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故意に性病を移されたら慰謝料請求できる? 裁判例と併せて解説

2022年11月28日
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故意に性病を移されたら慰謝料請求できる? 裁判例と併せて解説

大阪市によると、2021年の同市内における梅毒感染報告数は、男性が331件、女性319件でした。以前は女性の感染者は少なかったものの(2014年:男性182件、女性14件)、2015年以降は女性の割合が増加し、2021年には男女全体の49.1%となっています。また、男女合計の梅毒感染報告数については、2011年の計57件から2021年の計650件へと、10年間で11倍以上になりました。

男女いずれかが性病(性感染症)に感染した状態で性交渉を行うと、相手に性病を移してしまう可能性があります。もし相手から性病を移された場合には、相手の刑事責任や損害賠償責任を追及できる可能性があるので、お早めに弁護士までご相談ください。

今回は、性交渉によって性病を移す行為に成立する法的責任や、性病に関する過去の裁判例などを、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。

出典:「梅毒 どれくらいのひとが感染しているの?(統計)」(大阪市)

1、性病を移された! 相手に成立する犯罪は?

性交渉の相手に対して性病を移した者については、「傷害罪」(刑法第204条)または「過失傷害罪」(刑法第209条第1項)が成立する可能性があります。

傷害罪・過失傷害罪のどちらか成立するかについては、性病にかかった上で性行為に及んでいることを加害者が認識していたかどうか(故意の有無)、および性病を移したことについて加害者に注意義務違反があるかどうか(過失の有無)によって決まります。

  1. (1)故意の場合|傷害罪

    「傷害罪」とは、他人の生理的機能を害する行為について成立する犯罪です。暴力によって他人を傷害したケースだけでなく、性交渉を通じて性病を移す行為についても、「他人の生理的機能を害する行為」として傷害罪が成立することがあります。

    性病を移す行為について傷害罪が成立するためには、行為者に性病を移すことの「故意」が必要です。

    「故意」とは、犯罪事実の認識・認容を意味し、確定的でなく未必的なものでも足りると解されています。

    かみ砕いて言えば、「性病を移してもしょうがない(まあいいか)」と考えながら避妊具を装着せずに性交渉を行えば、性病を移すことについて(少なくとも未必的な)故意が認められ、傷害罪による処罰の対象となります

    傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。

  2. (2)故意ではなく、過失がある場合|過失傷害罪

    性病を移すことについての故意がなくても、過失がある場合には「過失傷害罪」が成立します。

    「過失」とは、犯罪結果を予見できたにもかかわらず、回避を怠ったことを意味します。
    感染防止対策が不注意によって不十分だったような場合や、自身が性病に感染していることを明確には自覚していないものの、そのことについて不注意が認められるような場合に、過失が認められる可能性があります。過失傷害罪の法定刑は「30万円以下の罰金または科料」です。

    なお、過失傷害罪は親告罪とされているため(刑法第209条第2項)、被疑者を起訴するには被害者などの刑事告訴が必要となります。

2、性病を移された場合に、損害賠償を請求するための要件

性病を移す行為については、犯罪としての刑事責任が発生するだけでなく、民事上の損害賠償責任も発生します。

したがって、性病を移された被害者の方は、相手に対して慰謝料などの損害賠償を請求できる可能性があります。

  1. (1)不法行為の要件を満たすことが必要

    性病を移されたことについて損害賠償を請求するためには、相手の不法行為責任の発生要件を立証することが必要になります(民法第709条)。

    不法行為責任の発生要件は、以下のとおりです。

    ① 故意または過失によって
    性病にかかっていることを認識しつつ、避妊具を装着せずに性交渉を行えば「故意」が認められます。
    また、正しく装着していなかった避妊具が外れてしまって性病を移した場合や、直近で利用した性風俗店で感染した性病を無自覚に移してしまった場合などには「過失」が認められる可能性があります。

    ② 違法に被害者の権利を侵害し
    故意または過失によって性病を移した場合には、被害者の「身体の生理的機能を害されない」という権利を違法に侵害したと言えます。

    ③ 被害者に損害を与えたこと
    性病の治療費や慰謝料などが損害として認められます。


    上記の各要件に照らすと、性病を移されたことについて相手に損害賠償を請求するには、相手の「故意」または「過失」のいずれかを立証できるかどうかがポイントになります。

  2. (2)相手の「故意」を証明するための証拠例

    性病を移したことについて、相手の「故意」を立証するためには、「性交渉の時点で性病に感染していたことを相手が知っていた」ことを示す証拠が必要です

    具体的には、性交渉が行われた時期の直前に、相手が性感染症内科を受診していた事実や、皮膚科や泌尿器科などで性病に感染していると診断されたことを示す証拠があれば、相手の故意を立証する際に有効となるでしょう。

    (例)
    • 性感染症内科の診察券
    • 性感染症内科や皮膚科、泌尿器科などに対する受診履歴の照会結果
    • 性感染症に関する検査結果
    • 性感染症に関する治療薬の処方箋
    • 性感染症内科が発行した領収証
    など
  3. (3)相手の「過失」を証明するための証拠例

    性病を移したことについて、相手に認められ得る「過失」の具体的な内容はケース・バイ・ケースですので、状況に合わせた分析・検討が必要となります。

    一例として、相手が性風俗店で性感染症を移された場合には、以下の証拠が相手の過失を立証するのに役立ちます。

    (例)
    • 性風俗店の利用予約履歴
    • 性風俗店との連絡メール
    • 性風俗店との通話履歴
    • 性風俗店が発行した領収証
    など

3、性病に関する裁判例を紹介

女性に性病を移した男性につき、法律上の責任が認められた過去の裁判例を、刑事・民事のそれぞれにつき、ひとつずつ紹介します。

  1. (1)性病を移した男性に傷害罪が成立した裁判例

    最高裁昭和27年6月6日判決では、男性が性病を感染させる懸念があることを認識しつつ、女性と性交渉を行った結果、女性に性病を移した事案が問題となりました。

    最高裁は傷害罪の成否について、他人の身体の生理的機能を毀損することについて、手段が何であるかは問わず、暴行によらずに病毒を他人に感染させる場合にも成立すると判示しました。

    そのうえで、性病を感染させた行為について傷害罪の成立を認めた原審判決を支持し、被告人の上告を棄却しました。

  2. (2)性病を移した男性の損害賠償責任を認めた裁判例

    東京地裁平成28年6月29日判決では、性病感染歴のある男性が、避妊具を装着せずに女性と性交渉を行った結果、女性に性病を感染させた事案が問題となりました。

    東京地裁は、男性が女性に性病を移したことは、避妊具の使用を怠った男性の過失によるものと認定し、男性に対して30万円の損害賠償の支払いを命じました。

4、性病を移された場合の慰謝料請求は弁護士にご相談を

性交渉のパートナーから性病を移された場合、被害者の方は肉体的・精神的に大きな苦痛を受けてしまうことでしょう。

性病に関する苦痛を少しでも埋め合わせるために、加害者であるパートナーに損害賠償請求することは正当な権利です。

ただし、性病を移されたことにつき、相手に損害賠償を請求するには、相手の故意または過失を立証することが必要です。立証には、故意・過失を裏付ける証拠を集めることが必要となりますが、有効に働き得る証拠は具体的な状況によって異なります

弁護士に相談すれば、どのような証拠を利用し得るのか、アドバイスやサポートが受けられます。

また、損害賠償請求に必要な証拠が揃ったら、実際に交渉や訴訟などを通じて、相手に損害賠償を請求することになります。

損害賠償請求の対応に当たっては、法律に関する専門的な検討が必要となるほか、実際に交渉・訴訟の手続きを行う際には多大な時間と労力を要します

弁護士に一任すれば、法的検討を十分に尽くし、交渉・訴訟などの手続きを一括して任せることが可能です。その結果、適正な損害賠償を獲得できる可能性が高まり、かつ請求に要する時間と労力を節約できる点が大きなメリットです。

性交渉の相手から性病を移されてしまい、損害賠償を請求したい方は、まずは弁護士までご相談ください。

5、まとめ

性交渉の相手から性病を移された場合、慰謝料などの損害賠償を請求できる可能性があります。損害賠償請求に当たっては、相手の故意または過失を示す証拠が必要となるため、証拠収集については、まず弁護士にアドバイスを求めることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスでは、性病を移されたことに関するトラブルや、離婚・不倫などの男女問題に関するトラブルなどにつき、法律相談を随時受け付けております。相談者様の立場に寄り添って、弁護士が問題解決に向けて親身になってサポートいたします。

パートナーから故意に性病を移されて法的手段をお考えの方、パートナーに対して治療費や慰謝料の損害賠償を求めたい方は、まずは一度ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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