お客さまからの困ったクレームはどうすればよい? 弁護士に依頼するメリットは?
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大阪近郊で起きた悪質なクレーマー事件と言えば、平成26年に発生した茨木市のコンビニ土下座事件が有名でしょう。店長に不当なクレームをつけ、土下座での謝罪を強要した様子が動画投稿されたことで、5人のクレーマーが恐喝または恐喝未遂で逮捕されました。その後、恐喝容疑で起訴され、同年11月には大阪地方裁判所で有罪判決が出ました。
昨今、多くの店舗ではこのような悪質なクレーマーに対する対応策が整備されつつあります。それでも、完全に防ぐことはできていません。小規模店の経営者の中には「悪質なクレーマーが現れたらどうすればよいのか?」とお悩みの方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は悪質なクレーマーへの対応策やクレーマー対応を弁護士に依頼するメリットについて、大阪オフィスの弁護士が紹介します。
1、クレーム対応の基本とは?
クレームは、お客さまが商品やサービス、接客態度などに対する改善要求や苦情を店側に訴える行為です。クレームとひとくちに言っても、その内容は千差万別です。対応したスタッフの不適切な態度や言動などによって事態が悪化してしまうこともありえます。
クレーム対応は、基本的に謝罪することから始まることが多いでしょう。不当な要求やお客さまの勘違い、間違いによる苦情であっても、お客さまが不快な思いをしている事実に対して謝罪が求められます。その後、クレームの事実確認をします。
事実確認によって店側に責任があると判断される場合は、誠実に謝罪して、新品への交換や返金など、社会的に妥当性のある補償内容を提示することになるでしょう。店側に責任がないと判断される場合は、お客さまに対して失礼のないよう、ていねいに事情を説明することになるでしょう。
クレーム対応を誤るとネット上での誹謗中傷や連日のクレーム対応を余儀なくされることが考えられます。いわゆる「炎上」と呼ばれる事態に陥れば、お店の評判が下がるだけでなく、現場の士気の低下を招いてしまうこともあります。
一方で、適切なクレーム対応によって、お店の評判が上がるケースもあるでしょう。しかし、アルバイト店員などに対して最初からベストな対応を期待すること自体、無理があると考えられます。したがって、一定程度,使用者側が何らかの準備をしておく必要があるでしょう。
2、不当なクレームとは?
正当なクレームには誠実に対応して、円満な解決を図るべきです。しかし、不当なクレームに応じる必要はありません。ここでは不当なクレームと判断される可能性のあるケースについて紹介します。
- 机を叩く、大声を出すなどの暴力的な威嚇行為がある。
- 商品の交換などに対して、実際に購入したものよりも高額なものを要求する。
- 「誠意を見せろ」と繰り返すなど、要求をはっきりと言わない。
- 住所や家族構成など、経営者・スタッフの個人情報について問いただす。
- 電話・来店などを執拗(しつよう)に繰り返す。
- 暴力団との関係をほのめかす。
- 「ネットに書くぞ」と脅す。
- 土下座を要求する。
- スタッフの解雇を要求する。
- 実現不可能な要求をする。
不当なクレームに対しては、冷静でいられなくなってしまうことがあるかもしれません。しかし、感情が態度や言葉に出てしまわないように、気持ちを落ち着けて冷静に対応する必要があります。
3、悪質なクレーマーにはどう対応するべきか?
悪質なクレーマーには、毅然(きぜん)とした態度で要求を拒否する必要があります。悪質なクレームはその行為によってさまざまな罪に問われることになる可能性もあるでしょう。なによりも、あなた自身や従業員の安全を優先すれば、場合によっては店だけで対応しないほうがよいこともあります。警察や弁護士などに相談し、法的手段で対抗することも考えてください。
実際に店内において大声で怒鳴ったり、机などを叩いたりして、他の客やスタッフを威嚇する行為は威力業務妨害罪に該当する可能性があります。土下座を強要すると強要罪にあたると考えられます。また、不当な金品を要求すると恐喝罪または恐喝未遂罪に問われる可能性があります。
また、インターネット上に店や商品の評判を落とすような書き込みをすると偽計業務妨害罪や名誉毀損(きそん)罪が成立するケースや、「店に火をつけるぞ」などと脅すと脅迫罪が成立する可能性があります。
悪質といえるクレーマーの行動は、複数の法律に抵触している可能性があります。法的手段に訴えることを検討する場合は、店でのやりとりや電話の録音,防犯カメラの映像、在店日時や対応者の記録などの証拠を残しておくことをおすすめします。
「お客さまは神様」という考えに固執して法的手段をとることをためらっているうちに悪質なクレーマーは助長し、事態がますます悪化してしまうこともあるでしょう。繰り返しクレームを受けているような状態で、法的手段に切り替えるタイミングが難しいときは、弁護士に相談してください。
4、悪質クレーマー対応を弁護士に依頼するメリット
悪質なクレーマーとして警察に被害届を提出しても、警察がすぐに動いてくれるとは限りません。そこで頼りになるのが弁護士です。ここでは悪質なクレーマー対応を弁護士に依頼するメリットを紹介します。
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(1)クレーム内容に対する適切な判断ができる
店側が悪質なクレームだと判断したケースでも、実は店側にミスがあり、損害賠償をしなければならない場合があります。弁護士に判断を仰ぐことで、悪質なクレームであるかどうか適切に判断してもらうことができます。
また、悪質なクレーマーだった場合、警察に被害届を出すべきかどうかを判断するだけでなく、警察への対応もスムーズに行うことができます。 -
(2)クレーマーに対するけん制効果がある
多くの場合、悪質なクレーマーは警察に被害届を出されたり、民事訴訟で訴えられたりすることを敬遠します。たとえば、電話や来店などを繰り返す悪質なクレーマーなどに対して、弁護士が対応するだけでクレームが止まることがあります。また、法的手段で対抗することを伝えることによって、相手が立ち寄らなくなるケースも少なくありません。
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(3)代理人として交渉できる
弁護士が代理人として悪質なクレーマーと交渉することで、店舗運営や経営者・スタッフの業務に支障が生じることを防ぐ効果が期待できます。また、店側に賠償責任がある場合、法外な賠償金額を請求されたとしても、弁護士が代理人として減額交渉することで、適正範囲の金額で合意することができます。
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(4)SNS・掲示板などでの誹謗中傷に対応できる
SNS・掲示板など、インターネット上で、店や商品、スタッフなどに対する誹謗中傷や嫌がらせのための書き込みが行われることがあります。このとき、弁護士に依頼していればサイト運営者に削除要請をしたり、プロバイダに発信者情報の開示請求をしたりという一連の削除請求に速やかに着手できます。これらの削除請求は、一般の方が行うこともできるケースもありますが、対応してもらえないケースは少なくありません。ずっと無視をされ続けていた場合でも,弁護士が請求を行ったとたん迅速に対応してもらえる可能性が高くなります。
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(5)訴訟対応ができる
クレーマーから損害賠償を請求された場合だけでなく、店舗側からクレーマーに対して損害賠償を求める場合も弁護士が適切に対応することができます。
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(6)クレーム対策ができる
弁護士からの適切なアドバイスに基づいて、クレームに対する判断基準や対応方法をマニュアル化することができます。また、あらかじめクレームを受けないように規約を作成しておいたり、法律に準拠しているかどうかをチェックしてから運用したりなど、トラブルを未然に防ぐための対策を行うことができます。
5、まとめ
飲食店や小売店のオーナー向けに、悪質なクレーマーの対応方法と、クレーマー対応を弁護士に依頼するメリットを解説しました。悪質なクレーマーへの対応方法を間違えると、お店や会社の評判が下がるだけでなく、現場の雰囲気も悪くなってしまいます。悪質なクレーマー対応に限界を感じたら、弁護士に依頼することを検討してみることも一案です。
悪質なクレーマーへの対応でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスにご相談ください。大阪オフィスの弁護士がクレームによる被害を未然に防ぐために力を尽くします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています