生前贈与のメリットとは? 節税効果はある? デメリットも含めて弁護士が解説!
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平成27年の相続税に関する改正で相続税の基礎控除額が引き下げられたことよって、改正前に比べ、相続税の課税対象となる被相続人の人数が増えました。大阪国税局の統計によると、平成29年中に亡くなった被相続人のうち相続税の課税対象となった被相続人の割合は8.7%であり、年々増加の傾向を示しています。
相続税の節税対策として、被相続人が生存している間に行う「生前贈与」の仕組みを使うとよいと聞いたことのある方も少なくないでしょう。果たして「生前贈与」には、本当に節税効果があるのでしょうか?また「生前贈与」には、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
本コラムでは、節税などの生前贈与のメリットについてデメリットや注意すべき点も含めてベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説していきます。
1、生前贈与とは?
生前贈与とは、被相続人となる方が、生前に財産を譲り渡すことをいいます。生前贈与は贈与契約にあたり、財産を譲り渡す人(贈与者)と譲り受ける人(受贈者)の合意によって成立します(民法549条)。
贈与契約を口頭で行った場合、履行が終わるまでの間は、贈与者は契約の解除をすることが可能です。一方、贈与契約を贈与契約書などの書面にした場合には、解除はできなくなります(民法555条)。
ただし、夫婦間で取り交わした契約については、婚姻中においては、いつでも取り消すことが可能です(民法754条)。
2、生前贈与にはどのようなメリットがあるか?
生前贈与の大きなメリットとしては、「贈与したい相手に確実に財産を引き継がせることができること」や「節税効果があり相続税対策になること」が挙げられます。
● 贈与したい相手に確実に財産を引き継がせることができる
遺言書を用意していたとしても、相続人が話し合う遺産分割協議によって、財産が被相続人の意思どおりに引き継がれない可能性があります。一方、生前贈与では意思に従った贈与を確実に行うことが可能です。
また、生前贈与では、自身が健在なうちに子どもに事業を承継させ、見守ることもできます。
● 節税効果があり相続税対策になる
相続財産に相続税が発生しそうな場合には、生前贈与で相続税を節税することが可能です。
たとえば、相続時に予想される財産の金額から2000万円少なければ相続税がかからないという場合には、2000万円を生前贈与をすることで、相続税の節税につながります。そして2000万円を生前贈与する際、贈与税の非課税制度を利用すれば、大きな節税効果を得ることができます。
3、生前贈与を活用した相続税対策にはどのようなものがある?
それでは、どのように生前贈与を活用すれば、節税効果を得られるのでしょうか。
主な方法をかんたんにご紹介いたします。なお、具体的な方法については、税理士などに相談することをおすすめします。
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(1)贈与税の基礎控除額110万円以内で贈与する方法
贈与税は、基礎控除額である年110万円以内の贈与については課税されません。そのため基礎控除額の限度内の額を贈与すれば、節税できることになります。
ただし、毎年同じ金額を贈与した場合、定期贈与となり、贈与税がかかる場合もあります。 -
(2)贈与税の配偶者控除を使って居住用不動産などを贈与する方法
婚姻期間が20年以上経過している夫婦の間で、居住用不動産や居住用不動産を取得するための資金を贈与した場合には、基礎控除額110万円のほかに最高2000万円まで配偶者控除が受けられます。
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(3)子どもなどへ住宅取得資金として贈与する方法
一定の要件のもとで父母や祖父母などが子どもや孫に居住用住宅取得資金を贈与した場合には、一定の限度額までは贈与税は非課税となります。
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(4)孫の教育資金として贈与する方法
祖父母から孫の教育資金として金銭などを贈与する場合には、最大1500万円に相当する部分については金融機関の営業所などを経由して教育資金非課税申告書を提出すると贈与税は非課税になります。
ただし、令和5年3月31日までの期限付き措置となっていることが注意点です(※令和3年度税制改正において、適用期限が令和5年3月31日までと2年延長されました。) -
(5)相続時精算課税制度を利用する方法
相続時精算課税制度は、贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母や祖父母から、贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の子どもや孫である推定相続人に対して生前贈与する場合に利用できる制度です。
相続時精算課税制度を選択した場合は、2500万円までの生前贈与についての贈与税は非課税とされ、相続時に相続財産に加えて相続税として精算します。なお2500万円を超えた贈与部分については、一律20%の税率で課税されます。
そして、相続が開始したときには、相続財産の価額に相続時精算課税を適用した贈与財産の贈与時の価額を加算して相続税額を計算することになります。その際にすでに支払った贈与税額があれば相続税額から控除し、控除しきれない場合は還付を受けることが可能です。ただし、還付を受けるための申告書は、相続開始の日の翌日から起算して5年を経過する日まで提出することができます。
贈与時の価額で計算するので、将来値上がりが見込まれる財産などがある場合には、有益な制度といえるでしょう。
4、生前贈与にはどのようなデメリットがあるか?
これまで見てきた中で、生前贈与はメリットが大きい相続方法だと思われた方も多いでしょう。しかし。生前贈与にはデメリットとなる部分もあるので、メリットとデメリットを比較したうえで生前贈与を選択するかどうか判断することが大切です。
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(1)不動産の生前贈与は相続より多くかかる税金がある
生前贈与は非課税制度を活用すれば、贈与税や相続税を節税することが可能です。しかし、不動産の生前贈与については、以下のように、法定相続人へ相続する場合より多くかかる税金もあります。
- 不動産取得税……土地や建物などの不動産を得たときにかかる税金
- 登録免許税……不動産登記を名義変更する際に納付する税金
相続の場合には、不動産取得税はかかりません。また、登録免許税は原則として不動産の固定資産税評価額の0.4%がかかります。
一方、生前贈与の場合には、不動産取得税の税率は原則として4%(宅地は3%、住宅は3%)かかります。不動産取得税は、取得した不動産の価格(課税標準額)×税率となっており、令和6年3月31日までに取得した宅地については軽減措置として課税標準額が価格の1/2となります。また、登録免許税は固定資産評価額の2%かかります。
このように不動産を生前贈与する場合には、相続の場合より多くかかる税金があるため、注意が必要です。 -
(2)相続開始前3年以内の贈与は相続税の対象となる
相続開始前3年以内の生前贈与については、相続税の課税対象となります。死期が近いことを知って、生前贈与を行って相続税の負担を逃れようとする課税逃れをけん制することが目的です。
そのため相続開始前3年以内の生前贈与については、相続税の対象となることがデメリットになります。
5、まとめ
本コラムでは、節税などの生前贈与のメリットについてデメリットや注意すべき点も含めて解説していきました。効果的な生前贈与を行うためには、遺産相続に知見を有する弁護士にしっかりと確認したうえで行うことが確実です。
ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士は、生前贈与や相続について税理士などとも連携をとりながらご相談者さまのご希望に沿った内容をご案内できるように尽力いたします。ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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