自転車のあおり運転も道路交通法違反で厳罰化! 逮捕されるケースも

2021年01月26日
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自転車のあおり運転も道路交通法違反で厳罰化! 逮捕されるケースも

大阪府警察の統計によると、令和元年中の大阪府内における自転車相互の事故は627件、自転車対歩行者の事故は379件です。

大阪府内だけで見ると、自転車による事故は近年緩やかな増加傾向にありますので、交通ルールを遵守する必要性はいっそう高まっているといえます。

さて、令和2年6月30日に施行された道路交通法により、いわゆる「あおり運転」を厳罰化する方向の改正が行われました。「あおり運転」については、自転車によるおおり運転行為も規制対象となっていますので、今後自転車を運転する際には十分な注意が必要です。

この記事では、令和2年施行・改正道路交通法によって新たに規制された自転車による「あおり運転」を中心に、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。

(参考:「自転車相互・自転車と歩行者の事故発生状況の推移(過去10年)」(大阪府警察))

1、道路交通法の改正で自転車の「あおり運転」も厳罰化

今回の道路交通法の改正には、ここ数年にわたっていわゆる「あおり運転」が社会問題化していたという背景があります。特に東名高速道路や常磐道などにおいて、あおり運転行為によって交通上の危険を発生させ、実際に事故につながるケースが散見されました。

道路交通法の改正以前は、現実に他人に死傷の結果を生じさせた場合に限り、あおり運転行為を「危険運転致死傷罪」として処罰することが可能とされていました(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条4号)。

今回の改正では、実際に死傷の結果が生じなかったとしても、あおり運転を行ったこと自体を「妨害運転罪」として処罰することが可能となり(道路交通法第117条の2の2第11号)、あおり運転に対する抑止力の強化が期待されます。

そして、近年交通事故の全体件数に占める自転車事故の割合が増加していることを受けて、あおり運転行為規制の対象には自転車も含まれることとされました。

今後自転車を運転する際には、交通ルールを正しく理解し、以前にもまして十分に注意を払う必要があるでしょう。

2、自転車による道路交通法違反のケースとは?

自転車による道路交通法違反のパターンは、今回の改正により新たに規制対象となった「あおり運転」と、以前から規制対象となっていた「危険行為」の大きく2つに分かれます。

それぞれに該当する行為の類型と、自転車の運転者に対して課されるペナルティの内容を見ていきましょう。

  1. (1)自転車による「あおり運転」の7パターン。妨害運転罪で逮捕も

    自転車に対して禁止されるあおり運転とは、他の車両等の通行を妨害する目的で、次の7つのうちいずれかの行為を、相手車両等に対して道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法で行うことをいいます。

    <自転車によるあおり運転>
    1. ① 逆走して進路をふさぐ行為(通行区分違反)
    2. ② 不必要な急ブレーキ
    3. ③ 車間距離の不保持
    4. ④ 進路変更禁止違反
    5. ⑤ 追い越し禁止違反
    6. ⑥ みだりに警音器(ベル)を使用する行為
    7. ⑦ 安全運転義務違反(幅寄せなど)


    あおり運転を行った自転車の運転者については刑事罰の対象となり、「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科される可能性があります(道路交通法第117条の2の2第11号)。

  2. (2)自転車による「危険行為」の15パターン。自転車運転者講習の受講義務付け

    道路交通法改正以前から、自転車については14パターンの「危険行為」が定められており、3年以内に2回以上危険行為を犯した運転者については、自転車運転者講習の受講が義務付けられることになっています(道路交通法第108条の3の4、同法施行令第41条の3)。

    危険行為として従前から挙げられている14パターンについては、あおり運転の類型と重複する部分もありますが、危険行為については他の車両等を妨害する目的などがなくても成立するという特徴があります。

    今回の道路交通法改正により、あおり運転に該当する行為については、当然に危険行為にも該当するものとされました。その結果、自転車の危険行為は以下の15パターンになりました。

    <自転車による危険行為>
    1. ① 信号無視(道路交通法第7条)
    2. ② 通行禁止道路を通行する行為(道路交通法第8条第1項)
    3. ③ 歩行者優先道路における徐行義務違反(道路交通法第9条)
    4. ④ 通行区分違反(道路交通法第17条1項、第4項または第6項)
    5. ⑤ 路側帯を通行する際の歩行者の通行妨害(道路交通法第17条の2第2項)
    6. ⑥ 遮断された踏切への立ち入り(道路交通法第33条第2項)
    7. ⑦ 交差点安全進行義務違反など(道路交通法36条)
    8. ⑧ 交差点で右折する際に他の車両の進行を妨害する行為(道路交通法第37条)
    9. ⑨ 環状交差点安全進行義務違反など(道路交通法第37条の2)
    10. ⑩ 一時停止義務違反(道路交通法第43条)
    11. ⑪ 歩道通行時の通行方法違反(指定部分を徐行、一時停止)(道路交通法第63条の4第2項)
    12. ⑫ 前輪および後輪にブレーキを備え付けていない自転車の運転(道路交通法第63条の9第1項)
    13. ⑬ 酒酔い運転(飲酒運転)(道路交通法第65条第1項)
    14. ⑭ 安全運転義務違反(道路交通法第70条)
    15. ⑮ あおり運転(道路交通法第117条の2の2第11号、第117条の2第6号)

3、自転車事故で加害者になったらどうなる?

自転車を運転している最中にあおり運転を行った場合には、「妨害運転罪」という犯罪が成立し、悪質なケースでは刑事立件されてしまう可能性もあります。

また、実際に自転車事故を引き起こし、他人をケガさせてしまった場合には、業務上過失傷害罪(刑法第211条。5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金)に問われるかもしれません。

このように、自転車の運転中に犯罪の加害者になってしまった場合、その後どのような流れをたどるのかについて見ていきましょう。

  1. (1)逮捕・勾留または在宅捜査

    犯罪行為をした疑いのある自転車の運転者については、捜査機関(検察・警察)による捜査が行われます。

    なお、捜査には2つの方法があり、具体的には以下のとおりです。

    • 逮捕・勾留により身柄拘束の下で行われる場合
    • 身柄拘束をせずに在宅で行われる場合


    逮捕された場合は、逮捕から72時間以内に、検察官から裁判官に対して、より長い身柄拘束を認める勾留の請求が行われ、勾留請求が認められた場合、原則10日間、最長で20日間、さらに身柄拘束が継続します。

    勾留期限が到来するまでに、捜査機関による取り調べが行われ、検察官による起訴・不起訴の判断が下されることになります。

    一方、在宅捜査の場合は特に捜査の時間制限はありません。警察署などで適宜任意での取り調べが行われ、その結果などをもとに、検察官による起訴・不起訴の判断が下されます。

  2. (2)検察官による起訴・不起訴の判断

    検察官は、最終的に被疑者(加害者)を起訴するかどうかの判断を行います(刑事訴訟法第247条)。検察官が被疑者を起訴するには、犯罪行為をしたことが証拠上まず間違いないといえるレベルまで嫌疑が固まることが前提です。

    ただし、罪を犯したことが確実であっても、犯罪行為の悪質性の程度・前科の有無・被害者との示談の状況・被疑者の反省などの情状を考慮して、あえて起訴を見送る場合もあります(起訴猶予処分。刑事訴訟法第248条)。

    そのため、捜査の期間中は、起訴猶予処分を得るための弁護活動が非常に重要です。

    なお、被疑者が起訴される場合、通常の起訴のほかに略式起訴という手続きが取られることもあります(刑事訴訟法第461条)。この場合、刑事裁判が開催されることはなく、100万円以下の罰金または科料の刑が科されて刑事手続きは終了します。

  3. (3)刑事裁判・判決

    検察官によって被疑者が正式に起訴された場合、被告人として刑事裁判の場で罪に問われることになります。なお、その際は逮捕・勾留を受けた場合と在宅捜査を受けた場合、どちらだったのかによって、動きが少々異なります。

    ●逮捕・勾留の後に起訴された場合
    原則として身柄拘束がさらに継続しますが、保釈が認められる場合もあります(刑事訴訟法第88条以下)。

    ●在宅捜査の後に起訴された場合
    通常は在宅のままで、裁判所の呼び出しに応じて刑事裁判の場に出廷することになります。

    刑事裁判の最後には判決が下され、被告人は判決を受け入れるか、控訴をしてさらに争うかを選択します。

4、自転車事故で逮捕されてしまったらどうすべき?

自転車事故で万が一逮捕されると、最悪の場合、懲役刑や禁錮刑などの重い刑罰を科されてしまう可能性があります。

起訴されると、有罪となる可能性が非常に高いため、自転車事故で逮捕されてしまった場合は、不起訴(起訴猶予)に向けた活動を行うことが大切です。

検察官が被疑者を起訴するかどうかを判断するにあたっては、捜査期間中の被害者との示談や、被疑者の反省ぶりについても重要な考慮要素となります。

こうした良い情状を検察官に対してアピールするためには、まずは弁護士に相談して弁護活動を依頼しましょう。

弁護士は、被疑者の代理人として、被害者との示談交渉を代わりに進めてくれます。また、被疑者が反省の気持ちを表すための謝罪文(反省文)の作成についてサポートを受けることも可能です。

こうした活動が検察官に評価されれば、被疑者が不起訴(起訴猶予)処分となる可能性が高まるでしょう。

5、まとめ

道路交通法の改正によって、自転車による交通違反が刑事罰に問われる範囲が拡大しました。自転車を運転する際には、これまで以上に交通ルールを正しく理解し、念頭に置いておく必要があるでしょう。

万が一自転車の運転中に事故を起こし、捜査機関による捜査の対象となってしまった場合には、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士にご相談ください。
被害者との示談などを含めて、依頼者が事故を反省して前向きな再スタートを切ることができるよう、親身になってサポートいたします。

自転車事故を起こしてしまい途方に暮れている方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています