未成年の息子が窃盗で逮捕|逮捕後の流れや家族ができること
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大阪府警察が公表している統計情報によると、令和5年中に大阪府で認知された窃盗犯の数は5万8305件でした。
また平成30年3月、大阪府高槻北高校では部員が窃盗事件を起こしたとして、半年弱の対外試合禁止処分を受けたことが報じられました。未成年が窃盗事件を起こすと、逮捕され、窃盗容疑で取り調べを受ける可能性もあります。同時に学校で退学などの処分を受ける可能性もあるでしょう。
そこで、今回は未成年が窃盗で逮捕された場合の流れや示談などについて、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。
1、窃盗罪とは? 成立の要件や量刑を解説
窃盗罪は、刑法第235条において、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。
刑法で規定されている他人は、自分以外の人間です。特定の人物だけでなく、店舗の商品や施設の設備などを盗んだ場合も窃盗となります。窃盗が成立する要件は、「他人の財物を盗むこと」なので、万引きやひったくり、置き引き、なども窃盗とみなされます。ただし、「他人の財物を盗むこと」を認識してなければ成立しないため、捨ててあると認識しているものを持ち帰っても成立しない可能性もあるでしょう。
窃盗罪で有罪になった場合は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。
2、未成年が逮捕された場合の流れとは。成人との違いは?
未成年が窃盗で逮捕された場合、逮捕後の流れは成人とは異なります。
成人の場合、逮捕後は勾留されたのち刑事裁判を経て刑罰が決定するのが一般的ですが、未成年は刑法上の罪を犯しても刑事裁判が行われることがないのが通常です。また、14歳未満の少年が窃盗をした場合は、刑法上の犯罪として処罰を受けることはありません。
手続きの具体的な流れは次のとおりです。
まず、未成年が窃盗で逮捕されると、勾留された後、少年鑑別所に移動します。犯した罪が重い場合は、勾留されることもありますが、軽微な事件の場合は、勾留されることなく少年鑑別所に移動となることもあるでしょう。
少年鑑別所に収容することを「観護措置」と呼びます。少年鑑別所には、科学的な検査などの施設があり、医学心理学などの専門知識に基づいて少年の心身の鑑別を行います。罪を犯した子どもだけでなく保護者やその他の関係者と面接するなどして、窃盗の原因や子どもが抱える問題を明らかにします。
少年鑑別所に移動した後、家庭裁判所では、「審判」が必要かどうかを判断します。審判が不要と判断されると「審判不開始」と呼ばれる処分となります。この場合、審判が行われたり、罪に問われたりすることもありません。
他方、審判が必要と判断された場合は、家庭裁判所で処分が下されます。
3、未成年の刑事裁判はどのように進む?
前述のとおり、未成年が窃盗罪で逮捕された場合、成人のような「刑事裁判」は開かれません。家庭裁判所が必要と判断したら「少年審判」が開かれます。
少年審判は、刑事事件とは異なり家庭裁判所が管轄となります。前述のとおり、「本人が過ちを自覚して更生すること」を目的としているため、それぞれの少年が抱える問題に応じた適切な処分を選択する手続きです。
したがって、成人の刑事裁判が原則公開で行われるのに対し、少年審判は原則非公開で進められます。少年審判に参加するのは、裁判官、裁判所書記官、家庭裁判所調査官、裁判所事務官、少年、保護者、付添人(弁護士)です。事実確認のために検察官が立ち会うことがありますが、原則として検察官は立ち会いません。
少年審判は以下のような流れで行われます。
まず、裁判官が少年に名前などを聞いて本人確認した上で、窃盗したことに間違いがないかどうかを確認します。さらに、少年が本当に窃盗をしたかどうかを確認します。少年本人が窃盗を否定している場合は、証人尋問などの証拠調べを行うこともあります。その後、窃盗の動機や原因、生い立ちや家族関係などの状況を確認します。
成人の刑事裁判が有罪かどうかを争うものなのに対し、少年審判は審判の過程自体が「再発防止に向けた教育の場」とされています。
上記の手順を経た上で「決定の告知」が行われます。少年に下される処分は以下のいずれかです。
- 保護観察処分
- 少年院送致決定
- 児童自立支援施設等送致決定
- 検察官送致決定
- 知事または児童相談所長送致決定
- 不処分
この中で、比較的重い処分と考えられているのが少年院送致決定と、検察官送致決定です。少年院送致は、再非行を犯す恐れが強く、社会での更生が難しいと判断された場合に下される決定で、少年院に収容されてしまいます。
検察官送致決定とは、少年審判ではなく「刑事処分」が妥当であると判断されたときに下される決定です。上記のような処分ではなく、窃盗罪の場合は、刑法に定められている「10年以下の懲役、または50万円以下の罰金」に処される可能性があります。
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4、未成年の子どもが逮捕された場合、家族ができること
未成年の子どもが逮捕されたら、親や兄弟姉妹などの家族は逮捕された子どもをサポートする体制を整えましょう。具体的には、未成年の刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士に依頼すること、そして家庭内に少年を温かく迎え入れて更生しやすい環境を整えることです。
また、子どもの職場や学校に説明をして、解雇や退学といった処分が下されないように交渉することも大切です。弁護士は、学校などに連絡をしないよう捜査機関に働きかけることができます。もし学校などに知られてしまっても、退学など将来に影響する処分を下さないよう、依頼することも可能です。
少年が犯した犯罪において、重視されるのは「更生すること」です。少年の更生において重視されるのは生活環境であると考えられます。学校だけでなく、家族が少年をサポートできる体制を整えていることを明確にできれば、早期に釈放される可能性もあるでしょう。
さらに、速やかに被害者と示談交渉を進めて、早期に和解すれば審判を回避できる可能性も高くなります。ただし、実際には加害者の親が被害者と直接示談交渉することは難しいため、弁護士に依頼する必要があるでしょう。
5、未成年の子どもが逮捕されたら速やかに弁護士に依頼すべき理由
先ほど、ご家族ができることの中で、真っ先に「弁護士に依頼すること」と説明しました。その理由は、示談交渉を速やかに進めることで、被害者の処分感情を和らげる効果があるからです。
成人の刑事裁判のように、示談が完了しているからといって処分が軽減されたり不起訴になったりといった措置は取られませんが、被害者との和解が完了しているという事実は、一定程度は処分に影響を与えます。
そもそも、弁護士に依頼しなければ、事件の被害者の氏名や連絡先、住所などの個人情報を知ることができないケースがほとんどであり、被害者との示談交渉すらスタートできないこともあるのです。
また、少年の窃盗事件の実績豊富な弁護士であれば、関係各所との交渉だけでなく依存症など病気の治療のアドバイスや、医師やカウンセラーへの橋渡しも可能です。さらに、逮捕後の家族との面会が禁じられている期間でも弁護士なら子どもと接見が可能なため、ひとりで心細い子どもを精神的に支えることもできるでしょう。
わが子が窃盗事件で逮捕された場合は、処分を軽くするというだけでなく、心のケア、更生などを踏まえたうえで、弁護士に依頼することをおすすめします。
6、まとめ
未成年の子どもが窃盗事件を起こした場合、14歳以上であれば少年審判が開かれ処分が下されることが一般的です。成人の窃盗罪とは異なる処分内容ではありますが、非行の可能性が高いと判断されると検察に送致されたり、少年院に収容されたりといった比較的重い処分になることもあるでしょう。
したがって、処分を軽減するだけでなく、子どもの精神的ケア、今後の更生なども含めた対策について、考えていく必要があります。子どもが窃盗で逮捕されてしまったときは、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスへご相談ください。少年事件の実績豊富な弁護士が、子どもの更生を目指した活動を行います。
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