借金があっても生活保護を受けられる? 大阪の弁護士がポイントと方法を解説!
- 借金問題
- 借金
- 生活保護
- 大阪
長引く不況や労働状況の悪化によって、生活保護を受ける世帯の数は年々増えています。大阪市でも例外ではなく、生活保護を求める市民のために質問コーナーが公開されています。回答によると、大阪市は「失業率」「離婚率」「高齢者の割合」の割合が高く、また日雇い労働者の人たちが集まる街があることなどの理由により、生活保護受給者が多いと説明されています。
しかし、その人の生活状況次第で、生活保護を受けることは、生きていくために必要なことといえます。そもそも生活保護は、最低限度の健康で文化的な生活を保障し、将来的には自立して健康に働けるようになるまでの橋渡しの役割を担っています。これまで普通に生活してきた方の中にも、いろいろな事情で生活が困窮し、一時的に生活保護に頼らざるを得ない方もいます。何が起こるかわからない現在、誰であろうと、利用する可能性がある制度だということを理解しておきましょう。
やむを得ない理由で職を失い生活保護を受けたいと思うものの、すでに借金があるため申請をためらっている方もいるかもしれません。借金の整理方法も含めてどうすればよいのか、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。
1、生活保護とは
-
(1)生活保護
生活保護は、経済的に困っている方に対して、国や自治体が、健康で文化的な最低限度の生活を保障するために行う公的制度です。たとえ働いていたとしても最低限度の収入を得られない方は、その分を差し引いた額の保護を受けることができます。
つまり、生活保護を受けるには、その方の持っている財産や収入を得る方法のすべてを活用して、それでもなお困窮する場合にはじめて受給が認められる制度だといえるでしょう。 -
(2)支給される保護費
生活保護により受給できる保護費は個人単位でなく世帯単位で支給されます。このため、世帯収入と世帯について考えられる最低生活費を勘案して不足する金額を、保護費として支給することになります。
この最低生活費は物価や地価を反映するため、居住区域ごとに異なっており、厚生労働大臣が基準を定めています。したがって、実際に支給される金額は家族構成や居住地などによって大きく異なるため、ひと口にいくらとはいえません。ご自身がいくら受けられるかを知りたいときは、お住いの地域にある役所の福祉課や福祉事務所などに問い合わせることをおすすめします。
2、借金がある場合にも生活保護を受けることはできる?
-
(1)生活保護の条件
生活保護を受けるためにはまず、自分の持っている財産などをすべて活用する必要があります。
●預貯金や生活に利用されていない土地・家屋
土地などの資産は売却し、預貯金と合わせて生活費にあてなくてはなりません。
●能力の活用
働くことが可能な方は、その能力に応じて働かなくてはなりません。
●他の制度の活用
年金や手当など、他の制度で給付を受けることができる場合は、まずそれらを活用することになります。
●扶養義務者の扶養
親や兄弟などの親族から援助を受けることができる場合は、まずそちらから援助を受けることになります。原則、生活保護を申請すると、すべての扶養義務者に対して扶養できないかどうかを問う手紙が送られます。ただし、援助によって生活が傾くなどの理由があれば、無理をして援助する義務はありません。すべての扶養義務者から「扶養は難しい」という回答があったとき、生活保護が受けられることになるケースが一般的です。 -
(2)借金がある場合の生活保護
前述のとおり、生活保護はどのようにがんばっても生活に困窮してしまう場合にはじめて受けることができる制度です。では、借金がある場合はどうでしょうか。
結論からいいますと、借金するほど生活に困窮しているわけですから、上記を満たせば生活保護を受けることは可能です。
ただし、生活保護費を借金の返済に使うことは原則としてできません。その場合は借金した額を減額されて生活保護費が給付されます。ただし、例外的に借金の残額がごくわずかであり、それさえ返済すれば借金がなくなるというような場合にはケースワーカーへ相談のうえ、認められることがあります。
生活保護を受けたうえで借金を続けることは、利息などを考えるとますます生活が困窮することになります。絶対に、新たな借金はしないようにしてください。一般的な業者であれば、生活保護者にお金を貸すことはないと考えられます。安易に貸してくれる業者には注意すべきでしょう。 -
(3)自己破産と生活保護
借金があるにもかかわらず生活保護を受けようとする場合、あまりにも借入額が大きな場合は自己破産や任意整理をすすめられることがあります。
自己破産をすると、法定の除外事由に該当しない限り最終的に免責を受けることができ、それ以降は借金を返済する義務がなくなります。裁判所を通じた手続きです。
任意整理は、借金のある者が債権者と自ら又は弁護士等の代理人を通じて交渉を行って、借金の額を減らしたり分割払いの合意をしたりすることをいいます。任意整理によって借金がゼロになるケースはほぼありませんが、過払い金がある場合は返済にあてることができるため、その可能性もあります。
借金によって生活ができなくなっているケースでは、生活保護を受けるよりも、債務整理(法的に借金を整理する方法)を検討したほうが、生活の立て直しができる場合があります。自己破産の場合は、破産したことが官報で公示され、新たな借金ができなくなるなどのデメリットもありますが、最低限の生活ができるだけの現金は手元に残すことができます。任意整理は、借金の返済方法を調整することで、可処分原資の範囲内で余裕のある返済が可能になるでしょう。
しかし、自己破産は法的手続きであり、専門的知識が必要です。また、任意整理は債権者と交渉をする必要があります。これらの手続きを一般の方が自分ひとりで行うことは難しいため、弁護士に相談することをおすすめします。
生活が困窮しているのに弁護士を雇うことができるのか、という方は、日本司法支援センター(法テラス)に相談してみることもできます。一定の条件はありますが、弁護士費用などの立て替えサービスを行っています。また、法律事務所によっては初回無料で相談に応じてくれる場合もあります。いずれにせよ、ひとりで抱え込んでも問題は解決しません。まずは相談してください。
3、生活保護の手続き
-
(1)手続きの流れ
病気やケガ、介護などでどうしても働けないというケースは少なくないでしょう。誰しもそのような状況に陥る可能性はあることです。どんなにがんばっても生活が困窮するという場合は、生活保護の申請をしましょう。生活保護の申請はあなたに認められた権利です。
生活保護を受給するには、まず、事前に各地の福祉事務所に対して相談を行います。相談では、生活福祉資金、各種社会保障施策などを活用できないかなどが検討されます。相談後、生活保護を申請すると、受給の要件を満たすかどうかの調査を受けることになります。
具体的には、次のような調査です。- 生活状況などを把握するための実地調査(家庭訪問など)
- 預貯金、保険、不動産などの資産調査
- 扶養義務者による扶養(仕送りなどの援助)の可否の調査
- 年金などの社会保障給付、就労収入などの調査
- 就労の可能性の調査
これらの調査により、持っている資産や能力のすべてを活用してもなお、生活に困窮してしまう状態にあると判断されたときは、生活保護を受けることができます。
-
(2)生活保護費受給後の注意点
無事生活保護を受けることができた場合、徐々にですが自力で生活を立て直していくことを考えていかなくてはなりません。
生活保護受給中は収入の状況を毎月申告し、福祉事務所のケースワーカーによって年数回の調査が行われます。また、就労の可能性のある方については、就労に向けた助言や指導が行われます。生活保護受給中は、収入や生活状況について常にチェックが行われます。お金の管理が苦手な方は、この機会に勉強できるでしょう。
また、次のようなことをすると、生活保護費が打ち切られてしまう可能性があります。- 生活保護費で借金の返済をすること
- 新たな借金をすること
- 高額な資産(自動車など)を購入すること
- 働いて収入を得ながら報告しないこと
前述のとおり、資産や収入がないことが生活保護受給の条件です。したがって、これらの行為は原則的に禁止されていて、場合によっては不正受給とみなされて生活保護が打ち切られることもありますので、ご注意ください。
4、まとめ
今回は、借金があっても生活保護を受けることができるのかという疑問や、生活保護を受ける方法について説明しました。借金がある方が生活保護を申請することは、精神的にもなかなか難しいことだと思います。また、生活の立て直しを模索する中で、自己破産や任意整理を検討することもあるでしょう。
いずれにせよ、手続きのすべてを自分で判断して行うことは困難です。ひとりで何とかしようとせず、行政の窓口で相談してみることも弁護士に相談してみることもできます。
弁護士に借金問題を相談することによって、生活を立て直すためにはどうしたらよいのか、建設的なアドバイスを受けられます。さらに、自己破産や任意整理をはじめとした債務整理を依頼すれば、現在あなたを苦しめているだろう債権者からの取り立てを止めることができます。そこから生活を立て直す準備を始めてみませんか?
ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスでは、自己破産や任意整理をはじめとした債務整理に対応した実績が豊富な弁護士が、あなたをサポートします。まずはお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています