家族が書店で万引き!? 窃盗容疑で逮捕されたあとの流れと量刑は?

2018年12月03日
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家族が書店で万引き!? 窃盗容疑で逮捕されたあとの流れと量刑は?

「万引き」は「窃盗」犯の刑事事件として処理される犯罪です。たとえば、書店で家族が万引きをしてしまったとしたら、窃盗罪の容疑で逮捕され、刑事事件として起訴される可能性があります。

大阪府警の発表によると、「万引き」は、平成29年度中に起きた窃盗犯のなかでも、自転車盗難、車上ねらいに次いで認知件数が多い犯罪です。万引きは、身近なシーンでも耳にすることのある犯罪かもしれません。しかし、いざ家族が万引きによる窃盗容疑で逮捕されてしまったとしたら、気が動転して不安を感じてしまうのではないでしょうか。

万が一、窃盗犯として逮捕されれば、身柄が拘束され、職場や学校に影響がでるかもしれません。ここでは窃盗容疑で逮捕されたあとの流れや量刑、被害者との示談や弁護活動に至るまで、大阪オフィスの弁護士が疑問に回答します。

1、万引きで逮捕された際の量刑

万引き事件は被害額が比較的小さいことも多く、頻繁に発生している事件のためか、軽い犯罪だと感じている方も多いかもしれません。つい出来心でお店から商品を盗んでしまう方も少なくないようで、事件の多さに対して被疑者の罪悪感が低い傾向にあります。

しかし、万引きも立派な犯罪であり、実際に家族が万引き事件で逮捕されたとなれば、何らかの対応をしなければ、前科がついてしまうことになりかねません。

そこでまずは、「万引き」の法的位置づけと、量刑について紹介します。

  1. (1)万引きは窃盗罪

    万引きは、刑法第235条に定められている窃盗罪に該当する犯罪です。なお、窃盗罪の要件としては、「他人の財物を窃取した者」と条文で定義されています。

    対象物:「他人の財物(ざいぶつ)」……他人が占有する、財産的に価値があるとされるモノ
    対象行為:「窃取(せっしゅ)」……不法領得の意思をもって占有を移すこと

    対象物は、「所有」ではなく、他人が占有する財物と定義されているため、たとえば他人から借りているモノが盗まれた場合も、「窃盗罪の被害にあった」といえます。財物の定義は幅広く、金銭やモノはもちろん、電機などの形がないモノも、対象となりえる点に注意が必要です。

    たとえば冒頭の例となった書店での万引きは、「店主が占有している書籍を自分で読むため、もしくは転売するために盗む」ことになるので、間違いなく「窃盗」罪に該当することになります。

  2. (2)窃盗罪の量刑

    なお、窃盗罪で有罪判決が下された場合は、刑法第235条に従って「10年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」が科されます。ただし、初犯で被害額が少額だったり、被害者が処罰を望んでいなかったりと、一定のケースでは、微罪処分扱いになることもあります。

    微罪処分となれば正式な刑事事件としての取扱いが終了し、すぐに釈放されるケースが圧倒的多数となります。しかし、過去にも窃盗で逮捕されていたり、刑法上における「再犯」とされたりするケースや、悪質性の高い窃盗事件の場合は、もちろんこの限りではありません。

    また以下のような条件を満たしていると量刑が重くなるので注意が必要です。

    • 被害金額が高額
    • 被害弁償や示談が終わっていない
    • 計画的もしくは悪質な犯行である
  3. (3)窃盗罪の時効

    窃盗罪は窃盗を行ってから7年で公訴時効となり、逮捕の可能性はなくなります。

    しかしながら、加害者等を知った時点から3年経過するか、窃盗事件が発生してから20年経過するまでは、民法上の損害賠償請求権は時効になりません。冒頭の例のように書店で万引きをしてしまった場合、店側の配慮で警察に逮捕されなかったとしても、通常は被害弁償を求められるでしょう。

2、窃盗罪(刑事事件)による逮捕の流れ

家族が警察に逮捕されてしまうと身柄を拘束され、自宅に戻ることはできなくなります。また、逮捕期間中は面会も禁じられるため、家族からは状況が見えず、今後の不安を抱えることになるかもしれません。ここでは窃盗罪による逮捕の種類と逮捕後の流れについて紹介します。

  1. (1)現行犯逮捕と通常逮捕

    まず「万引き」で警察に逮捕されるケースの大半は、現行犯逮捕となります。現行犯逮捕とは、その名のとおり、万引きした瞬間を店員や私服保安警備員(万引きGメン)に見られて捕まえられるケースです。

    また、犯行が露呈しているにもかかわらず逃走してしまった場合などは、「逃走の恐れがある」として、通常逮捕されることになります。通常逮捕とは、証拠を集めてから裁判所で手続きを行い、逮捕状を発行したうえで身柄を拘束する方法です。「後日逮捕」と呼ぶこともあります。

    万引きは生活圏で発生することが多い犯罪です。よって、捜査がはじまった時点で、店舗に設置された防犯カメラなどから高確率で身元を突き止めることが可能となります。

  2. (2)逮捕後の流れ

    逮捕されると、「被疑者(ひぎしゃ)」として取り調べを受けることになります。

    警察による逮捕から48時間がひとつの区切りです。警察は、逮捕した被疑者を、前述した「微罪処分扱い」で釈放するか、検察に身柄を送る「送致(そうち)」と呼ばれる処置を行うかを、48時間以内に決定しなければなりません。なお、被疑者は弁護士以外の面会を許されていないため、家族が被疑者に会うことはもちろん、外部と直接連絡を取ることができなくなります。

    逮捕後、検察へ事件が送致されたあとは、24時間以内に「勾留請求」をするかどうかの判断が下されます。「勾留」とは、身柄を引き続き拘束し続けることを指します。検察が、引き続き捜査が必要だと判断した時点で、裁判所に対して「勾留請求」を行います。勾留が決定すれば、最大10日間身柄は拘束されます。また、勾留期間は延長が可能で、引き続き捜査を行う必要性が認められればさらに合計で10日間まで延長されます。

    証拠隠滅や逃亡のリスクがあるなどの判断を下されたケースでは、勾留請求される可能性が高くなるでしょう。

    捜査の後、「起訴」をするか、「不起訴」とするかが決定されます。不起訴となれば、前科もつくことがなく、すぐに身柄も解放されます。起訴となった場合のうち、公判請求が行われたときは、特に何もしなければ、通常は引き続き身柄が拘束され続けることになります。

    ただし、万引きなどの窃盗事件は、起訴となった場合でも、公開された法廷で罪を裁く「公判」ではなく、「略式起訴」と呼ばれる、書類のみのやり取りを通じて裁判が行われるケースも少なくありません。略式起訴の場合は、身柄の拘束をされることはないでしょう。しかし、略式起訴であっても起訴であることは変わりません。有罪の判決が下りれば、前科がつくことになります。

3、示談の重要性

窃盗罪には、必ず被害者がいます。万が一、窃盗罪に問われた際に、量刑や処分を軽くしたいのであれば、「示談(じだん)」の成立が重要になってきます。

示談とは、被害者と加害者同士が話し合うことで、問題解決を図ろうとするものです。相手のモノを盗んだわけですから、何よりも最初に謝罪が必要となることは、いうまでもありません。そのうえで、盗んだモノ自体の金額を払うだけではなく、警察などへ足を運ばなければならなかった手間や時間がかかったことについても金額に上乗せするのが通常です。

被害者との間に示談が成立していれば、被害者はすでに「加害者の罪を許している」、または「処罰感情が強くない」とみなされます。警察や検察は、示談が成立しているかを重んじて判断する傾向にあるため、早期釈放・不起訴につながる可能性が高くなります。また、起訴されたとしても示談が成立していることで量刑が軽くなる要素になります。

逮捕・勾留されると、長期にわたり身柄を拘束されてしまうことになるため、日常生活に影響がでてしまいます。たとえ不起訴になったとしても、窃盗で逮捕された事実が職場などに知られたら、プラスになることはないでしょう。

将来へ及ぶ影響を最小限に抑えるためにも、できる限り早く示談を成立させることをおすすめします。ただし、被疑者家族が示談交渉をしようとしても、被害者感情を逆なでしてしまい、示談交渉事態が決裂してしまう可能性が多々あります。大切な家族を守りたいのであれば、法律にのっとった交渉を専門に携わっている弁護士に示談交渉を依頼し、適切な形で成立させてもらうことをおすすめします。

4、経済的困窮とクレプトマニア(窃盗癖)

万引きをしてしまう方は、必ずしも金銭的に困っているわけではありません。

近年増加しつつあるのが、お金は持っているのに万引きをしてしまう方や、万引きをすることに快感を覚えてしまうクレプトマニア(窃盗癖)です。

万引きは孤独を紛らわせるために行われることもあり、特にクレプトマニアは精神障害の一種であるともいわれています。
家族がクレプトマニアを患っている可能性が高い場合は、再犯を防ぐには法的な処罰だけではなく、医療機関などによる治療やカウンセリングも必要になります。他にも家庭環境や生活環境を改善することで窃盗の常習性がなくなったという話もあります。
被害者への謝罪も重要ですが、再犯を防ぐためにカウンセリングを受けるなど適切なケアを行ったことも、処分を軽くしてもらう上で重要といえます。

5、まとめ

家族が窃盗罪容疑で警察に逮捕・勾留されれば、場合によっては20日間以上も身柄を拘束されることになります。拘束されている間は学校や職場に行くことができないため、日常生活に影響を及ぼすことが、容易に予想できるでしょう。

本人にとっては「魔が差してしまった」と思うだろう万引きでも、いくら金額が少なくとも、「窃盗」の罪が問われ、逮捕されることは十分にあり得ます。万引きは窃盗の手口のひとつにすぎないのです。

なお、国内の刑事裁判においては、起訴されたあとは99.9%の確率で有罪判決が下ります。起訴されれば、ほぼ確実に前科がつくことになると考えておきましょう。前科がつくことを避けるためにも、弁護士に弁護活動を依頼し、早期釈放や不起訴を目指すことが望まれます。クレプトマニアを患っている場合は治療や改善も必要です。

窃盗容疑で逮捕されてしまった本人と、家族の未来を守るためには、早急な対応が必要です。万が一逮捕された際はや、大阪府曽根咲警察署などにも近い、ベリーベスト法律事務所・大阪オフィスへ、お気軽にご相談ください。大阪オフィスの弁護士が家族の社会的信用を守るための弁護活動を迅速に展開することが可能です。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています