フリマアプリで薬を転売することは可能? 法規制と罰則を弁護士が解説

2021年04月19日
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フリマアプリで薬を転売することは可能? 法規制と罰則を弁護士が解説

新型コロナウイルスの感染拡大により、マスクやアルコール消毒液が品薄になり、メルカリなどのフリマアプリやオークションサイトに高額転売された、というニュースも記憶に新しいかと思います。

また、大阪府がポビドンヨードを含むうがい薬の利用が新型コロナウイルスに効果があると発表したことを受けて、フリマアプリでうがい薬の高額転売がなされたということもありました。

フリマアプリは、通販商品のように、個人が不用品を手軽に売ることができるということで、近年利用が急速に広まっています。もっとも、フリマアプリで薬を売るという行為に対しては、さまざまな規制が存在しているため、注意が必要です。

今回は、薬の転売をすることが可能かどうかについて、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。

1、薬の転売は違法?

フリマアプリなどで薬を転売する行為については、薬機法によって規制される場合があります。以下では、薬機法とは何かについて説明します。

  1. (1)薬機法とは

    薬の転売については、薬機法によって規制がなされています。薬機法とは、正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、医薬品、医療機器、管理医療機器などの品質、有効性および安全性の確保を目的として定められた法律です。

    薬機法では、医薬品や医療機器だけではなく、医薬部外品、化粧品、医薬品成分を含む健康食品などについても規制をしています

  2. (2)薬機法で規制されるものとは

    薬機法は、医薬品などについて以下のとおり定義をし、規制を行っています。

    ①医薬品(薬機法2条1項)

    • 日本薬局方に収められているもの
    • 人、動物の疾病の診断・治療・予防に使用されることが目的とされている、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラムおよび、これを記録した記録媒体)でないもの(医薬部外品および再生医療等製品を除く)
    • 人、動物の身体の構造・機能に影響を及ぼすことが目的とされている、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品および再生医療等製品を除く)


    ②医薬部外品(薬機法2条2項)

    • 吐きけ、その他の不快感・口臭・体臭の防止目的のために使用される、機械器具等でないもの
    • あせも、ただれ等の防止目的のために使用される、機械器具等でないもの
    • 脱毛の防止・育毛・除毛目的のために使用される、機械器具等でないもの
    • 人、動物の保健のためにする、ねずみ・はえ・蚊・のみ・その他これらに類する生物の防除の目的のために使用される、機械器具等でないもの
    • 人、動物の疾病の診断・治療・予防または人、動物の身体の構造・機能に影響を及ぼす目的のために使用されるもののうち、厚生労働大臣が指定するもの


    ③化粧品(薬機法2条3項)

    • 人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚もしくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされているもので、人体に対する作用が緩和なもの
    • これらの使用目的のほかに、人、動物の疾病の診断・治療・予防または人、動物の身体の構造・機能に影響を及ぼす用途に使用されることも併せて目的とされているものおよび医薬部外品を除く。


    ④医療機器

    • 人もしくは動物の疾病の診断、治療もしくは予防に使用されること、または、人もしくは動物の身体の構造もしくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令で定めるもの
  3. (3)薬機法で規制される薬の転売行為とは

    薬機法は、業として医薬品の販売をするためには、医薬品販売業の許可が必要であると規定しています。

    そのため、医薬品販売業の許可なく、反復継続して医薬品をフリマアプリで販売する行為は、薬機法24条1項に違反することになります

  4. (4)転売行為をした場合の罰則

    薬機法24条1項に違反して、医薬品販売業の許可なく医薬品を転売した場合には、薬機法84条9号によって、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらを併科されることがあります(薬機法84条)。

2、医薬品販売業の許可なく薬の販売はできない

フリマアプリで「医薬品」を販売する行為については、薬機法によって禁止されています。

ただ、薬機法の定義だけを読んでも、どのようなものが禁止される「医薬品」にあたるのかわからないという方も多いでしょう。以下、「医薬品」に該当する具体例をいくつか挙げてみます。

  • 病院や薬局で処方箋によって購入したもの
  • 要指導医薬品(アレルギー治療薬、虫歯予防薬、鎮痛作用薬、カンジダ治療薬、中性脂肪降下薬など)
  • 第1類医薬品(ロキソニン、ガスター10など)
  • 第2類医薬品(コーラック、正露丸、ボラギノール、パブロンなど)
  • 第3類医薬品(整腸剤、消化剤、ポビドンヨードうがい薬など)
  • 体外診断用医薬品(妊娠検査薬など)


医薬品かどうか迷った場合には、商品の外箱に「第〇類医薬品」とある部分を確認するとよいでしょう

3、出品・転売できる医薬品はある?

医薬品に該当するものについては、薬機法によってフリマアプリでの転売が禁止されています。しかし、「医薬部外品」や「化粧品」については、フリマアプリで転売することが可能なものもあります

  1. (1)医薬部外品

    医薬部外品とは、薬機法で規制される医薬品と、化粧品の中間の製品のことをいいます。医薬部外品は、人体への改善効果はあるものの作用が弱く、副作用の危険性がないことから、薬局だけでなくスーパーやコンビニでも売られているため、知っている方も多いでしょう。

    医薬部外品は薬機法により転売は禁止されていませんので、フリマアプリで転売することが可能です。医薬部外品の具体例としては、以下のようなものがあります。

    • 制汗スプレー
    • 育毛剤
    • 染毛剤
    • 薬用せっけん
    • 薬用化粧品
    • 薬用歯磨き粉
    • 口臭剤
    • ベビーパウダー
  2. (2)化粧品

    化粧品は、前記のとおり薬機法2条3項で定義されています。化粧品の具体例は以下のようなものになります。

    • メイク用品
    • スキンケア商品
    • シャンプー
    • リンス
    • せっけん
    • 歯磨き粉
    • 香水
  3. (3)医薬部外品、化粧品をフリマアプリで転売する際の注意点

    医薬部外品、化粧品については、フリマアプリなどで転売することは禁止されていませんが、以下のような行為については禁止されているため、注意が必要です

    ① 虚偽の効用を記載する行為
    フリマアプリなどで医薬部外品、化粧品を出品する際に、商品情報や説明を記載することがあります。その際に、当該製品に本来備わっていない効用(アンチエイジング化粧品、アトピー改善など)を記載することは、薬機法の広告規制によって禁止されています(薬機法66条)。

    このような行為をした場合には、罰則として、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金またはこれらを併科されることがあります(薬機法85条)。

    ②個人輸入した海外製化粧品などを転売する行為
    海外製化粧品については、個人使用の目的で輸入する場合には、特に許可は必要ありません。

    しかし、あくまでも個人使用の場合に限りますので、個人で輸入した海外製化粧品を販売する場合には、化粧品製造販売業許可が必要です

    許可なく個人輸入した海外化粧品を転売した場合には、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこれらを併科されることがあります(薬機法84条18項)。

4、知らずに医薬品を転売してしまったら

薬機法を知らなかったとしても、医薬品を転売してしまうと、薬機法の罰則が科される場合があります

もっとも、医薬品の転売をしたとしても、その経緯、動機、回数などの個別事情によっては、刑事責任の程度が異なってくる場合もあります。場合によっては、起訴猶予となり、処罰されない可能性もあります。

ひとりで悩むのではなく、まずは弁護士に相談するようにしましょう

5、まとめ

コロナ禍において、薬の転売を考える方もいるかもしれません。しかし、薬の転売が違法になるかどうかについては、薬機法の正確な理解と知識が不可欠です。薬機法で転売が禁止されている薬をフリマアプリなどで転売してしまった場合には、重い罰則が科されるおそれもあります。

刑事事件においては、初動が何よりも重要です。まずは、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています