強制わいせつ行為をしてしまったそのあとは? 示談交渉でこころがけるべきポイントを解説
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同僚や取引先の相手へ、行き過ぎたセクハラ行為をしてしまうと、行為の度合いや被害者の訴えによって強制わいせつ罪に問われる可能性があることをご存じでしょうか。
たとえば、取引先の女性とふたりで、道頓堀で飲み歩いてからカラオケボックスへ行き、酔った勢いで無理やり体を触ったり下着の中へ手を入れたりしてしまえば、当然、強制わいせつ罪に該当する可能性があります。
今回は、強制わいせつ罪の定義と量刑を確認したうえで、万が一、強制わいせつ行為をしてしまったとき、逮捕されることを避けるためにできることや、示談交渉のポイントなどについてベリーベスト法律事務所の弁護士が解説します。
1、強制わいせつの定義と量刑
まずは、強制わいせつ罪とはどのような罪なのかを知っておきましょう。また、有罪判決となれば、どのような刑罰が科せられるのかについてもご案内します。
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(1)強制わいせつ罪および準強制わいせつ罪の定義
強制わいせつ罪は、刑法176条において「13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者」及び「13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者」について成立すると定められています。
強制わいせつ罪において重要なポイントは、相手が13歳以上の場合は、「暴行や脅迫を用いて」「わいせつな行為をした」と定めている点にあります。この両方に該当しなければ、強制わいせつ罪にはあたらないということです。
なお、強制わいせつ罪で示される「暴行や脅迫」とは、殴る蹴るなどの暴力や刃物や立場をちらつかせて脅すといった行為のみが該当するわけではありません。相手側の抵抗を著しく困難にする可能性があれば、「暴行や脅迫」に該当します。突然抱きつく、電車内などでしつこく胸を触るなど、加害者が行うわいせつな行為そのものが、加害者にとっては恐怖でしかない行為であるため「暴行や脅迫」にも該当する可能性がある点に注意が必要です。
また、強制わいせつ罪における「わいせつな行為」とは、以下のような行為を指します。- キスをする
- 服を脱がせる
- 抱きつく
- 胸や陰部を触る
- 下着の中に手を入れる
そして、無理やり性交に及んだ場合は、強制わいせつ罪ではなく、より罪が重い強制性交等罪や準強制性交等罪にあたります。
なお、暴行や脅迫を用いることなくわいせつな行為をした場合は、刑法178条に定められている「準強制わいせつ罪」か、各都道府県で規定している「迷惑防止条例」にあたる可能性があります。準強制わいせつ罪は、泥酔しているなど抵抗できない相手に合意なくわいせつな行為をすることが該当します。各都道府県で定められている「迷惑防止条例」は、合意なく相手の体に触れるなどの痴漢行為が該当します。
なお、強制わいせつ罪および準強制わいせつ罪は、男性から女性へのわいせつ行為だけでなく、女性が男性に対して行った場合や同性間でも成立する犯罪です。また、相手が13歳未満の場合は、暴行や脅迫をしていなくてもわいせつな行為をした時点で強制わいせつ罪に問われるという特徴があります。 -
(2)強制わいせつ罪および準強制わいせつ罪の量刑
では、強制わいせつ罪の犯人であると認定し、罪を償うことになった場合、どのような「量刑(りょうけい)」になるのでしょうか。
強制わいせつ罪で有罪判決が下れば、「6ヶ月以上10年以下の懲役刑」が科せられます。罰金刑の設定はありません。準強制わいせつ罪の量刑も同じ重さになります。
ただし、量刑の重さは犯行の悪質性によって異なります。2年の懲役刑に3年の執行猶予がつくケースもあれば、執行猶予がつかずに5年の懲役刑を科せられる場合もあります。さらに、前科もついてしまえば、将来に大きな影響を及ぼす可能性があります。
2、強制わいせつで逮捕されたら不起訴を目指そう
日本の検察は非常に優秀で、確固たる証拠がなければ起訴しないため、起訴された事件の99%は有罪となります。つまり、強制わいせつ罪で逮捕されてしまった場合は、まずは「不起訴(ふきそ)」を目指すことがきわめて重要です。
不起訴とは、簡単に説明すると、「検察が刑事裁判を開く必要はないと判断して起訴しない」ことを示します。つまり、同じ不起訴でも、主に次のようなケースが考えられるでしょう。
- 嫌疑なし……証拠がない、人違いなど。事実上の無罪
- 嫌疑不十分…疑わしいものの、起訴できるほどの証拠がないケース
- 起訴猶予……反省している、示談に被害者が納得している、被害者の処罰感情が強くないなど。起訴する必要性が高くないケース
不起訴といっても、その理由に大きな差がありますが、不起訴を獲得できれば、前科もつかず、すぐに釈放されます。一方で、強制わいせつ罪の容疑で起訴されてしまえば、高確率で刑務所での生活が待ち構えているわけですから、あなたの日常や家族を守るためにも、まずは不起訴を目指しましょう。
不起訴を獲得するには、なるべく早い段階で被害者との「示談(じだん)」を成立させておくことが大切です。示談とは、事件にかかわった本人同士が話し合うことで、事件を解決に導くことを指します。強制わいせつ罪においては、被害者との示談を成立させておくことで、不起訴処分となる可能性が高まります。
ただし、平成29年7月の法改正により、強制わいせつ罪および準強制わいせつ罪は被害者による告訴がなくても起訴できる「非親告罪」へ改正されました。そのため、示談が成立したからといって必ず不起訴を獲得できるわけではない点に注意が必要です。
たとえ早い段階で示談が成立しても、検察が刑事裁判が必要であると判断すれば起訴されることは十分に考えられます。それでも、たとえ起訴されてしまったとしても、示談が成立していれば、量刑を軽くすることや執行猶予付き判決を目指す上で有利になります。
強制わいせつを行ってしまった自覚があるときは、なるべく早く示談を成立させたほうがよいといえるでしょう。
3、強制わいせつ行為に対する示談交渉をする際にこころがけるべきポイント
示談とは、いわば話し合いです。しかし、刑事事件に絡む内容であることから、場合によっては、示談交渉をしたことが、逆効果になってしまう可能性もあるため、おさえておくべきポイントがいくつもあります。
ここでは、強制わいせつ罪および準強制わいせつ罪に問われる行為をしてしまった場合に被害者の方と交渉する上でこころがけるべきポイントについて解説します。
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(1)被害者は被疑者や被疑者の家族と会いたくない
強制わいせつ罪に問われる行為をした場合、被害者は加害者にあたる被疑者や、その家族と会うことを嫌がる傾向があります。知り合いであればなおさら、加害者が直接交渉しようとすること自体が脅迫されているように感じてしまい、交渉どころではなくなることもあるでしょう。加害者であるあなたが直接会おうとすればするほど、さらに嫌悪感が高まる可能性も考えられます。
被害者との示談交渉においては、交渉者が被害者と会わなければ示談交渉をはじめることすらできません。弁護士があなたと被害者の間に入ることで、示談交渉がまとまりやすくなります。
起訴されたあとに示談が成立しても、検察は起訴を取り下げることはありません。つまり、あなたに前科がつかないようにするためには、可能であれば「逮捕される」前に、そして、逮捕後であれば「起訴されてしまう」前に、示談交渉を成立させることが非常に重要です。
事件が発覚した時点で、できる限り早く弁護士へ依頼しましょう。 -
(2)示談金の相場とお金以外の条件
強制わいせつ罪および準強制わいせつ罪に問われる行為への示談金は、その行為の悪質性や、相手が受けた精神的な被害や被害感情の大きさに左右されます。
また、状況によっては、被害者から、示談金の支払い以外の条件を求められる可能性があります。たとえば、同じ会社へ勤める相手へわいせつな行為をしてしまった場合は、転職を求められるケースが考えられます。また、被害者の自宅近くに被疑者が住んでいた場合には、遠くへ引っ越したり被害者と同じ駅を利用しないように求められたりする可能性もあります。
被疑者にも生活がありますから、必ずしも求められた条件をすべて飲まなくてはならないわけではありません。弁護士が間に入って慎重に交渉することで、被疑者にとって折れることのできないラインを守りつつ、被害者に納得してもらえる条件を提示できれば、円満に示談を成立できるでしょう。
このような被害者に納得してもらえる交渉を被疑者自身が行うのは難しいと考えられます。示談交渉が決裂すれば被害者の処罰感情がさらに強くなり、検察の求刑がより厳しいものになる可能性もあるため、示談交渉は慎重に行わなければいけません。適切に示談交渉を進めるため、示談交渉は弁護士に任せるようにしましょう。
4、まとめ
性犯罪に該当しうる行為をしてしまった場合、行動が遅くなればなるほど、前科がつく可能性だけでなく、会社や学校に事実を知られてしまう可能性が高くなります。可能なかぎり、逮捕される前に被害者と示談を成立させておく必要があるでしょう。
また、特に性犯罪では、被疑者自身が自ら被害者と示談交渉をしようとしたために、却って難航してしまうケースも多く見られます。
強制わいせつ行為に思い当たる行為をしてしまった方で前科をつけたくないと思う方や、示談交渉を依頼したい方は、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスへご相談ください。大阪オフィスの弁護士が詳細をお伺いし、適切なアドバイスと弁護活動を行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています