働契約の期間に関する事項
    • ② 期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
    • ③ 就業場所および従事すべき業務に関する事項
    • ④ 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇ならびに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
    • ⑤ 賃金の決定、計算および支払い方法、賃金の締切りおよび支払い時期並びに昇給に関する事項
    • ⑥ 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

2、労働契約を破ると違約金を払う必要があるの?

労働者が使用者との労働契約について契約不履行があった場合には、労働契約で定められた違約金を支払う必要があるのでしょうか。これは、賠償予定の禁止を定めた労働基準法16条との関係で問題となります。

  1. (1)賠償予定禁止の趣旨

    労働基準法16条は、「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」として、損害賠償額の予定を禁止しています。違約金とは、労働者が労働契約上の義務を履行しない場合に、損害発生の有無に関わらず支払い義務を負う金銭のことです。

    当事者間の交渉力に格差のある労働契約関係においては、労働者が使用者に与えた損害について過大な賠償額を予定されたり、契約期間途中の退職に多額の違約金が定められることによって、労働者が自由に退職をすることができなくなってしまいます。このような弊害に対処するために規定されたのが労働基準法16条です。

    もっとも、禁止されるのは、違約金を定めるなどの賠償予定であり、実際に損害が生じた場合に、使用者が労働者に損害賠償請求をすること自体は禁止されていません

  2. (2)研修・留学費用返還義務と賠償予定の禁止

    違約金との関係で問題となるのが、「研修終了後、一定の期間を経ずに退職した場合には研修・留学費用の返還を求める」とする規定の有効性です。

    企業が費用を負担して労働者に研修や海外留学を行わせた場合、資格取得や留学終了後すぐに転職されては、当該企業にとっては労働者に研修や留学をさせた意味がなくなります。

    そこで、研修・留学後の勤務継続を確保するために一定期間内に退職した場合は、労働者に研修・留学費用の返還を義務付けている企業も少なくありません。

    このような、研修・留学費用返還規定は、以下のような基準に着目して有効性が判断されます

    ① 研修・留学費用に関する労働契約と区別した金銭消費貸借契約の有無
    労働契約と区別した金銭消費貸借契約が存在すれば、労働契約の不履行性が薄まります。

    ② 研修・留学参加の任意性・自発性
    研修・留学参加の任意性・自発性があれば業務性が薄まります。

    ③ 研修・留学の業務性の程度
    企業にとっての業務であればその費用は当然企業が負担すべきですので労働者の返還義務は否定されることになります。他方、業務性がないまたは希薄な場合で、労働者本人にとって有益な教育訓練機会である場合には、本来労働者自身が負担すべき費用を使用者が貸与したと評価されやすくなります。

    ④ 返還免除基準の合意理性
    貸与額を勘案しつつ、免除されるための勤続期間が不当に長くないかなどが考慮されます。

    ⑤ 返済額・方式の合理性
    貸与額以上の返還を命じる場合には当然に労働基準法16条違反となります。また、分割返済を認めるなど返還の態様が相当であるかが考慮されます。

3、労働契約の不履行についての実際の事例

労働契約の不履行と違約金との関係が問題になった実際の事例としては、以下のものが挙げられます。

  1. (1)東京地裁令和3年2月10日判決

    この事案は、みずほ証券株式会社が社内公募制度を利用して海外留学をした労働者に対して留学費用の返還を求めた裁判です。裁判では、帰国後5年以内に自己都合退職をした場合に留学費用を返還する内容の誓約書を締結していたため、この合意の有効性が問題となりました。

    裁判所は、会社と労働者との合意は、5年間の勤務で返済を免除する特約付の消費貸借契約であると認定した上で、本件合意は労働基準法16条には違反しないと判断しました。その結果、会社側の請求を認め、労働者に対して約3045万円の支払いを命じました。

  2. (2)東京地裁平成10年9月25日判決

    留学費用の返還合意の有効性が争点となった事案です。裁判所は、以下のように判断し、本件留学規定は労働基準法16条に違反するとしました。

    • 海外留学が、就業規則としての性質を有する留学規程に基づく業務命令により出されたものである
    • 業務と関連性の強い学科の専攻を命じられ、留学期間中の待遇も勤務している場合に準じて定められているため、業務性を肯定できる
    • これらを考慮すると、留学費用を全額返還させる旨の規定は、制裁の実質を有する
  3. (3)東京地裁平成9年5月26日判決

    社員留学制度において「帰国後一定の期間を経ずに退職した場合は費用の返還を求める」との契約の有効性が争点となった事案です。裁判所は、留学費用返還債務が労働契約の不履行によって生じるものではなく、労働契約法16条には違反しないと判断しました。

    • 留学生への応募は社員の自由意思によるもので業務命令に基づくものではない
    • 誓約書によって一定期間原告に勤務した場合には返済を免除する旨の特約付の金銭消費貸借契約が成立していると解するのが相当である

4、会社とトラブルになる前に、弁護士へ相談

労働契約の解釈をめぐって疑問が生じた場合には、会社とトラブルになる前に弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)労働契約内容を正確に判断してもらえる

    労働契約の締結にあたっては、労働者保護の観点から、労働基準法によって賠償予定の禁止が規定されています。

    先述のとおり、海外留学などの費用の返還を巡っては、労働基準法が禁止する賠償予定にあたるかどうかについて、裁判例でも判断が分かれています。これは、具体的な事情によっては有効になるものと無効になるものがあるということであり、留学費用などの返還を求めることが一律無効となるわけではありません。

    そのため、海外留学にあたって会社と誓約書や雇用契約書を交わしている場合には、このような契約内容の有効性について疑問を抱く労働者もいるでしょう。労働契約の有効性については、非常に専門的な判断が必要になりますので、一度弁護士に相談をしてみるとよいでしょう

  2. (2)トラブルが生じた場合の交渉を依頼できる

    弁護士に相談をすることによって会社とトラブルになる前に解決することができる場合があります。しかし、場合によっては会社とトラブルになることが避けられないケースもあります。企業と労働者では、交渉力などの点からみても圧倒的に労働者が不利な立場にあります。そのため、労働者個人では、会社と対等に交渉を進めることは難しいといえます。

    そのような場合には、弁護士を代理人として交渉を委任することによって、法的観点から適切な交渉を進めることが可能になります。

5、まとめ

海外留学などの費用の返還を巡っては、会社からの高額な返還請求が認められた裁判もあります。そのため、会社を退職する際には、費用の返還に関する会社との合意が有効であるかについて、弁護士に相談をしてから退職を決断するのが安心です。

雇用契約の解釈で疑問が生じた場合には、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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