お試しのつもりが定期購入に? 通信販売トラブルの対処法
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お試しとして、1回だけのつもりで申し込みをしたところ、定期購入の契約になっていた……。
昨今、通信販売をめぐって、このようなトラブルが急増しています。
国民生活センターなどの相談内容を蓄積しているPIO-NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワークシステム)の統計によれば、「定期購入」に関する消費生活相談件数は、平成30年度は2万1977件だったのに対し、令和元年度は4万4370件と倍以上に膨らんでいました。
この記事では、定期購入に関するトラブルが起きたときの対処法を、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説しています。慌てず冷静に対処するための術としてご活用ください。
1、お試し購入が定期購入に?
最初に、よくあるトラブルの内容や、トラブルが起きてしまう原因などについてご紹介します。ご自身のケースと照らし合わせてみてください。
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(1)ありがちなトラブルの内容
お試しで購入したら定期購入になっていた、というトラブルでありがちなのは、解約を申し出たときに「○回分まで購入しないと解約できない」と言われてしまうケースです。
お試し価格300円だったので購入したところ、届いた商品の中に次回発送日と書かれた紙が入っていた。定期購入を申し込んでしまっていることに気づいて業者に連絡したら、「解約するには3回分の購入は必要」と言われてしまった……。
このような場合、初回は安価なものの、2回目以降は通常価格なので非常に高額、ということも珍しくありません。
一方、解約は受け付けるとしながら、納得のいかない対応をされるケースもあります。
たとえば、7日間解約保証とあったので7日以内に連絡したところ、「解約は受け付ける。ただ、初回の特別価格300円は定期購入が前提という契約内容になっている。もし解約するなら通常価格8000円となるので、差額分7700円を払ってほしい」といわれるケースです。
このように、解約と引き換えに追加の料金を支払わなければいけないといわれる事例が、しばしば見られます。
これ以外にも、「解約は商品発送予定日の○日前までに連絡が必要」とされているが、現実的にその日数までに連絡をするのが難しい、「解約は電話連絡のみ受付」とあるのにそもそも電話がつながらない、などのパターンもあります。 -
(2)なぜトラブルが発生してしまうのか
このようなトラブルが起きる原因には、さまざまなものが考えられますが、よくあるのは「定期購入条件が、購入者が見落としやすいような形で表示されている」というものです。
たとえば、商品の効果や画像、価格の割引などについては大きく表示されているものの、定期購入条件については非常に小さい文字で書かれているというパターンがあります。
ほかにも、異様に縦に長い商品ページで、商品の申し込みボタンは至るところに配置されているが定期購入条件だけは一番下に表記、というのも少なくないパターンです。また、別のページに飛ばないと定期購入条件を確認できないように作られている事例もあります。
さらに、時間制限も比較的多く見られる原因のひとつでしょう。具体的には、「2時間以内に申し込んだ場合に限り80%OFF」「1時間限定販売」などの文言で購入をあせらせ、購入者に定期購入条件や解約の仕方などをよく確認させないまま申し込ませる、などのケースです。 -
(3)トラブルが起こりやすい媒体や商品
定期購入に関するトラブルは、TwitterやYouTubeなどのSNS広告に出ていた商品を購入した際に、しばしば発生しています。SNSは未成年もよく利用している媒体のため、未成年者が、自分では支払えない額の支払いを求められて困っているケースも少なくありません。
なお、冒頭で紹介したPIO-NETによれば、平成26年度から令和元年度までに寄せられた相談のうち、契約している商品でもっとも多かったのは健康食品(60.3%)、次いで化粧品(39.0%)でした。
また、購入者がすでに支払っている金額は1000円以下が過半数を占めているというデータもあります。「1000円以下なら安いと思って健康食品や化粧品を購入したら、実は定期購入だった」というケースが比較的多いといえるでしょう。
2、返品は可能?クーリングオフは使えるの?
では、望んでいない定期購入の契約をしてしまった場合、返品や解約は可能なのでしょうか。
クーリングオフが使えるかどうかも含めて、以下でご説明します。
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(1)通信販売でクーリングオフは使えない
結論から言うと、インターネット等で購入の申し込みを行う通信販売では、クーリングオフを使うことはできません。
そもそもクーリングオフとは、一度した購入や契約を、一定期間内であれば無条件で取り消せる制度です。
たとえば、訪問販売や電話勧誘販売、パソコン教室やエステティックの契約などは8日以内であれば可能と定められています。また、物品を一度購入して、それを別の方に再販売すれば特定の利益が得られるなどとする連鎖販売取引などについては20日以内です。
こうしたクーリングオフは、突然の訪問や勧誘だと、その場で適切に判断できなかったり、断りきれずに受け入れてしまったりする可能性が高いと考えられるため、可能となっています。
一方、通信販売の場合、購入者が自主的に商品を購入するのが通常であるため、クーリングオフ制度を利用できません。 -
(2)返品や解約は返品特約に従う
クーリングオフが利用できない通信販売では、返品や解約については返品特約に従うことになります。
返品特約とは、たとえば「商品到着後7日以内に連絡した場合のみ返品に対応」「お客さま都合による返品は不可」「定期購入の解約は1か月分の商品代金を通常価格で支払うこと」などのような、返品や解約に関しての具体的なルールのことです。
返品特約がない場合は、商品が到着してから8日以内であれば「通信販売における契約の解除」をすることができます(特定商取引法第15条の3)。
この場合、クーリングオフと異なり送料が購入者負担となりますが、もし条件を満たしているのであれば早めに対応しましょう。
3、契約者が未成年者の場合は?
ところで、定期購入のトラブルは、未成年者が被害者になるケースもあるとお伝えしました。
実は未成年者の場合、返品特約に関係なく定期購入の解約や商品の返品をすることも可能です。以下、詳しくご説明します。
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(1)契約取消しができる場合
民法第5条は、未成年者の法律行為について定めています。未成年者の法律行為については、原則として、法定代理人の同意が必要とされており、同意がない法律行為については、取り消すことができると定められています。
簡単にいえば、未成年の方がした契約は、親などが同意していないのであれば取り消せる、ということです。
契約を取り消す場合は、対象となる契約や、契約を取消す旨などを記載した書面を、内容証明郵便などで送ります。なお、契約の取り消しは、本人と親、どちらでも可能です。 -
(2)未成年者の法律行為であっても取り消しができない場合
未成年者の法律行為であっても、取り消すことができないケースがあることにも注意する必要があります。
たとえば、その未成年者に結婚したことがある場合は、取り消しできません。ほかにも、金額が親などからもらった小遣いの範囲におさまる場合にも、取り消しできません。極端な例ですが、月10万円の小遣いをもらっていたら、トータル1万円の定期購入契約を取り消すのは難しいでしょう。
また、未成年者が「自分は成年者である」「親の同意を得ている」などと嘘をついた場合(「詐術」といいます)も取り消しできないとされています。
4、定期購入トラブルの相談は弁護士へ
通信販売による返品・解約は、返品特約があればそれに従うことになりますが、返品特約がない場合は、契約自体を解除できる可能性があります。
しかし、事業者からは、解除はできないなどと言われ、トラブルになってしまう場合もあります。もしそのような事態に陥ったときは、弁護士にご相談ください。弁護士は、専門的な知識、経験を活かし、法的な観点から今後取るべき行動の助言をすることが可能です。
また、事業者との交渉を依頼すれば、精神的な負担が軽くなるだけでなく、よりよい解決ができる可能性もあります。
5、まとめ
定期購入のトラブルは、被害額が数千円と比較的低額な場合も多く、泣き寝入りしてしまう方も多いです。しかし、個々の事例によっては、契約の解除ができる場合もあります。
定期購入のトラブルに巻き込まれてしまった場合には、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスにご相談ください。所属弁護士が適切なアドバイスをさせていただきます。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています