無責任な鳩への餌やりをやめさせたい! どのような法的措置がある?
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令和2年8月、大阪市において窃盗容疑で逮捕された男女ら数人に対し、市は令和2年6月に施行された改正動物愛護法を適用し、告発する構えをみせている、との報道がありました。野良猫に与えていた餌を狙って鳩やカラスが集まるようになり、100羽ほどの鳩・カラスが住宅地を飛び回るようになっていたとのことです。
鳩などへの餌やりの迷惑行為は各地で社会問題になっており、行政も改善のため苦慮しているようです。たとえばマンションのベランダで餌やり行われた場合、他の住民のベランダや洗濯物にフンや羽が落ちることは想像できます。
餌やりをしている人にやめるよう要請しても「鳩がかわいそうだ」と聞く耳をもたないケースも多く、このような場合に、個人として法的措置をとることは可能なのか考えている人もいるでしょう。
そこで今回は、餌やりの問題について、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説していきます。
1、鳩の餌やりは違法?
鳩の餌やりを規制している法律はないのでしょうか。
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(1)動物愛護法
動物への餌やりについては、「動物の愛護及び管理に関する法律」(通称「動物愛護法」)に規定があります。同法の25条1項では、動物の飼育や餌やりなどが原因で騒音や悪臭、毛の飛散、昆虫の発生などが起き、周辺の生活環境に影響が出た場合は、都道府県知事にそのような事態を生じさせている者への指導や助言の権限を与えています。
さらに、同条2項ではその事態を除去するために必要な措置をとるべきことの「勧告」について、同条3項では「命令」について規定しています。この命令に違反した場合には、「50万円以下の罰金」に処せられます(46条の2)。 -
(2)大阪市廃棄物の減量推進及び適正処理並びに生活環境の清潔保持に関する条例
大阪市では、「大阪市廃棄物の減量推進及び適正処理並びに生活環境の清潔保持に関する条例」を設けています。
同条例26条4項では、公共の場やその周辺において、鳩やカラスなどの動物に餌を与える場合、その行為により、動物のふん尿や汚物、毛・羽毛が散乱したり、悪臭が発生しないよう、餌を与える者は清掃活動などの必要措置を講じるよう規定しています。違反者には、5万円以下の過料が科されます。
ただ、この条例は餌やり後の清掃活動等を義務付けてはいますが、餌やり行為そのものを規制しているわけではありません。
大阪市は冒頭で触れた事件に際し、今後は動物愛護法に基づき、迷惑な餌やり行為は法律違反として対応していくことを表明しています。
2、法律や条例があっても減らないトラブル
動物愛護法は、餌やりの結果、環境が害された場合にその改善を求めることができるにすぎず、大阪市の条例では餌やりの結果、フン害で汚れた場合には清掃の義務が発生し、それを行わない場合に過料を科すというものにすぎません。つまり、どちらも餌やり自体を直接取り締まっているわけではないのです。
「餌やり自体を規制すればよいのではないか」と思われるかもしれませんが、餌やりをする行為自体が何らかの法益を害するわけではありません。そのため、法律や条例で規制するのは難しく、「餌やりは法律で禁止されていない」という理由で餌やりを続ける人もいます。
3、餌やりによるトラブルの相談先
法律や条例で餌やり行為自体が規制されていないとはいえ、被害にあった方からすれば、止めてもらう方法は何かないのか、と思うでしょう。そのような場合、どこに相談すればいいのか、見ていきましょう。
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(1)賃貸物件の場合
賃貸物件であれば、管理会社などに連絡すれば管理会社から餌やりしている人に対して注意などをしてもらえます。また、再三注意してもやめない場合やあまりにも被害がひどい場合には、退去を促すなどの措置もしてもらえるかもしれません。
ただ、餌やりをしたからという理由だけでは、退去させることは難しいため、客観的に損害が生じていることを証明する必要があると考えられます。 -
(2)分譲マンションの場合
分譲マンションの場合、各住居はそれぞれの人の所有物なので、退去させるということは基本的にできません。やはり、管理組合などで話し合い、餌やりをやめてもらうよう根気強く交渉するしかありません。
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(3)一軒家の場合
一軒家の場合、さらに難易度は高まります。近隣住民が鳩や猫に餌やりをしたからと言って、他人の土地でのできことなので、それをやめさせるのは非常に難しいと言えます。マンションと異なり管理組合のようなものはなく、基本的に自分自身が相手を説得しなければなりません。
ただ、ひとりだけでなく近隣住民が皆被害を受けている場合、近隣住民が団結して餌やりの中止を求めたり、町内会で議論して、町内会長から注意してもらったりするなどの措置が考えられます。ただ、その場合でも、法律違反をしているわけではないので、従ってくれるかどうかはわかりません。 -
(4)公的機関
各自治体では、餌やりの規制強化に取り組んでいるので、餌やりをしている現場を見た場合には、自治体に相談することができます。大阪市の場合、担当する区の保健福祉センター生活環境業務担当が対応しているので、そこに相談してください。
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(5)法律事務所
管理会社や管理組合からの説得にも応じず、自治体からの勧告などにも従わない場合、弁護士に相談するというのもひとつの方法です。弁護士から、餌やりにより依頼者が被害を受けている旨を連絡し、今後も餌やりを続け被害が及ぶような場合には、法的措置をとることを警告すると、餌やりをやめることが期待できます。
もちろん、弁護士からの通知をしても無視される可能性はありますが、被害状況がひどい場合には、本当に法定措置をとることも可能な場合があるので、その点も含めて弁護士に相談してみてもよいでしょう。
4、損害賠償は請求できる?
被害を受けた方からすれば、「慰謝料を請求したい」「ダメになったものを賠償してほしい」と思うでしょう。損害賠償請求をするためには、被害状況を立証する必要があります。
動物への餌やりも数回やったというだけでは、なかなか違法とは評価できず、損害との因果関係についても立証しなければなりません。鳩がマンション等に住み着くことは餌やりをしなくてもいくらでもあることであり、鳩がいればベランダにフンをすることも当然だからです。その住民が餌やりをしたから、ベランダにフンをするようになったと明確に立証できる程度に証拠集めする必要があります。
具体的には、動画などを撮って、その住民が餌を与えている事実を記録し、その鳩が自分の家のベランダにフンをしたことを記録するなどが必要になります。一度だけではなく、何度もフンをされてベランダがひどい状態になっているという写真や動画なども必要でしょう。
このように立証のハードルは高いものの、被害状況が立証できるのであれば、損害賠償請求することは可能です。いずれにしても、裁判をできるかどうかは専門的判断が必要になるので、もし法的措置を検討している場合には弁護士に相談するようにしてください。
5、まとめ
今回は、迷惑行為である鳩への餌やりについて、どのようなところに相談すればよいのか、また、法的措置をとることはできるのかなどについて解説してきました。
近隣住民による迷惑行為ということで、注意などして話がこじれると近隣トラブルに発展して嫌がらせ受けるなどの二次被害も考えられます。ひとりで対処しようとせず、管理会社や近隣住民と団結して対処するか、自治体に相談することが大事です。
また、法的措置も視野にいれるのであれば、弁護士に相談してどのような証拠を準備しなければならないのかなどアドバイスを受けるようにしてください。ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスでは、近隣トラブルなどの法律相談も受け付けていますので、お気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています