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偽計業務妨害罪にあたる行為とは? 成立要件と具体例、罰則を解説

2023年05月11日
  • その他
  • 偽計業務妨害罪
偽計業務妨害罪にあたる行為とは? 成立要件と具体例、罰則を解説

令和4年9月、大阪地裁は、偽計業務妨害の非行事実で家裁送致されていた大学入学共通テストの問題を流出させた未成年の受験生を保護観察処分とする決定を下しています。
本事件では自らが行った行為の重大性を認識したうえで深く反省していることなどが考慮されたようです。他方で、共犯の男は同じく偽計業務妨害罪で略式起訴され、罰金50万円の有罪判決が下っています。

偽計業務妨害罪は他人の業務を妨害する罪のひとつですが、どのような行為が処罰の対象になるのかの判断は難しく、この事例のように「偽計にはあたらない」とされるケースも存在しています。

このコラムでは「偽計業務妨害罪」が成立する要件や罰則を、具体例を交えながら大阪オフィスの弁護士が解説します。

1、偽計業務妨害罪とは?

偽計業務妨害罪とは、刑法第233条にて、次のとおり定められています。

(信用毀損及び業務妨害)
233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。


刑法第233条は、偽計業務妨害罪と信用毀損罪の2つの犯罪を同時に規定しています。このなかで偽計業務妨害罪にあたるのは「偽計を用いて人の業務を妨害した」という部分です。

いずれの場合も3年以下の懲役または50万円以下の罰金が規定されており、最大で3年にわたる刑務所への収監を言い渡されるおそれがあります。

なお、偽計業務妨害罪と同じく業務妨害罪のひとつとして規定されている犯罪に威力業務妨害罪がありますが、威力業務妨害罪の罰則も同じく3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

2、偽計業務妨害の成立要件

偽計業務妨害罪が成立するための要件は3点です。

  • 偽計を用いること
  • 他人の業務を妨害すること
  • 故意があること


「偽計」については判断が難しいので、特に注目しながら解説しましょう。

  1. (1)偽計を用いること

    「偽計」とは次のように解釈されています。

    • 人を欺き、誘惑すること
    • 人の錯誤や不知を利用すること
    • 計略や策略を講じるなど、威力以外の不正な手段を用いること


    単純には「嘘をつく」「虚偽の情報を流す」といった行為が該当しますが、そのほかにも勘違いや不知を利用することも偽計にあたるとされています。また、ここで挙げた要件は「人」に向けられたものですが、人の意思へのはたらきかけを伴わない機械に向けられた行為であっても偽計と判断されるケースがあります。

    冒頭で挙げた事例では、元夫が勤めている医療法人に不正会計があると信じていた元妻が保健所に書面で通報をし、保健所が調査をした結果、不正会計は認められませんでした。

    この事例では、元妻が書面で通報した時点で不正会計を疑わせるような状況があったのか、不正会計を疑わせるような状況がある場合、人の錯誤があったといえるのか、そのような場合でも結果的に通報内容が虚偽であった場合に「偽計」にあたるといえるのかが問題となりました。

    裁判所は、元妻が書面で通報した時点では、不正会計を疑わせる状況が存在し、保健所の担当職員による調査も不正会計の疑いに基づいて行われたものであるため、人の錯誤があったとはいえないと判断し、「偽計」にはあたらないと判断しました。

    また、結果的に書面で通報した内容が虚偽であったとしても、通報の内容についての疑いが通報時に存在していれば、直ちに「偽計」には当たらないという判断もしました。

  2. (2)他人の業務を妨害すること

    偽計業務妨害罪が成立するには「他人の業務への妨害」が必要です。

    ここでいう「業務」とは、一般的な「仕事」のイメージにとらわれず、人が社会生活上の地位に基づいて反復・継続しておこなう行為を指しています。

    利益が生じる企業の活動だけでなく、非営利団体やPTA・同窓会のような組織の活動も業務にあたるため、経済的な利害にとらわれないという点には注意が必要です。

    また、実際に業務妨害の結果が生じる必要はなく、業務妨害の危険があるだけでも本罪の成立は妨げられません。この考え方を「抽象的危険犯」といい、加害者が仕掛けた偽計を被害者が看破した場合でも偽計業務妨害罪が成立します。

  3. (3)故意があること

    偽計業務妨害罪が成立するためには、「偽計を用いること」、「他人の業務を妨害すること」についての故意が必要です。

    故意とは、「罪を犯す意思」のことをいいます。これは、犯罪となる事実を認識したうえで、犯罪を実現することを求めたり、やむを得ないと考えたりするというように認容している必要があります。

    偽計業務妨害罪が成立するためには、「偽計を用いること」と「他人の業務を妨害すること」を認識したうえで、認容している必要があります

3、偽計業務妨害が成立する具体例

偽計業務妨害罪が成立する具体例を挙げていきましょう。

  1. (1)いたずら電話や虚偽通報

    偽計業務妨害罪が適用される代表的な事例が、いたずら電話や虚偽通報によるものです。

    • 「妻を刺した」と警察に虚偽の通報をした
    • 2日間・合計61回にわたって不要不急の119番通報をした
    • 実際に利用する意思がないのに居酒屋に宴会の予約をして無断キャンセルした
    • プロ野球の球団公式ホームページに掲載されているメールアドレス宛に「球団施設を爆破する」とのメールを送信した


    虚偽内容の通報や注文のほか、無言電話のように虚偽内容を含まないものでも業務妨害にあたります

  2. (2)SNSやネット掲示板におけるデマの流布

    近年では、SNS・インターネット掲示板などに関連した事件も多発しています。

    • インターネット掲示板に「10人以上をめった刺しにする」と書き込んだ
    • 飲食店のアルバイト従業員が、不衛生ないたずら動画をSNSに投稿した


    殺人や爆破などの犯罪予告が典型例ですが、最近は飲食店などのアルバイト従業員を中心に不適切な動画を投稿する、いわゆる「バイトテロ」が問題となるケースも多数です。

  3. (3)そのほかの事例

    過去の事例や判例をみると、人に対する直接的な妨害行為ではなくても偽計業務妨害罪が成立しています。

    • キャッシュカードの暗証番号を盗撮するためにビデオカメラを設置する目的で、営業中のATMを長時間にわたって占拠した【最決平成19年7月2日】
    • 競合相手の新聞紙と体裁を似せてシェアを奪おうとした【大判4年2月9日】
    • 海上からはわからないように海底に障害物を沈めて漁網を破損させた【大判大3年12月3日】
    • 電気メーターを実際の使用量よりも少なくなるように細工した【福岡地判昭和61年3月3日】
    • オンラインゲームのデータを改変するツールを作成・乱用した


    積極的に虚偽の情報やデマを用いたものではなくても、錯誤や不知を悪用したケースや機械・データに不正な改変を加えたケースでは偽計業務妨害罪が成立する可能性があると心得ておきましょう

4、偽計業務妨害罪で逮捕された場合の流れ

偽計業務妨害罪の容疑で逮捕されると、身柄拘束を受けたうえで刑事裁判を受けることになります。
逮捕から刑事裁判への流れを見ていきましょう。

  1. (1)逮捕による身柄拘束

    警察に逮捕されると、警察署の留置場に身柄を置かれたうえで取り調べを受けます。
    逮捕を受けた時点から身柄拘束が始まり、自宅へ帰ることも、会社や学校へ通うことも、携帯電話やスマートフォンで外部と連絡を取ることも許されません。

    警察における身柄拘束の限界は48時間以内です。48時間が経過するまでに、逮捕した被疑者を釈放するか、検察官へと引き継がなくてはなりません。

    警察から検察官へと被疑者の身柄・関係書類が引き継がれる手続きを「送致」といいます。
    送致を受けた検察官は、自らも被疑者を取り調べたうえで、24時間以内に被疑者を釈放するか、または裁判所に勾留を請求しなければなりません。

  2. (2)勾留による身柄拘束

    裁判官が検察官による勾留請求を認めた場合は、原則10日間以内を限度として身柄拘束が延長されます。勾留を受けることになった被疑者の身柄は警察に戻されて、警察署の留置場に置かれながら検察官による取り調べや検察官の指揮を受けた警察によって捜査が進められます。

    10日間以内に捜査が遂げられなかった場合は、裁判官が検察官による請求を認めた場合にはさらに10日間以内の延長が可能です。つまり、勾留による身柄拘束の最長は20日間であり、逮捕後の48時間と24時間をあわせると、逮捕から23日間にわたる身柄拘束を受けることになります

  3. (3)検察官の起訴

    勾留が満期を迎える日までに、検察官は起訴・不起訴を決定します。

    検察官が起訴をして刑事裁判へ移行することになれば、被疑者は「被告人」へと立場を変えてさらに勾留が続く場合があります。

    起訴されて被告人としての勾留が決定した段階からは、一時的な身柄解放である「保釈」の請求が可能ですが、保釈が認められなかった場合は刑事裁判が終わるまで釈放されません。

    検察官が不起訴とした場合は、その時点で捜査が終了するため、被疑者の身柄は直ちに釈放されます。

  4. (4)刑事裁判での審理

    検察官が起訴すると、およそ1か月~2か月後に初回の刑事裁判が開かれます。その後はおおむね1か月に一度のペースで裁判が開かれて、最終回となる日には判決が言い渡されます。

    実刑判決が下されるとそのまま刑務所へと収監されますが、執行猶予がつけば刑の執行が猶予されるため、社会生活への復帰が可能です。また、罰金が言い渡された場合は、裁判所への罰金納付をもって刑罰が終了します。

    日本の司法制度では、検察官に起訴されて刑事裁判に発展すると極めて高い割合で有罪判決が下されています。

    令和元年の司法統計によると、全国の地方裁判所で開かれた刑事裁判について4万7444件に有罪判決が下されていますが、無罪判決はわずか104件のみでした。有罪率は99.7%となるため、起訴されればほぼ確実に有罪となる事態は避けられません。

    このような状況を考えると、厳しい刑罰を回避するには無罪を期待するのではなく、被害者との示談交渉を進めて検察官による起訴を回避するのが最善でしょう

5、まとめ

冒頭紹介した事件のように試験問題を流出させたり、いたずら電話や110番・119番などへの虚偽通報、SNS・インターネット掲示板への犯罪予告の投稿などは、偽計業務妨害罪にあたります。

また、電気・水道などのメーターに不正な細工を施したり、オンラインゲームのデータを改変したりといった行為も偽計業務妨害罪にあたる可能性があるので注意が必要です。

偽計業務妨害罪にあたる行為は、企業や団体の活動に支障をきたすものが多く、社会的に大きな反響を呼ぶものもめずらしくないので、逮捕される危険が極めて高まります。
逮捕・刑罰といった厳しい処分を回避するには素早い対策が必要なので、弁護士のサポートは欠かせません。

偽計業務妨害罪にあたる行為をはたらき、逮捕や刑罰に不安を感じているなら、刑事事件の解決実績を豊富にもつベリーベスト法律事務所 大阪オフィスにお任せください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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