婚約破棄で慰謝料請求できる? 請求の条件と具体的な金額事例
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大阪市が公表している人口動態統計によると、令和元年の大阪市内の婚姻数は、1万8463件でした。同年の婚姻率(人口千対)は、6.7%であり、全国の婚姻率の4.8%を大きく上回っています。
このように大阪市内では、毎年多くの男女が婚姻届を提出して、夫婦になっていますが、なかには婚約をしたにもかかわらず、婚姻届提出直前で婚約破棄になってしまった方もいるでしょう。
婚姻に向けて準備をしていた相手と婚約破棄になると、精神的ショックも非常に大きなものとなります。婚約相手に何らかの原因があって婚約破棄に至った場合には、相手に対して慰謝料などの損害賠償請求をしたいと考えるのは当然のことです。
今回は、婚約破棄で慰謝料をもらうことができるのかについてベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。
(参考:人口動態統計 令和元年までの動向(大阪市))
1、婚約破棄とは? 婚約解消との違い
婚約破棄と聞けば、婚約した者同士で取りやめるというイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。まずは、婚約破棄とは何かについて解説します。
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(1)そもそも婚約破棄とは
婚約破棄とは、婚約成立後に、当事者の一方からの申し出により婚約を取りやめることをいいます。
そもそも、婚約とは、男女の間で、将来婚姻をする約束をすることをいいます。婚姻する場合には、婚姻届を市区町村役場に提出する必要がありますが、婚約の場合には、そのような特別な様式は必要とされていません。
そのため、婚約が成立しているかどうかについては、- 婚約指輪の購入
- 結納金の授受
- 寿退社をした
- 妊娠
- 式場、新婚旅行、新居の準備など
- 両親との顔合わせをした
- 双方の知人や友人に婚約者として紹介した
などの客観的事情も含めて判断されます。
慰謝料請求の際には、こうした第三者が証明できる客観的事実が大変重要になります。
なお、婚約も契約の一種ですので、当事者は、将来婚姻することに向けてお互いに誠実に努力をする義務を負います。しかし、婚約には、婚姻自体を強制する効力まではありませんので、当事者の意思によって婚約を破棄するということも可能です。 -
(2)婚約破棄が起きるケースとは
婚約破棄が起きる代表的なケースとしては、以下のものが挙げられます。
① 婚約者が別の異性と浮気をしたケース
婚約者が自分以外の第三者と浮気をして、肉体関係を持っていたことが判明した場合には、相手のことが信頼できなくなります。将来婚姻をして、何十年もの間夫婦としてやっていくことになるにもかかわらず、いきなりそのようなことが判明すれば、婚約破棄をしてもやむを得ないといえるでしょう。
② 家族が結婚に反対しているケース
婚約をした方のなかには、「早く結婚をして親や祖父母を安心させたい」などと考えて、婚約をした方も少なくないでしょう。家族の賛成なしには結婚に踏み切ることができないという方もいます。そのような場合には、家族の反対を理由に婚約破棄を申し出ることがあります。
③ 借金の存在を隠されていたケース
交際中や婚約時には、借金はないといわれていたにもかかわらず、実は多額の借金があることが判明することがあります。借金という大事な事実を隠していたということで相手に対する信頼がなくなり、婚約破棄されるケースがあります。 -
(3)婚約破棄と婚約解消の違い
婚約破棄と似た言葉に「婚約解消」というものがあります。どちらも婚約を取りやめるという点では共通しますが、婚約破棄は、一方的に婚約を取りやめる者であるのに対して、婚約解消は、当事者が合意により婚約を取りやめるという違いがあります。
2、婚約破棄で損害賠償請求(慰謝料)は請求できる?
婚約破棄は、婚姻するという契約の一種です。そのため、一方的に破棄すれば債務不履行となり、相手に対して損害賠償(慰謝料)を請求することができます。以下では、婚約破棄でできる損害賠償の範囲と、可能なケースや具体的な損害項目について説明します。
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(1)婚約破棄で請求できる損害賠償の範囲
婚約破棄された場合、財産的損害と精神的損害の2つの損害が生じます。それぞれの損害に対して、いくらの賠償請求が可能かは、交際期間の長さ、婚約破棄の理由の正当性(後述)、妊娠・堕胎などの有無など、婚約破棄に至ったさまざまな理由を考慮して算出されます。
① 財産的損害- 婚約・結婚指輪の購入費
- 結婚式場、新婚旅行のキャンセル費
- 新居の購入費
② 精神的損害(慰謝料)
婚約破棄においては大きな精神的損害を受けることになります。相手から直接受ける被害はもちろん、寿退社や友人・知人に報告していた場合など、社会的居場所をなくした、婚約破棄を説明しなければならない、などに伴う精神的苦痛は少なくありません。
この精神的ダメージに支払われる対価が慰謝料になります。
ただし、婚約破棄されたからといって、常に損害賠償請求が可能というわけではありません。以下より、損害賠償請求(慰謝料)できる条件を解説します。 -
(2)婚約破棄で損害賠償(慰謝料)請求できる条件
婚約破棄を理由に損害賠償請求をすることができるのは、2つの条件が必要となります。
- ① 婚約していたという客観的事実(参考:1章)
- ② 婚約破棄の理由が不当である
婚約破棄の不当な理由とは、たとえば以下のようなケースが該当します。
● 性格の不一致
性格の不一致は、どちらか一方に明確な原因があるわけではありません。そのため、「相手と性格が合わない」という理由で婚約破棄をした場合には、正当な理由があるとは認められない可能性が高いです。
● 家族に結婚を反対された
婚姻は、当事者の意思のみによって行うことができますので、家族が反対しているという理由だけでは、正当な理由があるとは認められない可能性が高いです。
● ほかに好きな人ができた
婚約までしたにもかかわらず、ほかに好きな人ができたという理由は、身勝手な理由です。そのため、このような理由での婚約破棄として正当な理由とは認められません。
● 相手が被差別部落出身者であった
被差別部落出身者であることを理由に差別をすることは不当な差別ですので絶対に許されないものです。婚約破棄にあたって相手が被差別部落出身者であることを理由にすることも当然許されるものではありませんので正当な理由は認められません。
● 結婚する意欲がなくなった
上記のような特別な理由があるわけではなく、単に結婚をする意欲がなくなったという理由で婚約破棄がなされることがあります。
3、慰謝料請求の流れ
婚約破棄を理由に慰謝料を請求する場合には、以下のような流れで請求を行います。
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(1)話し合い
正当な理由なく婚約破棄がされた場合には、その相手に対して慰謝料請求をすることができます。慰謝料請求を行う場合には、まずは、相手との話し合いを行います。直接会って話し合いをしてもよいですし、慰謝料請求をすること、希望する慰謝料額や支払い方法などを記載した書面を送る方法でも構いません。
書面を送る場合には、慰謝料を請求したこととその内容を後日の証拠とするためにも内容証明郵便を利用して送付するとよいでしょう。話し合いによって解決した場合には、その内容を示談書や合意書などの書面に残しておくようにしましょう。 -
(2)裁判
相手が話し合いに応じない場合や話し合いをしても金額や支払い方法などについて合意が得られない場合には、裁判所に民事訴訟を提起することになります。
裁判をする場合には、正当な理由なく婚約破棄をされたことや損害額を証明するための証拠が必要になります。証拠がなければ裁判所に請求を認めてもらうことができませんので、証拠収集や裁判手続きのサポートを弁護士に依頼することをおすすめします。
4、まとめ
正当な理由のない婚約破棄については、婚約破棄について原因のある相手に対して、慰謝料などの損害賠償請求をすることが可能です。婚約破棄によって当事者は、多大な精神的苦痛を被ることになりますので、それによって被った損害をしっかりと請求していくことが大切です。
婚約破棄による慰謝料請求は、弁護士によるサポートが重要となります。ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています