SNSでの誹謗中傷を削除したい! 削除請求のために知っておきたいことを弁護士が解説

2019年03月08日
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SNSでの誹謗中傷を削除したい! 削除請求のために知っておきたいことを弁護士が解説

平成24年12月、大阪府にある市立高校の運動部で日常的に体罰が行われていたことが明らかになりました。その後、インターネット上の掲示板で同校に対する誹謗中傷が書き込まれ、直接体罰にかかわっていない生徒が通学途中に嫌がらせを受けるなど、波紋が広がりました。

このように、インターネット上で誹謗中傷が書き込まれることで実生活に重大な影響を及ぼすこともあるため、一刻も早く削除などの対策をとることが必要です。本記事では、SNSでの誹謗中傷を削除したいときに知っておくべきことについて解説します。

1、よくあるインターネット上のトラブル

まず、よくあるインターネット上のトラブルについて具体例を見てきます。このようなトラブルをインターネット上で見たことのある方も多いのではないでしょうか。

  1. (1)掲示板に自分の本名や住所、連絡先を勝手に書き込まれる

    嫌がらせをするために掲示板に自分の名前や住所など身元がわかる情報が書き込まれることがあります。中には出会い系サイトに名前・電話番号・メールアドレスが書き込まれ、知らない男性から多数の電話やメールが来て困った女性もいます。2ちゃんねるや爆サイといった有名な掲示板ではあっという間に情報が拡散してしまうため、注意が必要です。

  2. (2)お店や企業の悪評を書き込まれる

    Google Mapやクチコミサイトで、お店の商品やサービスに関する悪評を書かれるのも残念ながらよくあります。たとえば、「お店の料理に髪の毛が入っていた」「行った美容院のヘアアイロンのかけ方が下手すぎて頭皮をやけどした」など、他の人がお店の商品・サービスを利用したくなくなるような情報を書き込まれ、風評被害に遭うケースが多数あります。

  3. (3)従業員の不祥事をきっかけにまとめサイト(記事)が作られる

    従業員の不祥事をきっかけに、その企業に関するまとめサイトが作られるケースも珍しくありません。過去には、アルバイト店員がコンビニのアイスのケースに入り込んで涼を取る写真がSNSにアップされて炎上し、その後作られたまとめサイトでコンビニの場所を特定できる情報が多数掲載されていたため、閉店に追い込まれた事件もありました。

  4. (4)裸のコラージュ写真など卑わいな写真をアップされる

    過去に付き合っていた男性が元彼女への嫌がらせのために、また男性が一方的に好意を寄せている女性の気を引くために、その女性の顔写真と他人の裸の画像を組み合わせてコラージュ写真をアップするケースもあります。これは、プライバシー侵害になるだけでなく、アダルトサイトなどに転載される可能性もはらんでいます。

  5. (5)前科や逮捕歴に関する何年も前の記事が残っている

    過去に何らかの罪を犯して逮捕されたり、裁判で有罪判決を受けたりした場合、そのときの報道記事がネット上に残っていることがあります。このような前科や逮捕歴がわかる記事が残っていると、就職や転職の際にそれが判明してしまい、採用試験で不利になることも多くあります。

2、SNSでの誹謗中傷はどんな罪に問われる可能性がある?

SNSで特定の誰かについて誹謗中傷した場合、名誉毀損罪・侮辱罪・脅迫罪・信用毀損罪および業務妨害罪が成立する可能性があります。それぞれの罪の具体的な内容について、見ていきましょう。

  1. (1)名誉毀損(きそん)罪

    名誉毀損罪とは、公然の場で事実を摘示しながら相手の社会的地位をおとしめることを言います。その、人をおとしめる内容が事実であるかどうかは関係がありません。「○○さんは不倫している」「○○さんは薬物常習犯だ」などのように、相手の名誉を傷つけるようなことを誰にでも見られるようなところで公表すれば、名誉毀損罪の成立が問題になります。相手の行為が名誉毀損罪にあたる場合は、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

  2. (2)侮辱罪

    侮辱罪とは、誰もがアクセスできるようなところで、公然と相手をわざと侮辱することを言います。侮辱罪は名誉毀損罪とは違って、事実を摘示せずに相手の社会的地位をおとしめることが特徴です。たとえば、「あいつはバカだ」「ブスだ」などで侮辱罪が問題になります。相手から告訴された場合は、拘留または科料に処せられる可能性があります。

  3. (3)脅迫罪

    脅迫罪とは、他人を脅すような言動をした場合に成立する罪のことです。「お前の秘密をバラす」など、対象者本人だけでなく、「お前の家族もただではすまないと思え」など、家族に対して脅迫が向けられたときにも脅迫罪の成立が問題になります。書き込み内容が脅迫罪にあたる場合は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

  4. (4)信用毀損罪・業務妨害罪

    信用毀損罪とは、ウソの情報を世の中に広めることで、相手の信用をなくしたり社会的評価をおとしめたりしてしまうときに成立する犯罪のことです。また、業務妨害罪は他人のお店や会社の営業を妨害することを言いますが、インターネット上での誹謗中傷の場合は、「偽計業務妨害罪」が成立するかどうかがよく問題となります。たとえば、「あのお店の商品には虫が混入している」などと虚偽の事実をネット上に書き込むと、信用毀損罪や偽計業務妨害罪に問われます。もしこれらの罪に該当した場合は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

3、SNSで誹謗中傷被害に遭ったときの対処方法

SNSに自分に関する根も葉もないデマや自分の社会的評価をおとしめる内容が書き込まれていたりした場合、すぐに削除してもらう必要があります。削除を求めるには、書き込んだ本人に直接請求をする方法と、運営会社に依頼する方法があります。ここでは、運営会社に削除請求をするときの流れについて解説します。

  1. (1)投稿内容が利用規約に違反しているかどうか確認

    まずは各SNSのウェブサイトにある「利用規約」のページを開き、どのような投稿が削除の対象となるかを確認しましょう。たとえばFacebookの場合であれば、以下のような内容に該当するものが誹謗中傷やプライバシー侵害にあたるものとして利用規約に書かれています。削除してほしいコンテンツが、このいずれかにあてはまることをチェックします。

    • 公共または個人の安全を実際に脅かすおそれがあると思われるコンテンツ
    • 第三者の知的財産権を侵害するコンテンツ
    • 同意のない第三者との性的行為、または営利目的の性的サービスとしての性的行為の表示、擁護、準備・企画を含むコンテンツ
    • 違法行為や、誤解を与える行為、差別的または不正な行為。
    • 他人の権利を侵害する行為や情報。  など

    (Facebook「利用規約」「コミュニティ規定」それぞれより一部引用)

  2. (2)投稿者に削除請求

    投稿者とコンタクトが取れるようであれば、投稿者にメッセージを送って削除を依頼します。しかし、被害者が直接投稿者に削除請求をすると、逆恨みをされたりかえって炎上したりする可能性もありますので、実際に削除を依頼する際には慎重に行った方がよいでしょう。

  3. (3)運営会社・サイト管理者に削除請求

    投稿者が応じてくれなければ、SNSの運営会社・サイト管理者に削除請求をします。Facebookであれば、投稿の右上の角にある印をクリックすると、「投稿を保存」「投稿を非表示」などとともに「この投稿に関するフィードバック」という項目が出てきます。これをクリックすると、「ヌード」「暴力」「嫌がらせ」などの項目が出てくるので、投稿内容に該当するものを選び、「送信」を押下すれば削除請求が完了したことになります。

  4. (4)対応してもらえない場合は法定手段も

    投稿者にも運営会社・サイト管理者にも削除請求に応じてもらえない場合は、法的手段の利用も視野に入れたほうがよいでしょう。弁護士に相談し、裁判所に投稿削除に関する仮処分の申し立てをします。損害賠償請求も検討する場合は、別途発信者情報開示請求に関する仮処分の申し立ても行います。

  5. (5)非弁業者には要注意!

    削除請求をするにあたり注意したいのが、削除代行業者などの非弁業者の存在です。報酬を得る目的で弁護士の資格を持たない者が本人の代理人として交渉を行うことは弁護士法で禁止されています。そのため、これらの民間業者にできるのは、SEOを利用して検索結果の表示順位を下げて見えにくくすることのみとなります。削除代行業者に「代わりに投稿者や運営会社に削除請求をします」と言われた場合、トラブルに巻き込まれる可能性もありますのでご注意ください。

4、SNSの誹謗中傷削除について弁護士に依頼するメリット

SNSに誹謗中傷する内容が投稿されると、あっという間に拡散してしまうため、一刻も早く削除することが必要です。削除請求する前には、ネット上のトラブルの経験が豊富な弁護士に相談されることをおすすめします。では、SNSの誹謗中傷削除について弁護士に依頼すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

  1. (1)書き込みが権利侵害であるかどうか判断がつく

    たいていの場合、SNSの利用規約に削除に関する方針やポリシーが記載されています。しかし、法律に明るい人でなければ削除してほしいと思っている投稿が利用規約上の削除方針・ポリシーにあてはまるのかどうか判断するのが難しいケースもあります。弁護士に相談すれば、利用規約に照らして投稿内容が権利侵害にあたるかどうか判断してもらえます。

  2. (2)手続きを代行してもらえる

    SNSの管理画面上での操作だけで問題が解決できない場合は、プロバイダ責任制限法のガイドラインに基づく削除請求をしなければならなくなることもあります。これはガイドラインで定められた手続きに従って行わなければならず、手間も時間もかかりますが、弁護士に依頼すれば手続きを代行してもらうことが可能です。

  3. (3)弁護士法に基づく「23条照会」が使える

    弁護士には、法律にかかわる問題を解決するために、所属弁護士会から、企業や団体に対し、必要に応じて情報照会ができる権限があります。このことは弁護士法第23条の2に基づく照会のため、「23条照会」と呼ばれます。この23条照会が認められているのは弁護士のみです。ただし、23条照会に応じてもらえない場合もあり、100%情報の開示を求めることができるとは限らないことに注意が必要です。

  4. (4)損害賠償請求ができる

    弁護士に依頼すれば、削除だけでなく損害賠償請求も視野に入れることができます。削除請求と同時に発信者情報開示請求も行い、IPアドレスから投稿者を特定できれば、損害賠償請求も可能になります。発信者情報開示請求に関する裁判所での手続きも弁護士にすべてお任せできるので、負担の軽減につながります。

  5. (5)場合によっては刑事告訴もできる

    投稿内容が自分の名誉や生命・身体・財産にかかわる者の場合は、刑事告訴も検討することが必要です。その際にも、弁護士に依頼することで、捜査機関を通じ、立件に向けて刑事手続きを進めてもらうことができます。法廷の場でも、必要に応じて、弁護士が代理人として最後までサポートしてもらえるので安心です。

5、まとめ

SNSは拡散力が強いため、一度誹謗中傷の内容が書き込まれると、あっという間に拡散してしまい、多くの人の目にさらされてしまう可能性があります。そのため一日も早く削除をしなければなりませんが、削除請求をしても個人では応じてもらえないこともあります。

弁護士であれば、個々のケースに応じて、法的手段を含め削除請求に対して効果的な方法を提案し、実行することができます。SNSで誹謗中傷をされてお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまですみやかにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています