絶縁した兄弟姉妹との遺産相続│遺産分割協議の適切な対応は?
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大阪市が毎月1日に公表している推計人口の統計によると、令和3年12月の大阪市の推計人口274万7569人のうち、死亡者数は、2615人でした。相続は、人の死亡によって開始されますので、大阪市内では毎月多くの相続が生じていると推測できます。
相続が発生した場合には、相続人全員で話し合いをして遺産の分割方法を決める必要がなります。しかし、兄弟姉妹と絶縁状態になっている場合には、思うように相続手続きが進まず頭を悩ます相続人の方も少なくありません。もし相続人の中に、連絡先や所在もわからない兄弟姉妹がいた場合には、どのように対応すればよいのでしょうか。
今回は、絶縁した兄弟姉妹との遺産相続の方法について、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスの弁護士が解説します。
1、絶縁した兄弟姉妹とも相続の話し合いが必要
絶縁した兄弟姉妹がいる場合、親が亡くなったとしても葬儀に出席しないということもあります。
しかし、絶縁した兄弟姉妹が法定相続人であれば、相続人を除いて手続きを進めることはできません。遺言書がない場合には、遺産分割協議を行って、遺産の分け方を決めることになりますが、遺産分割協議を有効に成立させるためには、相続人全員の同意が必要になるからです。相続人が一人でも欠いていた場合には、当該遺産分割協議は無効になってしまいます。
そのため、絶縁した兄弟姉妹であっても遺産分割協議に参加してもらう必要があります。もっとも、遺産分割協議は、相続人全員が集まって直接話し合いを行うことまでは必要ありませんので、顔を合わせて話し合いをするのが苦痛だという場合には、電話やメールなどで遺産分割方法を決めて、遺産分割協議書を郵送して署名押印してもらうという方法もあります。
このように絶縁した兄弟姉妹がいる場合には、遺産分割協議の方法を工夫するなどの対応が必要となるでしょう。
2、連絡先がわからない場合
絶縁した兄弟姉妹の連絡先がわからない場合には、どのように相続手続きを進めていけばよいのでしょうか。以下で、具体的な方法を紹介します。
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(1)戸籍の附票の取得
兄弟姉妹の仲が悪く絶縁した状態だと、相手の連絡先や住所を把握していないということがあります。絶縁した兄弟姉妹と連絡を取らなければ遺産分割協議を進めることができませんので、まずは、絶縁した兄弟姉妹の住所を調べることになります。
「住所を調べるのであれば住民票を取得すればよいのではないか」と考える方もいるかもしれませんが、住民票を取得するためには住所を記載しなければなりませんので、住所がわからない状態ではそもそも住民票を取得することはできません。
このような場合、戸籍の附票を取得することによって、登録されている住所を知ることができます。戸籍の附票とは、戸籍が作られてから現在に至るまでの住所が記録されているものですので、それによって絶縁した兄弟姉妹の住所を知ることができます。
絶縁した兄弟姉妹の住所が判明した場合には、当該住所宛てに手紙を送るなどして相続手続きを進めたい旨伝えるとよいでしょう。 -
(2)失踪宣告
失踪宣告とは、一定期間生死不明の状態にある人について、法律上、死亡したものとみなすことができる手続きです。失踪宣告の手続きを利用するためには、家庭裁判所への申立てが必要になります。
失踪宣告によって、当該行方不明者は死亡したものとみなされますので、本来の被相続人の相続手続きを行うためには、行方不明者の相続人を参加させたうえで遺産分割協議を行う必要があります。
なお、失踪宣告には、以下の2つの種類があります。- ① 普通失踪
普通失踪とは、7年間不在者の生死が明らかでない状態をいいます。普通失踪は、不在者の生死不明から7年が満了した時点で死亡したものとみなされます。 - ② 特別失踪
特別失踪とは、戦争、船舶の沈没、震災など死亡の原因となる危難に遭遇して、その危難が去った後に、生死が1年間明らかでない状態をいいます。特別失踪は、戦争、船舶の沈没、震災など死亡の原因となる危難が去った時点で死亡したものとみなされます。
- ① 普通失踪
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(3)不在者財産管理人の選任
単に音信不通で所在がわからないという場合や生死不明の状態が7年未満である場合には、上記の失踪宣告の手続きは利用することができません。このような場合には、不在者財産管理人を選任することによって、遺産分割協議を進めることが可能になります。
不在者財産管理人とは、相続人の中に不在者がいるために遺産分割を行うことができない場合に、不在者に代わって財産を管理、処分をする人のことをいいます。不在者財産管理人を選任する場合には、相続人が不在者の住所地または居所地の家庭裁判所に対して、不在者財産管理人選任の申立てを行い、裁判所が不在者財産管理人を選任します。
不在者財産管理人が選任された場合には、不在者に代わって不在者財産管理人が遺産分割協議に参加し、遺産分割手続きを進めていくことになります。
3、自身の相続分を多くすることはできるのか
遺産分割協議のなかで、自分の相続分を絶縁した兄弟姉妹よりも多くするということは可能なのでしょうか。
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(1)話し合いによる相続割合の変更
民法では、相続が開始した場合の遺産の取得割合として「法定相続分」を定めていますので、兄弟姉妹間での法定相続分は等しい割合となります。遺産分割手続きにおいては基本的には、この法定相続分に従って遺産を分けていくことになります。
もっとも、相続人全員が合意をすれば、法定相続分とは異なる割合で遺産を分けることも可能ですので、他の相続人との話し合いによって自身の相続分を多くすることは可能です。
ただし、絶縁状態の兄弟姉妹がそのような提案に応じるとは考えにくく、現実的な方法ではないでしょう。 -
(2)寄与分の主張
兄弟姉妹が絶縁状態にある場合には、被相続人である親の面倒や介護をどちらか一方の兄弟姉妹だけが担っていることも珍しくありません。このような場合には、遺産分割手続きにおいて寄与分を主張することによって法定相続分よりも多くの遺産をもらえる可能性があります。
寄与分とは、被相続人の生前に財産の維持・増加に関して、相続人が一定の貢献をした場合に、その貢献度に応じて取得する遺産を増やすという制度です。ただし、相続人が何らかの貢献をすれば常に寄与分が認められるというわけではありません。
寄与分を主張するためには以下の要件を満たす必要があります。- ① 「特別の寄与」と評価できること
- ② 財産の維持または増加があること
- ③ 財産の維持または増加との間に因果関係があること
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(3)相続欠格
相続欠格とは、相続人と被相続人との間に一定の事由が存在する場合に、当然に相続人となる資格を失うことをいいます。
兄弟姉妹間で絶縁をすることになった原因が以下の事由に該当する者であった場合には、相続欠格を主張することによって、絶縁状態の兄弟姉妹の相続権を失わせ、結果として自分の相続分を増やすことができます。- ① 被相続人や他の相続人を殺害したり、殺害しようとした場合
- ② 被相続人が殺害されたことを知りながら、告発または告訴しなかった場合
- ③ 詐欺または強迫によって遺言行為(作成、撤回、取消、変更)を妨げた場合
- ④ 詐欺または強迫によって遺言行為(作成、撤回、取消、変更)を強要した場合
- ⑤ 遺言を破棄、偽造、隠匿した場合
4、相続については弁護士へ相談を
相続についてお悩みがある場合には、弁護士に相談をすることをおすすめします。
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(1)遺産分割手続きをスムーズに進めることができる
兄弟姉妹の関係が悪く、絶縁状態にある場合には、兄弟姉妹同士で話し合って遺産分割手続きを進めていくことは非常に困難となります。無理に話し合いを進めようとすると、お互いに感情的になってしまい、別のトラブルに発展する危険もあります。
このような場合には、弁護士に遺産分割手続きを依頼することでスムーズな遺産分割手続きを実現できる可能性があります。
法律の専門家である弁護士が対応することによって、冷静な話し合いを進めることができるだけでなく、寄与分がある場合には寄与分を主張するなどしてできる限り有利な条件になるように話し合いを進めることができます。 -
(2)行方不明者がいる場合の手続きを任せることができる
絶縁状態にある兄弟姉妹が行方不明であり、遺産分割協議に参加することができない場合には、失踪宣告や不在者財産管理人などの制度を利用する必要があります。
どちらを利用するにしても要件該当性の判断や裁判所への申立手続きを行わなければならず、知識や経験のない方では適切に進めていくことが難しい手続きだといえます。
このような複雑な手続きについても弁護士に一任することによって、迅速かつ適切な対応が期待できます。
5、まとめ
兄弟姉妹同士の仲が悪く、絶縁状態にある場合には、一般的な相続に比べてトラブルが生じやすく、特別な手続きが必要になることもあります。兄弟姉妹間のトラブルは、ご自身で進めていこうとすると問題が深刻化してしまう可能性も少なくありません。まずは早めに弁護士に相談をすることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスには相続トラブルの解決実績が豊富な弁護士が在籍しております、相続に関するお悩みを解決できるよう尽力いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。
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