家賃滞納で強制執行する流れ|滞納発生から解決までわかりやすく解説

2022年09月29日
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家賃滞納で強制執行する流れ|滞納発生から解決までわかりやすく解説

賃貸物件を所有している賃貸オーナー等の方は、賃借人による家賃滞納などの問題でお悩みの方も少なくないでしょう。賃借人による家賃滞納の状態が続けば、収益状況も悪化してしまいますので、早めに対策を講じる必要があります。

家賃を滞納する賃借人に対しては、賃貸物件の明け渡しを求めていくことになりますが、任意で明け渡しをしてくれない方に対しては、強制執行の申し立てが必要になることがあります。明け渡しの強制執行とはどのような手続きで、どのような流れで進んでいくのでしょうか。

今回は、家賃滞納で強制執行をする流れについて、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。

1、明け渡しの強制執行とは

明け渡しの強制執行とはどのような手続きなのでしょうか。以下では、明け渡しの強制執行の概要について説明します。

  1. (1)明け渡しの強制執行とは

    明け渡しの強制執行とは、土地や建物を不法に占有している人を強制的に退去させる手続きのことをいいます。

    家賃を滞納している賃借人に対しては、家賃滞納を理由に賃貸借契約を解除することができますが、賃貸借契約を解除しても自主的に建物を出て行ってくれないことがあります。

    また、賃貸借契約の解除によって、賃借人は不法占拠者になりますが、大家の方等が建物のカギを勝手に変えたり、建物内の荷物を処分したりすることは自力救済の禁止の原則により原則として違法となりますので、任意に退去しない家賃滞納者を建物から追い出すためには、必ず明け渡しの強制執行という手続きをとる必要があります。

  2. (2)強制執行の申し立てをするまでに必要となる手続き

    家賃滞納者が任意に退去をしてくれないというだけでは、強制執行をすることはできません。明け渡しの強制執行をするためには、その前提として、以下のような手続きを行う必要があります。

    ① 賃貸借契約の解除、明け渡しの交渉
    賃借人による家賃の滞納が発生した場合には、滞納している家賃の支払いを求めていきます。それでも家賃の支払いがなく家賃の滞納が数か月間にも及ぶ場合には、内容証明郵便を利用して賃貸借契約の解除通知を送り、建物の明け渡しを求めます。
    明け渡しの交渉をせずにいきなり裁判を起こすこともできますが、任意で建物を明け渡してもらえる可能性もありますので、まずは賃借人と話し合いをしてみるとよいでしょう。

    ② 建物明渡請求訴訟の提起
    賃借人が任意に建物の明け渡しをしてくれない場合には、裁判所に建物明渡請求訴訟を提起します。家賃滞納の場合には、賃貸借契約解除の有効性が争点となりますので、賃貸借契約書や解除通知書などの証拠を提出して、解除の有効性を主張立証していくことになります。

    ③ 判決
    当事者双方からの主張立証を踏まえて、最終的に裁判官が建物の明け渡しの可否を判断します。建物の明け渡しを認める裁判所の判決が確定すれば、明け渡しの強制執行の手続きを行うことができます。

2、強制執行の申し立てから解決までの流れ

建物の明け渡しの強制執行の申し立てから解決までは、以下のような流れで進んでいきます。

  1. (1)強制執行の申し立て

    建物の明け渡しの強制執行するためには、不動産の所在地を管轄する地方裁判所の執行官に、不動産明け渡しの強制執行の申し立てをする必要があります

    不動産明け渡しの強制執行の申し立てにあたっては、以下の書類が必要になります。

    • 債務名義の正本(確定判決の正本等)
    • 執行文
    • 送達証明書


    強制執行の申立後は、執行官との間で強制執行の方法などについて打ち合わせを行います。

    明け渡しの強制執行では、対象物件から賃借人の荷物を搬出・保管、鍵の開錠・取り換えなどを行う必要がありますので、それらを行ってくれる業者(執行補助者)を手配する必要があります。執行官との打ち合わせでは、執行補助者としてどの業者を利用するかなどが確認されます。

  2. (2)明け渡しの催告

    執行官との打ち合わせによって決まった明け渡しの催告日に、執行官と一緒に対象物件のある場所に行くことになります。

    明け渡しの催告とは、対象物件の占有状況の確認をし、引き渡し期限と強制執行の実施日を賃借人に伝える手続きです。通常は、これらの内容を記載した公示書を物件内の分かりやすい場所に貼り付ける方法で行います。

    明け渡しの催告の日程は、強制執行の申し立てのあった日から約2週間後の日が指定されますまた、明け渡しの催告で指定される引き渡し期限は、明け渡しの催告から1か月を経過した日が指定されます

  3. (3)明け渡しの断行

    引き渡し期限の数日前に「明け渡しの断行」という手続きを行います。明け渡しの断行とは、対象建物内の家財道具などを運び出し、賃借人の占有を排除して、賃貸人に対して建物を引き渡す手続きのことをいいます。

    明け渡しの断行日には、強制執行の申し立てをした債権者(または代理人)、執行官、執行補助者が対象物件のある場所に行くことになります。当日は、執行補助者によって対象物件内に残されている家財道具などが運び出され、鍵の交換が行われて明け渡しの手続きは完了となります。

    明け渡しの断行日までに賃借人が荷物をまとめて任意に明け渡しをしてくれた場合には、明け渡しの断行することなく明け渡しの手続きは完了となります。

3、滞納している家賃や強制執行の費用はどうなる?

家賃滞納を理由に建物の明け渡しをする場合には、滞納している家賃はどうなってしまうのでしょうか。また、明け渡しの強制執行をする場合にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。

  1. (1)滞納家賃についても強制執行で回収可能

    家賃の滞納を理由に建物の明け渡しを求める場合には、建物明渡請求訴訟の提起と一緒に未払い賃料請求訴訟も提起するのが一般的です。

    裁判所での審理の結果、未払い賃料の支払いを命じる判決が言い渡され、判決が確定した場合には、賃借人の財産を対象として、財産の差押えなどの強制執行を申し立てることができます。

    しかし、家賃を滞納している賃借人は、強制執行の対象となる目ぼしい資産がないこともありますので、滞納家賃の回収が難しいこともあります。

  2. (2)明け渡しの強制執行の費用

    明け渡しの強制執行は、申立時に予納金というお金を支払う必要があります。予納金の金額は、申し立てをする裁判所や相手方、物件数によって変動することになりますが、相手方が1人の通常のケースでは、6万円から7万円程度の費用がかかります。

    また、明け渡しの断行となった場合には、荷物の運び出しや保管をしてくれる専門業者を頼まなければならず、その費用についても申立人である賃貸人が負担しなければなりません。

    運搬・保管費用としては、物件の広さや荷物の量によって変わってきますが、数十万円程度の費用がかかる可能性があります。賃借人が期限内に荷物を受け取らない場合には、それらを処分する必要がありますが、処分費用についても賃貸人の負担となります

    さらに、賃借人が不在の場合には、鍵の開錠が必要になり、明け渡し後は鍵の交換が必要になってきます。これらの費用としては、数万円程度を要することになります。

    このように、明け渡しの強制執行をするためには、多額の費用を要することになりますので、費用対効果を考えて検討する必要があります。

4、明け渡しの強制執行の相談は弁護士へ

建物の明け渡しをお考えの方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)任意に明け渡してくれる可能性が高まる

    家賃を滞納する賃借人に対して、賃貸人が「出て行ってくれ」といっても対応してくれないことがあります。

    しかし、このような場合でも弁護士が対応することによって、相手に対してプレッシャーをかけることができ、任意に明け渡してくれる可能性が高くなります。建物を任意に明け渡してくれれば、建物明渡請求訴訟の提起、明け渡しの強制執行の申し立てといった手続きが不要になり、高額な費用負担も免れることができます。

    賃借人との交渉によって、明け渡しを求めていくこともできますので、個人での対応が難しいと感じる方は、まずは弁護士に相談をするとよいでしょう

  2. (2)裁判や強制執行の手続きをすべて任せることができる

    賃借人が任意に建物の明け渡しをしてくれない場合には、賃借人に対して建物明渡請求訴訟を提起しなければなりません。訴訟では、賃貸借契約の終了原因をめぐって争いになることがありますので、訴訟手続きや賃貸借契約についての知識や経験がなければ適切に対応することができません。

    また、明け渡しを認める判決を獲得することができた場合には、次の段階として明け渡しの強制執行の申し立てをしていかなければなりません。これも複雑な手続きとなりますので、やはり個人だけでは対応が難しいといえるでしょう。

    弁護士に依頼をすれば裁判手続きや強制執行の手続きをすべて任せることができますので、基本的には、ご本人が裁判所に出頭したり、明け渡しのために現地に赴いたりする必要はありません。手続きに要する負担を軽減するためにも弁護士への依頼を積極的に検討するようにしましょう。

5、まとめ

賃借人による家賃滞納が生じている場合には、建物の明け渡しの強制執行を行うことによって最終的に賃借人の占有を排除して、強制退去を実現することができます。

しかし、建物の明け渡しの強制執行が完了するまでには、いくつかの段階を踏む必要がありますので、迅速かつ適切に手続きを進めるためにも弁護士のサポートを受けることが大切です。

賃借人による家賃滞納によって明け渡しの強制執行をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています