遺産分割で弁護士ができることや気になる弁護士費用について解説
- 遺産を受け取る方
- 遺産分割
- 弁護士
相続が発生したときには、相続人全員が参加して遺産分割協議を行わなければなりません。
遺産分割協議とは、相続人が遺産分割の方法を決めるための話し合いです。遺産分割協議は話し合いの段階なので、「弁護士に相談するに早いのではないか?」と考える方もいらっしゃいますが、決して早すぎることはありません。相続対策は、実際にトラブルが起こって「争続」になる前の段階で行っておくべきだからです。
今回は、遺産分割の話し合いで早めに弁護士に相談・依頼するメリットや弁護士費用などについて、詳しく解説します。
ご注意ください
「遺留分減殺請求」は民法改正(2019年7月1日施行)により「遺留分侵害額請求」へ名称変更、および、制度内容も変更となりました。
1、遺産分割の基本的な手順・流れについて
親や兄弟などが亡くなって相続が発生したとき、具体的にはどのような手順で相続手続きを進めていくのでしょうか? 時系列順に並べていくと、以下のようになります。
② 相続財産の確認
③ 相続人の確定
④ 遺産分割協議を行う
⑤ 合意した事項を「遺産分割協議書」にまとめる
⑥ 権利移転手続の実施
⑦ 遺産分割調停を行う
⑧ 遺産分割審判を行う
それぞれの手続きについて簡単に説明します。
-
(1)遺言書の有無を確認
相続が発生したら、まずは遺言書を探しましょう。有効な遺言書は法定相続に優先されるので、遺言書があると、遺言内容に従って遺産相続を進めていくことになるからです。
自筆証書遺言の場合には、自宅の机や引き出し、棚やタンス、金庫内などに保管されている可能性があります。
公正証書遺言の場合には、公証役場で遺言書の検索サービスを利用すると、該当する遺言書がないか調べることが可能です。亡くなられた方(被相続人)に懇意にしていた弁護士がいれば、弁護士にも確認してください。
遺言書を発見しましたら家庭裁判所で検認手続を行ってください。封印のある遺言書は、裁判所で相続人の立会のうえで開封されます。
-
(2)相続財産の確認
次に、相続財産としてどのようなものがあるか、確認する必要があります。
遺産を探すときには、被相続人の自宅や事業所、貸金庫などを調べるとともに、パソコンやスマホなどをチェックしてネット上での銀行や証券等の取引がないか、調べましょう。自宅宛に届いている郵便物をチェックすることも重要です。
不動産については、市区町村役場で固定資産課税台帳を開示してもらうと、その市区町村内のすべての被相続人名義の不動産を調べられるので、便利です。
不動産、株式、会員権など評価が難しい財産がありましたら、不動産鑑定士や公認会計士、弁護士など専門家の協力を得るとよいです。
-
(3)相続人の確定
相続財産の確定と同時に、相続人を確定する作業も必要です。遺産分割協議には、法定相続人が全員参加しなければなりません。
相続人を確定するためには被相続人が生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本や除籍謄本、改正原戸籍謄本を、途切れなく取得する必要があります。そのためには本籍地のある市町村役場に書類の申請を行う必要があり、相当煩雑で時間を要する作業を要求されます。
-
(4)遺産分割協議を行う
相続人と相続財産を確定できたら、相続人全員が参加して遺産分割協議を行います。
遺産分割協議とは、それぞれの相続人がどの遺産を相続するのか、またどのような方法で遺産分割を行うのかを決定するための話し合いです。
民法では、それぞれの相続のケースにおける「法定相続人」と「法定相続分(割合)」については定めていますが、具体的に誰がどの遺産を受け取るべきかや、遺産の分け方については規定していません。そのため、こういったことについては相続人が自分たちで話し合って決定する必要があります。 -
(5)合意した事項を「遺産分割協議書」にまとめる
相続人全員が遺産分割方法に合意したら、その内容を「遺産分割協議書」にまとめます。遺産分割協議書は、不動産の名義書換や預貯金の払い戻し、相続税の申告などの各場面で必要となる重要書類なので、不備のないように作成しなければなりません。
-
(6)権利移転手続の実施
遺産分割協議書ができたら、それを使って不動産の登記名義の変更や預貯金の払戻手続き、車の名義変更、株式の名義変更など各種の権利移転手続きを行っていきます。
-
(7)(合意できないとき)遺産分割調停を行う
もしも遺産分割協議をしても相続人全員が合意できない場合には、家庭裁判所で遺産分割調停を行う必要があります。遺産分割調停では、裁判所の調停委員が間に入り、相続人が話し合いを行います。
-
(8)遺産分割審判を行う
遺産分割調停をしても合意できない場合には、調停が不成立となり、遺産分割審判の手続きに移行します。審判では、家庭裁判所の審判官が妥当と考える方法で遺産相続方法を指定します。
以上のように、遺産分割の手続きでは法律の専門知識を要する場面が非常に多く、弁護士によるサポートを受けるべき事案が多々あります。お困りの場合には、お早めに弁護士までご相談ください。
2、遺産分割協議の時点で弁護士に依頼するメリット
相続人同士が集まって遺産分割協議を行うときに弁護士に対応を依頼すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
-
(1)相続人や相続財産を正確に調査できる
遺産分割協議を行うためには、相続人や相続財産の範囲を明確にする必要があります。
相続人以外の者が遺産分割協議に参加すると、協議の結果が無効になってしまうおそれがありますし、財産隠しが疑われているなど相続財産に争いがある場合には遺産分割協議を開始できないからです。遺産の範囲を明らかにしないと遺産分割調停も申立てを取り下げるよう勧告を受けてしまいます。
しかし当事者の方が自分たちで相続人や相続財産を調査しようとしても、正確に調べられず、不備が起こる可能性があります。
弁護士であれば、確実に連続した戸籍謄本類を取り寄せることにより、認知された子どもや前妻、前夫との子供、養子養親などの相続人を漏れなく調査することができますし、弁護士法23条照会などの手続きを利用して、相続財産の有無や内容を詳細に把握できます。
-
(2)正当な権利を確保できる(寄与分、遺留分等)
遺産分割を行うときには、それぞれの相続人に保障された「法定相続分」を意識しておく必要があります。民法は個々の相続人の法定相続分を定めているので、基本的にその割合までは遺産を取得できるからです。
しかし、単純に法定相続分によって遺産分割をしないケースがあります。それは、寄与分や特別受益がある場合です。
寄与分とは、相続財産の維持形成に貢献した相続人がいる場合において、その相続人の遺産取得分を増やすことです。特別受益とは、被相続人から生前贈与や遺贈を受けた相続人がいる場合において、その相続人の遺産取得分を減らすことです。どちらも「公平に遺産分割を行うこと」を目的とした制度です。
寄与分や特別受益が主張される場合、本当に寄与や特別受益が発生しているのか、またその評価額がどのくらいになるかが問題となります。当事者が自分たちで話し合いをすると、寄与分や特別受益を否定する相続人と肯定する相続人が現れて合意しにくくなったり、評価方法がわからずに議論が紛糾してしまったりする事例が非常に多いです。
弁護士が遺産分割協議に介入していれば、法律的な考え方をあてはめて、適切に各々の相続人が取得すべき額を計算することができ、スムーズに解決しやすいです。
-
(3)正当な範囲の遺留分を受け取れる
遺言や生前贈与によって遺留分を侵害された相続人がいる場合、侵害者に対して遺留分減殺請求ができます。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人(すなわち、配偶者、子、直系尊属)に保障された最低限の遺産取得分のことです。遺留分減殺請求をすることにより、侵害された遺留分を取り戻すことができます。
しかし、実際には、遺言などで遺留分の侵害を受けても「仕方がないか」と諦めてしまわれる方がたくさんおられますし、請求手続を進めて侵害者と被侵害者が直接話し合いをしても、トラブルとなって自分たちでは解決できないケースが多いです。
このようなときには、弁護士が介入することにより、正当な権利を実現することにつながります。
-
(4)権利移転手続きまで完結させられる
相続人間で遺産分割方法について争いがない場合であっても、遺産分割協議の成立後には不動産登記や銀行預金の払戻し、株式や車の名義変更などの各手続きを進めなければなりません。しかし、これらの具体的な手続きの進め方が分からず、放置してしまう方もおられます。不動産についてはきちんと名義変更をしておかないと、無権利者が勝手に売却してしまうおそれがありますし、銀行預貯金や株式などについても、名義変更をしないと払戻や株主としての権利主張などができません。
このようなとき、弁護士に対応を依頼していると、弁護士が依頼者に対して相続手続きに関するアドバイスを行うので、スムーズに権利移転を実現できます。
また、遺産相続をすると相続税が発生するケースがありますが、弁護士に相談していると、弁護士から提携している税理士の紹介を受けられるケースも多いです。
このように、弁護士に遺産相続手続きを相談・依頼していると、相続開始から相続税申告納税まで、ワンストップで完了することができて、非常に便利です。
3、遺産相続に関する弁護士費用について
遺産相続事件を弁護士に依頼すると、どのくらいの弁護士費用がかかるのでしょうか? このとき発生する可能性のある弁護士費用の費目は、以下の通りです。それぞれについて、具体的な内容をご紹介します。
- 法律相談料
- 着手金
- 報酬金
- 手数料
- 日当
- 実費
-
(1)法律相談料
法律相談料とは、弁護士に遺産相続問題について相談をするときにかかる費用です。
ただし、法律相談料については無料にしている法律事務所が多いです。ベリーベスト法律事務所でも、初回の相談60分のご相談料を無料で対応いたしております(※各種条件によって金額がかわります。詳しくはお問合せ下さい)。 -
(2)着手金
着手金とは、事件対応を開始する、当初に発生する弁護士費用です。事件依頼時に一括払いする必要がありますが、弁護士事務所によっては分割払いや後払いができるケースもあります。
着手金の金額は、依頼する手続の種類や依頼する法律事務所によって、異なります。
-
(3)報酬金
報酬金とは、事件が解決したときに、依頼者が受けた利益の程度に応じて発生する弁護士報酬です。依頼人の受けた「利益」が大きければ大きいほど、報酬額が上がります。
遺産分割事件においては、報酬金は依頼者が受けた「経済的利益」によって算定することが多いです。経済的利益とは、金銭的に評価できる利益のことです。
たとえば遺産分割協議の代理人、調停や審判の代理人、遺留分減殺調停事件などでは経済的利益が基準となります。
-
(4)手数料
手数料とは、弁護士に書類作成などの事務を単発で依頼したときに発生する費用です。
たとえば内容証明郵便や遺言書の作成、遺産分割協議書の作成、遺言執行者への就任、相続放棄や限定承認の申述、遺言書の検認などを依頼するときに手数料がかかります。
手数料の金額は、依頼する手続きの内容によって異なります。
-
(5)日当
日当は、弁護士の出張費用です。たとえば遠方の家庭裁判所で遺産分割調停が行われる場合などに日当が必要なケースがあります。
なお、交通費や宿泊費とは別にかかるので、弁護士が遠方に出張すると、依頼者には大きな負担が発生してしまいます。 -
(6)実費
実費は、弁護士が相続事件を処理するために実際にかかる費用のことです。たとえば裁判所に納める印紙代や郵便切手、通信費用、交通費などです。
実費はどこの事務所に依頼しても同じだけかかりますし、弁護士に依頼せずに自分で手続きをしたとしても発生します。
遺産分割協議の代理人ならばあまり多額の実費が発生しないことが多いでしょう。調停や審判をするときには、印紙代や交通費などが必要となります。また、不動産等の各種財産の鑑定を行うケースなどでは、鑑定費用がかかるので実費が高額になる可能性があります。
以上のように、弁護士費用には相場がありますが、具体的な料金体系は法律事務所や各弁護士によって異なるので、相談をする際に見積もりを出してもらうと良いでしょう。
4、遺産分割でトラブルになる前に弁護士へご相談を
遺産分割を進めるときには、相続人間で意見が合わずにトラブルが発生する例が非常に多いです。
そのような残念な結果を避けるためには、相続分野に精通した弁護士に早い段階で相談しておくことが非常に重要です。ベリーベスト法律事務所では遺産相続案件に積極的な取り組みを進めており、初回のご相談料は60分まで無料(※)とさせていただいておりますので、是非ともご利用ください。
※各種条件によって金額がかわります。詳しくは、お問合せください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています