コスプレは法律に違反する? 著作権の問題についてポイント解説
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井上信治クールジャパン戦略担当相は、令和3年1月29日の記者会見で、アニメやゲームのキャラクターに扮するコスプレに関して、著作権トラブルなどの法的問題が生じないためのルール整備が必要であるとの考えを示しました。
井上氏は、「コスプレ文化をさらに盛り上げていくためには、関係者が安心して楽しむことができる環境が重要である」と強調し、民間の二次利用ガイドラインを参考にしながら、年度内に政府がルール整備を行う方針であるとしました。
もっとも、このようなルール化がなされていない現状でも、既存のキャラクターなどに扮するコスプレは、著作権侵害になる可能性があります。イベントなどでコスプレイヤーが活躍する機会も増えてきていますので、著作権法上のルールをきちんと守ったうえでコスプレを楽しむことが重要です。
今回は、コスプレと著作権法との関係について、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。
1、コスプレを楽しむことは著作権侵害になりえるのか
好きなキャラクターの衣装を自分で制作してコスプレを楽しんでいる方もいるでしょう。ゲームやアニメのキャラクターの衣装を制作することは、著作権法上どのような問題があるのでしょうか。
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(1)キャラクターの衣装デザインが著作物といえるか
著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と定義されています(著作権法2条1項1号)。
アニメやゲームのキャラクター自体は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」に該当しますので、問題なく著作物に該当します。キャラクターが着用している衣装についてもキャラクターを構成する要素の一部といえますので、キャラクターの衣装デザインも著作物として著作権法上の保護が及ぶものと考えられます。
もっとも、キャラクターデザイン自体が創作的なデザインでない場合には、著作権法上の著作物には該当しません。そのため、当該デザインを使用してコスプレ衣装を作成したとしても、著作権侵害行為には該当しません。あくまでも、元のデザインに著作権が認められる場合に限り、著作権法上の問題が生じることになります。 -
(2)衣装の制作は複製権・翻案権侵害の可能性あり
複製権とは、著作物を印刷、写真撮影するなどあらゆる方法で複製する権利のことをいいます(著作権法21条)。アニメやゲームのキャラクターの衣装を制作する行為は、著作権者の複製権を侵害する可能性があります。
また、翻案権とは、著作物を翻訳、変形、脚色などの方法によって、二次的著作物を制作する権利のことをいいます(著作権法27条)。
アニメやゲームのキャラクターの衣装を制作する際に、元のデザインを真似しながら、一部に改変を加えたとしても、翻案権侵害に該当する可能性があります。少しデザインを変えれば大丈夫というわけではありませんので、注意が必要です。 -
(3)私的複製・私的翻案であれば問題なし
コスプレ衣装の制作が、複製権や翻訳権の侵害に該当するのであれば、自作の衣装でコスプレを楽しむことのすべてが著作権侵害になってしまうようにも思えます。
しかし、複製権・翻案権については、著作権法上例外があり、私的使用のための複製や翻案については、著作権法に違反することはありません(著作権法30条、47条の6)。私的使用とは、「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」をいいますので、自作したコスブレ衣装を着用して自宅で楽しむ分には、何ら問題はありません。
ただし、「家庭内その他これに準ずる限られた範囲内」は、制限的に解釈されていますので、コスプレイベントでの使用を目的としてコスプレ衣装を制作することは、私的使用の範囲外といえるでしょう。
2、コスプレを動画配信や写真投稿などをすることは問題ないのか
ゲームやアニメのキャラクターの衣装を制作することは、上記のとおりですが、コスプレの動画や写真をインターネット上で公開する行為は著作権法上どのような問題があるのでしょうか。
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(1)インターネット上で公開する行為は公衆送信権侵害の可能性あり
自作のコスプレ衣装の完成度が高かった場合には、それを着用して撮影したコスプレ動画や写真をインターネット上で公開したくなるという気持ちも理解できます。しかし、インターネット上でコスブレ動画や写真を公開することは、公衆送信権侵害の可能性があります。
公衆送信権とは、インターネットやテレビなどで著作物を送信する権利のことをいいます(著作権法23条)。著作権者以外の方は、著作物をインターネット上に公開する権利はありませんので、コスプレ動画や写真をインターネット上に公開することは、この公衆送信権を侵害する可能性があるのです。
公衆送信権侵害については、複製権や翻案権のように私的使用の例外規定はありませんので、自分だけで楽しむ目的でSNSなどにアップしたとしても公衆送信権侵害の可能性はあります。 -
(2)営利目的でイベントに参加することは上演権侵害の可能性あり
上演権とは、演劇のように著作物を大勢の人に見せたり聞かせたりする権利のことをいいます(著作権法22条)。コスプレイヤーの方は、イベントなどに参加して、観衆にコスプレを見せたり、撮影をさせたりすることがあります。
上演権については、「営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合」には例外的に上演権侵害にはならないとする規定があります。
そのため、営利目的でイベントに参加した場合には、上演権侵害となる可能性もあります。
3、コスプレと商売・販売について
大手ゲーム会社の任天堂が同社の人気ゲームソフトの“マリオカート”のキャラクターコスチュームを使用してカートで公道を走行することができるサービスを提供する業者に対し、知的財産権侵害を理由に差止請求などを求める裁判を起こしました。いわゆる「マリカー訴訟」と呼ばれる裁判ですが、令和2年12月24日、最高裁判所が上告を不受理としたことによって、任天堂側の勝訴が確定しました。
任天堂側は、以下の内容などから著作権法及び不正競争防止法違反であると主張しました。
- ① “マリオ”などのキャラクター衣装のレンタルサービスは貸与権侵害であること
- ② 同衣装は著名な商品等表示であること
裁判所は、上記2ポイントについて以下のように判断し、任天堂の請求を一部認容しています。
- ①の著作権の点については判断することを回避
- ②の不正競争防止法違反を認定
「マリカー訴訟」では、著作権法違反について正面から判断がなされてはいませんが、キャラクター衣装を用いたサービスが不正競争防止法違反になることを認めた点には、重要な意義のある判決です。
不正競争防止法に基づく差止請求が認められるためには、コスプレ衣装が特定の事業者の商品またはサービスを示すものであることが広く認識されている場合に限られます。アニメやゲームのキャラクター衣装が広く認識されている場合には、そのコスプレ衣装の使用や譲渡が不正競争防止法違反になる可能性がありますので注意が必要です。
4、コスプレに関して、法的トラブルは弁護士へ相談
コスプレに関して法的トラブルが生じた場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)著作権違反の有無を確認できる
コスプレは、いまやオタク文化から脱却して、みんなで楽しむことができる娯楽として急速に普及してきました。誰でも気軽にアニメやゲームのキャラクターに扮することができるのもコスプレ文化の魅力といえます。
コスプレは、私的領域で楽しむ分には特に問題はありませんが、インターネットの発展に伴いコスプレ写真や動画をSNSなどインターネット上に公開する方も増えてきました。著作者が黙認していることもあり、大きな問題とはなっていませんが、実際には、著作権違反に該当する事案も少なくありません。
コスプレを楽しむためには、著作権違反にならない範囲でコスプレをすることが重要です。どの程度のコスプレであれば問題ないかについては、専門的な判断を要する事項になりますので、不安がある方は弁護士に相談をしてみるとよいでしょう。 -
(2)著作権者から連絡がきた場合の対応が可能
著作権違反のコスプレをしていると、著作権者からコスプレを止めるよう求める連絡が来ることがあります。著作権違反に該当するかどうかは、当該コスプレが著作権者の権利を侵害しているかどうかによって判断することになりますが、程度問題であることもあります。
著作権違反に該当する場合には、著作権者の請求に応じて適切に対処することによって、問題を大きくする前に解決することができます。また、仮に、著作権侵害にあたらないのであれば、具体的な事実を挙げてきちんと反論をすることも必要です。
さらに、最近では、本来の著作権者ではない方から著作権侵害の主張を受けるという著作権詐欺の被害が増えてきているため、注意しなくてはなりません。たとえば、YouTubeでは、詐欺師が著作権侵害を主張すると、動画投稿者が異議申し立てをしなければ、広告収益が詐欺師のもとに支払われることになってしまいます。
著作権者および著作権侵害を主張する詐欺師などから連絡が来た場合には、ご自身で対応する前に、一度弁護士に相談してみましょう。
5、まとめ
コスプレと著作権の問題については、コスプレが広まることによって作品の認知度が上がることもあり、著作権者が問題にすることが少なかったため、著作権違反が取り上げられることも少なかったといえます。
しかし、マリカー訴訟のように大々的に違法な著作権侵害がなされた場合には、著作権者から訴訟を提起されるなどのリスクがあります。
安全にコスプレを楽しむためにも、著作権に関する不安を解消することが重要です。著作権に関するお悩みについては、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています