道頓堀でケンカに巻き込まれ、他人に暴行! 暴行罪の量刑や逮捕後の流れとは

2018年11月26日
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道頓堀でケンカに巻き込まれ、他人に暴行! 暴行罪の量刑や逮捕後の流れとは

大阪市内で飲んだ帰り、見知らぬ男性同士がケンカしているところに巻き込まれ、身を守るため、思わず手を出してしまった……という暴行事件が発生したとしましょう。

その際も、相手が警察へ被害届を出すと、暴行罪で逮捕される可能性があります。「暴行してしまった……逮捕されたらどうしよう」と悩んでいる方もいるかもしれません。逆に、暴行をしたつもりがなかったのに、暴行罪の疑いがあると警察から任意出頭を求められた……という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、暴行罪に問われるおそれのある行動をしてしまい不安を感じている方のために、暴行罪がどのくらいの量刑なのか、警察に逮捕された後はどうなるのかを、弁護士が解説します。

1、暴行罪とはどのような犯罪?

自分が暴行罪を犯したと思っていても、実際は暴行罪にならないケースもあります。まずは基礎知識として、どのような行為が暴行罪になるのか解説します。参考にしてみてください。

  1. (1)暴行罪が成立する行為とは

    暴行罪については、刑法第208条において以下のように定められています。 「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。」

    同条における「暴行」とは、「人の身体に対する有形力の行使」と考えられています。具体的には、人を殴る、蹴る、押す、たたく、腕や胸ぐらをつかむなど、一般的に暴力と呼ばれる行為が広く該当します。

    ただし、刑法上の「暴行」には、いわゆる「暴力」以外にも、以下のようなケースで暴行罪が成立しうることが、過去の裁判例から明らかになっています。

    • 相手の耳元で大きな音を出したり、楽器などを用いて爆音を出したりする
    • 相手に向けてモノを投げたが、近くに落ちただけで当たらなかった
    • 相手の近くで日本刀やゴルフクラブを振り回した
    • 相手の服やカバンを引っ張る
    • 相手に水や塩をかけた

    SNSなどで迷惑行為として話題になった「すれ違う相手にわざとぶつかる」行為も、暴行罪に該当する可能性があるでしょう。

  2. (2)暴行罪と傷害罪の違い

    刑法上の「暴行」では「人を傷害するに至らなかったとき」と規定されています。

    よって、暴行罪は被害者に暴行を加えてもケガをしなかった場合に成立し、傷害罪は暴行により被害者がケガをした場合に成立します。もちろん、傷害罪のほうが量刑は重くなります。

    ただし、暴力行為でケガをさせなくても、執拗な嫌がらせなどによって人の生理的機能に障害を生じさせて、傷害罪が成立するケースは多々あります。たとえば、失神、吐き気、病気への感染、意識障害、ストレスによる睡眠障害などを生じさせたという証拠がある場合は、傷害罪が成立しえます。

2、暴行罪の量刑はどのくらい?

暴行罪の刑罰は「2年以下の懲役又は30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」と規定されています。よって、暴行罪で有罪となった際に科される刑罰は、以下4つのうち、いずれかの刑罰が科されることになります。

  • 懲役(ちょうえき)……2年以下の期間、刑務所で労働を科され、服役する。
  • 罰金(ばっきん)……1万円以上30万円以下を支払う。
  • 拘留(こうりゅう)……1日以上30日未満の短期間、身柄が拘束される
  • 科料(かりょう)……1000円以上1万円未満を支払う。もっとも軽い刑罰

ただし、どの刑罰が科されるかは暴行罪の行為の悪質性によって変わります。行為の悪質性が低い場合や初犯の場合は、軽微な罰金、拘留、科料が科される可能性が高まります。状況によっては、不起訴処分になるケースも少なくありません。

一方、行為の悪質性が高い場合や常習性がある場合は、懲役刑になることが多くなります。なお、懲役刑は2年以下となっていますが、刑期は事件によってさまざまです。

3、暴行罪に時効はある?

暴行罪の場合、検察官が起訴できなくなる公訴時効は3年であり、犯罪が終わったときから時効が進行します。したがって、暴行罪を犯したときから3年が経過した時点で、検察官は暴行事件を起訴することができなくなります。

4、暴行罪で逮捕された後の流れとは?

もし暴行罪で逮捕されることがあれば、どのような流れを負うことになるのでしょうか。原則、刑事事件における逮捕後の流れは法で定められているため、そのプロセスは同一です。事件の関与を疑われる者は「被疑者(ひぎしゃ)」と呼ばれる立場になり、起訴されると「被告人(ひこくにん)」と呼ばれる立場になります。

  1. (1)警察による逮捕

    「現行犯逮捕」は、暴行の現場で逮捕されるケースです。目前で犯行がなされているため、裁判官の令状は不要で、一般人でも取り押さえることができます。一方で、「通常逮捕」は、裁判官が令状を発行しなければ被疑者を逮捕できません。犯行当日ではなく、後日逮捕されることから、「後日逮捕」と呼ばれることもあるようです。

    警察に逮捕されたケースでは、身柄を拘束されて取調べを受けることになります。その期間は最大48時間で、家族でも面会が禁じられます。

    ただし、初犯で身柄を保障してくれる人物が存在し、暴行の程度が軽ければ「微罪処分」として、検察官に送致せずに釈放されるケースがあります。前科がつくこともありませんし、名実ともに自由の身になります。

    以下のような要素があると、微罪処分になりやすいです。

    • 身元引受人がいる
    • 初犯である(同様の犯罪における前歴がない)
    • 被害が軽い
    • 暴行行為が悪質でない
    • 被害者が加害者の刑事処分を望んでいない(示談が成立している)

    ただし、逮捕された履歴は「前歴」として、警察や検察のデータベースに残るため、同様の事件を再び起こしてしまったときは、初犯として微罪処分となることは難しくなるでしょう。

  2. (2)検察官へ送致

    警察は、取調べを行うとともに、48時間以内に事件を検察官へ送致するかどうかを判断します。

    微罪処分とならず、事件が送致されれば、送致を受けた検察官は24時間以内に、引き続き被疑者の身柄を拘束する「勾留(こうりゅう)」を行うか否かを判断します。継続して勾留する際は、裁判官へ「勾留請求」の手続きを行います。

  3. (3)検察官が起訴・不起訴の判断

    勾留が決定すると、被疑者は10日間、身柄を拘束され、捜査が進められます。10日間だけでは捜査が不十分と判断したときは、合計で10日間の勾留延長を請求することが可能です。

    勾留期間内に検察官は被疑者の起訴・不起訴処分を判断します。検察官が起訴すると裁判へ移行し多くの場合は勾留が継続しますが、「不起訴」・「処分保留」になると被疑者は釈放されます。

    ●不起訴……嫌疑なし・嫌疑不十分・処分するほど悪質でないといったの理由で、起訴はしないという判断。被疑者の立場から完全に解放され、日常に戻ることができる。前科はつかないが、逮捕されれば「前歴」として捜査機関のデータベースに残る。

    ●処分保留……起訴不起訴の判断を保留する措置。今後の捜査次第で再度、逮捕・起訴される可能性もある。

  4. (4)裁判

    検察官が起訴をすると、刑事裁判が行われます。基本的には、起訴を受けて裁判が行われ、裁判所により暴行事件の判決が下されることになります。

    なお、「起訴」する際、検察は、「公判(こうはん)」か、「略式(りゃくしき)裁判」のいずれかを請求します。

    「公判(こうはん)」とは、一般の方も傍聴できる公開された法廷で行われる裁判を通じて刑罰を決定していくことを指します。懲役など自由を律する刑罰が求められる際には公判請求になります。公判請求をされた際は「保釈手続」を行わない限り、多くのケースでは引き続き身柄が拘束されることになります。

    「略式(りゃくしき)裁判」は、書類手続きだけで刑罰を決める手続きです。求刑が罰金や科料などの財産刑のときのみ使用される裁判方法で、非公開で行われます。書類のやり取りだけとなるので、身柄の拘束は解かれることになります。

5、暴行罪と示談の関係

「示談(じだん)」とは、当事者同士が話し合いを通じて事件を解決しようとすることです。

暴行罪では、被害者との示談を成立させる(あくまで民事における損害賠償請求権についての解決)ことで、逮捕や起訴を回避できる可能性が高まります。本稿では、暴行罪において示談はどのような効果があるのか解説します。

  1. (1)暴行罪の示談を成立させる効果

    暴行にかかわる示談は、成立したタイミングによって、加害者にとって得られる効果が大きく変わります。

    現行犯逮捕ではないケースに限られますが、逮捕前に被害者との示談が成立すれば、被害届の提出を控えてもらうなど、暴行について事件化することを避けられる可能性が高まります。

    また、もし身柄を拘束されてしまっても、その間に被害者と示談が成立した時点で、すぐに釈放されるケースが多々あります。

    そのまま、在宅捜査や、勾留に至ったとしても、起訴される前に示談が成立していれば、軽微な態様の場合、不起訴処分となる可能性も高くなります。不起訴処分になれば前科がつかないため、これも大きなメリットです。

    起訴されてしまった後でも、示談を成立させるメリットはあります。裁判が行われている途中で示談が成立すれば、執行猶予がつくなど、量刑が軽くなる可能性が高まります。

    被害者にとっても、示談を成立させることで、今後の損害賠償などにかかわる時間などを削減することができるという大きなメリットを得ることができます。

  2. (2)暴行罪の示談金の相場はどのくらい?

    暴行罪の示談成立には大きなメリットがありますが、気になるのが示談金はいくらなのかということでしょう。

    暴行罪の示談金の相場は事件ごとに異なり、簡単に相場はいくらとは言いにくい面があります。一般的には、それほど悪質でなければ数十万円程度にとどまることが多いのですが、態様が悪質で被害者感情も強いような場合には、100万円以上の示談金が必要となるケースもあります。

    なお、一般的に被害者は加害者に住所や連絡先を知られることを嫌がるものです。もし被害者の住所などを知っていたとしても、加害者自身が示談を迫ること自体に恐怖を感じるケースもあります。

    当事者同士での示談交渉は難しいものと考え、弁護士に示談交渉を依頼することをおすすめします。実際に、これまでかたくなに示談交渉を拒んでいた被害者が、弁護士であれば交渉に応じるというケースは多々あります。

6、まとめ

今回は、暴行罪がどのくらいの量刑なのか、警察に逮捕された後どうなるのかを解説しました。暴行罪は傷害罪のように被害者が負傷していないため、早期に被害者と交渉することで示談が成立しやすいという特徴があります。警察に逮捕されたり起訴されたりするのを回避するためにも、示談は確実に成立させたいところです。

ただし、加害者やその家族が暴行罪の示談交渉を進めても、脅しと受け取られるケースなどもあるため、スムーズに成立させるのは難しいでしょう。なるべく、第三者で法律の専門家である弁護士の力を借りて示談交渉をすることをおすすめします。

暴行罪で逮捕されるのでは……と不安に感じている方は、ベリーベスト法律事務所大阪オフィスまでご連絡ください。大阪オフィスの弁護士が、経験を活かして全力でサポートさせていただきます。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています