マンションで漏水事故を起こしてしまった! 賠償するべき範囲とは?

2022年08月04日
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マンションで漏水事故を起こしてしまった! 賠償するべき範囲とは?

マンションは、日常生活に不可欠な給排水管や排水溝の構造が複雑であるため、給排水管の老朽化やベランダにある排水溝の詰まりなどを原因として漏水事故が生じることがあります。

一戸建て住宅とは異なり、マンションは上下左右の住戸が隣接していますので、漏水が生じた場合には、近隣住民に対して重大な損害を与えるおそれがあります。

このようなマンションでの漏水事故を起こしてしまった場合には、どのように対応したらよいのでしょうか。また、漏水事故を起こしてしまった人が賠償しなければならないのはどの範囲なのでしょうか。

今回は、マンションでの漏水事故を起こしてしまった場合の対応と賠償すべき範囲などについて、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。

1、漏水事故を起こしてしまった場合にやるべきこと

漏水事故が起きた場合には、以下のような対応が必要になります。

  1. (1)管理会社への連絡

    漏水していることが判明した場合には、階下の住民にも被害が生じている可能性がありますので、まずは、漏水が発生したことを管理会社に連絡をするようにしましょう。

    時間帯によっては、階下の住民が留守にしていることもありますので、管理会社から連絡をとることも必要となります。被害が拡大しないようにするためにも、早めに連絡をすることが大切です。

  2. (2)漏水箇所・原因の調査

    漏水事故が生じた場合には、漏水発生箇所とその原因を調査することが必要になります。漏水箇所がマンションの専有部分なのか共用部分なのかによって、責任の所在が異なってきます。また、同様に水漏れ原因が居住者の不注意なのか排水設備の瑕疵(かし)によるものなのかによっても責任の所在が異なってきます。

    漏水事故について、誰がどのような責任を負うのかを特定するためにも、漏水箇所および漏水原因をしっかりと調査しましょう

  3. (3)被害者への対応

    マンションの専有部分から発生した漏水である場合には、階下の住民に漏水による被害を生じさせてしまった責任がありますので、被害者に対して謝罪するなど誠意をもった対応をするようにしましょう。

    漏水事故の対応を管理会社にまかせっきりにしていると、被害者としても不満を募らせてしまい、住民同士の間でトラブルが生じるきっかけにもなりかねません。

    被害者への対応は、被害者の立場に立って誠意ある姿勢を示すことが重要です。

2、賠償は誰が支払う?

漏水事故によって被害が生じた場合には、その損害は誰が賠償しなければならないのでしょうか。

  1. (1)専有部分での漏水事故の場合

    漏水事故が専有部分で発生した場合には、専有部分の所有者または賃借人が責任を負うことになります

    たとえば、専有部分の居住者が浴槽の水を出しっぱなしにしたことによって、階下を浸水させた場合のように、不注意が原因であった場合には、漏水事故を発生させた居住者は、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償責任を負うことになります。

    また、専有部分の給排水設備の老化により漏水が発生したという場合には、専有部分の所有者または賃借人は、土地工作物責任(民法717条1項)に基づく損害賠償責任を負うことになります。

    土地工作物責任は、一次的には建物を現実に使用している賃借人が負うことになりますが、賃借人が損害発生を防止するために必要な注意をしていた場合には、専有部分の所有者が二次的に責任を負うことになります。

    したがって、マンションの賃貸借においては、賃借人には漏水した給排水設備を管理・補修する義務まではありませんので、通常の使用によって漏水が発生したといえる場合には、賃借人ではなく所有者が責任を負わなければなりません。

  2. (2)共用部分での漏水事故の場合

    漏水事故が共用部分で発生した場合には、管理者(管理組合)またはマンションの所有者全員が責任を負うことになります。

    たとえば、給排水管の本管など共用部分の瑕疵によって漏水事故が生じたことが明らかである場合には、管理者が管理義務違反に基づく損害賠償責任を負うことになります(民法415条、709条)。

    また、管理者に過失がない場合であっても共用部分について設置・保存の瑕疵がある場合には、専有部分の場合と同様に、管理者またはマンションの所有者全員が土地工作物責任に基づく損害賠償責任を負うことになります。

  3. (3)実際には保険によって補填されることが多い

    漏水事故が発生した場合には、専有部分であるか共用部分であるかによって、責任の所在が異なってきますが、実際の損害賠償の場面では、誰が責任を負うかどうかにかかわらず、保険金によって補填(ほてん)されることが多いです

    居住者個人としては、火災保険の個人賠償責任保険、管理者としては、施設賠償責任保険に加入しているのが通常ですので、それを利用して被害者への賠償金を支払っていくことになります。

3、クレームのような請求には、どこまで賠償するべきか

漏水事故を起こしてしまった場合には、感情的になった被害者からクレームのような請求を受けることがあります。そのような請求を受けた場合には、どの範囲まで賠償すべきなのでしょうか。

  1. (1)家具や家電の買い替え費用全額を請求された場合

    漏水によってぬれた家具や家電などはそのままでは使用することができず、被害者としては、買い替えをしなければならないことがあります。しかし、水漏れ被害による損害額を算定する場合には、当該家具・家電の時価相当額が賠償すべき金額となります。

    被害者がブランド家具や最新の家電に買い替えをしたとしても、その全額を賠償しなければならないというわけではなく、漏水事故発生時の時価相当額を賠償すれば足りることになります

  2. (2)精神的苦痛を被ったという理由で慰謝料を請求された場合

    漏水事故による損害は、基本的には、ぬれた家具や家電の買い替えやクリーニングといった物損が中心となります。

    このような物損が生じた場合には、財産的な損害が補填されれば、精神的苦痛もなくなるものと考えられています。そのため、被害者から慰謝料を請求されたとしても、基本的には応じる必要はありません。

  3. (3)水漏れに直接関係するのか疑問な事柄(項目)を請求された場合

    漏水事故の賠償金がもらえることに便乗して、水漏れとは関係ないものについても損害に上乗せして請求されることがあります。

    しかし、漏水事故による賠償の範囲は、あくまでも漏水事故と相当因果関係にある損害に限られますので、漏水事故とは無関係に発生した損害については、賠償する必要はありません。

    たとえば、元々故障していた家電であるにもかかわらず、漏水を理由に買い替え費用を求められたとしてもそれに応じる必要はありません。

    損害の立証は、被害者側が行わなければなりませんので、水漏れに直接関係するかどうか疑問が生じた場合には、被害者側に証拠に基づいてしっかりと証明してもらうようにしましょう。

4、トラブルに発展しそうな場合は弁護士へ相談を

漏水事故によって近隣住民との間でトラブルが生じるおそれがある場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  1. (1)近隣トラブルは第三者が介入することで穏便に解決できることも少なくない

    賃貸マンションであれば、近隣トラブルが生じたとしてもすぐに引っ越すなどの対応をとることができますが、分譲でマンションを購入して居住しているという方の場合には、簡単に手放して引っ越すということはできません。

    そのため、近隣トラブルはできる限り避けたい事柄です。

    しかし、漏水事故が生じてしまうと、被害者との間でトラブルが生じる可能性が高くなります。当事者同士で対応してしまうと、つい感情的になってしまい修復困難な溝が生じてしまうおそれもあります。

    漏水事故を起こしてしまった方としては、誠意をもって対応することが必要になりますが、具体的な対応は第三者である弁護士に任せた方が穏便に解決することができることも少なくありません

    ご自身で対応するには不安があるという方は、弁護士に相談をすることをおすすめします。

  2. (2)適切な損害であるかを判断することができる

    被害者から損害賠償請求をされた場合には、漏水事故と相当因果関係のある損害については、賠償する責任があります。

    しかし、一般の方では、どの範囲の損害が漏水事故と相当因果関係のある損害であるかを判断することは難しいでしょう。被害者の中には、漏水事故に便乗して過大な請求をしてくる方もいますので、損害の内訳をしっかりと精査することが重要となります。

    弁護士であれば、法的観点から賠償が必要な項目であるかどうかを適切に判断することができますので、被害者対応は弁護士に任せるのが安心といえます。

5、まとめ

マンションには多くの住人が居住していますので、水漏れ事故が発生した場合、多額の損害が生じる可能性があります。誰が責任を負わなければならないのかは、漏水箇所および漏水原因によって異なってきますので、漏水箇所および漏水原因をしっかりと調査することが大切です。

漏水事故の対応には、法的知識が必要不可欠となりますので、漏水事故の被害を起こしてしまいお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています