ストーカー行為の逮捕条件は? 早期釈放のためにすべきこととは

2024年12月19日
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ストーカー行為の逮捕条件は? 早期釈放のためにすべきこととは

大阪府警のサイトでは、ストーカー被害者に向けた動画をはじめとした各種コンテンツを用意し、ストーカー被害防止を呼び掛けています。ストーカーと聞くと、とても卑劣なものと思われる方もいるでしょう。しかしご自身がそう考えておられるのに、ご自身がストーカー行為に該当する行動をしていたというケースは少なくありません。

そこで本コラムでは、ストーカー規制法の規制対象となりうる行為から逮捕条件、逮捕されてしまったとき、早期に釈放されるためにできることについて、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。


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1、ストーカー規制法とは

ストーカー行為を規制する法律は「ストーカー規制法」と呼ばれますが、正式には「ストーカー行為等の規制等に関する法律」といいます。(以下、ストーカー規制法と呼びます。)

ストーカー行為については、ひと昔前まで法律で規制されておらず、脅迫や住居侵入など被害者の身に危険が差し迫って、初めて逮捕されるような状況でした。しかし平成12年11月24日に「ストーカー規制法」が施行され、規制対象となる行為をした者は逮捕されるようになりました。その後、悪質なストーカー事件をきっかけに、何度か法改正が行われています。

令和3年(2021年)にストーカー規制法が改正されたことにより、住所・勤務先など通常いる場所に加え、実際にいる場所を見張り・押し掛け・うろつく行為や、拒まれたにもかかわらず連続してメールやSNSメッセージを送る行為が新たに規制対象となりました。さらに、GPS機器等を用いて位置情報を無断で取得する行為も規制対象となりました。

  1. (1)ストーカー規制法で規定される行為

    ストーカー行為にあたる定義については、ストーカー規制法第2条第4項で以下の行為であると示しています。

    • 同一の者に対し、つきまとい等の行為を反復して行うこと
    • 同一の者に対し、位置情報無承諾取得等を反復して行うこと

    第2条4項
    この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(第一項第一号から第四号まで及び第五号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)又は位置情報無承諾取得等を反復してすることをいう。


    具体的な「つきまとい等」として規定されている行為は、以下の8つです。

    • つきまとい・待ち伏せ・立ちふさがり・見張り・押し掛け・住居付近をうろつく
    • 監視していると告げる、知り得る状態にする
    • 面会・交際等の要求
    • 粗野また乱暴な言動
    • 無言電話、連続した電話、ファクシミリ、電子メールの送信
    • 汚物などの送付
    • 名誉を傷つける
    • 性的羞恥心の侵害


    直接的につきまとう行為だけでなく、メールやSNSなどでのメッセージを送る行為を含め、相手の望まないことを要求する行為や、嫌がらせ行為も含まれます。

    また、「位置情報無承諾取得等」として規定されている行為は、以下通りです。

    • 相手の了承を得ず、相手の位置情報を取得・収集・把握する行為
    • 相手の承諾を得ず、GPSなど位置情報がわかる装置などを取り付ける行為


    ストーカー規制法に規定する行為を用いて、相手に心身の安全や日常の平穏を脅かしたり、名誉毀損がなされたりするような不安を覚えさせる行為自体も禁止されています。

  2. (2)「恋愛感情」がないと違法にはならない?

    ストーカー規制法では、つきまとい等のストーカー行為をする目的として、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」と定めています。(第2条)

    また、「ストーカー行為等の規制等に関する法律等の解釈及び運用上の留意事項について(通達)」(平成29年5月26日付け警察庁丙生企第63号)では、恋愛感情のほか、好意の感情については「女優などに対する憧れの感情」も含まれるとしています。

    そのため、恋愛感情がないとストーカー行為に該当しない、ということはなく、相手に対する憧れといった感情でも逮捕される可能性があります。

  3. (3)ケースによって罰則が異なる

    ストーカー規制法では、どのような流れで罰則に至ったかによって、その量刑が異なります。

    ①「警告」や「禁止命令等」が出されるケース
    つきまとい等の行為がみられる場合、まずは「警告」や場合によっては「禁止命令等」が出されます。
    禁止命令等が出されているにもかかわらず、それに違反してストーカー行為をした場合、罰則は2年以下の懲役又は200万円以下の罰金です。

    一方、上記違反をしてもその行為がストーカー行為にならなかった場合、罰則は6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

    ② ストーカー行為でそのまま罰則に至るケース
    行為がストーカー行為に該当し、禁止命令等を経ずにそのまま処罰されると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金です。

  4. (4)時効について

    ストーカー規制法における時効は3年です(刑事訴訟法 第250条6項)。時効が起算されるのは、犯罪終了時です。

  5. (5)ストーカー行為が別の罪になる場合

    ストーカー行為に該当する行為は、エスカレートすると別の罪に問われることもあります。場合によっては、罰則の量刑がストーカー規制法によるものよりも重くなるので注意が必要です。

    以下に、いくつかご紹介します。

    ● 名誉毀損
    インターネット上で相手について誹謗中傷を行った場合、名誉毀損に問われ、3年以下の懲役もしくは禁錮又は50万円以下の罰金となる可能性があります。

    ● 脅迫罪
    乱暴な言動が「殺す」など脅迫的な言動になった場合、脅迫罪に問われ2年以下の懲役又は30万円以下の罰金となる可能性があります。

    ● 暴行罪・傷害罪
    相手に言うことを聞かせようと殴ったり、それによって怪我をさせたりした場合は暴行罪や傷害罪が成立し、前者では2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留もしくは科料、後者では15年以下の懲役又は50万円以下の罰金となる可能性があります。

    さらに、物理的な被害だけでなく精神的な被害を与えた場合も、傷害罪に問われます。例として、執拗につきまとったり電話をしたりして、相手がうつ病などになってしまうケースが考えられます。

2、ストーカー行為が発覚したら「警告」「禁止命令」が出される

ストーカー行為が発覚すると「警告」もしくは「禁止命令」が出されます。ここではその内容と違いについて解説します。

  1. (1)警告とは

    ストーカー被害に遭った被害者は、警察へ申し出ることにより、ストーカー規制法に基づき、警察本部長または警察署長の名前で「警告」をしてもらうことができます。
    警告が出される場合、警告を受けた者は警察署などに呼び出され、事実関係を確認したうえで、つきまとい等やストーカー行為をはたらかないよう、厳しく注意や指導をされることになります。

    警告は、禁止命令とは異なり、これに違反したことのみで罰則が科されることはありません。

  2. (2)禁止命令とは

    警察の警告を無視してつきまとい等を繰り返していたり、被害者が法的な措置を望んだりした場合は、法的措置が取られます。これを、公安委員会による「禁止命令」といいます。

    通常、「禁止命令書」などの文書によって伝えられますが、緊急時は文書よりも先に口頭で告げられることもあります。禁止命令の発出にあたっては、必ず相手方の意見を聞く「聴聞」が行われます。そのため、被害者の申告だけで、一方的に命令が発出されることはありません。

    禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合には、「2年以下の懲役」または「200万円以下の罰金」が科されることになるため注意が必要です。

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3、ストーカー規制法による逮捕と釈放までの流れと行うべきこと

ストーカー行為を続けていると、最終的にストーカー規制法により逮捕されてしまう場合があります。逮捕されると、長期間身柄を拘束される可能性があります。

  1. (1)勾留によって最大23日間の拘束

    逮捕後は、まず警察による捜査が行われ、48時間以内に検察に身柄を送るか、釈放するか判断されます。身柄を検察に送致されると、検察官は24時間以内に勾留請求するか判断します。
    被疑者が証拠を隠滅したり逃走したりする恐れがあると判断されると、検察官は裁判所に対して勾留請求します。裁判所が勾留請求を認めると、勾留(身柄の拘束)という流れです。 勾留は、原則10日間、最大20日間ですが、警察による捜査から検察が被疑者を勾留請求するのかの判断までに3日間かかる可能性もあるため、実質的には最大で23日間自由を制限される可能性があります。

    また、もし起訴されてしまった場合、略式起訴の罰金刑であれば釈放が望めますが、公判請求があり刑事裁判になってしまうと、原則として拘束はそのまま続くことになります。

  2. (2)有効な対処方法は「示談」

    「示談」とは裁判ではなく、当事者同士で話し合い、解決することです。示談の成立は、起訴・不起訴の判断や、起訴後の量刑の決定において影響を及ぼします。特に不起訴を目指すのであれば、早めに動いて示談を進めることが重要です。

    ● 示談は弁護士を通して進めるのが現実的
    身柄を拘束された後は、物理的に行動が制限されているため自力で示談を進めるのは困難です。また仮に自由に動けたとしても、直接連絡を取ろうとすると被害者から拒否されたり、まともな交渉にならなかったりすることも考えられるため、示談は弁護士を通して進めるのが現実的です。

    ● 示談金について
    ケース・バイ・ケースのため、一概にはいえませんが、被害者の被害感情、または被害自体が大きかったり、ストーカー行為をした側の経済力が高かったりするときは示談金が高額になる場合があります。一方、被害者にも落ち度があったり、行為が悪質でなかったりするときは示談金が減額されることも考えられます。

4、まとめ

ストーカー行為をすると、逮捕されたり前科が付いたりしてしまう可能性があります。もっとも、話し合うために連絡をしているだけなど、ストーカーとみなされる行為をしている意識がないケースは少なくないでしょう。
さらに、予期せぬタイミングで逮捕されてしまった場合は、突然のことに思考がまとまらず、うまく対応できないことも考えられます。また、拘束により精神的にも肉体的にも厳しい中、ひとりで事態を好転させるのは、簡単ではありません。

このような状況で冷静な対応をするためにも、警察から連絡が来た時点で、まずは弁護士に相談してください。ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士やスタッフが、全力でサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています