相続したくない場合は相続放棄が有効! 弁護士が手続きを解説します

2020年07月17日
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相続したくない場合は相続放棄が有効! 弁護士が手続きを解説します

大阪市が公表している統計データによると、大阪家庭裁判所(支部を除く)で平成30年の「相続の放棄の申述の受理」件数は、13741件でした。親族が亡くなったとき、相続人は財産をどうするかについて、検討しなくてはなりません。財産はプラスの資産ばかりとは限らず、多額の借金を残して他界するケースも考えられます。

被相続人にマイナスの財産が多く、相続することを拒否したい場合もあるでしょう。法律では相続放棄という手段が認められており、手続きによって相続を放棄することができます。では、具体的にどのような流れに沿って手続きを行えばよいのでしょうか。

本コラムでは相続放棄の手続きや流れについて、大阪オフィスの弁護士が解説します。

1、相続発生! まずはするべきことは?

相続は被相続人の死亡と同時に開始します。手続きが多く複雑なうえ、期限が決まっている項目もあるため迅速な対応が求められます。

  1. (1)死亡届を提出

    人が亡くなった場合は、まずは役所へ死亡届を提出しなくてはなりません。死亡届を提出しないと火葬を行えないためです。死亡届の提出は、相続につながるすべての手続きに先立って行う手続きといえるでしょう。

    届出をする人は、亡くなった人の親族や後見人などです。死亡したことを知った日から7日以内に届出をしなくてはいけません。

  2. (2)相続人調査

    被相続人が生前保有していた財産は、相続人全員の共有財産となるため、相続人どうしで分け方を決める必要があります。

    財産の分け方は、遺産分割の協議を行い、分配方法や割合を決めます。その際、相続人全員が遺産分割協議書に署名捺印をすることで手続きが完了します。相続人がひとりでも欠けた状態で行った遺産分割は無効になってしまう点にも注意が必要です。協議を行う前に相続人調査を行い、誰が相続人になるのかを確認したうえで確定しておく必要があるでしょう。

  3. (3)相続財産の確認

    相続財産には、現金以外にもさまざまな種類の財産が含まれます。土地や建物などの不動産はもちろん、所有していた自動車、宝石や貴金属などもあるでしょう。

    さらに、目に見えない財産である著作権や特許権なども該当します。どのような財産が含まれるのか判断できない場合は、弁護士などに確認してもらうようにしましょう。

2、相続の方法3種類

相続人は、財産の相続の方法について3種類の方法から選択することになります。プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産があった場合は、相続することで負担になる可能性が高いものです。どの方法を選択するかは慎重に検討しましょう。

ここでは、相続の際に選択できる3種類について解説します。

  1. (1)単純承認

    単純承認とは、被相続人が残した財産のうち、すべてを相続する方法です。したがって、もしも被相続人が残した負債等についてもすべて相続することになります。

  2. (2)限定承認

    限定承認とは、被相続人の財産のうちプラスの財産とマイナスの財産を精算し、プラスの財産が残った場合にはその残った財産を取得し、逆に、マイナスの財産の方が多い場合には超過したマイナスについて弁済する責任を負わない方法です。財産にプラスとマイナスのどちらが多いのか不明な場合に利用されることがあります。

    限定承認を選択する場合は、自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内に、家庭裁判所で手続きを行う必要があります。また、一度限定承認を選択すると後から撤回することはできません。

  3. (3)相続放棄

    相続放棄とは、プラスもマイナスもすべて、被相続人の財産を相続しない方法です。

    限定承認と同じく、相続の開始があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所で手続きを行う必要があり、一度相続放棄を選択すると後から撤回することはできません。

3、相続したくないときは? 相続放棄の手続きを解説

被相続人にマイナスの財産が多い場合は、相続による負担が大きくなってしまいます。そのような場合は「相続放棄」を行うことで財産を引き受けずに済みます。

ここでは、具体的な手続きについて解説していきます。

  1. (1)相続放棄の手続き

    相続放棄の手続きは、各自が独断で行うことができ、他の相続人の許可や承諾は不要です。以下の書類を準備し、家庭裁判所に提出します。

    • 相続放棄申述書
    • 相続放棄を申述する方の戸籍謄本
    • 被相続人の住民票(除票)
    • 被相続人の戸籍謄本等(申述者と被相続人との関係等によって必要な書類が異なることがあります)
    • 収入印紙
    • 郵券


    必要書類は管轄の家庭裁判所によって異なる場合があります。事前に確認するようにしましょう。

  2. (2)相続放棄の手順

    相続放棄の手続きには「相続人自身が相続の開始を知ったとき」から3か月以内という期限があります。したがって、効率のよい準備が求められるでしょう。期限が過ぎると、原則的には単純承認となり、マイナスの財産も含めて、すべての財産を引き受けることになってしまいます。

    必要な書類は役所で取得するものが多いため、平日の日中に戸籍謄本や住民票を取得します。役所での必要書類収集が終わったら、相続放棄申述書を作成して家庭裁判所に提出します。

    その後、照会書(裁判所からの質問書)が届きますので回答して返送します。申述書が家庭裁判所で受理されると「受理通知書」が届き、手続きが完了します。
    なお、家庭裁判所に申請すれば、「受理証明書」を取得することもできます。

4、相続放棄を弁護士に依頼するメリット

相続放棄の手続きは自分で行うことも可能です。しかし、万が一不備があっても後からやり直しや撤回をすることはできません。弁護士に依頼することで以下のようなメリットがあります。手続きに不安がある方は弁護士へ相談することをおすすめします。

  1. (1)相続放棄のアドバイスを受けられる

    相続では多くの方が、経験がなく不安を抱えた状況で手続きを遂行しなくてはなりません。

    前述したように相続には種類があり、どの方法が適切なのかも、それぞれに用意する書類も異なります。弁護士に相談すれば、まずは状況の確認方法から、状況に適した相続方法、さらには具体的な手続きについてアドバイスを行います。

  2. (2)代理人として手続きを依頼できる

    相続放棄をするためには、役所での戸籍謄本や住民票の収集などさまざまな書類が必要になります。特に戸籍謄本の取得は複雑で、昔と現在では書式自体が異なっている場合もあります。謄本内に旧文字が含まれていることもあるため、見慣れていない方が内容を理解することは難しいものです。

    弁護士に依頼すれば、このような書類を職務上請求し取得することができます。また、申述も弁護士が代わりに行うので、正確な申述書の提出につながります。あなた自身が手続きに時間をかけられないというケースでも、大きなメリットを得られるでしょう。

  3. (3)期限内に確実に手続きが完了する

    死亡にともなうさまざまな手続きがある中、3か月はあっという間に過ぎ、時間的な余裕はそうないことはご理解いただけるでしょう。万が一期限を過ぎると期間を伸長する手続きを取っておかない限り、単純承認となってしまい、マイナスの財産を含め、財産をすべて相続することになります。

    放棄を希望するときは遅滞しないよう手続きを遂行する必要があります。加えて、そもそも調査に時間がかかりそうなときは、熟慮期間の伸長手続き(相続放棄を検討する期間を『熟慮期間』と呼びます)を行う必要があります。依頼を受けた弁護士は、必要書類の収集から家庭裁判所への書類提出までを代理して行えます。

    あなた自身が不利益を得ないよう確認をしながら、相続放棄の機会を逃さないよう、確実に手続きを進めることが可能です。

5、まとめ

今回は、相続放棄の手続きについて解説しました。相続放棄のための書類作成や申述には手間と時間がかかるだけでなく、不備があると申述が受理されない点に注意が必要です。また、たった3か月の申述期限までには、スムーズに申述を完了させることは非常に難しいといえます。相続人になりうる人全員が確実に手続きをしなければ、だれかが負債を背負うことにもなりかねません。状況によっては相続人同士で連携したほうがよいケースもあるでしょう。

確実に相続放棄を行うのであれば、弁護士に依頼してアドバイスを受けたうえで進めるほうが望ましいでしょう。もしも相続放棄をお考えなら、ベリーベスト法律事務所 大阪オフィスまでご相談ください。大阪オフィスの弁護士が面倒な手続きを代行し、迅速な相続放棄申述の受理に向け、全力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています