職場の在庫を盗んだら? 窃盗罪の逮捕後の流れや示談について解説

2019年01月07日
  • 財産事件
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職場の在庫を盗んだら? 窃盗罪の逮捕後の流れや示談について解説

「職場の在庫を盗んでいたのがばれてしまった」
「不意な雨のとき、他人の傘を勝手に持ち帰っていたことが見つかってしまった……」

大阪府内では、平成29年度だけで年間12000件以上、窃盗事件として検挙されています。もし、窃盗罪の容疑で逮捕されたとき、どのような流れで裁かれることになるのでしょうか。刑事事件における基本的な知識や流れを知っておくことで、将来への影響を最小限に抑えることができるかもしれません。

今回は、「窃盗」罪とはどのような犯罪なのかという基礎知識を解説するとともに、その後の人生に影響する裁判や示談のポイントにも触れていきます。

1、窃盗罪ってどんな罪?

ニュースなど日常的によく聞く犯罪である「窃盗」罪。具体的に、どのような罪なのかをご存じでしょうか。まずは、基本的な知識を押さえていきましょう。

  1. (1)窃盗罪とは

    窃盗罪とは、刑法235条に規定された犯罪で、他人の「財物(ざいぶつ)」を「窃取(せっしゅ)」することで成立します。

    「財物」とは、財産の一部となりうるモノすべてを指します。お金や宝石、自転車、傘などの形あるモノのほかにも、電気など形のない財産も該当しえます。

    また、窃盗罪が成立するためには4つの条件が必要です。これを「窃盗罪の構成要件」といいます。

    ●「窃取」行為があったか
    窃取とは、断りなく勝手に、他人の財物の占有を自分や第三者に移転させる行為を指します。


    ●財物の占有移転があったか
    窃盗罪は他人の財物が自分や第三者の占有になった時点で成立します。具体的には、職場の在庫品を会社から無断で持ち出したときなどに、財物の移転があったとされます。


    ●「故意」と「不法領得の意思」があるか
    他人の財物を勝手に窃取したと本人が認識しており(故意)、窃取したモノで自分が得をしようと思っている(不法領得の意思)が窃盗罪のポイントです。


    ●具体例
    具体的な行為としては、以下の行為が当てはまります。

    • 店先の商品を万引きする
    • 勤務先の会社の商品を無断で持ち出して自分のものにする
    • 急な雨のとき、スーパーなどの傘置き場にある他人の傘を勝手に持ち帰って使う
    • 許可を受けていないのに、店の電源を使って充電する
  2. (2)横領罪との違い

    ひったくりのように、通りすがりの他人のバッグや財布を盗んだ場合は、「窃盗」罪に当てはまることはご理解いただけるでしょう。では、勤務先のお金を盗んだり勝手に使ったりしたニュースの際に耳にする「横領罪」とはどう違うのか、ご存じでしょうか?

    まず、窃盗罪と横領罪が刑法でどのように定められているかを見ておきましょう。

    刑法第235条(窃盗)
    他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。


    刑法第252条(横領)
    • 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
    • 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。


    ここでのポイントは、窃盗は「他人の財物」であるのに対し、横領は「自己の占有する他人のモノ」となっている点です。

    たとえば、会社で銀行通帳のお金を勝手に引き出して使っていたとします。窃盗罪も横領罪も、「他人のお金を盗んだこと」に違いはありません。しかし、横領罪は、自分が他人から銀行通帳を預かっていた、管理を任されていた際に成立する犯罪です。

    窃盗と横領の違いは、「他人のお金を直接盗んだ」のか、「他人から預かっていたお金を勝手に使ったのか」にあるということです。もし、冒頭の例であれば、雇われ店長など「他人の在庫を預かり管理する立場の者が、高額な在庫商品を盗んだ」場合は、「横領」罪になる可能性が高まります。

2、窃盗罪の刑罰はどのくらいか

刑法第235条で明文化されているとおり、窃盗罪で有罪になった際は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられます。

ただし、初犯や軽微な窃盗、被害者との示談が成立していて告訴しないケースであれば、不起訴で終わることもあります。また、状況に応じて罰金のみが科されるにとどまり、実刑にはならないといったこともあります。

また、実刑が申し渡されたとしても、本人が深く反省して被害者に謝罪や賠償を行っており、示談が成立しているような場合は、執行猶予がつくこともあるでしょう。

3、逮捕後の流れ

会社の商品を盗んでしまった場合、逮捕から裁判までどのような手続きが待っているのでしょうか。

  1. (1)逮捕

    窃盗罪の容疑で警察に逮捕されると、まず警察署での取調べが始まります。警察は逮捕後48時間以内に、釈放または送検をするかを、取調べ内容に応じて判断します。

    逮捕されている間は、家族や知人との面会は禁じられます。自由な接見が許されているのは、原則として弁護士だけとなります。弁護士は、取調べの受け答えの仕方や今後のサポートについてアドバイスを行えます。

  2. (2)勾留

    引き続き捜査する必要や、刑事事件として扱う必要があると警察が判断すれば、警察から検察に身柄と事件が「送致(そうち)」されます。送致されると、検察は24時間以内に、「釈放(しゃくほう)」するか、引き続き身柄を拘束してさらに取り調べを継続する「勾留(こうりゅう)」を行うかを、判断します。勾留が必要と判断されると、裁判所へ「勾留請求」を行います。

    裁判所も勾留が必要と考えて勾留請求が認められると、長い場合には20日間にわたって身柄が拘束され、取調べを受けることになります。最終的に、検察によって、「起訴」または「不起訴」が判断されます。

  3. (3)起訴から裁判まで

    起訴された場合は、公開された法廷で裁かれる「公判(こうはん)」か、書類のやりとりのみで刑罰が決まる「略式起訴」のいずれかが請求されます。日本の検察は、確実な証拠がそろわない限り起訴しません。そのため、起訴された事件の99%で有罪判決がでています。裁判の期間は通常、短くても数ヶ月、長ければ1年程度かかります。

4、示談のポイント

「窃盗」罪には、財物を取られたという明確な被害者がいます。そのため、「2、窃盗罪の刑罰はどのくらいか」で前述したとおり、被害者との「示談(じだん)」が成立しているかどうかが、起訴・不起訴はもちろん、刑罰の重さにまで関係することになります。

万が一に備えて、「示談」について知っておきましょう。

  1. (1)示談とは

    人の物を盗んでしまった場合、盗まれた人は物を失ったという被害を受けますし、盗まれたことで嫌な思いもしているでしょう。この物を失わせた…損をさせた点については、刑事責任を問われるだけでなく、民事的な賠償責任も負うことになります。この民事的な「被害弁償」や、嫌な思いをさせたことについて慰謝料を支払うなど、被害者に事件で被害を受けたことを一定の条件のもとで「許してもらう」ことを「示談」といいます。

    示談が成立することによって、加害者は、逮捕そのものや起訴を回避できる可能性が高まります。また、起訴されたとしても、示談が成立していれば、罰金ですんだり執行猶予付き判決を得られたりと服役しなければならなくなる可能性を低くすることができます。

  2. (2)示談書の大切さ

    窃盗罪の示談では、取り決めた内容をもとに示談書を作成することが大切です。示談書は必ず作らなければならないわけではありませんが、後々のトラブルを避けるためには、必ず作成しておきましょう。

    示談交渉では、話し合いを通して賠償金の額などを決め、示談書を作成します。示談金の支払い後、示談書にサインをして示談成立、といった流れが一般的です。

    窃盗をした先の連絡先がわかる場合は自分で示談を進めることもできますが、連絡先がわからない、相手が話し合いに応じないといったときは、弁護士を通して交渉をしてもらうことになります。

    刑事事件では、加害者と被害者の間で冷静な話し合いを行うことは非常に難しいケースが多いものです。また、加害者が被害者の住所や連絡先を知らないケースも少なくありません。その場合、警察は当然のことながら加害者に対して被害者の個人情報を教えることはありません。一方、弁護士であれば教えてもいい、という被害者も多くいます。弁護士に仲介してもらうことで、いち早く、適切な示談交渉に挑むことができるでしょう。

  3. (3)時効はあるか

    刑事事件の側面から見れば、窃盗罪の時効は7年で成立します。つまり、7年を経過すると起訴されないといえます。

5、まとめ

今回は、窃盗罪に関する基本的な知識や逮捕から裁判までの流れ、示談の大切さについてご紹介しました。窃盗罪で逮捕されてしまう可能性がある場合は、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。逮捕そのものを回避するため、示談交渉を進めることが可能です。逮捕されてしまい、あなたの身柄が拘束されてしまったとしても、あらかじめご相談いただいていれば、少しでも早いタイミングの示談成立を目指した弁護活動が行えます。

元検察官の経歴を持つ弁護士が大阪オフィスには在籍しております。窃盗罪で逮捕されるのではないかと心配な方は、お気軽にベリーベスト法律事務所・大阪オフィスまでご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています