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自己破産での財産隠しは詐欺破産罪に! 破産犯罪の典型行為と刑罰

2021年05月19日
  • 財産事件
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自己破産での財産隠しは詐欺破産罪に! 破産犯罪の典型行為と刑罰

令和3年1月分の司法統計月報(速報値)によると、大阪高管内の破産事件815件のうち、自己破産は811件、うち自然人は774件に上りました。

自己破産をすると、借金がすべてなくなりますが、破産の際に「絶対にしてはならないこと」があります。それは、「詐欺破産」です。

財産隠しのために財産を他人に渡したりすると、詐欺破産罪という犯罪行為が成立してしまうおそれもあり、注意が必要です。

破産に関連する犯罪を「破産犯罪」と言うこともありますが、今回はその中でも、もっとも典型的な犯罪行為である「詐欺破産罪」について、弁護士が解説します。

1、破産犯罪とは

破産犯罪とは
  1. (1)詐欺破産罪は、典型的な破産犯罪

    自己破産をするとき、1つ間違えると犯罪が成立してしまう可能性があります。日本には破産に関連する犯罪行為の類型があり、それらは刑法犯ではなく、破産法に規定されています。
    自己破産は、どれだけ多額の借金があっても、免責を受ければ基本的にすべて支払わなくてよくなるという、絶大な効力を持った手続きです。しかし、強力な効果がある分、不正が行われることも多いのです。そこで、破産時の不正行為を取り締まるために、さまざまな類型の犯罪行為が規定されています。
    そうした破産犯罪の中でももっとも典型的で、刑罰も重いものが「詐欺破産罪」です。

  2. (2)詐欺破産罪以外の破産犯罪

    詐欺破産罪以外にも、以下のような破産犯罪があります。

    • 特定の債権者に対する担保の供与等の罪(破産法266条)
    • 破産管財人等の特別背任罪(破産法267条)
    • 説明や検査を拒絶した罪(同法268条)
    • 重要財産開示拒絶の罪(同法269条)
    • 業務や財産状況に関する物件の隠滅等の罪(同法270条)
    • 審尋における説明拒絶等の罪(同法271条)
    • 破産管財人等に対する職務妨害の罪(同法272条)
    • 債権者が破産者等に対して面会を強要した場合にも刑罰が適用されます(同法275条)


    破産犯罪が成立してしまうと、当然、「犯罪」ですから警察に逮捕されたり刑事裁判になったりする可能性があります。
    そうなったら、もはや借金どころの話ではなくなります。自己破産を成功させるには、破産犯罪に手を染めてしまわないように、注意しながら進めるべきです。

2、詐欺破産罪とは

詐欺破産罪とは
  1. (1)詐欺破産罪の基本

    破産犯罪の中でも重罪とされている詐欺破産罪とは、どのような犯罪なのでしょうか?

    これは、基本的に破産者が自分の財産を隠匿した場合に成立する犯罪です。

    自己破産をすると、免責を受けることで借金はすべてなくなりますが、反面、破産者のほとんどの財産が失われてしまいます。
    そこで、財産を少しでも残したいと思い、隠してしまう人が多いのです。また隠すことができない場合、「債権者に支払うくらいなら壊してしまおう」と思って財産を毀損する人もいます。
    さらに、あえて新たに不利な条件で借金をして、これまでの債権者を不利な状況に追い込もうとする人もいます。(破産法では、債権者が増えると1人1人の債権者への配当が減るため、新たに借金すると既存の債権者が害されます)

    このような破産者の不当な行為がまかり通ってしまうと、破産という制度に対する信頼も揺らいでしまい、破産制度が立ちゆかなくなる可能性が高まります。
    そこで、破産手続き上、認めるべきではない不当な行為を類型化して、詐欺破産罪として取り締まっているのです。

  2. (2)詐欺破産罪に該当する行為

    詐欺破産罪で禁止される行為は破産法265条1項に列挙されており、具体的には以下のような行為が問題となります。

    • 債務者財産を隠匿・損壊した
      たとえば、金品を隠したり、価値のある物品を壊してしまったりした場合です。
    • 債務者の財産を譲渡したり、債務の負担を仮装したりした
      知人や親族などに財産を譲渡したりあるいは譲渡を仮装したり、実際にはしていない借金をしたかのように見せかけたりする行為です。
    • 債務者の財産の現状を変更して、価値を減少させた
      たとえば、価値のあるものにわざと傷をつけて価値を下げる場合です。
    • 債務者の財産を債権者に不利益になるように処分した、債権者に不利益な債務負担をした


    今ある財産を、不当な廉価で売却してしまったり、不必要に高利な借金をしたりした場合などです。

    また、詐欺破産罪が成立するためには「債権者を害する意図」が必要です。

  3. (3)いつ行われる行為が問題になるのか

    詐欺破産罪が成立するためには、いつ、行われた行為が問題になるのでしょうか?
    たとえば、破産の3年前なのか、1年前なのか、1ヶ月前なのか、あるいは破産手続き開始決定後なのかなどが問題です。
    破産法上、詐欺破産罪の成否について「破産手続開始の前後は問わない」と書いてあります。そこで、手続き開始決定後だけではなく、開始前の財産隠匿行為などであっても処罰の対象になる可能性があります。
    たとえば、すでに負債の返済が困難となっており、自己破産しなければ再生不能な状態で、財産を廉価で処分したり隠したり毀損したりすると、詐欺破産罪になってしまう可能性が高いです。ただし、まだ十分に返済できていて、破産する必要がない時点での行為であれば、処罰されません。
    一般的には、こうした判断を適切にできない方が多いでしょうから、自己破産前に財産を処分してよいか迷ったときには、弁護士に相談してからにした方が安心です。

  4. (4)協力者にも詐欺破産罪が成立する

    ■破産法265条1項によって犯罪が成立するケース

    詐欺破産罪は、直接の行為者である債務者自身のみならず、詐欺行為の相手となった第三者にも成立する可能性があります。
    つまり、先に紹介した行為のうち、「破産者が債権者に不利益に財産処分をした、あるいは不利益な債務を負担した」というものがあります。このような場合、誰かが「取引の相手」または「債権者」となっているはずです。

    そこで、破産法は、こうした取引相手や債権者となる第三者に対しても、情を知って、つまり他の債権者を害する意図でなされる行為であることを知りながら相手方となった場合には、詐欺破産罪が成立すると規定しています。つまり、破産者から不当に安く財産を譲り受けたり、高利で破産者にお金を貸し付けたりすると、それ自体が犯罪になってしまう可能性がある、ということです。

    ■破産法265条2項によって犯罪が成立するケース

    また、これとは別に、破産法265条第2項には、以下のようなケースでも詐欺破産罪が成立すると書かれています。

    破産手続開始の決定や保全管理命令が発せられたことを知りながら、債権者を害する目的で正当な理由なしに債務者の財産を取得したり第三者に取得させたりした場合


    財産の隠匿や毀損に協力した第三者や関係者に対する刑罰です。

    この条文に規定されている行為は、「債権者に不利益な処分」には限りません。通常の相場で不動産などを譲り受けた場合にも、債権者を害する目的でなされたときには、譲り受けた第三者が処罰される可能性があります。それだけではなく、第三者が間に入って、さらに別の人に破産者の財産を取得させたケース(取引の仲介を行ったケース)などでも、やはり詐欺破産罪が成立するので注意が必要です。

    ただし、第2項によって第三者に詐欺破産罪が成立するのは、破産手続き開始決定や保全管理命令が出てからです。破産者本人とは異なり、破産手続開始決定前の譲受けの場合には、犯罪になりません。

  5. (5)詐欺破産罪の刑罰

    詐欺破産罪の刑罰は、以下のとおりです。

    10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又はそれらの併科


    破産者本人が詐欺破産罪該当行為をしたときだけではなく、第三者が協力して犯罪が成立したときにも、同じ刑罰となります。

3、破産犯罪が発覚したらどうなるか

破産犯罪が発覚したらどうなるか

会社や個人が破産しようとするときに、詐欺破産行為をしてしまったら、具体的にどのような不利益があるのでしょうか?

  1. (1)刑事裁判に発展し有罪判決を受けるおそれ

    まずは、刑事事件になってしまう可能性があります。
    詐欺破産罪は、犯罪行為ですから、発覚すると、警察に逮捕される可能性があります。悪質な場合には起訴されて刑事裁判の被告人になり、有罪判決を下されてしまいます。
    そうなると、10年以下の懲役刑や1,000万円以下の罰金刑(またはその併科)を科され、厳重に処罰されます。
    懲役刑となった場合、執行猶予がつかなかったら実際に刑務所に行かなければなりませんし、執行猶予がついたとしても、一生消えない前科がつきます。
    罰金刑となった場合、自己破産をするような状態であれば、支払いができない可能性が高いです。しかし、罰金は非免責債権ですので、自己破産をしたとしても免責対象になりません。民事再生法を利用しても、減額されないため、必ず支払う必要があります。罰金の支払いができないなら、労役場へ留置されることになります。

  2. (2)免責を受けられない可能性が高まる

    詐欺破産罪に該当する行為をすると、自己破産をしても免責を受けられなくなる可能性が高くなります。免責とは、個人が破産するときに、借金を始めとした負債の支払い義務を免除してもらう手続きです。たとえば、会社が破産するときにも、経営者個人が会社債務の保証人になっているので(経営者保証)、会社と同時に代表者本人が個人として自己破産をすることも多いです。このような場合、自己破産をしても、免責を受けられなかったら、借金を免除してもらうことはできないので、意味がありません。
    ところが、財産隠しや財産の毀損、不利益な条件での新たな借金などは、すべて免責不許可事由となっています。
    そこで、こうした詐欺破産罪該当行為をすると、免責を受けられない可能性が出てくるのです。特に、刑事事件にも発展するほど違法性の高い行為であれば、たとえ「裁量免責」の制度があると言っても適用してもらえず、免責不許可の決定が出てしまう可能性が高くなってしまいます。

  3. (3)取引の効果を否認される

    詐欺破産罪に該当する行為は、第三者への財産譲渡や新たな債務の負担など、取引行為がたくさんあります。
    詐欺破産罪が発覚すると、こうした取引行為の効果が否認される可能性が高くなります。
    それは、破産管財人に否認権があるためです。否認権とは、破産管財人が、破産者などの関係者が行った不当な行為の効果を失わせる権利です。
    たとえば、廉価での不動産売買の効果が否認されると、売買はなかったことになります。すると、不動産は、破産者の元に戻さなければなりません。取引の相手や転得者にも大きな迷惑をかけることになってしまいます。

4、まとめ

破産手続きを進めるときには、法律の規定に従って適切に行う必要性が非常に高いです。
自分では詐欺的な行為をしていないと思っていても、債権者側からしてみると「詐欺ではないか」「犯罪ではないか」「不当だ」などと思われてしまうことは多いのです。そのような場合、債権者集会などで、きちんと説明することも必要です。

安全に自己破産を進めるためには、倒産手続きや債務整理の経験豊富な弁護士に依頼することが大切です。ベリーベスト法律事務所大阪オフィスでは、企業や個人の破産、民事再生手続きなどに積極的に取り組んでいます。自己破産や民事再生などを行うときには、是非とも一度、ご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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