どこからがストーカーになる? 逮捕後の流れと対応策を弁護士が解説
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平成26年5月、大阪府大阪市平野区の路上でストーカー殺人事件が発生し、犯人が逮捕されました。事件の約1ヶ月半前にはストーカー規制法に基づき警告を受けていたことや、平成27年5月には大阪地裁が懲役30年の判決を下したことが報道されています。
自らの好意を受け入れてもらいたいという一念によって、ストーカー事件に発展してしまうケースは少なくありません。気持ちの行き違いが重大事件にまで発展しやすいのが特徴ともいえます。
もし家族が、ストーカー規制法にもとづき警告を受けたときや、逮捕されたら、どうなってしまうのでしょうか。そもそも、罪となるストーカー行為や、処される刑罰、家族がすべき対応など、家族が抱くだろう疑問に、弁護士が回答します。
1、ストーカー規制法って何?
平成11年、埼玉県で発生した「桶川ストーカー殺人事件」は、世間にストーカー行為の危険性を知らしめるきっかけとなり制定されたのが、「ストーカー規制法」です。それまでは、恋愛関係のもつれなどに関しては事件性がなければ警察も捜査や対応が難しかったのですが、ストーカー規制法の誕生によって、対応可能となりました。なお、正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」となります。
今では、ストーカー行為に悩む人からの相談を受け付ける体制が整備されています。被害者からストーカー被害の申告があると警察による警告や禁止命令等が出せるようになったほか、ストーカー行為が犯罪であることから、逮捕や処罰も可能になっています。
2、どのような行為がストーカー規制法違反になるのか
具体的にどのような言動がストーカー規制法に触れてしまうのかについて知っておきましょう。
まず、ストーカー規制法では、「つきまとい等」と「ストーカー行為」についてその詳細と有罪となったときの処罰等が規定されています。具体的には以下のとおりです。
<つきまとい等(ストーカー規制法第2条第1項第1~8号)>
特定の者に対する恋愛感情や好意、もしくはそれらが満たされなかったことに対する怨恨(えんこん)の感情を満たす目的で、該当の相手やその家族など親しい人物に対して以下の行為をすることを「つきまとい等」と規定しています。
- 相手を尾行する、待ち伏せする、進路に立ちふさがる、見張る、押しかける、うろつくなどの行為
- 相手を監視していることを、電話やメール、SNSなどで告げる行為
- 面会や交際、プレゼントの受け取りなど義務のないことを強要する
- 相手を傷つける言葉や罵り、騒音をあげるなど著しく粗野又は乱暴な言動
- 無言電話や拒否されても何度も電話やメール、SNSなどを介して連絡を取ろうとする行為
- 汚物や動物の死体など不快感又は嫌悪感を抱く物を自宅や職場に送りつける行為
- 相手の名誉を傷つけるような発言をしたり、ビラを配ったり、SNSなどで拡散する行為
- 卑わいな文書や写真を送りつける行為
<ストーカー行為(ストーカー規制法第2条第3項)>
上記「つきまとい等」のうち一定の要件に該当する行為を何度も執拗(しつよう)に繰り返したとき、「ストーカー行為」にあたります。
相手にとって、生命や身体、住居の安全に不安となり、通常の日常生活が送れなくなっている状態かどうかについて考慮され、判断されます。
3、逮捕・有罪になったときの刑罰は?
ストーカー規制法によって逮捕され、有罪となると次の刑罰に処されることになります。
•ストーカー行為をしたとき
1年以下の懲役、または100万円以下の罰金
•禁止命令等に違反してストーカー行為をしたとき
2年以下の懲役、または200万円以下の罰金
•禁止命令等に違反した行為が、ストーカー行為にならなかったとき
6月以下の懲役、または50万円以下の罰金
かつて、ストーカー規制法は、被害者からの告訴があって初めて裁判に訴えることができる「親告罪」でした。しかし、現在は非親告罪になっています。検察が必要だと判断すれば、被害者の告訴がなくても起訴され、その罪が裁かれることになります。
4、通報されたらすぐ逮捕されるのか
ストーカー行為を繰り返していると、次のような流れで取り締まりを受けることになります。通報されたらすぐに逮捕されることが多いわけではありませんが、相手はすでにあなたの家族やあなたと話し合える状況にありません。どのような理由があろうと、接触しようとすることはやめましょう。逮捕されてしまう可能性が高まります。
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(1)警告(ストーカー規制法第4条)
「つきまとい等」をする加害者に対して、警察署長等が取り締まり対象になる行為を止めるよう警告を出します。
かつては被害者の申出によって警告が出されたのち、禁止命令が出されていましたが、平成29年施行の法改正で、警告なしで次に説明する禁止命令等を出すことが可能になりました。被害者の生命等に関わると判断される場合は、加害者からあとで意見の聴取をすることを条件に都道府県公安委員会が職権で禁止命令等をすることができます。 -
(2)禁止命令等
ストーカー規制法第3条に違反、つまり、つきまとい等をして被害者に身体の安全等が害される不安を覚えさせる加害者に対して、都道府県公安委員会が出す命令です。命令の内容は大きく2つに分かれています。
- ストーカー規制法第3条に違反する行為の繰り返しを禁止すること
- 違反行為を防止するための対応をすること
たとえば、SNSにアップした被害者を中傷する投稿を削除することを求めたり、つきまとい等の行為を抑制したりするために、禁止命令等が下されます。違反すると、前述のとおりより重い罪に問われることがある点に注意が必要です。
ストーカー規制法に違反したからといっても、よほど悪質でなければまずは警告があり、それでも繰り返せば禁止命令等を受けるといった流れが一般的です。
5、逮捕後の流れを知ろう
前述のとおり、警告や禁止命令等を無視してストーカー行為を繰り返すと、警察は被害者の生命の安全等を守るため、逮捕に至るケースがあります。
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(1)逮捕~勾留
逮捕された者は「被疑者」として警察署で取り調べを受けます。48時間以内に釈放か検察への送致が判断されます。釈放には、容疑が晴れたケースと、帰宅できるものの引き続き捜査を受ける必要がある「在宅事件扱い」となるケースがあります。
身柄ごと検察に送致されたあとは、検察は24時間以内に、引き続き身柄を拘束して捜査を行う「勾留(こうりゅう)」の必要性を判断します。必要であれば、裁判所へ勾留請求を行います。裁判所が勾留を許可すると、最長20日間も身柄を拘束されることになります。
なお、逮捕から72時間以内は家族であっても接見(面会や直接差し入れなどを行うこと)が制限されます。原則として弁護士のみ、接見が許されます。 -
(2)起訴~裁判
検察は、勾留中であれば勾留期間が終わる前に、在宅事件扱いのときは捜査が終わり次第、起訴か不起訴を決定します。「不起訴」なら釈放されますが、「起訴」されると刑事裁判の審理がはじまることになります。
「起訴」には、「略式請求」と「公判請求」があります。
「略式請求」は、本人が略式の手続で審理されることに異議がなく、かつ犯行が悪質でないと判断されたケースに行われます。公開されない裁判で、書類手続きのみで処罰が決定するものです。
しかし、「公判請求」となると、一般の方が傍聴できる公開された裁判で罪を裁かれることになり、判決が下るまで原則身柄を拘束されます。裁判は早くて数ヶ月、長ければ1年近くかかります。したがって、多くのケースで公判請求されたときは、自宅から裁判に参加できるように働きかける「保釈(ほしゃく)」請求を行います。保釈が認められたときは、保釈金を裁判所に預けて帰宅することになります。預けた保釈金は、判決が下ったあとに返金されるものです。
いずれにしても、逮捕されてしまうと、身柄が解放されるタイミングは限られています。長期にわたり仕事や学校を休むことになれば、日常にも問題が出ることでしょう。さらに前科がついてしまえば、職業や渡航の制限などの不都合を受けることがあります。将来にわたる影響を最小限に抑えるためにも、家族はできるだけ早い時期に弁護士を選任することをおすすめします。
弁護士は、起訴までに被害者との示談成立を模索し、警察や検察、裁判所に働きかけるなど、具体的な弁護活動を行います。長期にわたる身柄拘束や起訴を回避できる可能性を高めることができます。
6、まとめ
ストーカー規制法に違反してしまったとしても、いきなり逮捕されることは多くありません。しかし、警察からの警告を無視すると禁止命令等が出されてしまいます。そこでストーカー行為を止めなければ逮捕される可能性が一気に高まります。
たとえ、あなたにとってストーカー行為ではないと思っていたとしても、会って話をしなければならない理由があったとしても、接触することはやめておきましょう。どうしても必要なときは、弁護士に依頼することをおすすめします。
なお、ストーカー事件の性質上、被害者と、加害者本人、もしくは加害者の家族などが直接示談交渉を行うことは基本的に困難です。しかし、弁護士であれば交渉できる可能性が高まります。逮捕されてしまったときは、不当に重い罪を負わずに済むよう、弁護士のサポートを受けることが賢明です。
ストーカー規制法に関する容疑で警察からの警告や禁止命令などを受け、逮捕が心配な方はベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまで相談してください。刑事事件の対応経験が豊富な大阪オフィスの弁護士が最善を尽くしてサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています