亡き父の自筆証書遺言が見つかった! 大阪府ではどこで検認する?

2019年07月19日
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亡き父の自筆証書遺言が見つかった! 大阪府ではどこで検認する?

平成13年2月、大阪高等裁判所において自筆証書遺言の検認を発端とした相続争いにまつわる裁判が行われました。自筆証書遺言が残っていても、相続がはじまった時点で検認という手続きを行う必要があります。検認を怠ったばかりに長年争い続けなければならない事態に陥る可能性があるといえるでしょう。

また、たとえ検認したとしても、法的に正しいものでない場合は、遺族の解釈が割れてしまいトラブルに発展することが少なくありません。そこで、本コラムでは、ベリーベスト法律事務所・大阪オフィスの弁護士が自筆証書遺言の検認方法や検認する場所などについて解説します。

1、自筆証書遺言は勝手に開封しないこと

自筆証書遺言とは、非常に簡易な言い方をすれば、「亡くなった方が自力で書いた遺言書」です。死亡後に見つかったときは、すぐにでも中身を確認したくなると思いますが、開封は厳禁です。民法では、「遺言書」について下記のように規定しています。

民法第1004条(遺言書の検認)

  1. 遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならない。遺言書の保管者がない場合において、相続人が遺言書を発見した後も、同様とする。
  2. 前項の規定は、公正証書による遺言については、適用しない。
  3. 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。


まず、自筆証書遺言が見つかった場合は家庭裁判所によって「検認」しなければならないとしています。さらに、遺言書が「封印」されている場合は、開封も家庭裁判所で行わなければなりません。

この2つの規定に反して勝手に検認せずに相続を進めたり、家庭裁判所外で開封したりしたときは、民法第1005条によって「5万円以下の過料に処する」と規定されています。したがって、万が一規定に違反した場合は、過料を支払うことになる可能性があります。

ただし、勝手に開封したり検認を怠ったりしたとしても、相続人としての権利を失うことはありませんし、遺言書が無効になることもありません。もちろん、遺言書の内容を書き換えたり捨てたりした場合や、自身にとって不利な内容であることを知りながら隠ぺいした場合は、相続人の権利を失ってしまう可能性があります。

2、普通の方式による遺言書の3つの種類

次に遺言書の3つの種類について解説します。発見した遺言書がどの遺言書に該当するかわからないときは参考にしてください。

  1. (1)自筆証書遺言

    多くの場合、手書きの遺言書は「自筆証書遺言」です。つまり、ご家族や親族が亡くなり、「遺言書が出てきた!」という場合、自筆証書遺言である可能性が高いでしょう。前述のとおり、家庭裁判所による検認が必要な遺言書のひとつです。
    なお、令和2年7月10日から、自筆証書遺言について、法務局での保管を申請することができるようになるのですが、法務局で保管している場合は、家庭裁判所による検認は不要です。

  2. (2)公正証書遺言

    公正証書遺言とは、公証役場で作成した遺言書です。公証役場が原本を、謄本(写し)を作成者本人が保管します。公正証書遺言は、原本が公証役場にあり、偽造や変更が不可能なので、死後に自宅で発見した場合は開封して問題ありませんし、検認も必要ありません。

    公正証書遺言の封筒には「遺言公正証書」と大きく記載しているのですぐにわかるでしょう。公正証書遺言は、公証人と作成するため、内容が法的に無効になる可能性は他の方式の遺言よりも小さいでしょう。

  3. (3)秘密証書遺言

    秘密証書遺言とは、「遺言書があるよ」という事実を公証役場に証明してもらう遺言書です。ただし原本は自宅で保管しますし、内容も公証役場は把握していません。そこで、秘密証書遺言が見つかった場合は、自筆証書遺言と同様に勝手に開封してはいけませんし、家庭裁判所での検認が必要です。

3、自筆証書遺言・秘密証書遺言を発見したら管轄の家庭裁判所へ

自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかったら、家庭裁判所での「検認」を受けなければなりません。封印されている場合は、開封の作業も必要となります。ただし、公正証書遺言であれば検認は必要ありません。原本は公証役場に保管されています。

  1. (1)自筆証書遺言・秘密証書遺言を発見したら管轄の家庭裁判所へ

    検認や開封を行う家庭裁判所は亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。住所地とは、生活の本拠ですので、亡くなった方が最後に生活をしていた場所を管轄する家庭裁判所に行きましょう。

    大阪府内の家庭裁判所は以下のとおりです。

    ●大阪家庭裁判所
    管轄地域:大阪市・池田市・箕面市・豊能郡(豊能町 能勢町)、豊中市・吹田市・摂津市・茨木市・高槻市・三島郡(島本町)・東大阪市・八尾市・枚方市・守口市・寝屋川市・大東市・門真市・四條畷市・交野市

    ●大阪家庭裁判所堺支部
    管轄地域:堺市・高石市・大阪狭山市・富田林市・河内長野市・南河内郡(太子町 河南町 千早赤阪村)・羽曳野市・松原市・柏原市・藤井寺市

    ●大阪家庭裁判所岸和田支部
    管轄地域:岸和田市・泉大津市・貝塚市・和泉市・泉北郡(忠岡町)・泉佐野市・泉南市・阪南市・泉南郡(熊取町、田尻町、岬町)

  2. (2)検認に必要な書類

    家庭裁判所に、自筆証書遺言を運べば検認が進むわけではありません。申立書や遺言書、さらに収入印紙、戸籍謄本などの書類や手続きが必要になります。必要な書類については、相続人と亡くなった方との関係によって必要なものが異なります。都度確認しながら進めることになるでしょう。

  3. (3)申立人、検認の際の立ち会い

    検認や開封の手続きを申し込む人を「申立人」といいます。申立人になれるのは遺言書の保管者もしくは遺言書を発見した相続人です。

    検認の際には、裁判所が相続人全員に検認期日を連絡します。申立人は必ず立ち会わなければなりませんが、相続人全員が立ち会う必要はありません。病気や仕事などで立ち会えなくても検認は行われますすし、相続に不利益はありません。

  4. (4)検認済み証明書の申請

    検認が終わった遺言書を「執行」する際は、「検認済証明書」が必要です。検認済証明書の申請には150円分の収入印紙と申立人の印鑑が必要です。

  5. (5)検認後の流れ

    遺言書を開封・検認したからといって、遺言の内容が有効であると認められた訳ではありません。検認が終わった後で、遺言書が法的に有効かを確認し、遺産分割を行います。万が一、遺言書が法的に無効である、遺言書の形式が間違っているなどの場合は、相続人全員で話し合わなければなりません。

    また、遺言書の内容が法的に無効であると主張したい場合は、家庭裁判所に「家事調停」を申し立てて、遺言書の有効性を話し合うことになります。

4、遺産相続手続きを弁護士に依頼する3つメリット

自筆証書遺言を発見した場合、検認が必要なので、遺産分割も遅れてしまいます。しかし、相続税の申告や、場合によっては相続放棄などの手続きを行うのであれば、特定の期限が定められています。効率よく進めなければ税金などを多く支払わなければならなくなるケースもあるでしょう。

そこで、遺産相続手続きを弁護士に依頼するメリットを解説します。

  1. (1)相続財産を正確に把握できる

    遺産相続を行うためには、財産を正確に把握しておくことが必要不可欠です。預貯金などはもちろん、土地や建物などの不動産などをすべて正確に把握した上で分割内容を決定することは非常に難しいと考えられます。

    実際に、「土地は遺言書に記載してあったが土地につながる私道を書き忘れた」などのケースもあります。遺言書に記載がない財産が発見されたり、逆に記載された財産がほとんど負債だったりすることもあるでしょう。

    依頼を受けた弁護士であれば、正確に財産を把握した上で、法的に有効な分割などについてアドバイスを行えます。また、必要に応じて税理士などとの連携した対応を行うこともできるでしょう。

  2. (2)手続きに時間と手間がかからない

    遺産相続は、非常に手間がかかります。不動産の登記などについて司法書士に依頼しなければならないこともありますし、税制面での相談は税理士に行わなければなりません。さらに、相続人を確定させるために、多くの戸籍を取り寄せて確認する必要もあります。

    しかも、これらの手続きは大切な方が亡くなってからすぐに始めなければ、相続放棄などの手続きが難しくなることがあります。膨大な労力と手間がかかり、故人をしのぶ時間さえ無くなってしまうケースもあるでしょう。

    しかし、弁護士に依頼すればほぼ手間も時間もかけずに必要な書類をそろえることができます。その後の分割について、交渉を依頼することも可能です。貴重な時間を有効に使うためにも、弁護士に依頼することをおすすめします。

5、まとめ

ご家族や親族が自筆証書遺言を発見した場合、まずやるべきことは裁判所に開封や検認の申し立てを行うことです。その際には、亡くなられた方の戸籍や相続人全員の戸籍等が必要になりますので、すぐに手配しましょう。

申立書の作成には時間がかかります。その後の手続きにもそれぞれ期限があり、速やかに進めなければなりません。これらの手続きが大変、また遺言書の検認が完了した後の執行のやり方がわからないという方は弁護士に依頼することをおすすめします。

まずは、ベリーベスト法律事務所・大阪オフィスへお問い合わせください。自筆証書遺言の検認や作成などの実績豊富な弁護士が、スムーズに遺言書の検認や作成をサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています