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ディープフェイクポルノとは|逮捕されるとどのような罪に問われる?

2023年10月31日
  • 性・風俗事件
  • ディープフェイクポルノ
  • 逮捕
ディープフェイクポルノとは|逮捕されるとどのような罪に問われる?

人工知能(AI)の技術発展に伴い「ディープフェイク」という技術が生まれました。近年、このようなディープフェイクの技術を利用して、アダルトビデオなどのわいせつ動画と女性タレントを合成して、あたかもその女性タレントがアダルトビデオに出演しているかのような動画を制作する行為が問題視されています。

実際、令和2年には、アダルトビデオに出演した女性の顔を芸能人とすり替え、その動画をインターネットにアップロードしたなどとして、名誉毀損(きそん)と著作権法違反の容疑で男性2名が逮捕されました。全国初の立件とされています。その後ディープフェイクポルノをめぐって、大阪府の男性が京都簡易裁判所より罰金50万円の略式命令を受けたという報道もありました。

このような行為については、どのような罪に問われることになるのでしょうか。

今回は、ディープフェイクポルノの制作やサイト運営によって問われる罪についてベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。

1、ディープフェイクポルノとは

近年、ディープフェイクポルノが問題視されてきていますが、そもそもディープフェイクポルノとはどのようなものを指すのでしょうか。

  1. (1)ディープフェイクとは

    ディープフェイクとは、ディープラーニングとフェイクを組み合わせた造語であり、もともとは、機械学習アルゴリズムのディープラーニング技術を利用して、2つの写真や動画の一部を交換・合成させる技術のことを指していました。

    ディープフェイクは、実際にその人が行っていない動作をしたり、実際に発言していないことを発言しているように描くことができます

  2. (2)ディープフェイクの技術を悪用する危険性

    ディープフェイク技術は、本来は、映画などに活用するための映像技術として開発されたものでした。しかし、現在は、本来の目的以外の場面で利用されることが多くなり、「ディープフェイク」とは、フェイク動画や偽動画を指す言葉として認知されるようになってきています

    近年、ディープフェイク技術を誰でも利用できるソフトやアプリが多数開発されており、それをポルノ動画に悪用する人々が増えてきています。ディープフェイク技術をポルノ動画に利用することによって、女優やアイドルなどの有名人の顔をアダルトビデオの出演者の顔と入れ替えることができ、あたかも女優やアイドルがアダルトビデオに出演しているかのような動画を作成することができてしまうのです。これが「ディープフェイクポルノ」と呼ばれているものです。

    かなり精巧なディープフェイクポルノも作成されていますので、一見しただけではそれが本物なのか偽物なのかを判断することができません。たとえ偽物であったとしても、アダルト動画に利用された女性の被る精神的苦痛は甚大なものであり、女性の人権を著しく侵害するものとして、問題視されています。

2、ディープフェイクポルノのサイト運営で逮捕者も

令和2年10月2日、ディープフェイク技術を利用してアダルト動画を作成したとして、警視庁と千葉県警は、ディープフェイクポルノの制作者らを名誉毀損(きそん)容疑と著作権法違反の疑いで逮捕しました。

また、令和2年11月19日には、ディープフェイク技術を利用して作成したアダルト動画のURLを自身が運営するサイトに掲載したとして、警視庁は、「まとめサイト」の運営者らを名誉毀損(きそん)の疑いで逮捕しています。この事件では、逮捕された容疑者自身は、ディープフェイクポルノ自体を作成したわけではなく、そのURLを掲載しただけでしたが、それでも逮捕されています。サイト運営者が逮捕されるというのは全国で初めてでしたが、今後も被害が継続するようであれば、同様に逮捕者が増えていくことでしょう。

ディープフェイクポルノは、有名な女性芸能人を対象とした動画であればページビューによる広告収入が期待できるため広く利用される危険があります。インターネット上に掲載された情報については、瞬時に世界中に拡散しますので、偽の動画であってもそれによる被害を回復することは非常に困難なものとなるでしょう。上記のようなまとめサイトの運営者は、直接フェイクポルノを制作しているわけではないですが、情報の拡散に大きく寄与していることから、その違法性は大きいといわざるを得ません

このようなディープフェイクポルノによる女性の人権侵害を防止するためにも、厳罰化や情報開示手続きの迅速化が求められています。

3、ディープフェイクポルノでは、どのような罪に問われるのか

それでは、実際にディープフェイクポルノを制作したり、サイト運営に関与したりした場合、どのような罪に問われる可能性があるのでしょうか。

  1. (1)名誉毀損(きそん)罪

    名誉毀損(きそん)罪は、不特定多数の人に対して、他人の名誉を傷つける内容を公表したときに成立します(刑法230条)。

    ディープフェイクポルノは、アダルト動画に出演する女性の顔を女性タレントなどの顔と入れ替えるものです。それによって対象となった女性タレントは、世間の人からはあたかもアダルト動画に出演しているかのように見られてしまいますので、当然その社会的評価は低下することになります。そのため、ディープフェイクポルノの対象となった女性に対して名誉毀損(きそん)罪が成立する可能性があります

    名誉毀損(きそん)罪の法定刑は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金と規定されています。

  2. (2)著作権法違反

    ディープフェイクポルノは、既存のアダルトビデオなどの作品を改変するものであることから、アダルトビデオ制作会社の著作権を侵害することになります。そのため、ディープフェイクポルノを作成・公開した人に対しては、著作権法119条1項によって、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

    また、ディープフェイクポルノを作成したのではなく、自身が運営するサイト上にその動画のURLを掲載した場合であっても著作権法違反に該当し、著作権法120条の2第3号によって、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

    さらに、まとめサイトを運営するなどして、ディープフェイクポルノサイトにアクセスすることを容易にさせたときには、著作権法119条2項4号によって、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。

  3. (3)わいせつ物頒布等罪

    ディープフェイクポルノは、元々がアダルトビデオなどのわいせつ動画であることから、それをインターネット上で公開する行為については、わいせつ物頒布罪に該当する可能性があります(刑法175条1項)。また、販売する目的でディープフェイクポルノを保持または保管したときには、わいせつ物所持保管罪が成立する可能性があります(刑法175条2項)。

    両罪の法定刑は、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料、または懲役および罰金の両方とされています。

4、逮捕後の流れとは?

ディープフェイクポルノに関する行為で逮捕されたときには、その後どのような流れで手続きが進むのでしょうか。以下では、刑事手続きの一般的な流れについて説明します。

  1. (1)刑事手続きの流れ

    ① 逮捕・取り調べ
    ディープフェイクポルノによって、名誉毀損(きそん)罪や著作権法違反等の疑いで逮捕されたときには、警察署に連行されて、犯行の経緯についての取り調べが行われます。逮捕による身柄拘束は、法律上48時間以内と決まっていますので、警察官は、48時間以内に事件と身柄を検察官に送致する手続きをとらなければなりません。

    ② 勾留
    警察官から送致の手続きを受けた検察官は、送致を受けたときから24時間以内に被疑者を勾留するかどうかを決めなければなりません。検察官が勾留をする判断をしたときには、裁判所に対して勾留請求をします。そして、裁判所が勾留を認める決定をした場合には、さらに10日間の身柄拘束が継続することになります。勾留については、延長請求も認められていますので、検察官からの延長請求が認められたときには、さらに10日間の合計20日間身柄拘束が続くことになります。

    ③ 起訴または不起訴
    勾留期間が満了する時点までに検察官は、事件を起訴するかどうかを判断しなければなりません。起訴された場合には、刑事裁判において、ディープフェイクポルノに関する罪が裁かれることになります。不起訴となれば、身柄は解放されますし、前科も付くことはありません。

    ④ 刑事裁判
    検察官によって起訴されたときには、通常裁判か略式裁判のどちらかで裁かれることになります。犯罪事実を認めており、罰金刑が予定されているときには、略式裁判になることが多いでしょう。刑事裁判では、事案の内容や犯行の経緯、情状などを踏まえて、裁判官から判決が言い渡されることになります。

  2. (2)逮捕されたときには一刻も早く弁護士に相談を

    逮捕された場合には、前述のとおり、相当長期間身柄拘束が続くことになります。通常の社会生活を送っている方が長期間身柄拘束を受けることになれば、学生や会社員の方は、職場、学校、家庭への影響は計りしれません。

    身柄拘束を争う手段としては、準抗告や保釈などさまざまな手段がありますが、逮捕勾留されている本人では、身柄拘束に向けた手続きを行うことが困難ですので、専門家である弁護士に依頼をして進めていく必要があります。

    身柄拘束中に法的観点からサポートすることができるのは弁護士だけですので、逮捕されたときには、一刻も早く弁護士に相談をするようにしましょう

5、まとめ

ディープフェイクポルノによる犯罪は、比較的新しいものであり、最近になって検挙されるようになった犯罪です。ディープフェイクの技術については、誰でも入手することができるものですので、軽い気持ちからディープフェイクポルノの作成に手を染めてしまう方もいるかもしれません。しかし、ディープフェイクポルノの作成や公開は、それによって対象となった女性の人権を侵害するだけでなく、重大な犯罪行為ですので、絶対にしないようにしましょう。

ディープフェイクポルノの作成や公開に関わってしまったのであれば、早めにベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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