ガールズバーの接待行為はどこまでOK? 経営者が注意すべき風営法のポイント

2023年07月18日
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ガールズバーの接待行為はどこまでOK? 経営者が注意すべき風営法のポイント

令和5年6月、許可なく従業員に客を接待させたとして、大阪府警は「風営法違反(無許可営業)の疑いで大阪市北区のミックスバー経営者含む4名を逮捕した」と公表しました。

ガールズバーとキャバクラの違いは接客の有無ですが、接客といえるかどうかは微妙な判断となり、ガールズバーでも接客行為をしているところがあります。
接待行為がある場合、風俗1号営業店として風俗営業許可を得る必要があるため、警察も「ちゃんと許可を得ているのか」と目を光らせているのが実情です。

ガールズバーを開業したいけれど、どのような手続きがあるのかわからないので不安という人もいるでしょう。

本コラムでは、ガールズバーを開設するときに必要な手続きや、開設後はどのような点に注意しなければいけないのかについて、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。

1、ガールズバーの開業に必要な手続きとは

ガールズバーを開業する場合、ガールズバーは飲食店なので、保健所の「飲食店営業許可」が必要です。また、店舗を改装する場合、消防署への「防火対象物の工事等計画の届出」と「防火対象物使用開始の届出」が求められます。納税のため青色申告をする場合には、税務署に「開業届」と「青色申告承認申請書」の提出をしなければなりません。

その他、深夜営業をする場合には、「深夜酒類提供飲食店」として、営業を開始する10日前までに警察署に風営法上の届け出が必要です。この手続きにより、24時間お酒を提供することができるようになります。

深夜酒類提供飲食店の届出は、届け出るだけなので、警察署の許可を得る必要はありませんが、実際には要件を満たしていないと受理されないので、しっかりと要件を満たせるように注意しましょう。特に注意が必要なのは、不動産の用途制限です。住宅地では深夜酒類提供飲食店は営業できないので、開業する場所が「住居専用地域」や「住居地域」などでは認められません。

また、内装にも一定の基準があり、仕切りは作らない、個室は9.5平方メートル以上の大きさを確保するなどの条件を満たす必要があります。

2、接待行為があれば風俗営業許可が必要

飲食店営業許可を受け深夜酒類提供飲食店の届出をすれば、ガールズバーは開設できますが、深夜酒類提供飲食店では、接待をすることは許されません。もし、接待をした場合には、違法営業ということになってしまいます。ここでいう「接待」とは、客の隣に座って会話したり、お酒を一緒に飲んだり、カラオケでデュエットする行為をいいます。

ガールズバーのように、カウンター越しに会話するのは、接待なのかどうかは微妙なところですが短時間であれば問題ないとされています。ただ、一緒にお酒を飲んだり、カラオケでデュエットしたりする行為は、明らかに接待なので、深夜酒類提供飲食店の届出では許されません。

もし、接待を行うという場合には、風俗1号営業店として風俗営業許可を取る必要があります。ここで注意が必要なのは、深夜酒類提供飲食店と風俗営業許可はどちらか一方しか選べないという点です。つまり、24時間営業で接待行為をするということはできないわけです。

風俗営業許可とした場合、深夜0時までしか営業できないので、それを超えて営業すると違法営業ということになってしまいます。

そのため、ガールズバーを開業するにあたっては、接待行為を優先して、風俗営業第1号許可をとるか、深夜0時以降の営業を優先して深夜酒類提供飲食店営業の届出をするのかの選択をする必要があります。

3、ガールズバーで違法行為となるケース

  1. (1)18歳未満の雇用

    労働基準法では、「使用者は、満十八才に満たない者を午後十時から午前五時までの間において使用してはならない。」と規定しています。したがって、ガールズバーに限らず、18歳に満たない人を夜間に働かせた場合には違法となります。

    また、風俗営業法では、「営業所で、18歳未満の者に客の接侍をさせ、又は客の相手となってダンスをさせること。」を禁止しています。そのため、午後10時より前の時間でも18歳未満の者に接待やダンスをさせることはできません。

    これらのことから、18歳未満の採用はすべきではありません。求人に申し込んでくる人の中には、年齢をごまかして来る人もいるので、履歴書を確認するだけでなく、免許証などの身分証明書を確認し、本人の同意を得た上で、その写しを取らせてもらうなどの対策が必要です。

  2. (2)未成年者の飲酒

    未成年者飲酒禁止法では、未成年者が飲酒行為をした場合、その監督者(店長など)が処分の対象となります。深夜酒類提供飲食店として営業している場合、接待行為はないので、通常飲酒はしないと思いますが、風俗営業許可を取って、接待行為をする場合には特に注意が必要です。お客から勧められたて飲んだりしないよう従業員に教育を徹底し、その他のスタッフはそのようなことのないよう十分監視することが必要です。

  3. (3)深夜酒類提供飲食店での接待行為

    ガールズバーを深夜酒類提供飲食店の届出を提出して営業している場合には、接待行為は禁止されています。それにもかかわらず、特定のお客と談笑したり、歌をデュエットしたり、スキンシップしたりした場合には、接待行為として違法営業になります。

    従業員と客が親しくなると長話したりするようになるので、従業員に対して長話すると接待となり違法となることを教育し、スタッフも長話となりそうなときには、用事を頼むなどして接待とならないよう気を付ける必要があります。

  4. (4)風俗営業許可での深夜0時以降の営業

    風俗営業店としてガールズバーを経営する場合、深夜0時以降は営業ができません。それに反して深夜0時以降も営業を続けた場合には違法営業となります。

    はじめから、深夜0時以降に営業することはないにしても、お客が帰らないために深夜0時をすぎてしまうということがあります。これは言い訳にはならないので、閉店時間を早く設定したり、ラストオーダーの時間を調整したりするなどして深夜0時をすぎないよう管理することが必要です。

4、風営法違反で摘発されないためにできること

たとえば、深夜酒類提供飲食店の届出をしてガールズバーを経営していて、接待をしてしまった場合、風俗営業の無許可営業となるので、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金又はその併科、という重い罰を受ける可能性があります。そのようなことのないよう、十分注意しなければなりません。

  1. (1)近隣への配慮をする

    騒音問題などの苦情で警察に連絡が入ると、警察はその店舗の状況を確認するため訪問してくることがあります。その際、少しでも違法営業していれば、取り締まりの対象になってしまう可能性があります。そのため、騒音に注意すると共に、近隣への配慮を欠かさないようにしておくことが大切です。

  2. (2)違法行為をしない

    当然のことながら違法行為をしていなければ、警察の立ち入り検査が入っても恐れることはないので、常日頃から法律に違反しないように心がけることが重要です。そのためには、風営法などの法律についてもある程度勉強しておく必要があります。ガールズバーが深夜酒類提供飲食店である場合には接待はできないので、カウンター越しでの会話で、特定の客と長時間話さないようにしなければなりません。悪意はなくても、長時間話をしていると接待とみなされる可能性があります。

  3. (3)従業員教育を徹底する

    深夜酒類提供飲食店である場合、接待行為が許されないことは経営者が認識していても、従業員がそのことを知らなければ、知らずに接待行為をしてしまうことがあります。従業員がやった行為でもその責任は経営者にあります。従業員に対して接待となる行為を説明した上で、接待行為はしないよう注意喚起し、法律に違反しないよう教育することが大事です。

  4. (4)弁護士に相談する

    風営法について勉強するにしても法律は難しいので、弁護士に相談することも有効です。違法営業となるかどうかについて事前に相談したり、問題点をチェックしてもらったりして予防することが考えられます。

5、まとめ

ガールズバーを開業するためには、いろいろな届出や許可を取る必要があり、開業後も違法行為とならないよう細心の注意をはらわないといけません。

風俗営業法は、きわめて抽象的であいまいな規定が多く、経営者にとって何が違法となるのかわかりにくいことも多いでしょう。

ガールズバーを開きたいがどのように手続きを進めていけばよいかと悩んでいたり、運営している中で不安や心配な点があったりするようでしたら、どうぞお気軽にベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまでご相談ください。
風俗営業に関する経験が豊富な弁護士がサポートいたします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています