消費者契約法で説明義務違反にならないための注意点

2023年11月21日
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消費者契約法で説明義務違反にならないための注意点

消費者契約法は、消費者を保護することを目的とした法律です。商品やサービスを利用する消費者は、消費者契約法が定めるさまざまな制度による保護を受けることができます。他方で、商品やサービスを提供する企業は、消費者契約法違反とならないように注意しなければなりません。

消費者法では、事業者側に説明義務が課されていますので、消費者に不誠実な情報を提供してしまうと、不実告知や不利益事実を理由として契約が取り消されてしまうリスクが生じます。

今回は、消費者契約法で企業が説明義務違反にならないための注意点について、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。

1、消費者契約法とは

消費者契約法とは、消費者と事業者との契約に適用される法律で、契約などの一般的なルールを定めた民法の特別法にあたります。

契約に関する基本的なルールを定めた民法では、契約自由の原則により、当事者の合意があればどのような契約を締結するのも自由とされています。

しかし、消費者と事業者との間には、情報の質および量、交渉力などに圧倒的な格差があることから、民法の一般的なルールに委ねてしまうと消費者が不測の損害を被るおそれがあります。そこで、このような消費者を保護するために、消費者契約法では、事業者の不適切な行為で消費者が誤認または困惑した場合に契約を取り消すことを認め、不当な契約条項の全部または一部を無効としています。

また、消費者契約法では、消費者の被害の発生または拡大を防止するために、適格消費者団体による差止請求を認め、事業者の不当な行為の差し止めを可能にしています。

2、消費者契約法における説明義務

消費者契約法では、事業者に説明義務が課されています。以下では、消費者契約法における説明義務の内容について説明します。

  1. (1)消費者契約法における説明義務とは

    消費者と事業者との間には、情報の質および量に圧倒的な格差があるため、消費者トラブルには、事業者が消費者に対して、誤解を招くような説明をした、または、十分な説明をしなかったことが原因で生じることがあります。

    そこで、消費者契約法では、事業者に対して、以下の2つの義務を課しています(消費者契約法3条1項)。

    • 契約内容が消費者にとって明確かつ平易なものになるように配慮する義務
    • 消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供する義務


    このうち、後者の義務が「説明義務」と呼ばれるものになります。ただし、上記の2つの義務は、努力義務とされていますので、事業者が説明義務に違反したとしても、具体的なペナルティーが課されることはありません。

    しかし、努力義務だからといって、いい加減な情報を提供し、消費者が誤認または困惑により契約を締結した場合には、契約を取り消されてしまうリスクがありますので注意が必要です。後日、トラブルが発生することを避けるためにも、事業者としては、商品やサービスに関して丁寧かつわかりやすい説明をすることを心がけるようにしましょう。

  2. (2)消費者契約法の改正により説明義務の範囲が拡大

    令和5年6月1日から改正消費者契約法が施行されました。この法改正は、コロナ化を経てオンライン取引が増加したことや成人年齢の引き下げによりインターネット利用者の低年齢化による消費者トラブルの増加を受けてのものになります。

    改正内容は多岐にわたりますが、事業者の説明義務との関係では、以下の改正点が重要になります。

    ① 解約料の説明が努力義務化
    消費者契約法では、契約解除に伴う損害賠償や違約金について、平均的な損害額を超えるものや年率14.6%で計算した金額を超える場合には無効になると定められています(消費者契約法9条)。

    改正消費者契約法では、契約解除に伴う損害賠償や違約金を定める際に、消費者から説明を求められたときは、これらの金額の算定根拠の説明が求められるようになりました。また、事業者、適格消費者団体から算定根拠の説明を求められたときも同様に説明しなければなりません。

    いずれも努力義務とされていますが、事業者としては、いつでも説明ができるよう備えておく必要があります。

    ② 事業者の努力義務の新設
    上記の違約金などの説明義務以外にも、事業者には、以下のような努力義務が改正法により課されることになりました。

    • 解除権行使に必要な情報提供
    • 勧誘時の情報提供
    • 定型約款の表示請求権に関する情報提供
    • 適格消費者団体の要請対応

3、説明に関して注意しておきたい点

事業者は、商品やサービスについて消費者に説明をする際には、以下の点に注意する必要があります。

  1. (1)不実告知

    不実告知とは、事業者が消費者に対して、重要事項について事実と異なる内容を告げることをいいます。たとえば、「シロアリによく効く駆除剤である」と告げて、シロアリには効き目のない薬剤を販売したようなケースがこれにあたります。

    事業者の不実告知により、消費者が誤認して契約の意思表示をした場合には、消費者により契約が取り消される可能性があります。

  2. (2)不利益事実の不告知

    不利益事実の不告知とは、事業者が消費者に対して、重要事項について消費者に不利益となる事実があるにもかかわらず、故意にそれを告げないことをいいます。たとえば、将来目の前に高層マンションが建つことがわかっているにもかかわらず、「眺望抜群」、「日当たり最高」などの売り文句で不動産を販売したようなケースがこれにあたります。

    事業者の不利益事実の不告知により、消費者が誤認して契約の意思表示をした場合には、消費者により契約が取り消される可能性があります。

  3. (3)断定的判断の提供

    断定的判断の提供とは、事業者が消費者に対して、将来における変動が不確実な事項について、確実であると告げることをいいます。たとえば、不動産の購入を検討している消費者に対して、「将来確実に値上がりする」と告げて販売したようなケースがこれにあたります。

    事業者の断定的判断の提供により、消費者が誤認して契約の意思表示をした場合には、消費者により契約が取り消される可能性があります。

  4. (4)不安をあおる告知

    不安をあおる告知とは、事業者が社会経験の乏しい消費者に対して、進学・結婚・容姿などの願望について強い不安を抱いているのに乗じ、その不安をあおり、商品やサービスの契約をさせることをいいます。

    たとえば、就活生に対して「この有料セミナーを受講しないと就職できない」などと告げて、契約させたようなケースがこれにあたります。

    事業者の不安をあおる告知により、消費者が困惑して契約の意思表示をした場合には、消費者により契約が取り消される可能性があります。

4、顧問弁護士へ相談を

消費者契約法違反となるリスクを回避するためにも、企業法務は、顧問弁護士にご相談ください。

  1. (1)ささいなことでも気軽に相談できる

    企業活動を行っていくと、法務上のさまざまな疑問や悩みに直面します。しかし、「何となく不安だが、わざわざ予約してまで弁護士に相談するのは面倒」などの理由で、リーガルチェックを経ることなく経営判断を下してしまうケースも少なくありません。

    しかし、重大な法的リスクが潜んでいるにもかかわらず、それに気付かず取引を進めてしまうと、将来的に大きな損害が生じるおそれがあります。

    顧問弁護士と連携しておくことで、ささいな法務上の疑問も気軽に相談できるようになり、心配やリスクも軽減されることで、本業のパフォーマンスも向上するでしょう

  2. (2)法務部を設置するコストを抑えることができる

    日常的な契約書のチェックなどは、会社内の法務部が担当している企業もあるかもしれません。しかし、法務部が設けられていない企業では、契約書のチェックなどは、十分な法的知識のない社員が担当していることもあります。

    顧問弁護士を利用する際には、毎月顧問料の負担が生じますが、新たに法務部を設置するコストと比較すると低コストに抑えることができます。また顧問弁護士は、消費者契約はもちろん経営上のさまざまな法的知識や経験もあるので、高いクオリティーのサービスを受けることができるでしょう。

  3. (3)トラブルが生じたときも優先的に対応してもらえる

    一般的なケースでは、トラブルが発生したときは、まずは、法律事務所に電話をして、相談の予約を入れてから、弁護士に相談をするという流れになります。

    しかし弁護士は通常、多数の案件を抱えているため、相談の予約をとるまでに時間がかかることも多く、トラブル対応への初動が遅れてしまい問題が深刻化するおそれがあります。また、初対面の弁護士に対して、自らの企業の活動内容や取引先との関係等もゼロから説明をしなければなりません。トラブルが実際に発生してから、弁護士を探したのでは間に合わないことがあるでしょう。

    顧問弁護士であれば、顧問先企業については熟知しており、優先的に対応してもらえますので、トラブルが発生したとしても、迅速に対応することが可能です。

5、まとめ

消費者契約法では、事業者に対して、説明義務を課しています。この説明義務は、努力義務とされていますが、いい加減な説明で消費者に誤解または困惑を与え、契約締結に至った場合には、後日契約が取り消されるリスクがありますので注意が必要です。

そのような消費者とのトラブルが生じないようにするためには、日常的に顧問弁護士によるリーガルチェックを受け、法的リスクを排除することが大切です。顧問弁護士の利用をお考えの場合は、法務実績があるベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまでお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています