サイトに誹謗中傷の書き込みをした犯人を特定する方法を大阪の弁護士が解説

2019年02月08日
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サイトに誹謗中傷の書き込みをした犯人を特定する方法を大阪の弁護士が解説

スマートフォンや定額サービスの普及に伴ってインターネット利用が促進される中、匿名サイトにおける誹謗中傷も加速しています。
有名人が事実無根の内容で中傷されてしまったり、有名人自身だけでなく家族が誹謗中傷されたり、さらには「裏サイト」などと呼ばれるサイト上で一般の学生・生徒同士が中傷を繰り返すなど、ネット上の中傷は数年以上に渡って社会問題となっています。

ベリーベスト法律事務所においても、「誹謗中傷」書き込みの削除や、書き込んだ犯人の特定など、ネット風評対策に力を入れています。
本記事では、インターネット上に「誹謗中傷」を書き込んだ犯人を特定する方法について解説します。

1、個人で誹謗中傷の書き込みをした犯人を特定するのが難しい理由

インターネット掲示板などで誹謗中傷の被害を受けたとき、被害者が「書いた犯人を特定したい」と思っても、被害者個人では犯人を特定することは難しいのが現状です。それは、以下のようなことが原因です。

  1. (1)「通信の秘密」の壁がある

    アクセスプロバイダ(以下「プロバイダ」)や携帯電話会社、サイト管理者などの通信事業者には、利用者の「通信の秘密」を守る義務があります。それらの事業者は原則として、「投稿者を教えてほしい」と言われても、原則として書き込んだ人物の情報を開示してはならないことになっているのです。そのため、個人がこれらの通信事業者に情報を開示させるのは、よほどのことがない限り難しいといえるでしょう。

  2. (2)権利侵害を受けていることを証明する必要がある

    「プロバイダ責任制限法」という法律に則って所定の手続きをすれば、誹謗中傷の書き込みをした犯人を特定するための発信者情報開示請求ができます。プロバイダ責任制限法とは、プロバイダに対して発信者情報の開示を請求する権利を認める法律です。ただし、この法律による手続きを行うためには、投稿内容に明確な権利侵害があることをプロバイダ等に証明しなければなりません。

    そのためには、具体的に誹謗中傷の内容が書かれたページをスクリーンショットにする、画像として保存するなどしてURLとともに通信業者に提示し、どのような権利が侵害されているのかを具体的に説明することが必要です。

  3. (3)法的措置をとることもある

    発信者情報開示請求を行うときには、まずは通信事業者に任意で請求しますが、裁判所の仮処分手続きを利用したり訴訟を提起したりすることもあります。そのような法的措置をとる場合、個人では対応が難しいので、弁護士に依頼して代理で手続きや交渉等をしてもらうことが重要です。

    任意開示の手続きとして、弁護士には弁護士会を通じて団体に対し受任事件に必要な情報について照会を行うことが弁護士法で認められています。このことを「23条照会」と呼びます。

2、悪質な書き込みをした犯人を特定する方法

悪質な書き込みをした犯人を特定する方法には、サイト管理者に請求をする、プロバイダ責任制限法ガイドラインに則った請求を行う、民事保全法上の仮処分手続きを利用する、という3つの方法があります。しかし、サイト管理者自体に請求をしても発信者情報を開示しないことも多いため、ここではこれ以外の2つについて解説します。

  1. (1)プロバイダ責任制限法ガイドラインに則った請求を行う

    プロバイダ責任制限法には、その運用についてガイドラインが制定されており、それに則って請求を行うこともできます。専用の書式も公開されていますが、請求の際には以下の書類が必要です。

    • 印鑑登録証明書
    • 運転免許証やパスポートなどの公的身分証明書の写し(個人の場合)
    • 登記事項証明書(法人の場合)
    • 請求者の権利が侵害されていることを示す証拠資料
    • 委任状(代理人が請求する場合)
  2. (2)裁判所の仮処分手続きを利用する

    請求にサイト管理者が応じなかったときは、裁判所を利用する法的措置を取ります。ただし、訴訟を起こすだけだと、確定判決を受けて実際に発信者情報の開示を受けられるまでに半年~1年以上かかり、プロバイダ側のアクセスログの保管期限が過ぎて、発信者の特定ができなくなってしまうおそれがあります。

    そのため、併せて迅速に結果が出る民事保全法上の仮処分手続きを利用します。仮処分手続きをすれば申し立てから1~2ヶ月で裁判所からの命令が下ります。

3、発信者情報開示請求の手順について

書き込みをした投稿者を名誉毀損などで訴える場合には、その前提として発信者情報開示請求が必要です。手順としては、まずサイト管理者に対してIPアドレスを開示してもらい、プロバイダを突き止めてプロバイダに対して発信者情報開示請求を行います。

  1. (1)アクセスプロバイダを特定し、アクセスログの保存要請をする

    サイト管理者から開示を受けたIPアドレスは、発信者が使用した端末のある場所を示すものであり、IPアドレスだけでは発信者の氏名や住所などの個人情報まではわかりません。そこで、発信者情報を保有しているアクセスプロバイダに対して発信者情報開示請求を行うことが必要です。

    方法としては、まず開示されたIPアドレスをもとに、インターネット上にある「whois検索」機能を使用して、アクセスプロバイダを調べます。whois検索画面にIPアドレスを入れると、IPアドレスの管理者であるプロバイダを特定することができます。

  2. (2)発信者情報開示訴訟を提起

    プロバイダを特定できれば、プロバイダに対して発信者情報開示請求を行います。ただし、IPアドレス割り当てのアクセスログは3~6ヶ月しか保存されないため、請求を行う前には、プロバイダに対しアクセスログの保存を要請しておくことが大変重要です。

    その後、プロバイダに対する開示請求は訴訟を通して行います。提訴するときにはプロバイダの本社の所在地のある地方裁判所に対して申し立てをすることになります。

  3. (3)プロバイダが書き込みをした本人に意見照会を行う

    訴訟が提起されると、プロバイダは書き込みをした本人に対し、発信者情報の開示に同意するか否かについて第1回期日までに意見照会を行います。同意があれば裁判は途中で終了しますが、返事がないあるいは開示を拒否した場合は、プロバイダが請求者と法廷で争うことになります。

    発信者情報開示請求訴訟の場合、書き込みをされたために原告が権利侵害を受けたことが明白かどうかということのみが争点となることが大半なため、2~3回の期日で結審することが多いのが特徴です。

  4. (4)プロバイダより発信者情報の開示を受ける

    勝訴すれば、プロバイダ側が控訴することはほとんどないため、判決が確定することになります。その後、原告側が強制執行をすることなくプロバイダより発信者情報が開示されるのが一般的です。

4、悪質なネットの書き込み削除で知っておきたい注意点

悪質な書き込みをサイト管理者に削除してもらうときには、注意が必要な点があります。
具体的に、どのような点に注意すべきなのかについて見ていきましょう。

  1. (1)削除代行業者に依頼しても根本的な解決にならない

    誹謗中傷の書き込みの削除を考えたときに、「弁護士に相談するのは敷居が高いから、削除代行業者に相談しよう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、削除に向けた法的な手続きを「代行」できるのは、弁護士法上、弁護士だけと定められています。そのため、たとえ「削除代行業者」と契約したとしても、そもそも契約が無効とされてしまう可能性が高いでしょう。
    必ず、最初から誹謗中傷の削除に力を入れている法律事務所に相談するようにしてください。

  2. (2)サイト管理者やアクセスプロバイダに罪はない

    一刻も早く書き込みを削除してもらいたいがために、サイト管理者やプロバイダに対して悪意を持ったメールを送り付けるケースも見受けられます。しかしながら、任意の削除を求める場合には、むしろ逆効果かもしれません。
    サイト管理者の任意の削除を促すのであれば、悪態をつくのではなく、弁護士経由で削除を求めるなど正当な形でプレッシャーをかける方が有効です。

  3. (3)サイトごとに削除の依頼方法が異なる

    書き込みを削除してもらう際には、サイトごとに削除依頼方法が異なります。そのため、各サイトで書き込みの削除を依頼する際には、サイト内に書かれている依頼方法をよく確認することが必要です。もし、よくわからなければ弁護士に相談されることをおすすめします。

5、まとめ

インターネットの書き込みは、内容が事実であるか否かを問わず、あっという間に拡散してしまいます。根本的な問題解決方法のひとつとして、発信者情報を突き止め、書き込みの差し止めや損害賠償を求める方法がありますが、個人でそれらの行為を行うには困難を伴います。

ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスでは、インターネット問題の経験豊富な弁護士が誹謗中傷にお困りの方のご相談を承っております。弁護士に依頼をすれば、裁判所の仮処分手続きなどの法的措置を含め、さまざまな対策を講じることができます。

「悪質な書き込みを削除したい」「書き込んだ犯人を突き止めて損害賠償請求をしたい」とお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまで、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています