プライバシーの侵害をされたときの損害賠償を請求するポイントとは?
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名誉毀損事件やプライバシーの侵害などにまつわるニュースは、有名人が関係する事件であれば大きく報道されるものです。しかし、不特定多数の目に触れるインターネット上に書き込まれることで被害を受けるケースも増えてきています。
万が一、偽の情報や住所の書き込みなどによって日常が脅かされてしまったら……。どのように対応すべきか、そして、損害賠償請求が行えるのかについて、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。
1、プライバシーの侵害とは?
もし誰かが、勝手にあなたの年収をインターネットのサイトに実名入りで書き込んだとしましょう。該当の書き込みを見た人が、あなたに声をかけてきたら……。恐怖を感じるのは当然のことです。
このようなケースに該当するときは、プライバシーの侵害の被害にあったとして、刑事罰を問えるのでしょうか。
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(1)プライバシーの侵害となる基準について
刑法では、プライバシーの侵害についての定めはありません。よって、そのほかの要因がない限り、刑法犯として取り締まってもらうことは困難といえるでしょう。
一般的にいわれる「プライバシーの侵害」の基準としては、憲法13条の人格権(幸福追求権・個人の尊重)が法的根拠となると考えられます。ただし、損害賠償請求を行うときは、相手の行為が民法709条の「不法行為」にあたる必要があります。
具体的には、以下の状況であれば、プライバシーの侵害と評価され、損害賠償請求が認められる可能性があるでしょう。
- プライベートの事実か、事実と受け取られる可能性がある
- 一般の方を基準として、公開を欲しないであろうと思われる内容である
- 公開されるまで一般に知られてなかった
- 公開されたことで、被害者が不快・不安に思った
プライバシーの侵害が認められれば、慰謝料請求などの損害賠償も認められる可能性がかなり高くなります。また、本人の許可なく顔や体を撮影・公表されないよう保護を受けられる権利である「肖像権」もプライバシー権の範囲に入り得るでしょう。
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(2)プライバシーの侵害と認められない場合
現状、日本ではプライバシーの侵害の範囲はあいまいな状況にあるといえるでしょう。「どこまでが度を越したものなのか」は裁判で争ってみないとはっきりしないということも少なくありません。また、該当の人物が芸能人などの著名人と、一般の方では、プライバシーの範囲が異なると考えられます。
もっとも大きな理由は、日本にプライバシーの侵害を明確に規定した法律がないことと、以下のような調整を必要とする権利があるからでしょう。
- 表現の自由
- 知る権利
- 報道の自由
これらは社会的関心事などの世論に左右されるので、確固たる基準が確立されているわけではありません。仮に、名誉毀損の容疑で加害者が書類送検されたとしても、不起訴になることも少なくなく、最終的には損害賠償請求をできるかどうかについても裁判などで争うことになる可能性があります。
また、あまりにも荒唐無稽な情報で信じる人が少なかったりする場合も、プライバシー侵害と認められないケースになると想定できます。拡散する範囲が友達同士の間の会話というだけでも、プライバシー侵害にはなりにくいでしょう。
ただし、もちろん明らかに許容範囲を超え、名誉毀損として罪に問うことができるプライバシーの侵害もあります。お困りの際は一度弁護士に相談してみることをおすすめします。年収や住居特定につながる書き込みが知らぬ間に投稿されている場合は、損害賠償も視野に入れてのアドバイスができるでしょう。 -
(3)プライバシーの侵害と名誉毀損罪の違いは?
名誉毀損罪は、刑法第230条で規定されている犯罪です。罪に問われることとなる場合は、公然の場で第三者を具体的な事実を摘示して誹謗中傷するなどによって、社会的評価を低下させたような場合です。
また、虚偽の情報をインターネットなどに書き込んで評判を下げられたような場合も、被害を受けたことになり得ます。名誉毀損罪のケースは、その書き込み内容の真偽は問われません。たとえ虚偽の内容であっても、あなたの名誉が傷つけられたと認められれば、罪に問うことができるという点が、プライバシーの侵害とは異なるポイントとなります。
ただし、名誉毀損罪には例外が設定されています。書き込み内容や発言などが公共の利害に関する事実にかかり、公益目的のある真実であった場合には、例外的に罰せられないとされています(刑法230条の2)。
たとえば政治家の汚職などの報道は、相手の評判を落とすものであっても、公益目的のあるものです。真実であった場合は、罰せられません。
一方、正しい情報であっても、本人がほかの人に知られたくない情報であれば、その意思を無視して公表されてしまうと、プライバシーの侵害として損害賠償請求をすることができる可能性があります。
名誉毀損とプライバシー侵害の根本的な違いは、名誉毀損であれば、事実無根であることを証明すれば、名誉回復できる場合がある一方、プライバシーの侵害では、真実が明かされてしまうことがほとんどであるため、名誉の回復が難しいという点が挙げられます。インターネットへ書き込みされてしまえば拡散されてしまうこともあります。
そうなれば、名誉の回復は難しく、相当の期間、被害が残ってしまうケースが考えられます。その点で、プライバシーの侵害のほうが名誉毀損よりも損害が大きい場合があるかもしれません。
だからこそ、正当な損害賠償金の請求を考えるのは当然のことといえます。
2、ネット上に個人情報が拡散したときの対処方法
残念ながら、一度ネットに流出した情報はなかなか自然には消えてくれないでしょう。逆に、あなた自身が加害者にならない手だては、「真偽不明の事実を拡散しないこと」の1点に尽きます。
ただし、対処方法がまったくないわけではありません。また、このような被害を受けたのなら、損害賠償も視野に入れた対処方法を考えて当然です。それでは、ここから損害賠償も念頭に置きながら、どのように対処すべきかを解説します。
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(1)プライバシーを侵害している情報の削除を依頼する
まず、書き込まれたサイトがわかるのなら、そのサイトに直接プライバシーの侵害になるということで、情報の削除を依頼します。サイトによっては、削除受け付けのフォームを設置し、削除方法を明言しているケースもあるので従いましょう。
もしも、そのような削除受け付けのフォームがなくても、お問い合わせフォームなど、サイトの運営者と連絡が取れるのであれば、削除依頼をすることをおすすめします。ただし、感情的にはならないように気をつけてください。たとえ正当な要求であろうと、相手があなたの削除要求を、いわゆる荒らしとみなしてしまう可能性があります。
それでも反応が鈍いのであれば、弁護士を通して削除依頼をすることをおすすめします。個人で削除依頼をするよりも、真剣に受け止め、早急に対応してくれる可能性が高まります。ただし、一部のサイトでは、弁護士が代理人として削除依頼しただけでは、反応が鈍いケースもあるようです。
その場合、情報通信技術関連の企業が多く所属する一般社団法人テレコムサービス協会が作成したガイドラインにそって削除請求を行います。これは個人でも請求できますが、法的な知識が必要になる記入項目が多いので、弁護士に相談すると煩雑な手間が省け、正確な申請ができます。弁護士であれば、その先の損害賠償請求も見据えてのアドバイスが行えます。まずは相談してみることをおすすめします。 -
(2)プライバシーの侵害をしている人を特定する
すぐにインターネット上に書き込まれたプライバシーの侵害情報を削除してもらっても、同じ人がまた投稿、もしくは、過去の投稿を別の人物が拡散すれば、いたちごっこになってしまいます。そのような事態を防ぐためには、投稿者を特定する必要があるでしょう。
また、損害賠償請求をするにしても、相手が特定できなければ、裁判を起こすことができませんので、この点からも、投稿者を特定する必要があります。
個人がガイドラインにそった削除依頼を行い、投稿者を特定してほしいと依頼しても「発信者情報の開示」がされた事例はほとんどありません。しかし、裁判手続きを取る形でなら、効果は絶大です。裁判所において、発信者情報の開示が認められれば強制的に従わせることもできます。
発信者情報の開示請求は、プロバイダ責任制限法第4条に基づく情報開示請求です。これはインターネット上で他者を誹謗中傷するような表現を行った発信者の情報について、プロバイダに対して開示を求める制度なので、ぜひ利用していきましょう。 -
(3)プライバシーの侵害をした人に損害賠償請求をする
プライバシーの侵害をした相手の情報が開示されれば、損害賠償請求訴訟を起こすことができます。損害賠償として請求できる金額は、一般的に慰謝料および発信者特定のための調査費用、弁護士費用などが該当するでしょう。過大な請求はもちろん、過少すぎる請求もあなたにとってプラスにはなりません。慰謝料の額は状況によって異なるため、弁護士に相談してください。
また、損害賠償請求の裁判を意識している場合は、証拠を保全することも大事です。書き込みをされた日付とともにスクリーンショットで画像として保存しておくことをおすすめします。即時に削除してほしいという気持ちもあると思いますが、賠償請求を行う際、書き込んだ事実まで否定される場合があるため、証拠の保全は必要不可欠な作業となります。
3、弁護士に依頼するメリット
発信者情報の開示などは煩雑な手続きが伴います。弁護士に依頼することで、物理的には、あなた自身が抱える本来の業務に支障が出ないというメリットがあるでしょう。また、ひとりで戦っているわけではないという安心感も得られるはずです。
他方、相手側にとっては、弁護士から発信者情報の開示などの依頼が来ているという時点で、プレッシャーを感じる材料となることもあります。多くのケースで、迅速に削除対応や、謝罪を行う可能性が高まります。
相手を特定したのち、実際に受けた損害に対応した損害賠償請求を行う際も、経験豊富な弁護士のアドバイスや対応によって、事態がスムーズに進行する可能性が高まります。悪質な場合は、損害賠償請求だけではなく刑事告訴にまで発展することもあるでしょう。その場合の手続きなども、事件の冒頭から弁護士がかかわっていれば、より強力な証拠を提出することが可能となります。
住所などを暴露する書き込みがなされたとき、警察へ行っても即時に対応してもらえないこともあるようです。まずはひとりで悩まず、弁護士に相談してみることをおすすめします。刑事罰を問えなくても、まずは削除を依頼できますし、相手を特定できれば損害賠償請求が可能となります。
4、まとめ
プライバシーの侵害は、損害賠償請求の対象案件です。インターネットのことがわからず、被害をどう食い止めていいかと迷っているようでしたら、一度ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスに相談してください。削除請求の経験が豊富な弁護士とともに、一丸となってアドバイスを行います。
ひとりで悩みを抱えていても、事態は解決しません。弁護士に相談することによって、対応方法が明確になり、気持ちが安定するという方が多いようです。
わからないからこそ、プライバシーの侵害に関する裁判経験が豊富な弁護士への相談をおすすめします。こちらが弁護士に依頼して裁判もいとわない姿勢を見せれば、いいかげんな逃げの対応をしている相手でも、態度に変化が現れるでしょう。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています