盗品と知らずに転売したら窃盗罪? 逮捕される可能性について弁護士が解説

2019年04月05日
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盗品と知らずに転売したら窃盗罪? 逮捕される可能性について弁護士が解説

平成30年8月、大阪市内の店舗で12万円分の医薬品を転売目的で大量に万引きしたカップルが逮捕されました。その店舗では同じ日に150万円相当の商品が盗まれていたと報道されています。

おそらく多くの方がご存じのとおり、転売するために万引きをして逮捕されると「窃盗罪」に問われる可能性があります。では、盗品と知らずに転売したらどうなるのでしょうか。また、盗品でなくても転売が違法になる場合があるのでしょうか。ベリーベスト法律事務所・大阪オフィスの弁護士が、わかりやすく解説します。

1、大阪で転売すると違法になるの? 根拠となる法律は?

大阪では、転売すると下記の条例、法律違反に問われる可能性があります。

  1. (1)大阪府迷惑防止条例

    大阪で、コンサートチケットや電車のチケットなどを転売すると迷惑防止条例の「ダフ屋行為」に該当するとして、違法になる可能性があります。

    大阪府の迷惑防止条例の正式名称は「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」と呼びます。ダフ屋行為を禁止する条文は以下のとおりです。

    第二条 何人も、乗車券、急行券、指定券、寝台券その他公共の運送機関を利用し得る権利を証する物又は入場券、観覧券その他娯楽施設を利用し得る権利を証する物(以下「乗車券等」という。)を不特定の者に転売し、又は不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため、次に掲げる行為をしてはならない
     一 乗車券等を、公衆に発売する場所において、買い、又は公衆の列に加わって買おうとすること。
     二 前号に掲げるもののほか、乗車券等を、道路、公園、広場、駅、空港、埠ふ頭、興行場、飲食店その他の公衆が出入りすることができる場所(以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公衆が利用することができる乗物(以下「公共の乗物」という。)において、買い、又は人を勧誘して買おうとすること。
    2 何人も、転売する目的で得た乗車券等を、公共の場所又は公共の乗物において、不特定の者に、売り、又は人を勧誘して売ろうとしてはならない。

    つまり、コンサートやライブのチケット、電車の切符などを転売目的をもって、公衆に発売する場所や公共の場所・乗物で買ったり、転売目的で得たチケットや切符などを公共の場所・乗物で販売してはならないとしています。条文には物品の転売や、インターネットで販売することを禁じる項目がありません。したがって物品をオークションサイトなどで転売しても、迷惑防止条例で処罰される可能性は低いといえます。ただし、後述する通称「チケット不正転売禁止法」が施行されれば、罪に問われる可能性が高いでしょう。

  2. (2)古物営業法

    物品を転売した場合に問われる可能性が高い罪が古物営業法です。

    「営業」として、転売目的で物品を購入したり、転売したりする場合は古物商許可が必要です。したがって、許可を得ずに何度も転売した場合は古物営業法違反に問われる可能性があります。

  3. (3)盗品等無償譲受罪、盗品等有償譲受罪

    盗んだものを盗品と知りながらもらったり買ったりした際に、これらの罪に問われる可能性があります。盗品の転売行為ではなく、譲受行為が処罰対象となる罪です。

    盗品と知らずにもらったり買ったりしたのであれば罪になりません。

  4. (4)チケット不正転売禁止法

    平成31年6月にチケット不正転売禁止法(正式名称は「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」)が施行されます。本法により、転売が禁止されている特定のライブチケットなどをインターネットなどで転売すると逮捕される可能性があります。不正チケット転売禁止法の対象となるのは、コンサートチケットなどの興行チケットなので、物品は対象外です。

2、古物営業法違反とは?

前述のとおり、物品を転売した際に問われる可能性が高いと考えられる罪は、古物営業法違反です。古物営業法とは、盗品の売買の防止、そして盗品の売買を速やかに発見すること、窃盗等の犯罪を防止することを目的に作られた法律です。

古物営業法では、「営業」として転売を行う場合は、古物営業許可を得なければならず、古物営業許可を得ないで、転売を行った場合は違法となることを、以下のとおり規定しています。

第3条「前条第2項第1号(古物営業の定義の説明)に掲げる営業を営もうとする者は、営業所が所在する都道府県ごとに都道府県公安委員会の許可を受けなければならない」

転売をして古物営業法違反で逮捕されるケースの多くが、「無許可」による逮捕です。古物営業法では、許可を得ずに転売すると「3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する」と規定されています。日常的に転売を行っているケースに該当すれば、盗品を転売していなくても古物営業許可をとっていなければ、古物営業法違反になる可能性があるので注意が必要です。

3、盗品の転売をすると窃盗罪に問われるの?

結論から申し上げると、盗品を転売しても窃盗罪に問われることはありません。窃盗罪に問われるのは窃盗を行った本人及び共犯者に限られます。

万が一自分で盗んだと判断された場合は、窃盗罪に問われることになり、有罪判決が下ると10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される可能性があります。

4、盗品の売買に関与した場合の量刑や罰則

盗品であることを知りながら売買に関与した場合、問われる可能性がある罪は、「盗品関与罪」です。その詳細は以下となります。

  • 盗品等無償譲受罪
  • 盗品等有償譲受罪
  • 盗品等運搬罪
  • 盗品等保管罪
  • 盗品等有償処分あっせん罪


これら盗品関与罪が規定されている刑法256条の条文を確認してみましょう。
「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受けた者は、3年以下の懲役に処する」
「前項に規定する物を運搬し、保管し、若しくは有償で譲り受け、又はその有償の処分のあっせんをした者は、10年以下の懲役及び50万円以下の罰金に処する」

万が一、盗品と知りながら盗品を譲り受けた場合は、この中の「盗品等無償譲受罪」(無償で盗品を譲り受けた場合)又は「盗品等有償譲受罪」(有償で盗品を譲り受けた場合)に問われる可能性があるでしょう。誰が盗んだのかを知らなくても、盗んだ事実を知っていればこれらの犯罪は成立します。

盗品等無償譲受罪で有罪になると「3年以下の懲役に処する」と規定され、盗品等有償譲受罪で有罪になると「10年以下の懲役及び50万円以下の罰金」と規定されており、比較的重い処罰を受けることになります。

5、盗品を転売して逮捕されたらどうなるのか

盗品を転売して逮捕されると、警察に身柄を拘束され、取り調べなどの捜査が行われます。その後、罪を犯した可能性が高いとみなされれば逮捕後48時間以内に検察に事件が送致され、検察は24時間以内に「勾留」が必要かどうか判断します。

勾留が必要と判断されれば、拘置所や留置所に身柄を送られ、最大20日間も身柄が拘束されることになります。その間に検察官が捜査を行い、「起訴」にするか、「不起訴」にするかを決定します。

起訴されれば「刑事裁判」が開かれます。刑事裁判になった場合の有罪率は99.9%なので、有罪を免れるのは難しいと考えられ、前科がつく可能性が非常に高いと考えたほうがよいでしょう。ただし、弁護により「執行猶予」を勝ち取れば刑務所に入ることなく、自宅で生活することも可能です。

起訴が不要と判断されれば「不起訴」となります。不起訴であれば前科がつくこともなく、直ちに自宅に帰りこれまで通りの生活を送れるようになります。

6、まとめ

盗品と知りながら転売した場合は盗品関与罪のいずれかで逮捕される可能性はあります。また、盗品ではない正規のルートで入手したものでも、転売のために入手したものであれば、古物営業許可を取っていなければ、古物営業法に違反するケースもあります。

自分自身が盗んだ場合は、窃盗罪に問われる可能性があるでしょう。

盗品を転売した可能性があり、今後逮捕されるのではないかと不安な方は、窃盗などの刑事事件に対応した実績が豊富な弁護士に相談してみるとよいでしょう。ベリーベスト法律事務所・大阪オフィスでも、状況に適したアドバイスを行うとともに適切な弁護活動を行います。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています