密輸容疑で逮捕されたらすべきことは? 大阪オフィスの弁護士が解説
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大阪税関管内では、空・海からの密輸を厳しく取り締まり、水際での密輸防止を強化しています。大阪府には、国内でも成田空港に次ぐ日本の玄関となっている関西国際空港があります。さらには大阪港には、諸外国からの船舶が多数出入りすることもご存じのとおりです。そのためか、いずれの玄関からも多くの密輸事件が発覚しているようです。
では、輸入禁止の物品であることを知らずに、持ち込んで入国しようとした場合はどのような刑罰を受けるのかご存じでしょうか。大阪オフィスの弁護士が、密輸の疑いをかけられた場合の対策を解説します。警察から連絡が来て動揺している、その場で家族が逮捕されてしまったなどの事態に陥ったとき、参考にしてください。
1、密輸に該当する行為とは
密輸といえば、ドラマなどの影響で、海外の禁制品を国内に持ち込む行為をイメージする方が多いかもしれません。
しかし、取り締まりを受ける「密輸」という行為は、正規の手続きを経ることなく物品の輸出入を行うことが該当します。何をもって「正規の手続きを経ない」のかといえば、その理由は大きくわけて以下の2つが考えられます。
- 法律で輸出入が禁止されている物品をひそかに輸出入させるため
- 関税から逃れるため
本項では、それぞれの目的別に適用される法令や摘発の事例について紹介します。
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(1)輸出入禁止の物品をひそかに輸出入する行為
輸出入禁止の物品にはさまざまなものがあります。大麻や麻薬、覚せい剤、けん銃などの国内でも所持が禁止されている物品のほか、知的財産権を侵害する偽ブランド品、国内の規制とは基準が異なるポルノ雑誌やアダルトビデオ、さらには絶滅危惧種の動植物などが対象となります。
これらの中でも特に犯罪行為として厳しく取り締まりを受けるのが、大麻や麻薬、覚せい剤などの禁止薬物です。大麻の密輸入は全国の税関で摘発されており、主に大麻草や大麻樹脂が対象になっています。最近では大麻を含有させて製造したお菓子などが摘発される例もあり、手口が巧妙化しています。
覚せい剤の密輸入も数多く摘発されており、平成31年3月には日本人旅行客がコカ葉やコカイン含有のお菓子類を国内に持ち込もうとして摘発されています。また、関西空港税関で9.8kgもの覚せい剤を密輸入しようとした事件が摘発されたことが報道されています。
中身を知らされずに荷物を運びこむことを依頼されたというケースでも、いわゆる「運び屋」として摘発される可能性があります。 -
(2)関税から逃れる行為
関税逃れの密輸入で代表的なのが「金」です。日本より消費税率が低い、または消費税そのものがない国で金を買い付けて国内へ持ち帰ると、消費税がかかります。簡単にお金が稼げてしまうので金は密輸入が禁止されているのです。
2、密輸行為で問われる罪や罰則
刑法には「密輸罪」という罪はありません。しかし、扱う物品によっては刑法の規定に抵触する場合があります。たとえば、盗難自動車を輸出しようとした場合、盗難自動車であることを知った上で運搬すれば、刑法第256条第2項に規定されている盗品等運搬罪に該当する可能性があります。
盗品等運搬罪は10年以下の懲役または50万円以下の罰金と、重い刑罰が科せられます。故意犯であるため、盗品であることを知らなければ犯罪にはなりませんが、「もしかしたら盗品かもしれない」程度の未必の故意であっても、処罰の対象になる点には注意が必要です。
また、薬物の密輸入事件は「関税法違反」として摘発される場合があります。関税法では、第69条の11において、麻薬・大麻・覚せい剤などの輸入を禁止しており、これに違反した場合は10年以下の懲役もしくは3000万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。
薬物の密輸入事件については、関税法のほかに、覚せい剤取締法、大麻取締法といった薬物ごとの規制に関する法律でも輸入を禁止しており、これらに違反した場合の罰則も定められています。
さらに、金の密輸で関税法違反に問われた場合、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。さらに消費税法・地方税法の違反が適用された場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。
3、密輸容疑で逮捕された場合の刑事手続きの流れ
密輸の疑いがかけられると、どのような流れで刑事手続きを受けることになるのでしょうか?
①逮捕
任意の事情聴取では逃亡や証拠隠滅のおそれがあると判断された場合、捜査機関が裁判所に令状を請求して逮捕状が発付されます。逮捕されると身柄が拘束され、48時間を上限に警察による取り調べが行われます。
②送致
警察による一時的な捜査が終了すると、検察官へと事件や身柄が引き継がれます。この手続きを検察官送致と呼びます。送致を受けた検察官は、被疑者を取り調べたのち、送致から24時間以内に勾留の必要性を判断します。
③勾留
検察官が、引き続き取り調べを行う必要があり、かつ逃亡の危険性や証拠隠滅の可能性があると判断した場合、もしくは居住地が不明であるときは、裁判所に対して引き続き身柄拘束する許可を請求します。これを勾留請求といいます。勾留が認められた場合、原則10日間、延長によって最長20日間の身柄拘束が続きます。
④起訴
勾留が満期を迎えるまで、もしくは取り調べが終わり次第、検察官は刑事裁判を提起するか、それとも釈放するかを決断します。
起訴には略式請求と公判請求があります。実際の犯行内容が悪質ではなく、100万円以下の罰金・科料に相当する事件である場合には略式請求となるでしょう。その罪の重さから公判請求となったときは、刑事裁判が開かれることになり、被疑者は、保釈が認められるまで引き続き被告人として身柄が拘束されます。
⑤裁判
公判請求となった場合は、刑事裁判は1か月に1回程度のペースで開廷され、最終回の公判で判決が下されます。
4、密輸の疑いをかけられたら弁護士に相談を!
密輸の疑いをかけられた場合、税関職員からの事情聴取、警察や検察官からの取り調べを受けることになります。
もしあなたが利益のため、故意に密輸をはたらいた、もしくは高額アルバイトとして怪しい荷物を運びこんだというケースであれば、残念ながら有罪となる可能性があります。しかし、中には自分自身が持ち込んだものではない物が紛れ込まされていたという方もいます。
もし、密輸容疑で事情聴取や取り調べを受ける立場になってしまった場合は、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談し、詳しく事情を説明すれば、故意の密輸ではないことを証明する有利な証拠を提示するためのアドバイスやサポートが受けられます。また、弁護士が税関や捜査機関にはたらきかけることによって、逃亡や証拠隠滅のおそれがないことを強調し、逮捕が避けられる場合もあります。
逮捕されてしまえば短くても3日間、長ければ20日間以上の身柄拘束が待っているので、会社への通勤や学校への通学ができず、社会生活に多大な影響を及ぼしてしまう可能性は否定できません。また、弁護士を選任していれば、任意の取り調べのために警察署まで同行することや、重すぎる処罰を受けないよう弁護することが可能です。
特に密輸関連の犯罪は重い刑罰が科せられるため、故意による行為ではなかったことの主張は重要です。どうすればよいかわからないと悩む前に、弁護士に相談してください。
5、まとめ
密輸事件といえば犯罪組織が大掛かりに敢行するイメージがあり、一般的な旅行客からみれば無関係なものに感じるかもしれません。しかし、密輸が禁止されている物品だとは知らずに海外旅行から持ち帰ってしまい、税関で指摘されて密輸容疑をかけられてしまうことがありえます。したがって、決して一般人であれば無関係だと言い切ることはできないのです。
もし密輸の疑いがかけられれば、故意ではないことを証明する証拠の収集が必須となります。早急に弁護士のサポートを受ける必要があるので、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまでご相談ください。
密輸の嫌疑を晴らし、長期間の身柄拘束や重い刑罰を回避できるよう、刑事裁判に対応した経験豊富な弁護士が全力であなたをサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています