援交で警察に逮捕された! その後どうなるのか大阪府の弁護士が解説
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警察庁が発表している資料によると、令和元年のSNSに起因する事犯の被害児童数は2082人となり、前年の1811人を上回りました。今の時代、SNS(コミュニティサイト)などを通じて簡単に人とつながることができるため、つい出来心で若者と連絡を取り、援助交際をしてしまうという人も少なくありません。しかし、ネットでのやり取りは記録に残るので、後になって足がつき逮捕という事態が起こり得ます。
援助交際が漠然とダメなことはわかっていても、実際、どのような罪に問われるのかは知らない方もいるでしょう。
どのような場合に逮捕されるのか、逮捕されたらどうなるのか、相手が未成年であるにも関わらず、「19歳だ」とうそを言っていた場合でも罪に問われるのかなど、今回は援助交際をテーマに、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。
1、援助交際ではどのような罪に問われるのか
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(1)援助交際とは?
援助交際とは、金銭と引き換えに性交渉などをすることです。典型例は、男性が女子中高生に対して数万円のお金を渡し、性交渉や性交類似行為をするというものです。
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(2)援助交際に関する罪
援助交際をした場合、どのような罪になるのでしょうか。
援助交際で罪に問われる可能性があるのは、次の6つになります。
①児童買春罪、②強制わいせつ罪、③強制性交等罪(強姦罪)、④出会い系サイト規制法違反、⑤青少年健全育成条例違反、⑥児童福祉法違反。
以下で詳しく解説します。
①児童買春罪
児童買春罪は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」に規定があります。長いので、「児童買春、児童ポルノ禁止法」と呼ばれています。
「児童買春」とは、18歳未満の児童に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいいます。児童買春をした場合の刑罰は、5年以下の懲役または300万円以下の罰金となります。
18歳未満の者を「児童」と規定して児童の保護を目的としています。女児のみならず男児も保護の対象になっているので、お金を渡して男児に性的ないたずらをするような行為も処罰の対象になります。必ず対価の供与が必要で金品などを渡さない場合には児童買春罪は成立しません。
この犯罪で処罰の対象となるのは、金品を渡して性交や性交類似行為をした者であり、児童買春の相手である児童は罪に問われません。
なお、児童ポルノを所持、製造、提供等した場合は、別途処罰の対象となります。
②強制わいせつ罪
強制わいせつ罪は、暴行や脅迫によって被害者の抵抗を著しく困難にしてわいせつな行為をしたときに成立する犯罪です。13歳未満の被害者に対しては、暴行や脅迫がなく同意があったとしてもわいせつな行為をしたときに成立します。児童買春罪と異なり、相手に年齢の制限はありません。
強制わいせつ罪に該当する場合、刑罰は、6ヶ月以上10年以下の懲役となります。
③強制性交等罪(旧強姦罪)
強制性交等罪は、暴行や脅迫によって被害者の抵抗を著しく困難にして性交または性交類似行為をしたときに成立する犯罪です。13歳未満の者に対しては、暴行や脅迫がなく同意があったとしても性交または性交類似行為をしたときに成立します。児童買春罪と異なり、相手に年齢の制限はありません。
強制性交等罪に該当する場合、刑罰は、5年以上の懲役と非常に重い罪になります。
④出会い系サイト規制法違反
出会い系サイト規制法は、正式には、「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」といいます。
出会い系サイトを利用して児童を性交等の相手方となるように誘引する行為を禁止し、児童買春その他の犯罪から児童を保護し、児童の健全な育成に資することを目的とします。
この法律は、出会い系サイトを開設している事業者と利用者の両者を規制対象にしているため、事業者を罰する規定も多くありますが、出会い系サイトを利用して援助交際をしている人に対する規制としては、児童に係る誘引の規制があります。その内容は、①児童を性交等の相手方となるように誘引すること、②対償を供与することを示して、児童を異性交際の相手方となるように誘引することです。
つまり、出会い系サイトに援助交際を誘う内容の言葉を書き込むと、援助交際を実際にしなくても犯罪が成立するということです。この規定に違反した場合、100万円以下の罰金となります。
⑤青少年健全育成条例違反
児童買春罪が成立するためには、金品などを渡して性交または性交類似行為をすることが必要です。それでは、金品を渡さずに、児童をだますなどして性交または性交類似行為をした場合、罪に問われないのでしょうか。
金品を渡さなくても、児童と性交または性交類似行為をした場合、青少年健全育成条例違反となる可能性があります。この条例は、青少年の健全な育成を目的としており、自治体によって多少の違いはありますが、18歳未満の児童を対象に性交または性交類似行為をすると、たとえ相手が合意していても条例違反となります。
大阪府青少年健全育成条例では、この条例に違反した場合、2年以下の懲役または100万円以下の罰金に処されます。
⑥児童福祉法違反
児童福祉法は、児童に淫行をさせる行為を禁止しています。児童とは、18歳未満の者を指します。淫行とは、判例によれば、「児童の心身の健全な育成を阻害するおそれがあると認められる性交又はこれに準ずる性交類似行為」をいいます。
第三者を相手方として児童に淫行させる場合だけでなく、自らが児童の淫行の相手方となる場合も含まれます。ただし、淫行させる行為に該当するには、「児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し促進する」ことが必要となります。教師と生徒の関係を利用して教師自らが淫行の相手方となったケースで、淫行させる行為に該当すると判断した判例があります。
この規定に違反した場合には10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金または懲役と罰金の併科となります。
2、援助交際で逮捕される場合
援助交際は、密室で行われることが多いので、いきなり現行犯として逮捕されることは少ないといえます。むしろ、後日に、被害者の親が警察に被害届を提出したり、援助交際をしている児童が補導されたりするなどして、スマホの履歴から援助交際の事実が明らかになることが多いといえます。したがって、「援助交際をして時間が経過しているからもう捕まることはない」と、安心することはできません。
現行犯逮捕でない場合、警察は裁判所から通常逮捕の令状を取って、加害者の自宅などに警察官が訪れます。事前に在宅の有無などが確認され、会社員などであれば、出勤前に身柄を確保する必要があるため早朝に訪れることが多いです。
警察官から令状を示され、「○時○分通常逮捕します」と告げられ、手錠を掛けられます。その後、自宅の部屋などが捜索され、スマホなどが証拠資料として押収されます。
その後、警察署内の留置場で身柄が拘束され、事情聴取が行われます。
3、相手が19歳と言っていたのに本当は17歳だったら!?
基本的に、犯罪が成立するためには、客観的な犯罪事実が存在することと、故意が必要になります。故意とは、犯罪の事実を認識し認容していることをいいます。要するに、犯罪を行っていることを認識し、それでもよいと思って行動しているということです。
たとえば、相手が16歳だと思って援助交際したが、実際は19歳だったという場合、客観的事実は児童買春にはあたらないため、本人が児童買春していると思っていても児童買春の罪は成立しません。
逆に、相手が19歳だと思って援助交際したが、実際は16歳だったという場合、客観的事実は児童買春にあたる可能性がありますが、本人が19歳だと思っている以上、犯罪事実を認識していないので、児童買春の罪は成立しません。
もっとも、捕まった人は、皆「18歳未満だとは思わなかった」と主張するので、そのような主張をすれば罪を免れるということではありません。実際、取り調べにおいても警察から、「誰が見ても18歳未満とわかるだろう」あるいは、「18歳未満でないとなぜわかるのか」などと問い詰められるでしょう。
故意は客観的に判断されるので、スマホでのやり取りで「JK」など18歳未満であることがうかがわれるような記載がある場合や、高校の制服で会っていたような場合には、故意が認められる可能性が高くなります。
また、確定的に18歳未満であることを知らなくても、「18歳未満かもしれない」という認識があれば故意があると判断されます。
4、援助交際で逮捕された後の流れ
逮捕後は、48時間以内に検察庁に送致されることになります。検察庁に送致された後は、24時間以内に勾留請求がなされます。勾留が認められると、10日間身柄が拘束され、取り調べを受けることになります。10日で捜査が終わらない場合には、さらに最大10日間の延長が認められます。
勾留期間が満了するまでに、検察官は起訴するか不起訴とするか決定します。不起訴となった場合には、釈放されることになりますが、起訴された場合は、起訴後の勾留が始まるので、保釈が認められない限り、身柄拘束が続きます。
5、まとめ
以上のとおり、18歳未満の児童と援助交際をすることは犯罪であり、懲役刑など重い刑罰が科せられることもあります。援助交際の事実を認める場合、重い刑罰が科せられないようにするには、被害者と示談し、被害届を取り下げてもらうなど、迅速な被害者対応が重要になります。
援助交際の場合、被害者が未成年であるため示談交渉の相手も被害者の親になることから、加害者に対して強い憤りを感じていることが多く、話を聞いてもらうことすら難しいことがあります。
このようなとき、弁護士であれば、被害者の親もある程度話を聞いてくれることが多く、示談することができれば、情状酌量が認められ、刑事処分を軽くしてもらうことができる場合があります。起訴前に示談が成立すれば、不起訴になる場合もあります。
逮捕が初めてという場合、どうしていいかわからず、厳しい取り調べに、やってもいないことを自供してしまい、悪い犯人に仕立て上げられる危険性があります。弁護士に依頼すれば、接見によってアドバイスすることができるので、このようなリスクも避けられます。
ベリーベスト法律事務所には刑事事件の経験豊富な弁護士がおりますので、お困りの際には、当事務所 大阪オフィスまでご連絡ください。
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