家族が詐欺罪の容疑で逮捕されたらどうなる? 大阪の弁護士が解説

2019年12月26日
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家族が詐欺罪の容疑で逮捕されたらどうなる? 大阪の弁護士が解説

大阪府警察が公表する犯罪統計によると、平成30年において大阪市内で起きた詐欺事件の認知件数は1659 件でした。他方、非常に身近な犯罪でもある自転車盗の認知件数は同年で740件でした。このように認知件数を比較すると、警察などで常時注意喚起されているとおり、詐欺事件は決して珍しい犯罪ではないことがご理解いただけるでしょう。

家族が詐欺犯として逮捕されたと警察から連絡がきたらどうすればよいかご存じでしょうか。本コラムでは、詐欺罪は一体どのくらいの重さの刑罰が科されるのか、過剰に重い罪に問われてしまう事態を避ける方法はないのかなどの点について、大阪オフィスの弁護士が解説します。

1、詐欺で逮捕された本人はどうなるか

警察に逮捕されてから釈放または刑事裁判となるまでには、様々な手続があります。

まずは法律上で詐欺罪がどのように規定されているのかについて確認したうえで、逮捕後の手続の流れと所要時間をみていきましょう。

  1. (1)詐欺の罪と刑罰

    詐欺罪は刑法第246条に定められている犯罪です。人をだますという手段によって財物又は経済的利益を自分に移転させる行為が、詐欺罪です。

    詐欺罪の罰則は10年以下の懲役と定められており、罰金刑はありません。なお、詐欺罪の刑法上の時効(公訴時効)は7年間で、これを過ぎれば原則として刑事裁判にかけられることはなくなります。

  2. (2)逮捕されてからの流れ

    警察に逮捕されると、最長で48時間の取り調べが行われます。ここで嫌疑がないと判断された場合、釈放されることがあります。また、被害額や悪質性が低い事件で示談が成立している場合には、詐欺罪であっても検察庁へ送致せず警察内で手続を済ませるという「微罪処分」になることもあるでしょう。

    警察で釈放にも微罪処分にもならなければ、事件は検察庁へ送られます。逮捕によって身柄の拘束を受けている状態であれば、身柄も検察庁へ送られることになります。検察では最大で24時間の取り調べが行われます。検察は、引き続き身柄の拘束を行いながら取り調べを行う勾留が必要かどうかをこの24時間以内に判断します。

    勾留は10日間を上限とする身柄拘束ですが、必要があるときには1回の延長が認められ、最大で10日間延長となります。ただし、決まった住居があり、証拠隠滅や逃亡のおそれがないと判断されれば、勾留されずに在宅事件として手続が進むこともあるでしょう。

    検察官は、勾留中であれば勾留期間満了までに、在宅事件のときは取り調べが終わり次第、起訴するか不起訴とするかの判断を行います。犯罪が成立しない、証拠が足りないといった理由で不起訴処分になった場合は、裁判が行われることはなく、前科も付きません。もっとも取調べを受けた前歴は残ります。

    起訴処分と判断されれば刑事裁判の手続に移ります。詐欺罪は前述のとおり、罰金刑がない犯罪であるため、公開の法廷で刑事裁判が行われることが一般的です。その場合、起訴後もそのまま勾留が続くことがあります。他方、これまで在宅事件だった場合は、新たに勾留されることがあります。事件の内容によっては、起訴から初めての公判(法廷での刑事裁判)が始まる間まで、1か月程かかり、判決が下るまでには数か月かかることもあるでしょう。但し、起訴されて以降に保釈請求を行い、それが認められれば、保釈金を支払うことで一定の条件のもと、自宅に帰ることが許されます。

    刑事裁判の結果、無罪もしくは執行猶予となれば釈放され、有罪となって懲役刑などが科される場合は刑事施設(刑務所)に収容されます。公判から判決の言い渡しまでは2週間ほどかかるのが一般的です。

2、詐欺罪に問われる可能性がある行為とは

次に、具体的にどのような行為が詐欺罪にあたるとして罪に問われるのかについて解説します。

  1. (1)詐欺罪が成立する要件

    詐欺と一言で言っても、その手口は様々です。時代によって手を変え品を変え、他人をだまして財物(金銭など財産価値があるもの)をだまし取る手口が生まれているのです。

    詐欺罪が成立するためには、以下の3つの行為が認められる必要があります。

    ①欺罔(ぎもう)行為
    行為者が相手方に誤った情報を与えるなどの行動により、相手方を欺く行為を意味します。

    ②相手方の錯誤(さくご)
    行為者が与えた誤った情報により、相手方が事実と異なる認識を持つことを意味します。

    ③財物(ざいぶつ)の移転
    相手方が②の錯誤により、金銭や財産的価値があるものを行為者に渡してしまうことを意味します。

    つまり、行為者がついた嘘などにより、被害者がだまされ、嘘を信じ込んだうえで財物や利益を行為者に渡したという一連の流れがなければ、詐欺罪にはあたりません。行為者がついた嘘が嘘であると被害者が知っていたが同情してお金を渡した場合、だまされた内容と別の理由で被害者が行為者にお金を渡した場合は詐欺罪にはあたりません。

  2. (2)詐欺行為と知らなくても逮捕される可能性

    そもそも日本の現行刑法が定められたのは明治40年であり、電話やインターネットを用いた詐欺は想定されていませんでした。近年特に注意喚起されているのは、「オレオレ詐欺」や「振り込め詐欺」をはじめとした、犯人が被害者と対面せずに行われる「特殊詐欺」です。しかし、それもまた、刑法第246条に規定されている「人を欺いて財物を交付させた」という行為に該当しているといえます。

    具体的には、以下のような状況であっても詐欺罪に問われる可能性があるでしょう。

    • オレオレ詐欺の電話をかける係(かけ子)や、現金を受け取る係(受け子)
    • 特殊詐欺で引き出させた財物を受け渡す、もしくは転送する係
    • 「1か月で30万円もうかる」「1日ワンクリックだけで10万円」などと虚偽の宣伝を行い、ノウハウや教材を買わせたり、有料セミナーを受講させたりする詐欺

    これらの行為をすると、たとえ詐欺行為をしているという自覚がなかったとしても逮捕される可能性があります。また、荷物を受け取るだけの高額アルバイトとして対応した場合であっても、「詐欺行為かもしれない」という認識が少なからずあれば、被害者をだまそうとした故意があったとみなされてしまう可能性が高いといえるでしょう。
    実際に、人をだます行為だと知らなかったと主張したとしても有罪判決が下るケースがあるため、注意が必要です。

    また、詐欺罪は、刑法第250条において未遂罪が規定されています。つまり、相手から財物を移転させることを目的にウソをついて信じ込ませようとすれば、たとえ結果的に財物を手に入れられなくても未遂罪に問われる可能性があるということです。

3、逮捕された被疑者の家族ができること

詐欺罪に限らず、罪を犯した疑いがある者は「被疑者」と呼ばれます。被疑者として逮捕されてしまうと、警察では48時間、検察へ送致されてからの24時間を合わせた最長72時間は、家族であっても接見が認められない場合があります。つまり、被疑者の家族であるあなた自身が、直接警察署へ足を運んだとしても、被疑者に直接会って話をすることができないのです。

この期間、自由に接見が認められ、取調べに対するフォローやアドバイスができるのは、依頼を受けた弁護士のみに限られます。そこで、被疑者の家族ができることのひとつは、弁護士に依頼して被疑者のサポートをしてもらうとともに、早期釈放への働きかけをしてもらうことです。

早期から弁護活動に取り組むことにより、長期にわたる身柄拘束や重すぎる処罰を科される事態を回避できる可能性を高めることができます。

検察に送致された後、勾留が決定すれば、起訴されるかどうかが決定するまでの間だけでも最長で20日間帰宅ができなくなります。その後に起訴され、保釈請求が認められなければ、裁判が終了するまで身柄の拘束が続くことになるのです。身柄の拘束が長期間になればなるほど、仕事や学校など日常生活へ及ぼす影響が大きくなります。

しかし、早期に弁護士を依頼することによって、被害者との示談を成立させるなど、適切な弁護活動が行われれば、勾留はされず在宅事件となる可能性もあります。起訴されたとしても保釈などで、自宅に戻れることもあるでしょう。そのためにも弁護士が迅速に行動することが重要となります。

詐欺罪には罰金刑がないため、有罪となり執行猶予もつかない場合には、刑務所に収監されることになります。詐欺グループの末端であったとしても、詐欺行為をしたという事実に変わりはありません。家族が詐欺罪の容疑で逮捕されたら、早期に弁護士に相談することをおすすめします。

4、まとめ

あなたのご家族が詐欺罪の容疑で逮捕された場合の流れや対処法について解説しました。

詐欺罪で逮捕されて有罪となり、実刑になれば刑務所に収監されます。しかし、深く反省して、被害者と示談を行い、犯情や手口なども悪質ではないと判断されれば、不起訴処分を得られる可能性が出てきます。

ご家族が逮捕され、どうなるかが不安な方は、ベリーベスト法律事務所・大阪オフィスの弁護士までご相談ください。被害者への示談交渉や早期釈放へ向けた取り組みなど、適切なサポートを行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています