交際中に貸したお金を返してほしい! 男女間の金銭トラブルを解決する方法
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交際中の男女間において、食事やデート代を支払ったり、お金の貸し借りをしたりすることはよくあることです。二人の関係が良好な間は、特に問題となることはありませんが、別れ話がこじれると、「交際中のデート代を返せ」、「交際中に貸したお金を返せ」など金銭トラブルに発展することがあります。
交際中に支払ったデート代については、贈与にあたるため返還を求めることはできませんが、交際中に貸したお金を返してもらうことはできるのでしょうか?
今回は、男女間の金銭トラブルについて、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。
1、男女間の金銭トラブルが解決しにくい理由とは?
「給料日前で手持ちのお金がなくなった」、「まとまったお金が必要になった」などの理由で交際相手にお金を貸したという経験のある方もいるでしょう。交際が順調だと安易な気持ちで貸してしまいますが、交際中の男女間であってもお金の貸し借りは、金銭トラブルに発展するおそれがあるので注意が必要です。
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(1)交際相手がもらったという認識でいる
男女間の金銭トラブルが解決しにくい理由としては、お金を受け取った交際相手がお金を借りたという認識がないことがあげられます。
交際中は相手によく思われたいからという気持ちから、借用書を取り交わすこともなく、安易な気持ちでお金を渡してしまいます。そのときに、はっきりと「必ず返して」、「あげたお金ではなく貸したお金だからね」とは伝えていないことも多く、お金を受け取った側は、借りたお金ではなく、お金をくれたと誤解してしまうことがあります。
このように双方の認識にずれがあると、金銭トラブルに発展する危険があるのです。 -
(2)感情的になってしまう
男女間の金銭トラブルが起きるのは、別れ話がきっかけになることが多いです。
貸したお金が返ってこないことで別れ話になることもあれば、浮気や性格の不一致という理由で別れ話になることもあります。別れ話をして揉めている男女は、お互い相手のことを嫌いになり、感情的になりがちです。
そうすると、お金を借りたと認識していたとしても、「腹が立つからお金を返したくない」と考え、返済を拒むケースもでてきます。 -
(3)別れた後は連絡がとれないことも
交際中は、電話やLINEなどで連絡を取り合っていたとしても、別れた後は、連絡先を消してしまったり、LINEをブロックされたりするなどして、交際相手と連絡をとることが難しくなるケースもあります。
直接交渉ができない状況でお金の返済を求めるときは、弁護士などをとおして請求を行ったり、裁判を起こしたりすることを検討せざるを得ないことも考えられます。しかし、住所や連絡先がまったくわからなければ、これらの方法をとることができず、請求自体、困難になってしまうのです。
2、借用書がなくてもお金を返してもらえるの?
交際中の男女間でお金の貸し借りをする場合、借用書を取り交わすことはあまりありません。口約束だけで終わってしまうケースも多いと思います。
いざお金を返してもらおうとしたときに、借用書がなくてもお金を返してもらうことは可能なのでしょうか?
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(1)借用書がなくても契約自体は成立する
お金の貸し借りについて、民法は以下のとおり規定しています。
消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる(民法587条)
つまり、当事者間でお金の貸し借りについての合意をして、お金を受け取るだけで法律上有効に契約は成立することになります。お金の貸し借り契約について誤解している方も多いのですが、借用書がなくても契約は有効に成立するのです。
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(2)借主がお金を借りたことを否定した場合
借用書がなくても契約は有効ですが、借主がお金を借りたことを否定した場合はどうすればよいのでしょうか?
法律上は口頭での契約も有効ですから、借主がお金を借りたことを否定したとしても、借主の返済義務はなくなりません。しかし、借用書がない状態では、口頭でお金の貸し借りの合意をしたことを証明することは難しくなります。
お金の返済を求める場合、お金を貸した側がお金の貸し借りをしたことを証明しなければなりませんが、借用書がなく借主がお金を借りたことを否定しているような場合は、お金を返してもらうことが困難となる可能性があります。 -
(3)借主に資力がない場合
借用書がなくても契約は有効ですが、借主にお金を返済するだけの財産がなければ、返済を求めることは難しくなります。借主に資力がない場合は、仮に裁判をして勝訴判決を得たとしても、強制執行をすることはできません。
借主に資力がなければ、時間と労力をかけて返済を求めたとしてもすべて無駄になってしまうこともあり得ます。そのため、返済を求める際には、借主に返済するだけの資力があるかどうかを十分に調査する必要があるでしょう。
3、借用書以外で証拠と認められるもの
しっかりした借用書があればそれだけでお金の貸し借りを証明できる証拠になります。ただ、お金の貸し借りを証明する手段は借用書だけではありません。
お金の貸し借りを証明する直接的な証拠ではありませんが、以下のものも証拠として認められる可能性があります。
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(1)メールやLINEのやり取り
「お金が足りない」「お金を貸してほしい」というメッセージは、お金を借りる動機があったことを推認させる証拠となります。
また、「返済は来月末まで伸ばしてください」「○月○日に3万円返済します」というメッセージは、お金の貸し借りがあったことを推認させる証拠となります。
このように、交際中のメールやLINEもお金の貸し借りの証拠となりますので、別れたからといってすべて削除するのではなく、大切に保存しておくことが重要です。該当するメッセージだけでなく、その前後のやり取りも重要になりますので、可能であれば、すべてのメッセージを保存しておくようにしましょう。 -
(2)振込明細書や預金の取引明細書
お金を貸した際に現金ではなく振込で行った場合、振込明細書がお金を渡したという証拠になります。また、交際相手から一部は返済され、その返済も振込でなされていたという場合には、預金通帳の写しや預金の取引明細書が証拠となります。
もっとも、振込明細書だけでは、お金を渡したという証拠でしかなく、お金を貸したのか、それとも贈与したのかが判断できません。そのような場合は、先ほどのメールやLINEのやり取りや返済を受けていた預金の取引明細書と併せて証拠とすることで、お金の貸し借りを証明することができる場合もあります。 -
(3)会話の録音
お金の貸し借りに関する会話を録音したものがあれば、それも証拠となります。
お金の貸した時点では何のトラブルもないため、貸した時点の会話を録音しているということはあまりないかもしれません。しかし、別れ話の際に、交際相手方がお金を借りたことを認めたのであれば、十分に証拠になります。
貸したお金の件で話をする場合は、念のため録音をしておくといいかもしれません。
4、貸したお金を返してもらうまでの流れ
交際相手に貸したお金を返してもらうための方法としては、以下のものがあります。
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(1)借主に請求する
まずは、お金を貸した相手にお金を返してもらうように請求します。請求する方法は、電話やメール、LINEでも大丈夫です。相手から返事があれば、返済方法などの話し合いをし、話し合いがまとまった場合は、念のため、その内容を文書に残しておくとよいでしょう。
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(2)内容証明郵便を送る
お金を貸した相手に電話やメール、LINEで請求しても返事がないような場合には、内容証明郵便を送る方法で、もう一度請求してみましょう。
単なる手紙とは異なり、内容証明郵便が届いたということで、相手に心理的なプレッシャーをかけることができ、場合によっては相手から連絡が来る場合もあります。また、内容証明郵便を送り、相手が受領したという事実は、後々の裁判の証拠にもなりますので、相手から何も連絡がなかったとしても無駄になるわけではありません。 -
(3)支払督促
支払督促は、金銭の支払いなどの請求について、裁判所が簡単な書類審査だけで、相手に対して支払いの命令を出してくれる制度です。
通常の裁判と異なり、公開の法廷で当事者が主張と立証を行うのではなく、書面審理のみで判断されます。さらに、裁判所に納める手数料も、通常の裁判の半分の金額でよいとされています。
このように、非常に簡単かつ迅速な手続きで、強制執行に必要な債務名義が得られることが支払督促の最大のメリットです。
しかし、裁判所から支払督促を受け取った相手は、2週間以内に裁判所に「異議」を申し立てることができます。相手から異議の申立てがあった場合、支払督促から通常の裁判手続きに移行するため、支払督促の申立て自体が意味のないものになってしまうのです。
支払督促を利用する場合には、相手が異議を出してくるかどうかを慎重に見極めたうえで行うようにしましょう。 -
(4)少額訴訟
少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを目的とする場合に利用できる裁判手続きをいいます。通常の裁判と異なり、原則として1回の審理で終了し、すぐに判決をもらうことが可能です。
少額訴訟も、支払督促と同様に、簡易かつ迅速な手続きで、強制執行に必要な債務名義が得られるというメリットがあります。しかし、少額訴訟についても、相手の希望で通常の訴訟手続きに移行する場合があるため注意が必要です。
相手が激しく争っているような事案では、通常訴訟に移行する可能性が高いといえますので、支払督促と同様に、手続きの選択は慎重に行う必要があります。 -
(5)通常訴訟
請求する金額が140万円以下の場合には簡易裁判所に、140万円を超える場合には地方裁判所に訴訟を提起することになります。
通常訴訟は支払督促や少額訴訟とは異なり、解決まで半年から1年程度の期間を要する手続きです。また、貸したお金の請求をする場合には、請求する側(原告)がお金を貸したことを証拠により証明しなければなりません。
証拠による立証は専門的な判断を要する事項ですので、争いのある事案では、弁護士に依頼することをおすすめします。
5、男女間の金銭トラブルを弁護士に相談するメリット
男女間の金銭トラブルを弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
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(1)冷静に話し合いを進めることができる
男女間の金銭トラブルは、別れ話のもつれから感情的になっていることもあり、当事者同士で話し合うと冷静な話し合いができないことがあります。「お金を返してもらうために話し合いに行ったのに、けんかになってしまい、相手から警察に通報された」などということは避けなければなりません。
法律の専門家である弁護士が間に入り、法律論を中心とした交渉を行うことで、相手も冷静になり、話し合いがうまく進められる場合もあります。 -
(2)有効な解決手段の提案ができる
男女間の金銭トラブルは、借用書などを取り交わしていない場合も多く、お金を貸したことを証明することが難しい事案も多くあります。
借用書以外にどのような証拠があればお金を貸したことを認めてもらえるのかということは、法律の知識・経験がなければ判断がつきません。
また、内容証明を送る場合でも、弁護士の名前で送る場合と、あなた自身の名前で送る場合とでは、相手に与える心理的プレッシャーも異なります。弁護士に相談することで、あなたの現状を踏まえた有効なアドバイスを受けられると期待できるでしょう。
6、まとめ
男女の金銭トラブルは、特に交際関係にあった男女特有の関係性など諸事情があるため、なかなか解決が難しい事案でもあります。冒頭で述べたとおり、デート代やプレゼントとして渡した品物や金銭についての返還を求めることはできません。しかし、その他の理由でお金を貸していたなどの事情があれば、返還を求めることができる可能性が出てきます。弁護士に相談することで、「もう返ってこないだろう」と諦めていたお金についても請求できる可能性がでてくるかもしれません。
自分で駄目だと判断し、諦めてしまう前に、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士に、一度ご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています