モラハラ夫と離婚したい! 注意すべき点を弁護士が解説
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近年、「DV(ドメスティックバイオレンス)」の中でも、暴力によって肉体的な苦痛を与えるものではなく、言葉や態度などによって精神的な苦痛を与える「モラルハラスメント」、通称「モラハラ」という言葉を聞くことが増えています。「モラハラ」という言葉はすでに一般的に浸透したといえるでしょう。司法統計 をみても「精神的に虐待する」を理由とした離婚調停の申立ては少なくない割合で、妻側の申し立て理由では上位3位にランクインしています。「モラハラ」は、各種メディアなどでクローズアップされ、政府でも対応が検討されている問題となっています。
ただ、身体的な暴力であれば身体にその痕跡が残ることから事実の発覚へつながることもあるのですが、モラハラにはそれがない点が厄介です。一方で、モラハラによって刑法上の障害とみなされるほどのPTSD(心的外傷後ストレス障害)を受けることもありえます。
そこで、この記事ではモラハラ夫との離婚について、具体的な方法や注意点を弁護士が解説します。
1、モラハラについて知っておくべきこと
モラルハラスメントとは、言動を用いて精神的に傷つける、暴言や嫌がらせを指します。たとえば、無視をする、怒鳴る、あなたの親しい人やあなた自身をけなす、外出や周囲の人との交流を制限するなどの行為が該当する可能性があります。
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(1)モラハラはなかなか治らない
モラハラの加害者は、自分の行為が他人に苦痛を与える行為であると自覚していない場合が少なくありません。そのため、問題を指摘しても改善が難しいという特徴があります。
モラハラを受けている側からのアプローチによって改善することは、ほとんどないと考えてよいかもしれません。心が折れてしまう前に、何らかの行動を起こす必要があるでしょう。 -
(2)証拠を集めることが難しい
モラハラは、配偶者に対し、肉体的な暴力をふるうのではなく、発言や行動、態度などで相手を精神的に追い込むものです。このため、医師の診断などのように、モラハラを証明する証拠を集めることが難しいという特徴があります。
しかし、精神的に追い詰められていれば体調にも不調を及ぼしますので、診断書を出してもらえる可能性はあるでしょう。また、そういう場合でなくても、日記などの日々の記録の積み重ねによって、モラハラを証明できる場合があります。
そこで、モラハラを受けていると思ったら、日記やメールなどに日々の記録を残しておきましょう。 -
(3)周囲に理解してもらうことが難しい
肉体的な暴力でないため、周囲に精神的な苦痛を理解してもらいにくいという側面があります。また、加害者が、周囲からは、「いい人」などと思われているケースが少なくないため、被害を訴えても理解されづらいという特徴があります。
諦めずに、まずは国や自治体などで解説している相談窓口にアクセスするなど、できるだけあなたの状況を理解できる味方を増やすようにしましょう。
2、離婚の準備について
夫からモラハラの被害を受けて離婚する場合、離婚の際に必要な準備をし、離婚後の生活について考えておく必要があります。
また、あなたが受けているモラハラが、「法定離婚事由」を定めた民法770条1項5号「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として認められるかによって、離婚ができるかどうかが変わります。できる限り準備をして離婚に挑みましょう。
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(1)離婚のための証拠をそろえる
モラハラ夫が自分の非を認めて簡単に離婚に応じるケースは非常に少ないでしょう。その場合、証拠をそろえて、裁判でモラハラ行為について立証して離婚を認めてもらう必要があります。
また、裁判では離婚の成立の他にも、以下の項目を決めることができます。その部分についても証拠を集めることが重要です。- 慰謝料
- 親権
- 養育費
- 財産分与
今が苦しければ苦しいほど、とにかく離婚できればいいと考えてしまうかもしれません。養育費など、分割払いなどになれば関係が続くことに恐怖を覚えるケースもあるでしょう。
しかし、離婚の際決めるべき金銭的なことは、今後の生活の礎となりうるものです。あらかじめ、実際にある財産や預金通帳の額がわかる資料を集めておき、受け取る権利があるだろう金銭の目安を考えておくといいでしょう。 -
(2)離婚後の生活の準備を整える
離婚後は、あなたひとりの力で生活していかなければなりません。そのためにも、経済的な自立をはじめ、ある程度の準備と心構えをしておく必要があります。
•資金面
モラハラ夫が、あなたが自分から逃げられないようにするために、仕事を辞めさせる、もしくはあなたの収入を搾取し、あなた自身の経済的な自立を奪うケースもあります。そのために、離婚後の生活が不安な方も多いでしょう。
そこで活用したいのが「法テラス」や「女性センター」、また弁護士事務所などの専門機関です。各種手当などの公的支援を活用することもできますので、離婚後の生活や仕事についてについて事前に相談し、調べて準備をすすめるようにしておきましょう。
•住居について
離婚してからの住居については実家に頼るという選択が考えられますが、実家に頼れない方もいるでしょう。また、住所を知られている以上、夫が復縁を迫って追ってくる可能性があり、安心して暮らすことが難しい場合もあります。
公的機関に相談すれば、一時的にでもシェルターを利用できることもあります。そのほかも公的機関へ相談することによって、さまざまな援助や融資を受けられる可能性があるでしょう。まずはその身体の安全を最優先にして引っ越しができるよう、あらかじめ準備しておきましょう。
•子どもについて
子どもの養育についてはどちらが親権を取って養育するのか、養育費はどうするのか、面会の頻度なども考えておかなくてはなりません。
モラハラをする相手だという事実を踏まえて、子どもにとって最善の選択になるようにしたいものです。
•周囲の協力
モラハラが深刻な場合、離婚前に別居することもありえます。しかし、夫が転居先に押しかけて迷惑をかけることも考えると、ためらってしまう方もいるかもしれません。家族や勤務先などには事情を説明し、居場所や連絡先が夫へ伝わることのないよう頼んでおくといいでしょう。前述のシェルターを利用できるよう、自治体に相談することもひとつの手です。
3、離婚手続きについて
現実に離婚するとなると、たとえ相手がモラハラ夫ではなくても簡単に話が進むことはありません。特にモラハラ夫を相手に離婚手続きを進める場合、客観的な証拠が残りにくく、外面がよいため周囲に離婚をとどまるよう、説得されてしまう可能性もあるでしょう。したがって、早めに弁護士などに相談して、準備を進めることをおすすめします。
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(1)弁護士に相談する
弁護士に相談することで、客観的に夫婦関係がどういう状況であるか判断し、離婚に必要な準備について整理し、証拠集めなどの具体的なアドバイスを受けることができます。
弁護士には守秘義務がありますので、このことが外部に漏れる心配もありません。ある程度準備が整ったら、弁護士を代理人にして交渉を進めることも可能です。あなたが直接モラハラ夫と話し合うこともなく、穏便に離婚が成立する可能性もでてきます。 -
(2)カウンセラーに相談する
モラハラはまだ新しい考え方ですので、自分が受けている苦痛の原因がわからないこともよくあることです。そのようなときにはカウンセラーなどの、モラハラに関する知識がある専門家へ相談しましょう。
モラハラを受け続けていると正常な判断能力が失われる場合も多いものです。自治体などの女性センターを通じてシェルターを紹介してもらうなどして、一時的にでも距離を取ることも重要になります。 -
(3)証拠収集
モラハラは客観的な証拠が残りにくいものです。しかし、普段から日記を書いて、どのようなモラハラがあったか、詳細に記されていれば有力な証拠となります。
音声や映像なども、どのような雰囲気で生活することを強いられていたのかがよくわかるため、説得力のある資料となります。慰謝料にも影響しますので、証拠はできるかぎり集めましょう。 -
(4)別居
モラハラをきっかけとして別居することは、モラハラが同居の継続を難しくするほどのものである証明にもなります。また、長きにわたり別居していれば、共同生活の実態がないとして、離婚が認められる可能性があるでしょう。
ただし、正当な理由がない別居とみなされてしまうこともあるかもしれません。別居前に、相談機関や弁護士に相談して、あなた自身の立場が不利にならない別居方法についてアドバイスを受けたほうがよいでしょう。
4、まとめ
モラハラは暴力によるDVと異なり、身体に痕跡が残ることがないため、事実が表面化しにくいところもあります。しかし、モラハラが精神的に大変な苦痛を与える行為であることは間違いありません。
暴力によるDVも同様ですが、多くのモラハラ夫は、被害者をひどく傷つけた後に、被害者を引き留めるためにうんと優しくして別れの決意を鈍らせるなどの行動をとります。このため、ひとりでは離婚の決意をすることが難しいことが多いのです。
夫からのモラハラに悩んでいる場合は、ひとりで思い悩むことなく、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスへお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています