動物を捨てると摘発される? 動物を守るための法律とは
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大阪市では、犬や猫といった動物の殺処分がなくなることを目指して、引き取りや返還・譲渡の推進といった取り組みがなされています。
大阪市における平成元年の犬・猫の殺処分数は9631匹でしたが、令和3年度では265匹となり約97%の減少という成果はみせているものの、依然として全国の主要都市と比較すると高い数字です。
このような現状は、大阪市だけの問題ではありません。ペットの無責任な遺棄や無制限な繁殖によって、生命ある動物が処分されてしまったり、周辺の住環境を悪化させたりするといった問題が日本全国で起きています。
国は、動物の飼養や保管の適正化を目指して法律を改正しました。もし、ペットを捨てたり、世話ができないほどに大量に繁殖させたりすると、罪に問われてしまうおそれがあるので注意が必要です。
本コラムでは法律の面から「動物を捨てるとどうなるのか?」を解説します。
1、動物を捨てると犯罪になる!
ペットとして犬や猫を飼っていて、住宅の都合や引っ越し・転勤などの事情で飼育を続けるのが難しくなると「捨てるのもやむを得ない」と考えてしまうかもしれません。
しかし、自分が飼っている動物を捨てる行為は犯罪です。では、動物を捨てる行為はどのような罪に問われるのでしょうか?
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(1)動物愛護管理法とは?
犬や猫などを捨てる行為は「動物の愛護及び管理に関する法律(通称:動物愛護管理法)」の定めに違反します。
この法律は、犬・猫のほか、牛・馬・豚・めん羊・山羊・いえうさぎ・鶏・いえばと・あひるなど、人が占有する哺乳類・鳥類・爬虫類を「愛護動物」とし、その適正な飼養や保管の基準などを定めるものです。
従来、動物愛護管理法による定めの多くは「〜するよう努めなければならない」という努力義務を課すものばかりでした。
しかし、愛護動物の不適切な飼養や繁殖などが大きな問題となっている現代では、罰則の設けられていない努力義務の実効は不十分です。
そこで、令和元年6月の法改正で、適正飼養のための規制が強化され、さらに罰則の強化や範囲の拡大により動物に対する加害行為が厳罰化されています。動物の遺棄などに関する改正は令和2年6月に施行済みです。 -
(2)動物を遺棄した場合の罰則
動物愛護管理法第7条は、動物の所有者・占有者に対して、その責任を十分に自覚したうえで適正に飼養・管理し、動物の健康と安全を保持するよう努める義務を課しています。
同法においては、動物はできる限りその生命を終えるまで適切に飼養する「終生飼養」が原則です。
この義務に反して愛護動物を遺棄すると動物愛護管理法違反となり、同法第44条3項の定めに従って、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
犬や猫などのようにペットとして飼育されることの多い動物だけでなく、鳥類や爬虫類でも対象です。愛護動物の遺棄は犯罪になることをしっかりと心得ておかなければなりません。
2、動物虐待も厳罰化された
動物の遺棄と同じく「虐待」も法改正によって厳罰化されました。
自分のペットだからという言い分は通用しないので、近隣住民や動物愛護団体からの通報などによって虐待が発覚し、事件化されてしまうおそれがあります。
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(1)動物虐待にあたる行為
「動物虐待」といえば、動物に対して殴る・蹴る・物を投げつけるなどの積極的な暴力をイメージしがちです。
たしかに、積極的な暴力は動物の身体に外傷を負わせる危険のある虐待行為の典型ですが、ほかにも次のような行為は虐待にあたります。- 餌や水を与えない
- 健康や安全を保持できない場所での拘束
- 極端な多頭飼育など、著しい高密度での飼育
- 疾病・負傷の放置
- 排泄物や死体を放置した場所での飼育
これらは、いわゆる「ネグレクト」と呼ばれる状態で、適正な飼育の放棄・怠慢にあたります。
積極的な暴力がなく、飼い主としては適正に飼養しているつもりでも、客観的にみれば虐待にあたるケースもあるので注意しなければなりません。 -
(2)動物虐待に対する罰則
動物愛護管理法第44条には、動物虐待に対する罰則も明記されています。
- 愛護動物をみだりに殺傷する行為(1項)
5年以下の懲役または500万円以下の罰金 - 愛護動物に対する暴行・ネグレクト(2項)
1年以下の懲役または100万円以下の罰金
とくに、動物をみだりに殺傷する行為については非常に厳しい罰則が設けられています。令和4年2月には、自分になつかないことに腹を立てた男が包丁で飼い猫を刺殺した事件が発生し、男が逮捕されました。
このケースでは、男の妻が猫を動物病院に運び込んだことで、動物病院の獣医師が事件を通報して発覚したとのことです。
動物愛護管理法第41条の2は、虐待を発見した獣医師に対して都道府県知事や関係機関に通報することを義務付けているため、動物病院を経由して事件が発覚するケースも想定されます。 - 愛護動物をみだりに殺傷する行為(1項)
3、野生動物に関する法的な規制|鳥獣保護管理法とは?
法律による保護を受けるのは、人が飼育するペットに限りません。野生動物については「鳥獣保護管理法」によって保護されています。
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(1)鳥獣保護管理法の概要
鳥獣保護管理法は、正しくは「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」という名称の法律です。
野生の鳥類・哺乳類を対象に、生物の多様性の確保や生態系の保護などを目的として、その管理や狩猟のルールが定められています。
環境衛生の維持に重大な支障を及ぼす動物としてネズミ類の一部が、ほかの法令によってすでに適切な保護管理がなされている動物としてアシカ・アザラシなどの海棲哺乳類が除外されていますが、ほかの野生動物は広く保護対象になっています。 -
(2)鳥獣保護管理法によって規制されている行為と罰則
鳥獣保護管理法によって規制されている主な行為と罰則は次のとおりです。
- 無許可の鳥獣・鳥類の卵の採取
- 無登録の狩猟
環境大臣や都道府県知事の許可を得ずに鳥獣・鳥類の卵を採取する行為、都道府県知事の登録を受けずに狩猟する行為には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
なお、捕獲や狩猟に使用した道具、捕獲した鳥獣、採取した鳥類の卵は没収されます。 - 無登録の飼養
無登録で鳥獣を飼養すると6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
許可を受けて捕獲した場合でも、飼養には別の登録が必要です。
ここで挙げた行為のほかにも、鳥獣保護管理法には、狩猟が認められない区域・期間における狩猟行為、禁止猟具の使用、狩猟許可の条件違反、土地占有者の承諾を受けない捕獲・採取などに罰則が設けられています。
4、動物の遺棄・虐待で摘発された! その後はどうなる?
どのような事情があっても、ペットなどの動物を遺棄・虐待する行為は許されません。動物愛護管理法違反の容疑で摘発されると、その後はどうなってしまうのでしょうか?
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(1)犯罪の容疑をかけられて捜査を受ける
動物を遺棄・虐待する行為は犯罪です。近隣住民や関係機関などからの通報によって警察に発覚すれば、犯罪の容疑者として捜査の対象となります。
警察署への出頭を求められて事情聴取を受ける、逮捕されて厳しい取り調べを受けるといった事態も考えられるでしょう。とつぜん警察官が自宅を訪ねてきて令状にもとづく捜索、いわゆる「家宅捜索」が実施されるおそれもあります。 -
(2)検察官が起訴すれば刑事裁判になる
捜査の結果、動物を遺棄・虐待した容疑が固まれば、検察官が「起訴」に踏み切る危険が高まります。
起訴されると刑事裁判の被告人となり、公開の法廷において審理される対象となるため、事件に無関係な人の目にさらされたり、ニュース・新聞などで実名報道を受けたりすることで社会的な不利益を被るかもしれません。 -
(3)有罪判決を受けると刑罰が科せられる
刑事裁判に発展し、動物の遺棄・虐待が存在したことが証明されると、有罪判決を受けて刑罰が科せられます。
動物の遺棄・虐待は懲役も予定されている犯罪なので、決して軽視してはいけません。
5、まとめ
さまざまな事情があって動物の飼育を続けるのが難しくなると「こっそり捨ててしまおう」と考えてしまうかもしれませんが、動物を遺棄する行為は動物愛護管理法に違反する犯罪です。摘発されれば厳しい刑罰を受けるおそれもあると心得ておかなければなりません。
一方で、思いがけず遺棄や虐待を疑われて通報され、捜査の対象になってしまうおそれもあります。動物愛護の機運が高まっている現代では、鳴き声がうるさい、匂いが流れてくるといった不満をもつ近隣住民から嫌がらせで通報されてしまう危険もあるでしょう。
動物愛護管理法違反の容疑をかけられてしまってお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスにご相談ください。捜査機関への対応について的確なアドバイスを提供しながら、逮捕や刑罰の回避に向けて経験豊富な弁護士が全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています