架空請求詐欺で逮捕されたらどうなる? 刑罰や逮捕後の流れを解説
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特殊詐欺の手口のひとつとして「架空請求詐欺」が挙げられます。
大阪府警のホームページでも手口の詳細や被害防止に向けた注意点が広報されているため、見破られる確率はあがっていますが、依然として代表的な手口のひとつであることは間違いありません。
架空請求詐欺で逮捕されてしまうと、詐欺グループの一員として厳しい取り調べと重い処罰を受けることになります。
もし、架空請求詐欺の犯人として逮捕されてしまうと、逮捕後はどのような刑事手続きを受けるのでしょうか?
刑罰を受けて前科がついてしまう事態は避けられないのでしょうか?
本コラムでは、架空請求詐欺で逮捕されてしまった場合の刑罰や刑事手続きの流れについて、大阪オフィスの弁護士が解説します。
1、架空請求詐欺とは?
架空請求詐欺とはどのような行為なのでしょうか?
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(1)代表的な手口
架空請求詐欺は、特殊詐欺の中の振り込め詐欺4類型のひとつに分類されている手口です。
携帯電話やスマートフォン、パソコンのメール、ハガキなどの方法で、架空の料金請求や訴訟手続きの費用を請求し、金銭をだまし取ります。 -
(2)裁判所の手続きを悪用する場合もある
少額訴訟や支払督促といった裁判所の手続きを悪用し、無視したことで被害者が法的に不利になる手口も存在しています。
また、架空の弁護士事務所の名称を使用したり、官公庁の名前を使って連絡先だけを詐欺グループのものに差し替えたりする手口もあります。
2、架空請求詐欺の刑事責任
架空請求詐欺はどのような犯罪になるのでしょうか?
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(1)詐欺罪
架空請求詐欺の多くが、刑法第246条の「詐欺罪」に該当します。
詐欺罪とは、他人を欺いて金銭をだまし取る犯罪です。
不特定多数の相手に虚偽の請求をし、金銭を支払わせる架空請求詐欺は、詐欺罪に該当する可能性が高いです。
代表的な例として、携帯電話などのメールを使い「サイトの利用料が発生しています」などの架空内容で代金を請求し、金銭をだまし取る手口が該当します。
また、アダルトサイトなどでは「利用無料」をうたいながら高額の料金が発生する内容の利用規約を隠して請求するパターンもありますが、これも詐欺罪に該当するでしょう。
詐欺罪に該当した場合、10年以下の懲役刑が科せられることになります。 -
(2)恐喝罪
恐喝罪は刑法第249条に規定された犯罪です。
「人を恐喝して財物を交付させた者」が該当し、相手に暴力を加えたり、脅迫したりして金銭を脅し取れば恐喝罪になります。
「早く支払わないと裁判で訴える」「自宅や会社に取り立てに行く」などの脅迫があれば恐喝罪に該当するでしょう。
恐喝罪も詐欺罪と同じく10年以下の懲役が科せられます。
3、架空請求詐欺で逮捕された場合の刑事手続きの流れ
架空請求詐欺で逮捕されてしまった場合、どのような刑事手続きを受けるようになるのでしょうか?
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(1)逮捕
架空請求詐欺の多くは、被害者の申告によって警察が捜査し、裁判所から逮捕状の発付を受けて逮捕される「通常逮捕」が用いられます。
警察に架空請求詐欺の被疑者として逮捕されると、警察署の留置場で身柄を拘束されたうえで取り調べを受けることになります。
詐欺グループでの立場やどのように犯行に関与したのかなど、詳しく取り調べられるでしょう。
逮捕から警察署での留置は最長48時間です。
警察に逮捕された身柄は48時間以内に検察官へと引き継ぎます。この手続きを「送致」といいます。
ニュースなどでよく耳にする「送検」とはこの手続きです。 -
(2)勾留
送致を受けた検察官は、送致から24時間以内に起訴するか、不起訴又は処分保留で釈放するか、勾留請求するかを判断します。
この段階では警察の捜査が尽くされていない場合が多く、検察官が起訴・不起訴を判断するには材料が足りません。
そこで、検察官は勾留請求し、裁判官に身柄拘束の期間延長を請求することが多いです。
裁判官が勾留を認めた場合、被疑者は原則10日、延長で10日の最長20日間にわたる身柄拘束を受けることになります。 -
(3)起訴
勾留が満期を迎える日までに、検察官は起訴するか、不起訴とするかを判断します。
犯罪を証明する証拠が十分にそろっていて、刑事罰を科すべきだと判断された場合、検察官は公判請求して刑事裁判を起こします。
証拠が不十分である、そもそも犯人ではない、犯罪があったことに疑いはないが刑罰を科すまでの必要はないと判断された場合、検察官は不起訴処分を下します。
不起訴処分が下された場合、被疑者は身柄拘束を解かれて釈放されます。 -
(4)裁判
検察官に起訴されると、刑事裁判が開かれます。
刑事裁判の場では、警察・検察官が捜査してそろえた証拠が提示され、裁判官が犯罪の成否やどの程度の刑罰が適切であるかを審理します。
起訴されて刑事裁判が結審するまでの間は、裁判を維持するために被告人としてさらに勾留を受けることになります。
この期間、保釈が認められた場合は保釈金を納めることで一時的に身柄拘束が解かれます。しかし、実刑判決を受けて懲役刑が決まれば再び身柄拘束を受けてしまいます。
4、弁護士に依頼するメリット
架空請求詐欺の容疑者として逮捕されてしまった、または逮捕されるおそれが非常に高いといったケースでは、すぐに弁護士に相談して対策を講じるのが賢明です。
刑事事件の弁護活動は「スピードが命」だといわれています。
とくに逮捕されてしまった事件では、勾留・起訴までのタイムリミットがあるため、素早い弁護活動が求められます。
ここでは「今どのような状況にあるのか」という段階に応じて、弁護士に依頼するメリットを解説しましょう。
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(1)逮捕されていない場合の弁護活動
架空請求詐欺に関わってしまったが、まだ警察に逮捕されていないという段階であれば、尽くせる手段はたくさんあります。
まず考えられるのは被害者に被害金を弁済して示談で収める方法です。
架空請求詐欺では、ほとんどのケースで被害者のリストが存在しています。
もともとは悪質なサイトなどから流出してしまった個人情報ですが、これをもとに被害者をたどり、実害があった被害者に被害金を弁済して示談成立を目指します。
被害者から「警察への被害届は見送る」または「すでに提出した被害届は取り下げる」といった許しを得られれば、事件化し逮捕に進む可能性が低くなります。
また、まだ逮捕されていない段階であれば警察に「自首」する方法もあります。
捜査機関が被疑者として特定していない段階で自首し、捜査に協力することを約束すれば、逮捕を回避できる可能性が高まるでしょう。
自らが犯人として名乗り出ることになるため、捜査対象となってしまう事態は避けられませんが、検察官の起訴の判断や、裁判官の刑の判断に有利な事情となります。 -
(2)逮捕直後の弁護活動
警察に逮捕されると、勾留が決定するまでの最長72時間は家族であっても一切の面会・連絡ができません。
外部との唯一の連絡手段となるのは、接見交通権をもつ弁護士だけです。
逮捕直後のタイミングなら、弁護士に依頼することで取り調べに向けた適切なアドバイスが受けられるほか、今後の刑事手続きなどについて詳しく教えてもらえるでしょう。
また、捜査機関に働きかけ勾留による長期の身柄拘束を防いだり、勾留の決定について準抗告などの手続きで対抗したりといった弁護活動も期待できます。 -
(3)起訴前の弁護活動
起訴前の段階であれば、まず目指すべきは不起訴処分の獲得です。
検察官が起訴・不起訴を決めるとき考慮事由のひとつとなるのが示談の成立です。
被害者との示談が成立していれば、検察官の判断は「被害はすでに回復されている」として不起訴に傾く可能性があります。
被害者との示談交渉は、被疑者本人やその家族では難しいと言わざるを得ません。
逮捕勾留されている被疑者本人は被害者に会うことができないし、被疑者側の家族であれば被害者から面会を拒まれるケースが多いからです。
弁護士が代理人として示談を進めれば、公正な第三者として被害者が話を聞いてくれ、示談交渉がまとまる可能性が高まります。 -
(4)起訴後の弁護活動
起訴されてしまった場合は、量刑が軽くなるよう有利な材料を集める必要があります。
詐欺グループのなかでも従属的な立場だった、すでに被害者への弁済がなされているなどの状況があれば量刑が軽くなる可能性が高まるでしょう。
弁護士に依頼すれば、被告人にとって有利となる証拠をそろえて裁判所に提出することで、執行猶予付きの判決を目指すことができます。
5、まとめ
特殊詐欺事件は依然として多数の被害が発生しており、警察庁・全国警察は取り締まりを強化しています。
「楽に稼げる」「簡単なアルバイトで日給○万円」といったうたい文句で架空請求詐欺グループの一員として巻きこまれてしまうケースも少なくありません。
思いがけず自分自身や家族が架空請求詐欺の犯人として逮捕されてしまった場合は、ひとりで悩むよりもすぐに弁護士に相談するのが賢明です。
もしご自身や家族の誰かが架空請求詐欺の犯人として扱われてしまい困っているという方は、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまでご相談ください。
ごく早い段階であれば逮捕の回避に、逮捕されてしまった場合でも早期の釈放や不起訴処分、刑罰の軽減に向けて、刑事事件の弁護実績が豊富な弁護士が全力でサポートします。
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