役所職員へのクレームが過ぎると公務執行妨害になる? 逮捕の可能性を解説

2024年09月02日
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役所職員へのクレームが過ぎると公務執行妨害になる? 逮捕の可能性を解説

「職員の説明が分かりにくい、対応に納得がいかない…。」役所に出向いた際にこのような感情を抱いたことがある方もいらっしゃるでしょう。

平成29年、大阪府で区役所職員の対応を不服に感じ、消火器を噴射した男性が公務執行妨害容疑で逮捕されたという報道がありました。

公務執行妨害罪においては、このような直接的な妨害だけでなく、言葉による暴力も処罰の対象になり得ます。公務員に対する公務執行妨害罪がメディアをにぎわせているだけに、ご家族が役所で暴言を吐いたとなると、大丈夫なのだろうかと不安になるものです。

今回は、公務執行妨害罪の成立要件や逮捕の可能性について、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。


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1、公務執行妨害罪とは?

テレビのニュースや情報番組でよく耳にする犯罪のひとつに、公務執行妨害罪があります。ここでは、公務執行妨害罪の概要や成立要件について解説します。

  1. (1)公務執行妨害罪の概要

    刑法第95条では、公務の執行を妨害する罪として、公務執行妨害罪に該当する対象を以下のように規定されています。

    • 公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者(第1項)
    • 公務員に、ある処分をさせ、若しくはさせないため、又はその職を辞させるために、暴行又は脅迫を加えた者(第2項)


    ここでいう公務員は、刑法第7条で規定されているとおり、以下の職業に従事している方を指します。

    • 国又は地方公共団体の職員
    • 法令により公務に従事する議員、委員その他の職員


    具体的な職業としては、警察官・消防士・自衛官・市町村の役所職員・議員・宮内庁勤務の方などが挙げられます。公務員試験に合格して職員となった公務員以外でも、役所で働く派遣社員やアルバイト、公証人なども、公務に従事していれば「公務員」と扱われる場合があります。

    ただし、公務執行妨害罪の規定によって守ろうとしているものは、公務員個人ではなく、「公務」そのものです。つまり、「公務員に暴行・脅迫する」ことではなく、「公務の執行を妨害(暴行・脅迫)する、妨害しようとする」ことによって、公務執行妨害罪に問われることになります。

  2. (2)公務執行妨害罪の成立要件

    どこまでが公務で、どこからが妨害にあたるのかが気になるかもしれません。まずは、公務執行妨害罪が成立する3つの要件を解説します。

    • 対象者が「公務員」であること
    • 対象者の「職務を執行するに当たり」なされた行為であること
    • 対象者に対して「暴行又は脅迫を加えた」こと


    ポイントは、対象者が「職務を執行するにあたり」なされた行為でなければ、法的に抵触しないことです。したがって、休憩中や休暇中の役所職員に対して暴行を加えたとしても、公務執行妨害罪に問われることはありません。
    ただし、当然のことながら、個人に対する暴行罪に問われることにはなります。

  3. (3)公務執行妨害罪の具体例

    続いて、役所のケースから、公務執行妨害罪の具体例を見ていきましょう。

    たとえば、役所の窓口職員に腹を立てて殴ったり、「制度を適用しないと殺す」などと脅したりする行為が該当します。まさに、暴行および脅迫にあたる行為です。

    しかし、条文に記されている「暴行」は、直接職員を殴ったという行為に限られておらず、対応している職員の補助をしている人、さらにテーブルなど物にあたるような行為も暴行とみなされる可能性があります

    状況や事例によって、どの行為が犯罪にあたるのかは直ちに断言できないため、まずは弁護士に相談してみることもひとつの方法です。

  4. (4)公務執行妨害罪と関連罪

    関連罪の可能性についても知っておきましょう。公務執行妨害罪の成立要件には、「暴行又は脅迫」が明記されています。一方で、暴行や脅迫は、それ自体が犯罪となる場合があります。
    そのため、公務員に対する暴行や脅迫は、公務執行妨害罪以外の罪に該当する可能性もあります。

    具体的には、以下のような犯罪にも該当する可能性があります。

    • 暴力をふるってケガをさせた場合:傷害罪(刑法第204条)
    • ケガをしなくとも暴行をした場合:暴行罪(刑法第208条)
    • 脅迫をした場合:脅迫罪(刑法第222条1項)
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2、公務執行妨害容疑と逮捕の可能性

公務執行妨害による逮捕の可能性、さらには逮捕された場合の対処法などについて解説します。

  1. (1)公務執行妨害罪と後日逮捕

    公務執行妨害容疑で逮捕されるときの多くが現行犯逮捕です。
    現場で公務執行妨害罪に該当する恐れのある行為が繰り広げられ、目撃した他の職員が警察に通報し、駆けつけた警察官に、逮捕令状なしにその場で逮捕されてしまうようなケースです。

    ただし、その場では逮捕されなくても、後日逮捕される可能性がないわけではありません。たとえば、市の職員と保険料の受領タイミングなどで口論となり暴力をふるったが、警察の到着までに現場から離れたケースなどが挙げられます。
    逃走した後、監視カメラなどの映像で身元が割り出され逮捕されるという流れになります。

    また、警察官の任意同行を拒否した場合も、後日逮捕される可能性があるでしょう。

    刑事訴訟法第199条1項に、被疑者が罪を犯したと疑うに足る理由があれば、裁判所の逮捕令状をもとに逮捕できると規定されています。任意同行などの依頼が来て、それに応じなかったり、証拠隠滅や逃亡を図ったりしたケースで逮捕令状が発行されるという流れが一般的です。

    不安な場合は弁護士に相談するのが賢明でしょう。弁護士であれば、任意の取り調べに同行することも可能です。

  2. (2)公務執行妨害罪で逮捕された場合の対処法

    ここからは、公務執行妨害罪で逮捕されたり事情聴取を受けたりした場合の対処法をみていきましょう。

    被害者が個人である刑事事件であれば、示談交渉などにより、早期釈放を求めることが可能です。公務執行妨害罪の場合は被害者が「国」や「地方公共団体」となるため、そもそも被害者自身と示談を行うことができません
    しかし、暴行・脅迫の対象となった公務員も事実上被害者と同じような立場にあるため、その公務員との間で示談を行うことが有効な場合もあります。

    また、容疑をかけられている内容に相違がなければ、行為を素直に認め、反省の色を見せることが得策です。しかし、逮捕された本人が身体を拘束された状態で冷静に対応するのは難しいものです。

    そこで、ご家族としては、事情聴取などの捜査の対応に関してもアドバイスができる弁護士に対応を依頼することが重要となります。

    実際には、逮捕されてから最大72時間は、弁護士以外の人間が容疑者と接触することはほとんど許されていません。また、逮捕から72時間以内に、さらに最長20日間も身体を拘束したまま取り調べを行うことができる「勾留」決定がされることもあります。
    勾留されると、逮捕から起訴か不起訴が決まるまでの最長23日間は帰宅できず、仕事や学校も休むことになり、社会的に大きなダメージを受けることになります。

    したがって、逮捕されてしまった場合に家族ができる最善の対処法は、「早期に弁護士を依頼してサポートを委ねること」といえるでしょう。

  3. (3)公務執行妨害罪の量刑

    最後に、公務執行妨害罪で有罪となった場合に、受ける可能性のある刑罰を確認しておきましょう。

    • 懲役刑または禁錮刑(3年以下)
    • 罰金刑(50万円以下)


    懲役刑は刑務所で身柄を拘束され労働を科されること、禁錮刑は刑務所で身柄を拘束されるが労働は科されない刑です。罰金刑は、受刑者から強制的に一定の金額を国に納めさせる刑です。

    つまり、公務執行妨害罪の容疑者となった人が罪を認め、不起訴にならなければ、最低でも罰金刑は科されてしまうということです。もちろん、罰金刑は有罪であるため、前科がつきます

    また公務執行妨害罪の場合、関連罪があることが多いことは前述したとおりです。この場合、該当する2つ以上の罪のうち、重い量刑の限度で罰を科されることも知っておきましょう。

    公務執行妨害容疑の弁護にあたるとき、弁護士はまずは長期にわたる身体拘束がなされないことを目指します。その後、起訴を回避して前科がつかないよう、さまざまな弁護活動を行います。

3、まとめ

公務執行妨害罪に該当するのかについては法的に判断が難しい場合も多くあります。また、逮捕や取り調べを受けている場合には、弁護士でなければできない対応もあります。
早期に解決して日常を取り戻すために、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談・依頼しましょう。

役所で暴言を吐いてしまった当日だけでなく、後日逮捕される可能性も否定できません。もし家族が公務執行妨害罪に該当する行為をした可能性があり、心配なときは、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスへご相談ください。刑事事件の対応経験が豊富な弁護士が、状況に適した弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています