覚醒剤取締法違反で逮捕されたら!? 罪の重さと逮捕後の対応
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令和3年2月、京都府警は覚醒剤取締法違反の疑いで、大阪市に住む男性を逮捕し起訴したことを発表しました。男性は、"密売するために覚醒剤を所持していた"と容疑を認めていると報道されています。
大阪府警がホームページで公表した統計によると、令和3年に薬物事犯によって検挙されたのは1480人でした。覚醒剤事犯は986人で前年より85人減少していますが、依然として少なくない人数が検挙されています。
覚醒剤は、非常に依存性の強い薬物であり、各種の薬物の中でも厳しく規制されています。使用しておらず所持しているだけでも、逮捕・起訴される可能性が高いです。
覚醒剤取締法違反の刑罰と量刑の相場、逮捕されてからの流れや対応、弁護士に依頼するメリットについて、解説します。
1、覚醒剤取締法が禁止していること
覚醒剤は、大麻やヘロインなどの他の禁止薬物などと比べても、厳しく処罰される犯罪です。
それは、覚醒剤の依存性が、他の薬物よりも強い上、身体や精神をむしばむ程度も高いためです。覚醒剤がはびこると、使用した個人が損なわれるだけではなく、国自体の滅びにつながるという考え方です。
覚醒剤を規制するための法律が、覚醒剤取締法です。具体的にどのようなことをすると、犯罪になるのでしょうか?
覚醒剤取締法違反が禁止している行為には、次のようなものがあります。
- 覚醒剤の使用
- 覚醒剤の所持
- 覚醒剤の譲渡、譲り受け
- 覚醒剤の輸出入(営利、非営利)
覚醒剤に関わると、ほとんどのケースで刑事処罰を受けるということです。たとえば、知人から、覚醒剤と聞かされずに正体不明の薬を預かっていただけで「覚醒剤の所持犯」として逮捕されてしまう事例もあるので、注意が必要です。
2、覚醒剤取締法の刑罰
覚醒剤取締法違反の行為をすると、具体的にどのくらいの刑罰を適用される可能性があるのか、見てみましょう。
単純な所持や使用、譲り受け、譲渡の場合、10年以下の懲役刑
営利目的がある場合、1年以上の有期懲役刑、500万円以下の罰金の併科あり
輸出入、製造の場合、1年以上の有期懲役
営利目的がある場合、無期又は3年以上の懲役、1000万円以下の罰金の併科あり
覚醒剤取締法違反の場合、「罰金刑」はありません。必ず懲役刑が選択されますから、略式起訴もあり得ず、通常の刑事裁判となります。
営利目的がある場合には、所持や使用でも1年以上の有期懲役(有期懲役の限度は20年)となりますし、500万円以下の罰金を付加されることもあります。
輸出入や製造行為をすると、さらに罰則が重くなり、営利目的の場合には「無期刑」の選択もあり得ます。
覚醒剤の刑罰は非常に重いので、軽い気持ちで手を出すと大変なことになってしまうことを、まずはしっかりと認識する必要があります。
3、覚醒剤の量刑相場
実際の覚醒剤使用や所持の量刑相場はどのくらいになっているのでしょうか?
営利目的のない単純所持や単純使用の場合、初犯であれば懲役1年6月、執行猶予3年とされることが多いです。ただし薬物犯罪の前科がある場合には、執行猶予がつかないことが多いです。特に覚醒剤前科があると、古いものでない限り、2回目の執行猶予判決は不可能と考える方が良いでしょう。
覚醒剤使用や所持で、2回目に逮捕されると、懲役2年程度の求刑で、懲役1年~懲役1年6か月程度の実刑になることも多いです。通常、回数が増えれば求刑、判決も重くなっていきます。
4、量刑を決める判断基準
覚醒剤取締法違反の量刑を判断するときには、以下のような要素が基準となっていきます。
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(1)初犯かどうか
初犯の場合には、ほとんどのケースで執行猶予がつきます。これに対し、覚醒剤前科があると、古いものでない限りほとんど必ず実刑となります。他の禁止薬物の前科がある場合にも、まったくの初犯よりは刑罰が重くなります。
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(2)使用量、所持量、使用期間、頻度などの薬への依存度
覚醒剤の使用や所持の場合、量が問題となります。たくさん使っていたりたくさん所持していたりすると、その分情状が悪くなります。また、逮捕されるまでの使用期間や頻度も重要です。
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(3)営利目的だったか
覚醒剤取締法違反は、営利目的があると一気に罪が重くなります。営利目的の場合、初犯でも執行猶予がつかない可能性が高くなってしまいます。
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(4)再犯の可能性があるか
覚醒剤取締法違反の場合、常習性や依存性が問題になります。再犯可能性があるなら、一度刑務所で薬を使えない環境下で矯正した方が良いということになりやすいです。
家族がしっかり監督できること、勤務先が決まっていること、初犯であることなど、再犯可能性が小さいケースでは、刑が軽くなる可能性が高まります。
5、逮捕されてからの流れ
覚醒剤取締法違反で逮捕されると、どのような流れで手続きが進んでいくのか、見てみましょう。
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(1)逮捕・勾留
逮捕後、48時間以内に検察官へと身柄が送致されます。
そして、その後24時間以内に勾留請求がなされ、裁判所で勾留決定がなされると、引き続いて警察署等において身柄拘束を受けることになります。
覚醒剤の場合、在宅捜査になることはほとんどありません。逮捕・勾留中は、警察官から取調べを受けることになります。 -
(2)起訴・不起訴の決定
勾留期間は最長20日なので、勾留期限になると、検察官は起訴処分とするか不起訴処分とするかを決定します。
覚醒剤取締法違反の場合、不起訴になることは少ないです。 -
(3)刑事裁判を受ける
起訴されると、それまでの被疑者という立場から被告人という立場に変わり、裁判官によって裁かれます。
いったん起訴されると、ほとんどの事案で有罪判決となります。
6、覚醒剤に関する罪の特徴
覚醒剤取締法違反には、他の犯罪行為と比べていろいろな特徴があります。それは、以下のような点です。
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(1)被害者がいない
1つは、被害者がいない犯罪であることです。
刑事事件では、被害者と示談ができると情状が良くなるので、処分が軽くなることが通常です。たとえば、傷害事件やわいせつ事件などであれば、起訴前に被害者と示談することによって、不起訴処分がなされることも多いです。
しかし、覚醒剤取締法違反の場合、被害者がいないので、「示談をして処分が軽くなる」ということがありません。結果として、不起訴処分がなされることも、2回目以降の被告人が執行猶予判決を得ることも難しくなります。 -
(2)物的証拠が出ることが多い
覚醒剤取締法違反の場合、はっきりと「物的証拠」が出るケースがほとんどです。
所持のケースなら所持していた覚醒剤が発見されているはずですし、使用のケースでも、尿検査で陽性反応が出るので、覚醒剤の使用が明確に証明されます。証拠がはっきりしているので弁解ができず、無罪となるケースはほとんどありません。 -
(3)そもそも、重い犯罪
覚醒剤取締法違反の罪は、そもそも重い犯罪です。つまり、大麻などに比べると危険だと考えられているのです。覚醒剤取締法違反で逮捕されると、非常に重い刑罰を適用されてしまう可能性が高くなってしまうのです。
7、弁護士に依頼するメリット
覚醒剤取締法違反で逮捕されてしまったとき、放っておくと実刑判決を受ける可能性も高いので、早急に適切な対応をとる必要があります。
難しい覚醒剤の薬物事件でなるべく処罰が軽くなるためには、早めに弁護士に対応を依頼する必要性が高いです。以下では、弁護士に依頼するメリットをご紹介します。
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(1)自由に接見してアドバイスができる
覚醒剤取締法違反で捜査機関に逮捕されると、その後引き続いて長期間の身柄拘束を受ける可能性が高いです。
その間、家族とも自由に面会することはできません。取調官からは厳しく質問されるので、つい事実以上に頻繁に覚醒剤を使用していたとか、記憶が曖昧なまま事実以上に長期にわたって覚醒剤を使用し続けてきたなどと言ってしまう可能性は否定できません。そうなると、その前提で判断されるので、罪が重くなります。
弁護士であれば、逮捕段階から被疑者と自由に接見できるので、当初から事実に反する自白をしないようにアドバイスすることができます。今後の手続きの流れなどについてもアドバイスできるので、被疑者も精神的に安心できます。 -
(2)贖罪寄付など、必要な手続を進められる
弁護士が刑事弁護人として弁護活動を行うときには、被疑者の情状が良くなるように努めます。覚醒剤取締法違反のように被害者のいない犯罪では、贖罪寄付などの他の方法で反省の態度を示す必要があります。弁護士であれば、被疑者被告人にこういったアドバイスをして、適切に手続を進めて情状をよくすることができます。
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(3)検察官や裁判官に、良い情状を伝えられる
どのような被疑者や被告人にも、良い情状というものはあります。
たとえばしっかり反省していること、初犯であること、家族の監督により再犯防止できること、これまで定職について真面目に生活してきたことなど、丁寧に拾いあげて検察官や裁判官に伝える必要があります。弁護士であれば、どういった事実が有益か分かっているので、個別の事案ごとに被疑者被告人にとって良い情状を確実に拾い上げて明確に主張し、処罰が軽くなるように活動できます。 -
(4)保釈請求をして、身柄拘束を解かせることができる
覚醒剤取締法違反では、被疑者被告人が身柄拘束を受ける可能性が非常に高いです。
そのままでは受ける不利益もどんどん大きくなっていきますので、早く身柄を解放しなければなりません。
起訴後は保釈請求できるようになりますから、早急に保釈の申請をして、保釈金を納付し、被告人の身柄を解放させる必要があります。被疑者段階から弁護士がついていたら、起訴と同時に保釈請求をして、スピーディに身柄解放させることができます。
まとめ
覚醒剤は、非常に危険な薬物であるにもかかわらず、手を出してしまう方が後を絶ちません。自分は覚醒剤と無縁であっても、子どもなどの家族が覚醒剤取締法違反で突然逮捕されて警察署から連絡が来るケースなども多いです。
覚醒剤取締法違反で受ける不利益を小さくするためには、刑事弁護の実績が豊富な弁護士に対応を依頼すべきです。覚醒剤の所持や使用で刑事事件になった場合は、お早めにベリーベスト法律事務所大阪オフィスまでご相談下さい。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています